アレス「自己紹介? 俺の名前はアレス。ココの地方の警備隊所属だ。大白魔導士の息子、って言えば期待されがちだが、魔導士的な事は期待しないでくれ」
溜息を一つ吐くと、再び台本を捲る。
アレス「協会について? 今更説明する様なことなのか、まぁいいか。協会っていうのは、冒険者達にクエストを紹介する集まりだ。規模としては地表の人里であれば支部がどこかにあるレベルだから、めちゃくちゃ大きいと思ってくれて良い。魔物とかダンジョンの資源で頼む時に冒険者に直接頼むと、面倒ごとが多かったらしくてな。今でもそういった面倒ごとが無くなっているわけじゃないが、昔話では、冒険者の一人がその仲立ちをしたらしい、それから広がっていって、今の規模になっていったということだ。依頼人からすれば、得体の知れない冒険者を探す寄りかは遙かに楽になったが、冒険者からすれば中抜きは腹が立つ、とはいえ冒険者側も各施設の利用なんかで協会から補助を受けてるんだからお互い様なんだけどな」
喋りながら台本を捲る。
アレス「あれ、喋りすぎたか。フーリがまた何かしでかしたみたいだけど、元気そうならいいか」
村から離れ、近くの街へと辿り着く。そこは冒険者達が集う酒場だ。重厚な木の両開きの扉を開くと、真正面に受け付けがあり、そのまま依頼が張り出されているボードがあり、そしてその奥には幾つかのテーブルがあった。
「こんにちは。初めてのお客様ですね?」
そう言って穏やかな笑みを向けてくれたのは、受付の女性だった。
「あっ、はい。そうです。これから冒険者になろうと思って」
そういうと、荷物をカウンターに置き、受付嬢と会話をする。
「畏まりました。簡単な書類を書いて頂ければ、直ぐにでも協会に登録できますよ。紹介などがあれば、教えて頂けますか?」
その言葉に一瞬迷ったが、悩みを振り払い無いと返答する。
「分かりました。それでは最後に特技を教えて頂ければ、登録は完了です」
「特技?」
フーリの問いに、丁寧に受付嬢が答える。
「はい、言い換えれば職業と言っても良いですよ。黒魔術が得意であれば魔導士、剣を扱うのであれば、剣士。素手での戦闘が得意であれば、拳闘士等。細かい分類はありますが、最初は大雑把な登録でも構いません」
「特技が分かると、どうなるの?」
「お渡しする依頼の方向性が決まります。例えば、探索スキルが高い方には遠方や未知のダンジョンの依頼をお渡しします。希望があれば、受注は可能ですが……他の冒険者の手を借りる必要がありますね」
フーリは頷くと。
「自分の特技に合わせて、他の冒険者からも声を掛けられることもある、ってこと?」
受付嬢は頷いた。
「勿論、協会からお声を掛けさせて頂くこともあります」
納得したという表情で、フーリは答える。
「白魔術を少々、ってことで白魔導士、ってことになるのかな?」
白魔導士と言う言葉に、酒場がざわめく。
「……あれ、何か問題でも?」
酒場のざわめきの理由を受付嬢が説明してくれる。
「はい、魔術は教養の深い方でしか身につける事は出来ないものです。冒険者にも居ないわけではありませんが、基本的には貴族の方や財を保つ人の技術です。黒魔術を用いる方が冒険者になることも稀ですが」
そこまで話すと、かなり酔いが回っている冒険者がフーリに酒を浴びせる。
「修道士様や教会の神父様みたいな人間がこんなところに来る事なんざ殆どねぇのさ! 悪いことは言わねぇよ、痛い目を見る前に帰るんだな!」
ゲラゲラと下品な笑い声を上げる冒険者に、白魔術を唱える。
「ん、何をしやがった?」
フーリは首をすくめる。
「随分と酔っ払っているみたいだからね。アルコールを分解する魔術を掛けてあげたの。少しは酔いが覚めたんじゃ無い?」
先ほどまでの千鳥足が嘘の様に、まっすぐに立っている。
「けっ、いけ好かないやつだ」
そう言ってテーブルの方に戻っていき、席に着いた途端、嘔吐し机に突っ伏した。
「……何をしたんです?」
タオルをフーリに渡すと、濡れた髪を拭き取りながら答える。
「嘘はついてないよ。アルコールを分解する魔術。体内のアルコールが分解されて毒素が一気に溜まっただけ、酷い二日酔いみたいなもん」
手続きを終えると、受付嬢はフーリに声を掛ける。
「それでは、最初にクエストを受けて頂きます。同行する冒険者は決めて頂いてもいいのですが、良ければこちらで手配させて頂きましょうか?」
受付嬢の言葉に、フーリは頷く。冒険者の知り合いは生憎多くは無い。ましてやこの酒場に都合良く居る理由も無い。
「ココさん、キセキさん、お願いできますか?」
ローブに身を包んだ中性的な少年と刀を差した中年が立ち上がった。
「彼らは、B級のギルドの構成員です。協会から優先的に援助を受ける代わりに、登録したての冒険者のサポートを受けて貰ったりしています」
要するに、事故を起こしやすい初心者の保護も受け持つ、熟練者ということだろう。
「よろしく御願いします」
フーリが頭を下げると、二人はそれを無視した。それをフォローするかの様に受付嬢が話す。
「……とはいえ、それが構成員全てに受け入れられている訳では無いですけど」
そこは、人里近くの洞。地下はそれほど深くはないが、場所にしてはマナが豊富だ。比較的に穏やかな気候、生態の中で資材を手に入れる事が出来る。様々な条件が重なった結果、初心者の冒険者に適したダンジョンとなっている。
「ボクらがサポートするから、アンタは好きにやりなよ」
ココは投げやりにフーリに告げる。
そう呟くと洞の近くで、大型の野生動物の唸り声が聞こえる。
「ビッグボア!?」
ココとキセキが臨戦態勢に移る。この辺りではあまり見ないモンスターだ。それに対し、フーリは石を二つ持ち上げると、片方を高く放り投げる。
「一体、何を?」
二人の疑問を余所に、もう一つと投げると空中で石がぶつかり合い、大きな音が鳴る。
「ゴォォアアアァァァ」
大猪が唸り声を上げ、空を見上げた瞬間、フーリは体を滑り込ませ、大猪を打ち上げる。頭を上げた勢いのまま頭は空を向いて、仰向きに倒れる。
「ゴァァァ!」
体を左右に揺らして、起き上がろうとする。
「……正気か?」
左右の揺り幅が大きくなり、勢いよく起き上がった大猪の牙を掴み、その勢いまま首を回す。
「フンッ!」
ゴキンッ
繋がっている首の骨が外れる音がすると、大猪は大人しくなった。
「さぁ、進みましょうか」
洞の中に入ると、横幅は人が二人は入れるくらいだろうか。暗闇に包まれているが、ココの魔術で明かり灯り足下は照らされている。
「やっぱり、黒魔術って便利ですね」
そういいながらガンガン進むフーリには、恐らく明かりが無くても先は見えているのだろう。
「魔力消費はあっても、不意打ちされるのは嫌だからね」
それでも、一定以上の灯りにしてしまえば、敵を引き寄せることにも成りかねない。闇に紛れて、風切り音がする。ゴブリンが放った弓矢がフーリに向かって飛ぶ。
「危ない!」
ココが叫ぶよりも早く、弓矢の軌道を見切り、掴み、投げ返す。
「おっ、当たりましたね」
どうやら弓矢を打ってきていたゴブリンの一匹に当たったようだ。群れで行動していたようで、斧を持ったゴブリンと棍棒をもったゴブリンが突撃してくる。先行してくる斧を持っているゴブリンの顔面に拳を突きつけて撃ち抜くと、続くもう一匹に回し蹴りを浴びせ絶命させる。
「……」
ココが絶句していると、フーリは両手を合わせる。
「何してるの?」
作業を終えて歩き出すとフーリは答える。
「モンスターって言っても、命は命ですから」
奥に進んでいくと、場所は開けて湖のようになっていた。ここでは、植物も生い茂る為、様々なアイテムが手に入る。薬草や魔術に用いられるモノも多い。そうして、幾つか物色している内に、モンスターが現れる。
「スライムね」
水が集まった様な姿の流動的なモンスターである。力もスピードも無いが、物理攻撃の殆どが無意味なため、苦手とする冒険者も多い。ココが攻性魔術の詠唱をする横で、フーリは上着をはだけさせ、構えをとる。
「スライムに物理は……」
ココが話している間に、異変に気付く。フーリの肌に刻印されているのは、魔方陣。深い呼吸に因ってそれらに魔力が流れ、フーリの体に異変をもたらしている。
「一体幾つの魔方陣を刻んでるんだ……?」
風の様な早さでスライムに直進していき、至近距離から拳を振り上げる。
昇り龍
本来物理攻撃を無効化するスライムでも、切られれば分裂するし、殴られればそのエネルギーは伝わる。それが破壊に繋がらず、修復してしまうというだけなのだが、今回の一撃は、修復するまもなく、その細胞全てが飛散してしまうほどだった。
「……これじゃ、死ぬことはなくても、再生まで時間が掛かるね」
クエストに指定された材料と薬草を幾つか。それとココは魔術に扱える素材を幾つか、剣豪はキセキになる鉱石を少し採取して、フーリの初の冒険は終わった。
酒場に戻ってきた時に、受付嬢に盛大に迎えられた。
「お帰りなさい!」
満面の笑みのフーリのその意味を問うと、受付嬢は答える。
「新人の冒険者は最初の冒険で八割は怪我をして戻ってくるんです。見たところ無事のようですし、ちゃんとココさんとキセキさんが守ってくれたみたいでよかったです!」
決まりの悪そうにココが答える。
「いや、ほとんどそいつがやってたけど?」
フーリはココの言葉を否定する。
「いやいや、お二人がきっちりフォローをして下さったおかげですよ。流石に一人だと無傷とはいかないですって」
「クエストは、普通は単独では行かん」
キセキの言葉に、受付嬢とココが頷く。
「まぁ、内容によるけどね。採取とかだと一人で行くこともあるし。ただモンスターが現れるなら単独はあり得ない、常識だね。もう少し常識から教えて上げた方が良いんじゃ無い、ルージュ?」
二人はそれぞれ酒場の方に向かっていった。受付嬢の名前をそこで初めて聞いた事に気付くフーリ。
「これが、今回の報酬です。全体の額にココさんのギルドに渡す分を差し引いて、そこから三等分になりますね」
実際にフーリが手に入る金額は、真面目に薬屋をしていて何ヶ月もかかる額だった。
「……こんなに?」
フーリが首を傾げるのを、ルージュが笑う。
「常に危険と隣り合わせの報酬です。そして、そこで手に入る資源はとても貴重なモノです。今回のモノもそうです」
そう言うとにこやかに、金貨を手渡す。
「最初の報酬は、何に使われますか?」
受付嬢の言葉に、笑顔でフーリが答える。
「とりあえず、ココさんとキセキさんのテーブルにお酒を」
読了ありがとうございました。
これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
あ~、カフェインが染みるぜ(コーヒー中毒
休日使って何やってんだろうって思う時あるけど、ゲームか寝るかしかしてないからま、いっかってなる(駄目人間
それではまた、明日以降の暇時に。