訳あり美少女を集めてチームを作ろうとした男の末路   作:たんきー

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OP Ⅱ

 超未来都市サイバータウン。

 なんともIQが低い名前だが、これは正式名称だ。超未来都市が肩書ではなく、ここまで含めて町の名前なのである。超未来都市サイバータウン。本当にバカみたいな名前だ。

 しかし、この街にはある法律がある。超未来都市サイバータウンを略してはならないのである。普通ならタウンとかそういう呼ばれ方をするのだろうが、超未来都市サイバータウンでは必ず超未来都市サイバータウンと呼ばなければならず、それ以外の名前で読んだことがバレた場合、その場で超未来都市サイバータウンの名前を十回斉唱する必要がある。

 

 なお、これは超未来都市サイバータウンができて最初に作られた法律であり、作ったのはこの街を管理するコンピューター“AGI"様だ。ちなみにアジとよむ。スーパーAI“AGI"。

 制定した理由は、この名前が最高にカッコイイと思うのに誰も呼んでくれなかったかららしい。アホじゃないか?

 

 ところで、超未来都市サイバータウンは管理社会だ。コンピューターが管理している如何にもな街である。人々は職業をコンピューターAGIが定時した適正のある職業の中から選択し、その仕事につく。

 俺ならばパンカーチームのリーダー。俺のチームに所属している面々はパンカーの適正があり、その職業を選んだわけである。選べる職業は複数あるが、それ以外の職業を選択することは絶対にできない。

 そんな感じで俺達はコンピューターAGI様に管理されているわけだが、何とAGI様は休暇すら管理してくる。

 

 まず、俺達が休める日はAGI様によって決まっている。これはAGI様が計算の上叩き出した、もっとも効率的に休養できる日なのだ。決してブラックではないが、適正次第では休みが月に4日しかないなんて人もいるから、ここらへんAGI様は平等に不条理だ。

 ちなみに俺は月に平均十四日。とても多いように視えるが、これにはあるからくりがある。

 

 まぁなにかといえば、俺は今日休みなわけだ。昨日の夜は日付が変わるまで眠らず、起きたのは十時過ぎ。実にご機嫌な休日だな。

 当然AGI様には怒られるような休日だが。

 

 んで、俺は今でかけていた。AGI様は休日においても俺達を管理するが、流石に休日の行動を強制することはない。ただ、“推奨行動”というものは存在する。

 俺の推奨行動は朝八時に起きて早朝ランニング、それから朝食を食べて昼までジムで汗を流して昼は温泉でリラックス、午後は読書や映画鑑賞などが推奨されていた。

 もちろん完全にぶっ千切っている。ここらへんは現代的な感覚がまだ残っている証拠だろう。休みというのは無為で救われていなくちゃダメなんだ。

 

 休むために行動を起こすなんて意識高いやつのすることだぜー!

 

「しかも、今日は待ちに待ったゲームの発売日、俺は自由だ!!」

 

 外出しているのも、ジムに通うためなんかじゃない、ゲームを買うためだ。予約してあるゲーム屋に向かっている最中である。

 

 現在、人類が普遍的にできない技術の中に、空間転移なんてものがある。不可能ではないが、特別な技術が必要になるので、誰にでもできるわけではない感じ。

 何が言いたいかと言うと、移動は基本的に乗り物が必要になる。

 俺は今、その乗り物にのって移動していた。

 

 何に乗っているかというと、ウニである。

 

「チクチクするんだよな……これ」

 

 一応材質は特殊なもので、グニグニ曲がるので痛くはないが、それはそれとして先端は尖っている。移動に使用する乗り物の中でも外れとされる部類だ。

 俺は現在、寿司のレーンのような形をした通路を、他にも様々な海産物に乗った人々とともに移動していた。これが超未来都市サイバータウンにおける汎用的な移動手段だ。

 

 自動走行、目的地を入力したら規定の時間で必ずたどり着くことが出来る。これのすごいことは、このレーンに乗るためのスポットにたったタイミングで乗り物が“生成”されるということ。目的地にたどり着けば乗り物は自壊し、その分のエネルギーは還元される。

 究極のエコ乗り物だ。

 これとは別に、自由に町中を飛び回るエアバイクと呼ばれるものが色々と存在するが、普通の移動でそれを使う人間はそんなに居ない。エアバイクの運用は主にレーンがない場所を移動するためにある。このレーン、超未来都市サイバータウンのどこにでも存在するわけではないからな。

 

 そうして、ウニにのってドナドナされた先には、行きつけのゲーム屋がある。

 この日を俺はどれだけ楽しみにしたか、待っていろよ『ヨコハラ・ドスエ』――! ……え? なんのゲームかって? ちょっとまっててよ興奮しててそれどころじゃないんだから。

 

 と、意気揚々と店を訪れたのだが、

 

 

 木彫りのクマに踏み潰されて店が消えていた。

 

 

「な――」

 

 ――なぜ? クマ? 木彫り? 海産物ですらない? あ、口にはシャケがある、ピチピチ動いてるけどアレはもしかして生きているのか――!?

 

 いや、驚いている場合ではない。この世界の常識として、機械は海産物の形をしているのが常なのでそういう驚き方をしたが、これはつまりその法則に則らない存在ということだ。

 木彫りのクマが数十メートルに巨大化して馴染みのゲームショップを踏み潰しているというのは、なんというかショッキングな映像だが、流石にそれで思考停止していては超未来都市サイバータウンでは生きていけない。

 

 見ただけで、これがどういった経緯でこうなったのかを理解できなくては、パンカーチームのリーダーは務まらない。

 これはつまり――

 

 

『――やあ、残念だったねリーダー』

 

 

 突如、声がした。

 声の主は上から降りてくる。それはピンク色の球体だ。それが俺の目線まで降りてくると、ガチョンガチョンと変形してピンク染めの魔法少女へと変形する。

 この変形過程、正直センスが無いので気持ち悪いのだが言わないほうがいいと思っているので黙っている。

 

「……ヒメミヤかぁ」

 

『おいおいそんな顔をするなよ、ボクが入れば事件の概要がすぐに分かるんだぞ?』

 

 ピンク髪のデフォルメされた三等身のマスコット少女、ヒメミヤはくすくすと笑ってみせる。ちなみにだが、これはヒメミヤ本人ではない、遠隔操作されているSDロボットだ。

 

 ヒメミヤ・オクライリ。

 我がチームの参謀とも言える、電子ハッカーにしてバーチャル魔法少女。ハッカーとしては間違いなく凄腕で、彼女に突破できないセキュリティはないと言われるほどだ。

 バーチャル魔法少女は、要するにVtuberというやつなのだが、ヒメミヤの場合は電子上だけでなく、リアルでもバーチャルであることにこだわっている。本人がその場に姿を見せないのだ。今回もこうしてSD魔法少女ロボを飛ばしてやってきている。

 器用に動く姿は、それこそSDの二次元キャラと言われても違和感はない。

 

『ボクは君に、素敵なお知らせを届けに来ただけだというのに。残念だったね、ゲーム』

 

「言うな……頭が痛い」

 

 ――パンカーとそのチームリーダーは、他の職業に比べて休みが多い。それには単純な、そして切実な理由があったのだ。

 

 

『さ、それじゃあリーダー、休日出勤のお時間だ』

 

 

 不測の事態で休日が潰れるのである。

 そう、今日このときのように――――

 

 

 ―――――――

 

 

『じゃ、最初から振り返ろうか。今日、我らがチーム“DDB”のリーダー、ヒューゴ・ハジメマシテは馴染みのゲームショップに最新ゲーム“ヨコハラ・ドスエ”の購入にやってきていた』

 

「そこから話すのか?」

 

『おいおい、もう配信始まってるんだぞ? いま来たばかりの視聴者のために、情報は正確に伝えないと』

 

「そこに興味があるやつは居ないとおもうけどなぁ」

 

 ――配信。

 パンカーチームは事件が発生した場合、その姿を配信で超未来都市サイバータウン全土に見せる義務がある。これはパンカーチームの透明性の確保と、人気商売としての興行の意味合いを含む、色々と合理的な手法だ。

 この配信はコンピューター“AGI"によって管理されており、公平性が高い。今も数万人規模――ウチは良くも悪くも有名だ――の視聴者がいる。

 

『ちなみにヨコハラ・ドスエはいわゆる“近未来”ジャンルと呼ばれるジャンルでもトップクラスに知名度を誇る“ドスエ”シリーズの最新作だね。売りは何と言っても超美麗グラフィックの主人公、サエヤマダ・ドスエ閣下』

 

「閣下ー」

 

 コメントでも『閣下ー』『閣下ー』と主人公を称えるコメントの波が形成される。色々とツッコミどころはあるが、要するに名物主人公のシリーズ作品で、個人的にはキャラクターとシナリオが好みなのでプレイしている。

 たまに展開についていけなくなることを除けば、良質な作品だ。

 

 なお、これは宣伝である。ヒメヤマはこういうところで余念がない。

 

『そして、リーダーがやってきたこの店は、大衆娯楽を幅広く扱うゲームショップだった。ゲーム以外にも漫画やアニメ、色々とね』

 

 『俺そこに行ったことあるわ……』『まじかよリーダーと同じ場所に居たことあるとかお祓い受けとけ』『ちょっと近寄らないでくださいます?』

 この人達俺を何だと思ってるの?

 

『基本的には店の主人が一人で切り盛りしていたんだが……うん、見た感じダメっぽいね』

 

「リスポーンできるといいんだが」

 

『流石に被害者がリスポーンできないようじゃ、AGI様も壊れてるが……残念ながら今回はそううまくも行かないんだな、これが』

 

 リスポーン。つまり再生である。俺達の記憶他生体情報はAGI様に保管されているので、何かしらの要因で死亡してしまった場合、その情報を元にクローンが作られる。

 もちろん、その死亡が自殺や悪事を働いた結果でなければ、の話だが。

 

 それはそれとして、スワンプマン的なあれやこれやで俺は死にたくない。というか、これが倫理的に許される辺りでこの街の倫理を察するに余りあるな。

 

「何の問題があるんだ?」

 

『彼は知ってしまったがために“消された”からだよ』

 

「……………………そうか」

 

 ――俺は閉口してしまった。

 そりゃそうだ、罪のないゲーム屋の親父が突然殺されるなんて、“知ってしまった”から以外の理由はない。考えないようにしていただけだ。

 

 この世界は基本的にくそったれなので、色々と悪い奴らが跋扈している。それと戦うパンカーの仕事が亡くならないから、食いっぱぐれないということでもあるのだが、それはそれとして色々とクソみたいな世界であることに違いはない。

 つまり、悪い奴らの知られると困る情報ってやつがあって、それを知ったやつはこうして消されてしまうわけだ。

 

 そして、ここで問題が発生する。

 殺された原因が情報であるという事実だ。

 

 何が問題かと言えば、とても単純だ。

 

『店主を殺したのは反大衆娯楽テロリスト“アンチ・ツナマヨネーズ”。通称ツナマヨの連中だ』

 

 ――ヒメミヤ・オクライリは電子ハッカーである。

 彼女に突破できないセキュリティはないと言われている。――この情報は正しくない。

 

 どこが正しくないのか?

 

『連中は、“ダイヤモンドブリ”を所有するブリクラステロリストである、ということを知ってしまったから、ね』

 

 

 “言われている”という点だ。正確に言うとヒメミヤ・オクライリに突破できないセキリティは“存在しない”。

 

 

 あらゆるセキュリティも、秘密も、彼女の前ではすべてが丸裸。

 今、コメント欄ではヒメミヤが発言した際、そこにノイズが被せられたはずだ。彼女は一般人が知ってはいけない情報を発信したのだから。

 コンピューター“AGI"が止めたのである。

 『ノイズ来た!』『AGI様仕事してる!』なんてコメントが流れていることだろう。

 

 それほどの情報を生で知ってしまった俺は――

 

 

 ――直後、木彫りのクマの目が光、俺に向けてビームが発射された。

 

 

「うおお!?」

 

 幸い、察知していた俺はヒメミヤボディを盾に回避、木彫りのクマから距離を取る。

 

「……に、逃げるぞ!!」

 

『ガッテンガッテン』

 

 ヒメミヤが外に出てこないのは当たり前だ。

 彼女は表に出た時点で、あらゆる悪の組織に命を狙われる。絶対に外に出ることのできない少女、それがヒメミヤ。

 ――俺が拾ってしまった、“一人目”の訳あり少女。

 

 今回も、彼女は俺に死に至る情報を連れてきた。

 

 俺がチームのリーダーであるために。知らせる義務にはヒメミヤにあるから。

 

 ああ、わかってる! ヒメミヤを表に引きずり出したのは俺だ! 彼女をパンカーにしたのは俺だ! その責任は俺にある。

 

 だとしても、それがわかっていても、どれだけ承知していたとしても、

 

 

「後で覚えてろよヒメミヤー!」

 

 

『ハハハハ!』

 

 ――文句を口にする権利くらいは、許されているはずだ!

 

 

 かくして俺は休日であるにも関わらず事件に巻き込まれ、木彫りのクマから命からがら逃げ出すことになるのだった。

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