ランサーで第5次聖杯戦争 作:指が痛い人
生徒達が帰宅し人の気配を感じない校舎。学校で指定された門限の時刻も過ぎ、時計は夜の八時を指す時間帯。
結界の起点となる場所を捜索していた私達は魔力の流れを辿り起点があると思われる屋上へと辿り着いた。外へ出てみるとやっぱり日は完全に落ちており、不気味なぐらい物静かだ。
「アーチャー、あなた達ってそういうモノなの?」
【私達は基本霊体だからな、必要以上に魔力を貯蔵する場合はそのような方法を取る者もいるだろう】
調べて分かった事だけど、この結界は肉体を文字通り溶解させにじみ出る魂を強引に集めると言うタチの悪い物で私の腕じゃ解除する事も出来ない異質な物。そしてこの場合集めたその魂を欲しているのは同じく霊体であり、それを糧とできるサーヴァントだ。
「マスターから提供される魔力だけじゃ足りないって言いたいわけ?」
思わず出てしまった声は自身で自覚できるぐらい冷たい声だった。そんな声をぶつけられてもアーチャーは鼻で笑―――
【ふぅ…ふぅ…ブアックションッ!】
……これは笑うと言うよりくしゃみね。サーヴァントでもくしゃみはするんだ。
新しい発見にちょっとびっくりしつつもアーチャーは気にせず、何事も無かったかのように会話を続ける。……アーチャーってメンタルが鋼並みの強度がありそうね。
【魔力に関しては多いに越した事も無い。なんせ多ければ多いほど生前の実力と近しい強さを手に入れる事が出来るんだからな】
ちょっとシリアスな雰囲気ぶち壊れたけど話は戻して、確かにサーヴァントにとって何をするにも魔力は必要となる。特に戦闘となると予想ではあるがアイツの食欲と同じぐらいに消費量が増加する事だろう。そう考えるとこの結界は完成すると理想的な魔力の補給源となるのだろうけれど――――
「……気に入らないわね、アーチャー」
【奇遇だな凛、私も全くの同意見だ】
魔術師になった以上ある程度は目を瞑る事も出来るだろうけれど、少なくとも人の命に対して何とも思っていない外道にまでは成り下がった覚えはない。
だから何としてでもこの結界を何とかしないと。そう思い魔法陣へと手を伸ばし直接分析しているとその瞬間――――何かを感じた。
「ッ!」
そちらの方へと視線を急いで向ける。
貯水タンクの上、私達との距離にして十メートル先上空に立っている。それが放っている存在感は巨大であり、例えるのならば存在そのものが規格外で今までの経験で培った私の物差でも図る事どころか比べる事さえする事が出来ない何か。その様な存在を有す存在がなんの前触れもなく表れ、私達を見下ろしているだなんて信じられない。
「なるほど、貴方達でしたか」
一歩踏み出し月光に照らされ正体を現す。一見青を基調とした現代風の軍服のような恰好だが、何故か騎士を思わせるような凛々しさを兼ね備えている格好をしており、性別に関して言うならばスカートのような物を履いているので恐らく女なのだろう。だが、今はそのような事些細な問題にもならない。
何故なら彼女はここまでの巨大な存在感を全く、誰にも悟らせる事もなく気配を消し、私達の前へと現れたのだから……サーヴァントと言えどここまでの事が出来るって事は実力は多分だけど別格ね。でも納得できたわ。あんな結界を使ってでも魔力を集めるその理由が。
【凛、悪い知らせだ】
【何よアーチャー、今この状況以上に最悪な事って存在するの?】
一触即発の空気の中、更に焦っているかのような声色のアーチャーが語り掛けて来る。
【その悪い状況を更に悪化させる知らせだが知らせておこう。彼女は……恐らく神霊、もしくはそれに準ずる存在のようだ】
【ッ!?】
神霊、それはその字の如く神の霊。本来はこの冬木の聖杯戦争にて絶対に召喚する事が出来ない存在のはずなのだけど……まったく一体誰よ、神霊なんて召喚出来た魔術師は。完全にルール違反じゃないッ!
一歩でも動こうものなら、殺す。帽子を深く被り人相こそ分からないが、そのような念を感じる視線をライムイエローに怪しく光る瞳が鋭く私達の姿を捉えていた。
「……首を垂れ、私に対し跪く事はあっても恐怖し、怯えることはない。赤い外装を羽織るサーヴァントのマスター」
声には何もなく無。まるで人を人として見ていないかのような声に恐怖は加速する。
この状態で怯えるな、ですって? そんなの率直に言って無理ッ。恐怖に怯え、背筋が凍る感覚を抱きつつも考えるが戦う事ではなく逃げる事のみにしか
思考が働かない。
霊体化しているアーチャーが見えると言う事はこんな規格外であってもサーヴァントって事じゃないの。
余りの恐怖に感覚が麻痺してまるで他人事のように考えてしまうがアーチャーの声で引き戻される。
【……凛、私が過去に発言した内容を撤回させてくれ】
【いいわよアーチャー。ついでに言うと私も全く同じ事を考えていたわ】
【サーヴァントとマスター、嫌でも気が合うな】
自身を召喚した術者である私をこの聖杯戦争で最強のマスターと過去アーチャーは言った。けれど、こんな強大過ぎる英霊を前に、お世辞でも自身を最強なんて思えないわ。だって規格外を召喚できる魔術師なんて規格外に決まっている。
目の前の規格外から逃げる為私は、自身のいる置かれている状況を整理する。
少しでも太刀打ちするならまず場所を移動しなきゃ。ここは学校の屋上、落下防止用フェンスに四方を囲まれている。こんな閉鎖空間じゃアーチャーが優位に立ち回れない。瞬時にその事を理解すると何かアクションを起こされる前に私は一目散に校庭側のフェンスへと走った。途中考えるよりも先に回避行動を取ると、先ほどまで自身がいた場所に斬撃のような何かが飛んで来た。
しかしそんな事で一々足を止める訳にもいかず。魔力を左足の刻印へと走らせながら自身の軽量化と重力調整の効果を持つ魔術を一小節で組み上げ、実行。
この一瞬、まるで羽の様に軽くなった体は軽々と進行の障害となるフェンスを飛び越え――――屋上から落下し始めた。
【凛】
体が風圧と重圧で絞られるが関係ない。
「アーチャー、着地任せた!」
【あぁ】
共に落下するアーチャーに着地の衝撃を殺させ、そのまま一度跳躍し飛び上がり広い場所へ。着地と同時に地面に私の足が付くと走り出す。普通の人ならば目で追えないほどのスピードであるにも関わらず―――サーヴァントは当然の如く追い付いて来た。
「何故逃げる」
その瞬間私の背後から強烈な死の気配が漂って来くる。何かしても死ぬ、何もしなくても死ぬ。どうあがいても自身では超える事の出来ない死そのものが近づいて来るのを感じたが、それでも私は足を止めない。だって私は―――1人ではないのだから。
「ッく!」
鉄と鉄とがぶつかり合い耳障りな轟音が響く。アーチャーは無事、私への攻撃を防いでくれたようだ。
そこから少しした距離で急いで振り返り、敵サーヴァントを視界に捉える。追って来た彼女はいつの間にか自身の身長よりも長い、錆びの目立つ古びた槍を手にしており、先ほどからの攻撃の正体はコレだった。槍を手にしているってことはクラスはランサーって言うことよね。
そんな考えを巡らせている私を庇う位置でアーチャーは霊体化を解き実体化する。しかしその右手はよく見ると微かに震えており、手にする短剣は刀身が明らかに半ば欠けると言うより砕けていた。
「アーチャー!」
見つめ合う両者。
その間には濃厚に死を予感させる殺気が充満しており、一歩でも動こうものなら死ぬと暗示しているかのようだった。
「―――ほう」
彼女はまるで面白いモノを見たかのように、唯一見えている口元が笑みを浮かべる。
「私の一撃をただの短剣程度で防ぐか……面白い」
突風を軽く発生させ古びた槍を振るう。
彼女の向ける視線がアーチャーへと降り注がれ、それはまるで捕食者のよう。例えるなら獅子が獲物を見つけたかのような感じだ。
「ランサーの、サーヴァント」
「そちらはセイバー……ではないよう。セイバーであればあれしきの一撃を防いだ程度で自身の宝具を使用不能にするハズが無い」
アーチャーもそれに対して常に警戒はしているようだが、その姿に全くの余裕はなく。隙を見せようものなら一撃で命が刈り取られると本能で理解したようでもあった。両者の間合いは約4メートルほど。ランサーの持っている槍は二メートル近い長さとあの俊敏さを考えるにこの程度の距離、一瞬で詰められるだろう。
「とすると予想するに……なるほどアーチャーか」
ただの予想でアーチャーのクラスが特定されてしまった。それに関して特に問題は無い。けど、勘がいいのか、それとも分析能力が高いのか定かではない為に油断ならない相手という事だ。そうこうしている間にもどちらのサーヴァントも自身の必殺の一撃が確実に入るタイミングを見計らっている。
「自身の得意とする獲物を使えずに負けるのは納得いかないだろう。アーチャー、弓を構えなさい。これは騎士としての情けです」
「―――――」
明らかに自身が既に勝っているかのような発言をしているランサー。それに対してアーチャーは何も答えない。
ただランサーへと殺気を飛ばし、相手の出方を伺っているようにも見える。
何故何もしないのか。という疑問が私の中で生まれつつあったがそこで気付く。
私はバカだ。アーチャーはただ一言、私からの命令を待っているのだ。
「アーチャー、やれるわね」
私はその背に語り掛ける。
「―――もちろんだ、マスター」
アーチャーは当然とばかりに私の問いに答えると疾走する。そしてそれがこの戦いの火ぶたを切る合図となった。
戦闘シーンって難しいけど書き方のコツを掴むと楽しいよね。
原作ルートはどれがいいですかね?
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セイバー
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遠坂チャン