この前買った少しオシャレな格好をして待っていると後ろから声がしたので振り向くとそこには明日香がいた。
連絡先を交換したあともたまに話したり遊びに行ったりしていた。そして今日はポピパさんのライブのチケットが余ってしまったらしいので声をかけて貰ったのだ。
ポピパさんの曲は廃れた俺の心を癒してくれたり、そっと後ろから支えてくれたり、時に励ましてくれる。だから、ポピバさんが好きだ。勿論、2番目になっちゃうけどね。
「秀、おまたせ。待った?」
「ううん、全然。俺も今来たところだから」
「ありがと。じゃ、行こっか。 秀は電車あんまり乗らないでしょ? だから私の後着いてきて」
「わかった……ごめんね。こういう時って男が手を引っ張るのが普通でしょ?」
「別に普通である必要はないんじゃない? どうあっても秀は秀だし。逆に男らしい方が違和感あるよ」
「それはそれで傷付くような……うん、まあ行こう」
俺の所為で少し場が重くなってしまったのでこの会話はここで終わらせておく。喧嘩なんて、もう……したくないからね。
暫くして電車に乗ったのだが休日だからか日中でも人が多く、明日香の傍にいようとするだけでも精一杯だ。うぅ、流される……!? め、目の前に明日香が! しかもドアが、すぐそこでこのままだとくっついちゃう。どど、ど、ど、どうにかしなきゃ!! とりあえず腕突こう、うん。めっちゃ辛い、けど我慢しないと明日香が嫌だもんね。
「んっ、ちょっと狭いね」
「そうだね。ごめん、もっと俺の力が強かったら良かったんだけど……」
「そんなことないよ。今のままでも充分カッコイイしさ」
(嬉しいけど凄く恥ずかしい。それになんか今の明日香、いつもと違って大人っぽい)
「あと1駅だから、頑張って! (あっ、秀ってこんなイケメンだったんだ……いや、ちがうちがう)」
「うん、でも、ちょっともう無理かも……」
「えっ!? いや、え? 今倒れちゃダメだから! ね、あともうちょっとだから……もういいや。いいよ、腕無理してつっぱらなくていいよ。なんなら私に抱きつく?」
「それは無理だよ!? いやだってそんな簡単に抱きついたりできないでしょ、そういうのはほら付き合ってる人とかがさぁ、するじゃんその……」
ダメだ、言ってて恥ずかしいし明日香に聞こえてたらどうしよう。あぁ〜! 明日香に嫌われるッ!? 嫌、本当にそれだけは嫌、俺のこと嫌わないでくれ。
すぐネガティヴな思考に陥り自己完結させて他人を頼らない。俺の多くある短所の1つだ。
今だって、透子の時も自分ひとりじゃ何もできやしないのにカッコつけて誰の手も掴もうとしなかった、だからこのザマだ。
……でも明日香はこんな俺でも受け入れてくれるかな。ダメだ、こんなこと言ったら幻滅される。だからって前と同じことを繰り返したりなんかはしたくない。
そんなあーだこーだ考えていると電車のドアが開き、明日香と俺は押し出されてしまった。
「……着いたね。あ、あのさ明日香。いや、やっぱいいや」
「そんなこと言われたら余計気になっちゃうよ。気分悪かったりする? なら酔い止め持ってるよ」
「違うんだ、あのさ、変な事聞いてもいい?」
「そう云うってことは聞いて欲しいんだよね。勿論聞くよ」
「あはは……俺ってさ面倒臭いじゃん? だから迷惑かけちゃってないかな〜なんてガラにもない事考えちゃって」
……言えた。すっごいオブラートに包んだけど言えた。これで少し何か変われたかな?
「面倒臭いと思ったこともないし、迷惑だって感じたこともない、秀といると楽しいもん。私の方こそ変なお節介かけちゃってない? お姉ちゃんと接してると変な癖が着いて抜けないんだよ」
「ないない、そんなこと絶対ない! 明日香と一緒に居られる香澄さんが羨ましいよ」
「えーと、まあ、ありがとう。じゃ、時間なくなっちゃうかもしれないし早く行こっ」
なんか明日香の顔凄く赤いけど照れてたりするのかな? そうだったとしたら明日香の弱点見つけちゃったかも。明日香可愛いな。
「あっちゃん」
「や、やめて!? その呼び方はお姉ちゃん以外にされると恥ずかしいからこれ誰にも言わないでね! お姉ちゃんはそうだし花園さんとかも山吹さんも意外とすぐ言っちゃうタイプの人達だからさ、うん、だからよろしくね」
「うん、話さないようにする。ライブ会場つかなくなっちゃうから早くした方がいいでしょ? 取り敢えず駅出ようよ」
明日香のか細い声が可愛い。よし、なんか元気出た。ライブまで張り切って行こう。
暫く談笑しながら歩いているとライブハウスに到着した。
中へ入ると明日香に奥の方に案内される。どうやらポピパさんの楽屋みたいだ。俺は外で待っていた方がいいだろう、完全に異物出し邪魔だ。と思って立っていると明日香に服の裾をギュッと掴まれる。
「ねえ、秀も着いてきてよ。お姉ちゃんとこないだあったんでしょ? ならいいからさ」
「わ、わかったよ。変な事いわないでね?」
「はいはい、お邪魔します。あれ、、Morfonicaの人? 丁度いいじゃん。秀、こっち来て」
「え、あ、うん。あはは……いるんだ。ごめん、明日香俺帰るね」
「行っちゃダメ!! 」
明日香に腕を力強く引かれ抱きしめられる。暖かい、なんでこんな気持ちになるんだろう。透子に似たように抱きつかれた時も妙に穏やかな心境だった。
「秀、大丈夫だから。落ち着けば何も怖くない、私がいるよ」
そう励ましてくれるおかげで少し心が軽くなる。まだ透子の眼を真っ直ぐ見ることはできないかもしれないけれど、いつか胸の内を語れるようになるといいな。
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