(牙竜視点)
『よお、牙竜&出久。いい戦い振りだったぜ。』
「おつかれさん、エボルト。解説良い感じだったぜ。」
「ありがとうございます!けど良かったんですか?ビルドドライバー使って変身までしちゃって……」
騎馬戦を終えて昼休み、
さっきまで実況席にいたエボルトが俺たち2人に会いに来てくれた。
『良いんだ良いんだ。仮面ライダーってのはLOVE&Peaceのために戦う戦士だ。素質がある奴はどんどん変身しろ。あと差し入れ持ってきたから飲んどけ』
「あ、ありがとうございます」
「オロナミンCか、ありがとよ」
と、エボルトから貰ったオロナミンCを飲んでたら轟が来た。
『よお、轟、オロナミンC飲むか?』
「いや、いい、それより話があるんだが良いか?」
「俺は構わねえぜ」
「僕も大丈夫」
てことで轟から話があるってことで誰もいない通路に呼び出されて轟を囲むように俺、出久、エボルトが立っている。
「で、話ってなんだ?」
「最後お前らは俺の左を重点的に狙ってたが気付いたのか?俺の制約に……」
「制約?それってテメエが左側の炎使ってねえことと関係あんのか?」
「ああ、その通りだ」
やっぱりな、屋内での戦闘訓練でアイツは氷を溶かすために炎を出してたんだが戦闘で1回も使ってるのは見たことがない。
勿論この体育祭でも、だから俺はその隙を狙ったんだが推測通りだった。
『で、どうしてお前はそんな制約を設けてんだ?』
「気になるのは当然だな。お前達なら知ってるだろうが、俺の親父は"エンデヴァー"。万年№2のヒーローだ。お前達が№1ヒーローの何かを持ってるなら俺は……お前達に尚更勝たなきゃならねぇ。」
エンデヴァー
ヒーロービルボードチャートで何年連続だか知らねえけど2位を取り続けてるあの炎出しまくってる奴か。
言われてみればあの人の個性はヘルフレイムって炎の個性だ。
轟が息子ならそれを受け継いでてもおかしくはねえな。
「それってどういうこと……?」
「炎を使わず1番になることで俺はアイツを否定する……」
炎を使わずエンデヴァーを否定…
確かに今の轟からはエンデヴァーに対する憎しみの感情が滲み出てている。それを示すようにあいつが握りしめる拳は震えている。
「否定するって云うけど……それってどういうこと……?」
「人に話すのは初めてだが、教えてやるよ。あの父親男が、俺達にやってきた仕打ちを………」
そこから轟の過去の話が始まる。
「親父は極めて上昇志向の強い男だ。ヒーローとして破竹の勢いで名を馳せたが、それだけに“生ける伝説オールマイト”が目障りで仕方なかったらしい。」
万年2位だもんな、
超えることのできない1位の壁ってのは目障りなんだろうな。
「そして自分ではオールマイトを超えられねぇと悟った親父は、“次の策”に打って出た。」
「次の策?それはなんだ?」
「『個性婚』って知ってるか?」
「それって確か個性第2世代第3世代で流行ったっていう……」
出久によると俺達よりも数世代前に流行ったって奴だな。
まあ、倫理的には大問題だ。
「個性の遺伝を利用して、子供を自分の上位互換にする為だけに配偶者を選んで、結婚を強いる。倫理観の欠如した前時代的発想。あんなのでも、腐ってもNo.2ヒーロー、金と実績だけはあったからな……母さん側の親族を色々手回しして丸め込んで……母さんの"個性"を手に入れたんだ。」
おいおい、No.2ヒーローがそんな事やったらダメだろ。
いくら金があるからって…
完全に欲が出ちまった。
『いや、その理屈はおかしいな。“個性”は確かに親から子へ受け継がれるもんだ。けどその場合『両親の“個性”の内、どちらか一方の“個性”』か、『両親の“個性”が複合した“個性”』になる。つまり、生まれた子供が、『必ず両親の“個性”の性質を受け継ぐ』とは限らない筈だ。ぶっちゃけ、どんな“個性”を持って生まれるのかは運次第だ。』
確かにエボルトの言う通りだ。
上手いこと炎と氷の個性を両方得るなんてよっぽどの運が無いと出来ねえ筈だ。
「ああ、そう言えば言ってなかったか。俺には兄が二人と姉が一人いて、俺は四人兄弟の末っ子。ここまで言えば……分かるだろ?」
おいおい、これ本当かよ…
アイツは家族すらも道具としか見てねえのか……
「記憶の中の母は、何時も泣いてる……。『お前の左側が醜い』と、母は俺に煮え湯を浴びせた。」
アイツの左目付近の火傷跡はそうやって出来たのか……
「その後、お母さんは……?」
「親父が精神病院に入院させた。今もそこにいる。ざっと話したが、俺がお前達に突っかかんのは見返す為だ。クソ親父の“個性”を使わずに、『母さんの“個性”だけで一番になる事』で、奴を完全否定する……ッ!!」
「それが君が炎を使わない理由かい?」
「ああ、そうだ……」
よっぽどオヤジさんのことを恨んでるみてえだ。
こうなるのも当然だ。
「確かにエンデヴァーのことを恨む気持ちはわかるな。同情するぜ、けどアイツのことを否定したいならヒーロー以外の進路を目指せば良かったんじゃねえのか?」
「ッ……」
そもそもエンデヴァーに逆らうならヒーロー以外の道でも良い筈だ。
「けどそれでもヒーローになってオヤジさんのこと超えてえってのはお前の中にエンデヴァー関係無しにヒーローになりてえって気持ちがあるんじゃないか?」
憎しみの感情だけじゃヒーローは務まらねえからな。 多分アイツにはもう1人別のヒーローのビジョンが見えてんな。
「っ…そ、それはっ……」
「本当はNo.1ヒーローになるってのはエンデヴァーの夢じゃなくてお前の夢なんじゃねえのか?」
「俺のっ…夢……」
「お前の過去と呪縛に関して言えんのは"自分の夢を追いかけるなら全力で挑め"ってことだ。」
『ああ、最高のヒーローになるってことは救える命を全部救わなきゃいけない筈だ。だったら妥協はしちゃダメだ。妥協したら救えるもんも救えなくなる。』
「俺の覚悟は……変わらねえよ……」
俺とエボルトの言葉の後に続くように紡がれた轟の言葉は否定だった。
「俺は待ってんよ。テメエと全力で戦える時を」
「僕だって、全力で…」
俺達の言葉を聞かないようにするためかアイツは足早に去っていった。
「正直ショッキングな話だったね…」
「ああ、俺もかなり驚いてる。」
その後俺は出久と飯を食うことになったんだが箸は中々進まねえ。
『おいおい、牙竜よ。確かに重い話だったがこんな時こそ飯食え。』
「そうだな、いっぱい飯食って頑張らねえと。」
俺はガツガツとカツ丼を口の中に掻き込んだ。
そして出久がふと口を開いた。
「なんか住む世界が違うって思った。」
「そうだな、これがNo.2ヒーローの息子の宿命なのか……なあ、出久」
「どうしたの?」
「もしこの後の決勝戦で轟と戦うことになったらアイツの心を救ってくれ……俺も勿論アイツと戦うことになったらそうする……」
「わかった、僕だって気持ちは同じだよ。」
マジでこのA組には救わなくちゃいけねえ奴らがいっぱいいるみてえだな。
轟と爆豪…2人とも強いのに色々と問題を抱えてやがるから相澤先生も胃痛案件だな。
To be continued
次回からトーナメントです。
そして明日は忙しいのでお休みです。