ランサーで第5次聖杯戦争 作:指が痛い人
「えっと、つまり衛宮君は私の弟弟子。そして私に話していない姉弟子が1人いる……と」
「ぞーでじゅ、だがらびやぐごぉろじで」
現在の状況を二言で説明しよう。
これまでに隠した事が皆にバレた途端目を見張る連携攻撃を食らった後にいつの間にか逆さまに天井から吊るされ、割とエグイ拷問を受けてます。助けてください、このままだと冗談抜きに死んでしまいます!!!って感じだ。
「ッチ、ここまでやってももう一人の名前を吐かなかったか。一体どうしてかしら?」
「あたまにぢがのぼるりゅー」
流石は魔術師の旧家だぜ、自分の疑問を解決する為に拷問も厭わないとは……頭のオカシイ一族は後継者もしっかり血を継いでて俺ちゃん嬉しすぎて涙の代わりに血涙でるよ。
何て考えながらふともう一人の弟子ある衛宮の存在を思い出し、探してみるとチラチラと拷問部屋と大広間を区切るノレンの奥から特徴的な赤毛が……あ、いた。見たところどうやら遠坂ちゃんのアーチャーから聖杯戦争の説明を受けているみたい。何処か真剣な表情でメモ帳片手に頑張って書き込んでるのが霞んだ視界で確認出来た。
「聖杯戦争において召喚されるサーバントは本来なら全七基だ」
「はい! アーチャー先生質問があります」
「なんだね全年齢射程内猿よ」
「ぜ、全年齢……なんだって?」
「ゴホン。すまない、口がスリップした。それでなんだ?」
「は、はぁ。そ、それじゃアーチャー先生質問です。全七基なら今現在、俺の目の前にはセイバーが2人いるんだが……おかしくないか?」
「確かにそうだな、どう見てもセイバーが二人いてイレギュラーだ。何故このような事になったかは各自自分の頭で考えるしか無いだろう……って事で自分で考えろ。この正義の味方(笑)ッ!」
「……」
あ、士郎が何言ってんだコイツ怖ッ!って顔してるーおもしろー。
「コラ佐藤! さっさと私の質問に答えなさいッ!」
「わちゅれてぇーたぁ」
そーだったそだった。俺ってば拷問中だった事をすっかり忘れてたぜ☆
んな感じでぷらーんぷらーんっと吊るされ続けたまま俺はメトロノームのように揺れ、遠坂チャンとOHANASIしてると――――俺の持って来た饅頭を兜越しに食べ終え、沈黙していたモードレ――――赤のセイバーが立ち上がるとその手に乱暴に放置されてあった自身の剣を取る。
「なぁマスター」
眼にも止まらぬ鋭く素早い斬撃。明らかに間合の外であるはずの俺を吊るしている縄を部屋を区切っている暖簾ごと切り裂き見事、俺を床に敷かれてある畳に頭から叩きつけた。クソいてぇ……何故か拷問の途中で食らってたガンド以上に痛い。俺が顔面に走る痛みに悶え、苦しんでいると状況が変わった事を察してか話し込んでいた二人は剣を振った赤のセイバーへと目を向けていた。アーチャーに至ってはいつの間にかその手に獲物を握りしめ、警戒心を露わに彼女を睨いる。あ、相棒セイバーはどうしてるかだって? 彼女は赤のセイバーが立ち上がった時点で衛宮を庇うように立ち回ってるとも。
「そろそろその敵となれ合う茶番は止めないのか?」
ピリピリとした雰囲気がこの屋敷を包む。遠坂チャンも魔術のスイッチを入れたみたいで体から魔力が滲み出ているのを感じる。一気にコメディーモドキからシリアスに移行したこの状況、何故か部外者扱いになっている俺が取れる行動は――――この雰囲気をぶち壊す事だぜぇ!
「ホイホイホイっと」
素早く立ち上がった後アーチャーへ剣を向ける赤のセイバーの前に立った俺。赤のセイバーは"あ?"って感じで首を傾げ、俺を見ている。そりゃそうもなるか、俺ってば事情を知らない人間から見れば単なる一般人だもんネ!
「貴方がヤンチャな性格な事は十分理解したけれど……騎士さんや、一度その剣を置いてくだされ」
……正直思わずちびりそうな程怖い。だけどもこれぐらいの修羅場、前の俺は何度も潜って来たからある意味馴れてるんだよなぁ……嫌な馴れだと俺も思うぜ。
「すっこんでろ一般人。いや、父上と十分に打ち合ってた時点で一般人ではないのか?」
ボク唯ノ男子高校生ダヨー……ってオイ相棒セイバー、その人外を見るような目でこっちを見て来るの止めろよ。モルガンに対マーリン用高速拘束術式の原案を提案した時みたいでなんかヤダ。
「ま、いいや。私がぶっ倒す事には変わりないって事で死んでみるか?」
おっと相棒に気を取られてたらいつの間にかヘイトが俺に……こいつは不味いか? 真っ赤な宝剣、クラレントの剣先を向けられた途端先ほど相対した相棒セイバーと同様の重く苦しい殺気が当てられる。わぁー ぼくちゃんまたもしんじゃぅー
「ってふざけてる場合じゃねぇ。流石に死ぬのはゴメンだネ」
相手は聖杯戦争で呼び出せるサーバントの中で最も強く、最高位と言っても良いクラスであるセイバー。相棒セイバー相手なら何年も一緒に鍛えてた為に今世でも何とか対応出来たけど……相手はあの円卓内でも最強格であるランスロットやガウェインに並ぶとも劣らぬ強さだと評されていた雷鳴のモードレッドだ。生前で尚且つちゃんと槍を持った状態なら兎も角今の俺じゃ三秒も耐えれずに死んじまうぜ。
「そうか……なら抗ってみろよ!」
何時の間にか振り下ろされる宝剣。その光景は俺にとってまるでスローモーションの映像を見てるかの如くゆっくりと迫り来る感じ。当然身体能力が一般人ちょい上ぐらいの俺では対処のしようが無く、久しぶりに死ぬと確信していると――――
「止めろ!」
――――士郎の声が響いた。
「死ぬとか抗うとか――――」
衛宮が何やら言ってるみたいだけど俺の耳には届いてない。何故かと言うと眼前に刃先があって後少しでも止めるのが遅かったら文字道理真っ二つだったからネ!ってか、こえぇぇぇ。今度こそダメだと思ったけどマジで死ぬ直前で笑えねぇよコンチクショウ! もうヤダ。相棒、俺を助けてくれ……あ。
「あ、やっちまった」
俺の心の中で念じた願いはきちんと俺の令呪へと届いていたようでその神秘にて魔術を超えた奇跡、魔法が行使される。
「マスター」
「ッ!」
突然火薬が爆発したかのような轟音と共に火花が散ると俺の視界がグルングルンっと回ったかと思うと多分抱きかかえられてる形で別の場所で立って居た。そしてそれに気付いた俺はふと、抱きかかえてる人物へと目をやった。
「ご無事ですか?」
神性と呼ぶべきであろうか……大広間にて呼び出されたその存在は全てを屈服させ服従させるようなオーラを放ちながらも差し詰め自身の存在を神と語るかのような神聖な雰囲気を醸し出している人、俺の相棒ことサーバントであるランサーの姿がそこにあった。あぁー懐かしぃ、相棒って戦闘モードだとこんな感じだったなぁ……最後に経験したのが随分昔だったからすっかり忘れてたぜ。
「ヒュー」
モードレッドから楽し気な口笛が聞こえる。
「本物の父上もご登場。っへ、面白くなってきやがった」
気合を入れるかのように魔力を高ぶらせる彼女。鎧全体に赤い稲妻が走り、肌がピリピリと痛い。
「ら、ランサー。何でこんな所に……」
「下がれマスター!」
そしてアーチャーはと言うと驚き、そして焦りのような表情を浮かべながら遠坂チャンを庇うかのように立ち回る。凛チャンに至ってはショックが強すぎたのか白目むいちゃってるし……俺の知らない所で何かあったのか?
「な」
そして俺が呼び出したランサーを前に突然プルプルと震え出し、下を向いた相棒セイバー。その様子は尋常ならざる感じで例えるならそう、冷蔵庫にとっていたプリンを勝手に食べられた時のよう……ど、どったの急に。
「なんですかその胸はぁぁぁぁッッ!!!」
……はい?
シリアスな雰囲気から一転、彼女の叫びによってまたもフザケタ事に成りそう。そう、俺は心底思うのだった。
「……えらい美人さんだな」
衛宮よ、今その感想はズレてると思うぞ。