ランサーで第5次聖杯戦争 作:指が痛い人
「……今行く、10分持たせろ」
受話器を戻し、眠気覚ましのコーヒーを煽る。
「クソが、何処のどいつだよ。あの屋敷に奇襲をかけるバカ者はよ」
あの屋敷は普通の泥棒ぐらいなら到底近付けない、それなりの強さの結界が張られてある。そんでもってその結界は常に俺の監視下あり、何かしら変化があればすぐにわかるのだが……こりゃ綺麗に無効化されてんな。まぁ、今回の事を例えるなら異常を伝える事無く。大本の電源をOFFにされた感じだな。 ハァ、おっかしいな。毎回張り直すのが面倒だからと、時計塔にバレたら一発封印される原初のルーン使って構成してる結界だっつうのに……それが無効化されるってどんな相手だよ、全く。
「さて、準備準備っと」
現在
様々な準備を素早く整える。倉庫から大きな筒状の武器である対戦車ミサイルであるプレデターと様々な道具が入ったボストンバックを取り出し、一緒くたに背負う。そしてそれらと一緒に倉庫から出した
「待ってろよ弟子4号、俺がお前を助けてやるからな」
キーを回し、キックスターターで火を入れると独特の駆動音と共にV型四気筒1400──1800ccのエンジンは10年ぶりに獅子の如く怒号を張り上げ、蘇る。
元々これは当時で考えても最高のクラスを誇っていたモンスターマシンであった。けど、母は何を考えたのかそんなモンスターマシンを机上の空論である速度特化、実用性皆無のカスタムを施し、無茶苦茶な代物にしちまっていた。相当俺の母は相当のバイク好きだったのだろうな。普通こんなマシンを乗りこなそうだなんて、そんな人物じゃなきゃ考えないからな。そしてそんなモンスターマシンは受け継いだ当初、大破した状態だった。何があったかは分からないが結構大きな事故でも起こしたんだろ。そんな状態のマシンを勿体なく感じた俺は10年がかりでこれを修理、そして改造を施した。
ブーン、ブーンとスロットルを回しエンジンの調子を確かめるが──この音は上々。何とか動きそうだな。
修理の際一番困ったのは部品だった。改造に使ったであろう設計図は何故か、衛宮邸の蔵内に残ってたからそこは何とかなったがマジで部品確保に苦労させられた。
物自体が初代と呼ばれる珍しい物だったらしく市場に出回ってる部品が比較的少ない。だから、俺は考え最終的には改修にはジャンク品や後期生産された同じバイクの部品を多く用いる結論へと辿り着いた。駆動系には既に手が入れられていた為に大破し、原型を留めてないエンジンやターボチャージャーなどを取り付け、ボアアップした改造品へまるごと交換。フレームも一部追加して事故の後遺症で弱くなったシャーシを補強したりと様々な改修を行った。結果、計算上では330馬力を叩き出す物に変貌した。……血は争えないって事かな?
まぁ、そうすると当然人間では扱えない実用性皆無な物になる。一応リミッターを取り付けて最大機能を発揮できないようにはしてるけど──―よく考えるとコレがリミッター付きの初走行なんだよな……上手く機能してくれると良いけど。
「ま、やるだけやってみるさ」
マウントを蹴って仕舞う。俺はゆっくりとスロットを捻りクラッチを繫げて、このモンスターマシンで車道へ乗り出したのだった。
結論から言おう。母さん、何てマシンに改造してくれてるんだ!
「おらぁ!」
とにかく速く、とにかく曲がりにくい。リミッターを付けて設計図の性能へ近付けた結果でコレだ。もしリミッターを外すと考えると────うん、考えないようにしておこう。ってか何だよVブースト機構って。普通こんなやべぇ機構にツインターボなんて搭載するか、普通!
月明り眩しいこの夜。住宅街の中を爆走するは俺の操るモンスターバイク。操縦性最悪な為に正直迷路みたいな、住宅街を突き進むには向いて無さ過ぎる車両ではあるがそのスピードは予想以上。アイツには10分と言ったがこれなら予想以上に早く、衛宮邸へ到着できるな。
そんな軽く考えたのが悪いのだろう。
「──―ッ! な、何だ今の!?」
胸を刺す様な重圧と魔力の高ぶりが、衛宮邸から強く感じられた。そしてこの感覚に俺は覚えがあった。コレは────
「──―まさか相棒、聖剣を使ってるのか?」
でもなんで。アイツ、何度目かの蛮族退治の際に使ってから何故か、聖剣嫌いになって俺と一緒に湖へと捨てに行ったはずなのに……何で使ってるんだ?
更に速度を上げる為、スロットルを回しエンジン回転数を上げる。残りは直線、コレは急いで確認しないと。スピードメーターは進む速度と比例して変化を続け、既に100キロを突破していた。風景を横流し、衛宮邸の裏に到着。俺はそのままスピードを緩めつつバイクを進め、正面の門へと回り込んだ。
「──―ッ!」
そこには見えないようにしているのか、風を纏わせている聖剣を構えた相棒の姿と赤い外装を纏った外国人。その二人がそれぞれの獲物を構え、一色触発。どちらも雰囲気が普通じゃない事を察するに壮絶な戦いを繰り広げると想像に難くなかった。
ッチ、何が何だかわからないが、状況から考えるにあの赤い奴が敵だろう。そんで相棒は俺の友である衛宮を助けに来たって感じだな。
状況を素早く整理して、優先事項を頭の中で組み換え確定させるとバイクに跨ったまま、腰に下げた筒を肩に乗せ照準器を除き込む。安全装置を外し、後は射線上に存在する相棒を下げさせるだけ。
「そこの騎士、伏せろ!」
「──―ッ!」
一応は相棒の話だと現在は聖杯戦争の真っ最中、真名がバレると不味いと判断した俺は相棒のみ当てはまる役職を叫ぶ、すると反応したのか相棒は素早くサイドステップをくりなし射線が確保できた。それを確認した俺は赤い奴目掛けてプレデターを発射──―するはずだったが。
「佐藤、止めろッ!」
「止めて、翔ッ!」
二人の声で止められ、無意識的に引き金を引く事は無かった。ど、どういう事だ。片方は衛宮の声だと分かるが今の声は────まさか、遠坂チャン?
俺の予想は間違ってなかったようで赤い男、その背後から見覚えのあるツインテールな女子が出て来た。
「よ、よかったぁ。流石にこんな場所でプレデターぶっ放されたら隠蔽しようがないわ」
いや、まぁ。確かにそうだ。こんな住宅街のど真ん中で対戦車ミサイルなんてぶっ放したらダメだわな。
俺はミサイルの安全装置を再度起動させる。それと一応拳銃の存在を確認し、バイクから降りていつも通りのテンションで彼女へ話しかけた。
「や、やぁ遠坂チャン。良い夜だね」
「えぇ、確かにそうね翔。その左手で掴んでる物が向けられる心配が無ければいい夜ね」
いや、Mー16の銃口をこちらに笑顔で向けてる君にだけは言われたくないんですが。
「凛、どうやら戦う雰囲気では無さそうだ。一度その物騒な物を下ろしてはどうだ?」
「えぇー、でもせっかく弾頭を魔法を込めたダイヤで作った物を持って来たのだから、一発ぐらいは撃ちたいぃ」
「え、えらく物騒で豪華な消耗品だな……でもダイヤを弾頭とはちょっとやり過ぎなのでは?」
確かに、そこの赤い人の言う通りダイヤはやり過ぎだと思うぞ。一色告発の状況から一遍、何故かホンワカとした空気が漂って来た。そしてそんな空気の中、空気の読めない必死そうな奴もいる訳で。
「ハァ────ハァ────ハァ……よかった、発射する前で」
お、衛宮さんチッスチッス。無事そうでなにより。見たところ怪我は────多少しかしてないようだな。傷自体は俺の教えた魔術を使って塞いでるみたいだし、問題なさそうだ。
「よぉ衛宮。電話では切羽詰まってた癖に案外元気そうじゃないか」
「お、おう。そうだな佐藤。お前は案外早かったんだな」
「新記録だぜ、俺も5分もかからないうちに到着できるとは思ってもみなかった」
ってか、意外と余裕そうじゃん。こりゃバイク出した意味、無かったかな? ってか、やけに相棒が静かだな……どうしたよアルトリアちゃんよぉ。何時もの乗りはどうしたんだい?
何てふざけた思考でいたのが悪かったのか。
「何故──」
彼女の瞳に。
「ん? どうした相棒、俺の顔に何か変なの付いて──」
彼女が俺へと向けるその瞳に混じった狂気に気付けなかった。
「────何故、生きているんだランサー……いや、サー・ファルシオ。お前は私がこの手で殺した筈だッ!」
そう言って聖剣を俺へと向け、肌を刺す様な濃厚な殺意を向けて来る相棒だった。な、何で?