訳あり美少女を集めてチームを作ろうとした男の末路   作:たんきー

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脈絡と、まっとうなサイバーパンクをハーブでやいて、ブリを添えたら完成です。
本作はそんな感じ、よろしければどうぞ。


Opening サイバータウンのパンクな一日

 拝啓、現代のWEB小説とか大好きな奴ら。

 俺の名はヒューゴ・ハジメマシテ。転生者だ。君たちに先んじて転生に成功した俺だったが、残念ながら転生の際に神様と会うことはできなかった。

 この時点で嫌な予感はしていたのだが、転生した先はよくあるファンタジー世界デハナク、サイバーパンクな末法の世だった。

 そこはアイサツが大事な感じの世界だ。俺の名字から見ても分かるだろう。ちなみにこの世界の名字はだいたい皆こんな感じなので、少しすれば慣れた。

 

 しかも困ったことに、ステータスオープンと叫んでもステータスは見れず、魔力とかを計測する機械も存在しなかったため、チートと呼べるチートを得ることはできなかった。

 そう、俺は転生ガチャで爆死したのだ。SSR神様転生、SRチート転生はおろか、Rであるやさしい世界ですらなかった。レアリティはノーマル、ハードモード世界転生チート無しだ。

 

 俺は絶望した。

 せっかく転生したのに、チートもなしとかそんなの無いじゃん。あんまりじゃん、ジャンジャンバリバリジャンバリジャン。

 しかし、文句ばかりは言っていられない。転生してしまった以上前世には戻れない。幸いだったのはこの世界が超未来世界だったことで、娯楽や文化は現代よりも優れたものが多く、過去の様々な娯楽にふれることもできるという点だ。

 つまり最低限、文化的な生活ができれば生きていくために不便なことはない。それならいっそチートなんてなくたって、むしろ目立たずにまっとうな生き方ができるというものである。

 いやー目立ちたくない、目立ちたくないなー俺!

 

 さて、ここで少し考えてほしいのだが、いくらチートなしのハードモードな異世界転生でも、転生者っていうのは色々と利点がある。

 何より大きいのが幼い頃に転生すれば、他人とは人生の準備にかけられる時間が段違いであるということ。他の連中がはなたれ小僧だった時期から、将来を見据えて自分の適性を探すことができる。言ってしまえば神童補正。おとなになればただの凡人になってしまうとしても、神童だった頃の経験は活かせる。

 これがまず一点。

 そしてもう一つ、異世界モノの小説で、多くの転生者にとって武器になるものがある。古今東西様々なチートモノ異世界小説が世に出て、そのチートはまさしく十把一絡げ、膨大な種類が溢れているだろうけれど、その根底にあるものは案外共通している。

 

 現代的な感覚だ。

 

 この時代、世界、文化とはことなる価値観から見た独特の視点。差別される種族に対する偏見のなさ、奴隷のような立場に対する親切心。それらは明確にこの世界の常識と異なり、そして多くの場合転生者にとってプラスに働く要素である。

 特にこの世界は、ちょっと普通ではない常識がまかり通る不思議世界。ハジメマシテなんて名字がありふれている時点でお察しだが、トンチキ極まりないバカ世界だ。

 

 俺はそんな中で、幼い頃からこの世界の文化を学び、そして独自の視点で他人とは違う方法で人生の充実を図るべく考えてきた。

 前世では平々凡々、可もなく不可もなくを地で行く人生を送っていたが、この世界では違う。チートでウハウハにはならなくてもいい、ただ他人よりも優れた技能と立場がほしい。

 そんなありふれた野心で俺はこの世界を生きると決めた。

 

 もともとチートなんてあっても、俺は他人よりちょっとまともで、それでいて他人にバカにされない生活を望んだだろうから、むしろそれを自分の力で出来る今は、いっそ健全と言える。

 目立ちたくないのだ。多くの人間に評価されず、一部の人間にだけ評価される。そういうちょっとSUGEE生活を送りたいのだ。

 

 結果、色々考えて、考えて考えて、俺はある一つの結論にたどり着いた。

 

 

 『訳あり美少女を集めてチームを作ろう!』

 

 

 これだ。

 それはもうわかりやすい結論。

 

 なにかといえば単純だ。現在、超未来都市サイバータウンの治安を守っているのは、アイドルと配信者とアスリートと警察とWEB小説の冒険者の間の子のような存在、「パンカー」だ。

 このパンカーというのは、治安を守る警察機構であると同時に、その実力は冒険者のようなランク制で区別され、彼らが戦う姿は配信されるため、アイドルや配信者のような人気商売であるということ。

 

 この「パンカー」を取りまとめるチームのリーダーを、俺は勤めようと考えたのだ。

 残念ながら――もしくは幸いにも――俺にはパンカーとしての適正はなかったが、それらを纏め、運用し、マネジメントするリーダーとしての適正があった。

 ここで言うリーダーとは、つまりアイドルゲームでいうプロデューサーやマネージャーのような立場のこと。なんとなくおわかりかもしれないが、俺はソシャゲのアイドルゲームのように、パンカーを集めてプロデュースをしようと考えたのだ。

 

 どうでもいいけどこの世界、というか超未来都市サイバータウンはコンピューター様が適正を決めた職業じゃないと就職できないという、中々ディストピア感ある仕様だ。やばいぜ。

 

 んで、ここで俺は考えた。俺の感性ならこの世界では普通パンカーにならないような訳あり美少女を選ぶこともできる。選ぶための準備期間も山程ある。

 これが俺にとっての転生チート、神様の贈り物だった、ということだ。

 そうして集まった、俺だけのチーム。人気商売で男がリーダーとかバレたら炎上モノだが、そこは俺が裏方に徹すれば問題ない。アイドルゲームだってバレなければハーレムでも許される。

 まさしく完璧な計画。コレ以上無いほど俺のチートでゆるゆる目立たずそこそこの立場という目標は叶えられる。

 

 そう思っていた。実際にチームが発足するまでは。

 

 ――俺は完璧に準備をした。最高に訳ありなメンツを集めた。中には偶然から付いてくる事になった子もいるが、俺は誰もが目を背けるような訳あり美少女も仲間に加えた。

 ただ、見誤っていたのだ。美少女たちを――というのもあるが、何よりも。

 

 この世界を。

 

 過去に戻れるなら、俺は俺に言ってやりたい。パンカーチームのリーダーになんかなるな。お前が思っているよりも、

 

 

 この世界はずっとずっと、狂気に満ちている――――

 

 

 ――――――――

 

 

 爆発が起きた。

 

 

 超未来都市サイバータウンの一角。サイケデリックな電光掲示板があちこちに散りばめられて、如何にもという表現がよく似合うパンクな町並みに、それとは似つかわしくない無機質な爆発が起きた。

 

 瓦礫をまるごとふっとばし、爆風の中から何かが現れる。

 レースカーを魔改造して世紀末風にしたかのような、正面がドリルになっていて、タイヤもドリルのような棘がついている代物だ。

 如何にも、傾いているというか、ヒャッハーしているというか、そんな車である。

 

 しかし、それ以上の特徴はない車だった。

 

 車には特徴がない。しかし、この場合乗っている人間が特徴的だった。

 少女である。幼い――十代前半の少女であった。流れるような黒髪を、一部だけ編み込んでいて、楚々とした印象を受ける。

 顔立ちもおっとりしていて、胸部が暴力的なまでにでかいことを除いては、とても楚々とした印象を受ける。だが、何よりも彼女を異質たらしめるのは、その服装だろう。

 

 メイド服だった。それもコスプレ用ではない古めかしいメイド服。

 

 ここが超未来都市ではなく、十九世紀頃の欧州であるかと誤解させるような。

 そんなメイド服をきた少女が、今にも泣き出しそうになりながら車を運転していた。

 

 彼女は異質だ。この街の雰囲気から浮いている。しかし、間違えないでほしいのは彼女はこの街にとって異質であるということ。たとえコレが現代だったとしても、棘付き車を運転する旧メイド服の少女は浮いているが――この街はそれ以前に、異常極まりない街なのだから。

 

 ――直後現れたものがある。それらは主に二つに分けられる。

 

 一つは、“シャケの形をしたバイク”だ。それ以上でもそれ以下でもない、シャケ型バイク、超未来都市サイバータウンで二十年以上ベストセラーとして君臨する、傑作バイクである。

 

 もう一つは、黒ゴス姿の銀髪少女。年齢は一桁程度に“視える”。幼い顔立ちに、満面の笑みを浮かべていた。そこから、ギザギザの“牙”が見え隠れする、黒ゴスがアンバランス極まりない野生児の印象を覚える少女。

 

 それらが同時に現れて、黒ゴス少女は、シャケ型バイクを踏みつけて転倒させながら、車へと近づいてくる。シャケ型バイクに備え付けられたイクラロケットや、機関銃が乱舞する中を、それらを両腕で薙ぎ払いながらバイクを踏みつけて迫ってくる。

 

 ――慌てるのは車を運転するメイド少女だ。

 何を隠そう、彼女は別に運転スキルが高いわけではない。むしろ、この場で運転できるのが彼女しか居なかったために、消去法で車を運転しているに過ぎない。

 

 それでも、彼女の運転する車は、そちらに向けて放たれる機関銃とイクラロケットを回避している。ただし、これは外部からの運転アシストによって為されるものであり――

 

 

『おっと、“メイド”くん。“ガルル”が突っ込んでくるぞ』

 

 

 ――それをサポートするものは、外部にいた。

 車の中央に備え付けられたモニターから声がする。そこに、ピンク髪の、魔法少女のような服装をした“二次元絵が現れる”。それらはまばたきをして、生きているように動いて見せる。

 つまるところ現代で言うVtuberというやつのLive2dというやつだ。まぁ、この時代であれば平面の存在ではなく、それこそアニメのように動き回ることもできるのだが。

 

 とりあえず、彼女には中身がある。電子生命体とかではない。運転サポートをしているのも、この魔法少女だ。

 

 そして、彼女の指摘を受けて運転アシストが作動し、大きく車が横に動く。

 直後、“ガルル”と呼ばれた銀髪少女が、車のすぐ後ろに“着弾”した。

 

 彼女の狙いはこの車――ではない。

 

 むしろ、この車を守るかのように、飛んでくる弾丸を纏めて弾き飛ばす行動を見せる。そのまま周囲のシャケバイクに襲いかかる。

 ――彼女は味方だ。暴走しているが。

 

「ひ、ひ、ひ、“ヒメミヤ”ちゃああああん! こ、この後どっちに行けばいいんですかああああああ!」

 

 泣き出しそうになりながら、“メイド”は“ヒメミヤ”という画面上の魔法少女に声をかける。

 

『おいおい、ボクが支援してるんだから、口頭での指示なんていらないに決まってるだろ、“メイド”くん』

 

「で、でもでも!!」

 

『それよりも――――っておい、ちょっと待て? 誰だ今配信でボクのことを貧乳だとか言ったやつ!!』

 

「ああああああああああああああああああヒメミヤちゃああああああああああああん!!」

 

 “メイド”はついに泣き出してしまった。

 一瞬、車体が揺れる。

 更に“メイド”は泣き出して、果たして彼女は今、前が視えているのだろうか。

 

『ちょっと静かにしててくれ! 今レスバトルが忙しいんだ! クソ、誰がクソチビだ! それ以上言っていいことと悪いことがあるんだぞ!? っていうかガルルくんの方がまだ小さいからな!?』

 

「ああああああああああああああああああああああああああああ!!!」

 

『――っておい、ちょっとまてメイドくん。マグロネットワークが暗礁に乗り上げた。支援がおくれな……』

 

 ノイズ。

 

 最悪のタイミングだった。

 魔法少女の体がノイズにまみれたかと思えば、消えてしまった。

 これが何かと言えば、“サポートがなくなった”。ということ、当然運転なんてほとんどできないメイドは、錯乱して取り乱す。

 

 しかもそこに、

 

 

「つーかーまーえーたー」

 

 

 ――――ガルルが、目の前に迫っていた。

 

「ぴっ」

 

 車に、ではない。しかし、間近に。メイドが悲鳴を上げるのが聞こえてくる。

 ――俺は、それを間近で見ていた。

 

 そう、この場にいるのは、銀髪ゴスロリ少女、旧メイド服少女の二人だけ――ではない。後方のシャケバイクにはそれを運転するエージェントが。

 そして車の後方には――俺が。

 

 俺は車には乗っていない。あくまで乗っているのは先述の通りメイドだけだ。では、俺はどこにいる? そもそも、ガルルは何をもって“捕まえた”と言った?

 

 そう、この車はあるものを牽引していた。俺はそこに乗っていたのだ。

 

 何を牽引している?

 端的に表現できる。

 

 

 ――檻だ。

 

 

 俺は現在、檻に入れられて、メイドの運転する車に牽引されて運ばれている。ガルルは、そんな俺の入った檻を捕まえたと言ったのだ。

 そして、檻をその両手で引きちぎりながら、

 

 

「お兄ちゃん、捕まえた!! おてて、食べさせてえええええ!」

 

 

 俺の手を食いちぎろうとしている――!

 

「う、」

 

 ――俺はそれまで、必死に黙っていた。

 何故なら、“悲鳴を上げてはいけない”から。しかし、口を開けば悲鳴と命乞いがマシンガントークしてしまうのは目に見ている。だから、できない。

 黙っていなくてはならない。

 

 しかし、もう限界だった。

 

「うわああああああああああ――――ッ!!」

 

 耐えられない! 怖い、怖い怖い怖い! 目の前で俺を食べようとしてくるガルルも、メイドの危険すぎる運転も、そもそも遮蔽も何もない場所で乱発される機関銃とイクラロケットも――!

 

 何もかもが俺の正気と命を奪おうとしてくる――!

 

 

 ――そうだ、これが俺が過去の俺に言ってやりたかったこと。

 

 

 この世界は正気じゃない。

 パンカーのリーダーが裏方だけをやっていられるはずがない。絶対に“最悪の形で巻き込まれる”。そして、下手をすればゴミクズのように命を落とす。

 

 そんな世界に身を投じるべきではなかったのだ――

 

 

 ――しかし、そんな俺の嘆きなど無視して、世界は俺を逃さない。

 

 

「お兄ちゃん! お兄ちゃんお兄ちゃん! おてて! おてて!! おててー!」

 

 

 ――俺を食べようとしてくる“宇宙怪獣少女”。

 名を、“ガルル・グララララ”。

 

 

『バーカバーカ! ハーゲハーゲハゲー!!』

 

 

 ――通信が回復したことに気が付かず、レスバトルで敗北している“電子少女”。

 名を、“ヒメミヤ・オクライリ”。

 

 

 そして――

 

 

「あっは――――ご主人さまの、悲鳴だぁ」

 

 

 ――今、俺が悲鳴を上げたことで、先程までなんとか正気を保っていた“奉仕少女”。

 名を、“メイド・メイドインアリス”。メイドとは彼女の本名だ。

 

 

 ――彼女たちが逃さない。

 

「おてて――!」

 

『オガクズー!』

 

「ご主人さまぁ、ご主人さまぁ、もっと、もっと可愛い悲鳴をあげてくださいひぃいいいい!」

 

 

 彼女たちこそが、俺の率いるチーム『ディープ・ディアバイン・バーサーカー』の愛すべきトリプルエースなのだ。

 

 ――これは、そう。

 そんな彼女たちに、そしてイカれた世界に囲まれた。

 

 

 ――訳あり美少女を集めてチームを作ろうとした男の末路の、物語。

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