ランサーで第5次聖杯戦争 作:指が痛い人
「────よく私の前に姿を現せましたね、反逆の騎士」
「────えぇ私もそう思いますよ我らが王よ。だが、何の因果か私達は再び出会い、剣を向ける相手となったようです。そして貴方はお変わりない。相変わらず貴方は頭の固い、
「────ッ」
二人の騎士が剣を突き合わす。片や魔力によって刀身を隠した星の聖剣。片や歴史では王を討った反逆者が扱ったとされる宝剣。
その間にいる俺はピリピリとした空気が肌が刺り、幻痛のように痛い。真相真意の奥底、人類の魂願たる本能の一つ、生存本能が全力でこの場から逃げろと叫びを上げていた。体は恐怖を感じ震え、足は竦み始める。ってか、何でそんな二人の間に俺がいるんだよッ! 俺は百合の間に挟まるブ男じゃねぇ!
両者が刃を突き合わせ、戦いが始まろうとしていた、まさにその時──────
「止めろッ、セイバーッ!」
────衛宮の放った一言、ただされだけで事態は急停止してしまったのだった。
ど、どういう事だ。何故二人は戦闘を辞めて一切動かなく────
「ちょッ! 衛宮君なによ、ソレッ!」
「うおぉ! ふ、増えてる……」
声のする方向へ目を向けて何とビックリ。士郎の腕に見間違いようがない、刻印。令呪が刻まれていたのだった。しかしその形は俺が見た資料や自分の手に刻まれている物ともまるで違い、極めて歪。それは手の甲から二の腕までその刻印は伸び、全体的に広がっている。その数はぱっと見で四画、消えている部分も合わせると全部で6画も存在してようにも見える。でもおかしいな、本来なら全部で三画、それが令呪の絶対条件のハズ。だけども士郎が有するそれは、明らかにそれよりも数が多いよなぁ……やべぇ。なぁーんだ、アレ。令呪がまるで蔓のように絡み合ってらぁ。あまりにも似過ぎて全く関係ない、呪いか呪詛と見分けがつかねぇ。
「っちょ、せっかく今から楽しいドンパチをするつもりだったのに止めるなよー ノリわりぃーぞ、マスター」
「シロウ、止めないでください。私は、私にはこの二人を討たなければならない確かな理由があるのです。だから、邪魔をしないでくださいッ!」
令呪の拘束能力は相当優秀のよう。さっきまで一触即発であった両者がまるで首輪に繋がれたワンコのよう、どちらも衛宮に睨みを利かせながら大人しくなってやがる。そしてその両者に挟まれた俺もワンワンワン、どっか行きてぇがさっきから飛んで来る相棒セイバーからの殺気で足がすみ、動けねぇぜ。
「二人共とにかく頭を冷やせ、後誰か俺に状況を説明してくれ。何が何だかまだ把握出来てないんだ!」
全力で叫び散らかす士郎。その声には明らかな戸惑いや困惑、疑問などの思いが詰まっていると魔眼が無くても感じ取れたのだった。
まぁうん。とりあえず、その困ったら令呪をぶっ放す精神は止めようか。突然の濃厚な魔力の流動は霊脈と常に繋がってる俺にとって、余りに心臓に悪過ぎる。だってビックリするからな。
時は飛んで数分。士郎の説得の会もあって現在は衛宮邸に先程のメンバーで勢揃いし、遠坂チャンによって説明会が行われようとしていた。
まぁその前に後片付けをしなくちゃならないけどな。って事で士郎が行ったと思われる戦闘痕を処理する。
ふむ、コレはガラスそのものをまるごと交換し──―え? なに、どうしたの遠坂チャン。魔術で修復するから問題ない? だって? ……確かに、その方が手っ取り早いな。無意識的にその選択を消してたわ。そんじゃ、ヨロシク。
俺はその間にお茶の準備でも──―おぉアーチャーが準備してくれたのか、ありがとう。そんじゃお先に一杯──―うん、美味い。アーチャーやるな、茶の入れ方が完璧だ。お、士郎ー 茶菓子どこあったっけ? たしかこの前、タイガー藤が買って来た饅頭がどっかに仕舞ってあったダルゥオ。おぉー、そうそうコレだよコレ。この饅頭を、俺達は待っていたんだぁ! あ、セイバー達も食べる?
まぁ、そんな感じで俺はのんびりお茶をしながら、今だに向けられる殺気を躱しつつ饅頭摘んでいるとガラスの修復が終わったのか遠坂チャンが俺の隣に腰掛けた。はい、あったかい物どうぞ。そんでもってさっき台所で見つけた茶菓子だ。
「ありがとう、気が利くのね」
「当たり前じゃないか遠坂チャン、俺に君の事に関してわからない事なんてプライバシーに関する事以外はねぇ」
「……はぁー、認めたく無いけどそのストーカー発言の内容を否定したいのに事実だから否定できないのよね……」
「フハハハハ。俺達の友情、いや愛は無敵さ遠坂チャンッ! って事でコレにサイン頂戴」
「あら大胆な告白ね。そんな事されたら私、何でもサインしちゃう────ってするかッ!」
「トリスタンッ!」
「なんてツッコミ力だ。私でなきゃ見逃す所だった」
「アーチャーもふざけるなぁ!」
ッチ。流れ的に最近メルヴィンから借りた借金の連帯保証人にでも出来ると思ったが無理だったか。麻婆神父から仕入れる黒鍵は意外と高かったよ。そんな風にしていると遠坂チャンは急に真剣な表情へと変わり、おふざけの許さないピリピリとした空気となる。ってか、も────ゴホン。赤いセイバーさん饅頭食い過ぎでは? 全部で三十ぐらいはあったはずなのにもう二、三個しか残ってないんですけど。
「ねぇ」
「なんだい遠坂チャン。士郎なら現在お着替え中だよ」
「それは知ってる。アンタ、さっきからかなりの殺気をあのセイバーから向けられているはずなのに、なんでそんなにのんびりとしてられるの?」
まぁ似たような状況は経験してるからなぁ。ユグドミレニアでの宝具モドキを使った内乱騒ぎにへっぽこロードと水銀少女によって巻き込まれた時計塔での権力争い。妖精の国への不法入国に加えて相棒の墓場での死霊や使途モドキ達相手に戦闘などエクセトラエクセトラ……思えばこの十年で色々あったからなぁ。
「馴れだよ馴れ。ちょっと日本に来る前、色々と、な?」
「馴れって……」
「まぁ色々ってのは紛争地帯や内乱騒ぎに巻き込まれた事だけども。俺はホラ、出生がアレだから仕方ない部分もあるのさ」
知ってるかい。魔術社会において養子は珍しくは無いが、あまりいい顔されないんだぜ。仕方ないね。養子を取るってことは血縁者の中に後継者のいない証みたいなものなんだからさ。もしくは最悪、儀式の生贄候補。
「そういえば貴方のおじいさんって旧姓が────」
「そうそう、今では悪名名高いユグドミレニアさんですよー。時計塔に正面から喧嘩売って大負けしたあの一族の末裔ですよ〜。そんでもって俺はその人の養子で仲間内ではよく異端児って呼ばれてた不幸な少年さッ!」
いやーあの時は大変だった。ダーニック爺さんのご機嫌取りとかゴルジム君の魔術を見てやったり、ドSバァーさんから逃げ回って、ある意味義兄弟の兄妹を相手にしたりとほんっと大変だった。ってか、ダーニック爺さん英霊の影を呼び出し、使徒する宝具なんて何処で見つけて来たんだか。
「……確かあの内乱の後、ユグドミレニアの少年が贖罪の為に様々な戦場を駆け回っていたと聞いた事あるけれど────貴方だったのね」
「正確にはロードの後継者たる人物の依頼でな。そんでもってそんな戦場じゃ昨日の友が今日の敵、昨日の敵が今日の友──なんて展開はザラだったからなぁ……あの水銀女、今度会ったらピーマンの詰め合わせを食わせてやる」
お茶を一杯飲みほし、余韻に浸っていると過去の記憶が蘇る。
あの内乱を収めた代償は相当な額の借金だった。まぁ、仕方ないよね。対霊で一番有効打を与えられる武器は聖堂教会が保有してるし、それを買いまくってた結果なんだから。そんでもってその借金をどうやってか返そうとしていた時にアイツに捕まった。それからなんやかんやあって代わりにその借金を払ってくれて、その代価としてへっぽこロードと共に世界中駆け回ったよなぁ。まぁ、そのおかげで時計塔で沢山の友が出来たから万々歳ではあるがな。プロレス貴族や魔眼少女、キリたんやヘビメタ屁理屈ボーイとかね。
そんな感じで思い出してるとどうやら着替えが終わったようで俺の横に衛宮が座る。が──―うん~空気が重いッ! 主にあいぼ────セイバーのせいだけどなんとも空気が重いですなぁ。
「何を話していたんだ遠坂、佐藤」
「俺の過去話。それと俺の愛をあげるから遠坂チャンに借金の連帯保証人になってもらえるよう説得してた」
「私はそんな愛だけでサインするような安い女になった覚えはな────「ちなみにルヴィはサインしてくれたぞ」……」
突然黙る遠坂チャン。まぁ当然だよね、君はあの子に対してライバル意識凄いもの。あ、あとサインしてくれたのは連帯保証人云々ではなく、司法取引の書類だったりする。昔ドジってフランス警察に捕まっちまったぜ☆
「やめるんだ凛! 一時の感情に流されるじゃない!」
「離してアーチャー! 私はあの女にだけは負けられない、負けちゃいけないのよ!」
ワロスワロス。必死にペンを持ってサインしようと足掻いたらぁ。アーチャーは意地でも止めようとしてて草しか生えませんなぁ。
そんな中、頭を捻っている士郎。どうしたよチミー?
「ルヴィって、誰だ?」
「ダイナミック淑女」
「あぁ、納得。あの人かぁ……」
この前士郎と一緒にロンドン行った時に会ったが、何故か物理的にアタック食らってたもんね。そりゃ苦手意識が生まれてもおかしく無い。アレは見惚れるほど綺麗なコブラツイストだった。
「ってか、あんたって隠してる事多すぎない?」
お、そこに気付いちゃうか遠坂チャン。
アーチャーを何故足下にしてるのかは謎だが。白目剥いてらっしゃる。
「俺は隠し事なんてほとんどないゾ、ただ聞かれなかっただけだからな」
「聞かれなかったからって……なら聞くけど数月前、イギリスに渡っていたのは何で? あと水銀女って誰よ」
「誰って────そりゃお前も会った事あるだろう。ライネスだよライネス、あのクソ女だよ」
アイツには苦労させられた。借金を返すまで俺の身柄は預かったとか、兄さんの手伝いをしてくれよとか、最終的には伴侶になってくれよとか……どこか頭がぶっ飛んでる女だったぜ。あ、伴侶の話は裏の思惑がスケスケスケルトンだったので断りました。まだGoライオンの後継者の方が魅力的に感じるわ! 悪魔の呪い付きだけど。
「ちょ、クソ女って……仮にも次期ロードよロード」
「アイツはクソ女で十分だ。後その数か月間に関しては聞くな、絶対聞くなよ。ただ単にちょっとクソロードの救援に行ってただけだからな……二度と魔眼蒐集列車なんて乗るもんか」
直死の魔眼は流石に物騒過ぎんだろ。何で俺ってばこんなやべぇ物手に入れてるんだ? ……今思い出してもわからん。思い出せるのはマリーちゃんと親友になった事ぐらいだ。マリーちゃん煽るの楽しかったよなぁ……また会いたい。あ、でもサーバントはNGな。時すでに遅しではあるが。
「……何があったかは分からないけど色々と大変だったのね」
うん。ハートレスの旦那に裏切られたのは、ちょっと心に来るものがあったわ。せっかく最近手に入れた、旦那の求めていた心臓を盗んだ妖精の情報を教えようとしていたのに……残念。
「じゃ、じゃ衛宮君との関係! なんで魔術師未満の衛宮君がマスターになれてるのよ!」
「酷い言い草だなぁ……まるで姉弟子みたいな言い分だぁ」
「姉弟子?」
何故か微妙な空気のなる両者と間。俺の両隣にいる両者は見つめ合い、最終的には俺を見て来た。その様子はまるで答えを待つ、学生のよう。
「ありゃ? てか、2人に話してなかったっけ?」
「何をだ……って言いたいところだが、佐藤。俺はなんとなく察したぞ」
「奇遇ね衛宮君、実は私もよ」
お、なぁーんだ。二人も知ってたのかぁー。今までは2人の仲が微妙だったから遠慮してたけど、この様子なら変に取り繕う必要ないな。
「遠坂チャンが三人目の弟子で、衛宮が四人目って二人とも知ってたのかぁー」
2人は俺の言葉を聞いた途端目を見開き、遠坂チャンは口を両手で塞いだが、衛宮は開いた口が塞がらない様子。まぁ、世に言う驚きの表情ってのを浮かべていた。何故? 2人とも知ってたんでしょ。
「わ、私が三人目で!?」
「俺がよ、4人目!? 一体どう言う事なんだ佐藤ッ!」
ありゃ? 別の所で驚いてらっしゃる。どうして?
そんな俺の中で混乱を残しつつ、2人から責め立てられる俺であった。
おまたせー