異世界転生で白魔導士   作:3148

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手を前に合わせて、一礼をして台本を開く。
ルージュ「初めまして。協会の受付嬢、ルージュと申します。冒険者の申請、クエストの受注及び報酬の受け取りなど、何でもご相談下さいね」
爽やかな笑みと共に、台本を捲る。
ルージュ「今回は、はいギルドについてですね。協会も冒険者の組織ではありますが、小さい規模と考えても間違いではありません。但し、目的が違う事も知っておいて貰いたいですね。ギルドは団長等、構成員同士の協力を目的とした組織になりますので、殆ど横の繋がりと思って頂いて大丈夫です。要するに、クエストに向かう際、毎回メンバー探しは面倒、という人達が「次はそっちのクエストを協力するから今回手伝って」という集まりになります。或いは目的が同じ人達が集まることもありますが、クエストの取り合いになりがちなので、こちらはギルド間の協力で成り立つ事もあります。規模も様々で何百人と冒険者を抱えているところもあれば、定員三人ギリギリの所もあり、様々です。貴方の希望にあうギルドがあれば、協会からの紹介も致していますので是非お尋ねをお待ちしております」
台本を細い指で捲る。
ルージュ「お時間になりました。それでは、協会からフーリさんが白魔導士として派遣されたお話をご覧下さい」


第十話 冒険者達

 それから、幾つかの冒険をこなすと、フーリも一端の冒険者と認められる様になった。

「それじゃ、よろしく」

とある三人組の冒険者の組に呼ばれて、フーリは合流する。

「よろしくじゃねぇよ。なんでこんな役立たずがついてくるんだ?」

その内の剣を担いだリーダーが毒を吐く。

「役立たずじゃありません。フーリも立派な白魔導士です。今回は遠方への冒険ですので、必要と判断された人員を配置するのも教会の仕事ですから」

ルージュを一度睨むとリーダーは振り返って馬車へと向かう。三人の内、大人しそうな男性がフーリに話しかける。

「ゴメンね、リーダーは気難しい人だから、誰にだってああいう態度をとっちゃうの」

フーリは気にしないと返す。

「余所者だもの、誰だってそうなるわ」

 

 そこは延々と広がっている様にすら見える砂漠の中心。或いはその終点。そこは砂だけで無く、全てを呑み込み続ける。

「この流砂の奥に、ダンジョンがあるのね」

三人組の二人は、明らかに血の気が引いている様だが、リーダーは気にせず飛び込む。それに続いてフーリも流砂に身を任せた。

「ちょ、ちょっと待って下さいよ!」

冒険者が四人、砂と共に呑み込まれていく。

 

 「中は、意外と広いんですね」

フーリが呟き、目の前に広がる木々に目を向ける。

「マナの量が違うからだ。ここでは地表と生態系が全く変わる。大体のダンジョンで同じ事が言えるけどな。有り難いことに、この場所は、マナが発光性を持ってる」

マナの影響で、灯は必要ない。普通に太陽があるのと同じくらい明るい。だが、それに伴って他のモンスターも気性が荒いのも多い。必ずしもダンジョン全てが暗い訳では無い、今回の様に明るい場所、薄暗いが見えない訳では無いという所が比率としては多い。だが、もっと極端な場所もある。

「光に目を焼かれずに済んだのは幸運、ってことね」

明るすぎる場合、真っ暗な場合、どちらも行軍は困難な場合が多い。だが、人間が活動しやすいということは、他の動植物にとっても環境は同じということだ。

「足、見せて貰える?」

フーリの言葉に大人しい男性が指示通りにズボンをまくる。

「そんな小さな傷、治すまでもねぇよ」

フーリは首を横に振る。

「どんな時でも、コンディションは万全にしておくべき。折角マナが濃い場所にいるんだから、白魔術を出し惜しみする必要はないわ。それに、傷口から細菌が入る可能性もある」

治療に使う時間は僅か、だがその度に足を止められるのに文句を言ったのだろう。リーダーの機嫌は先に進む度に悪くなっていく。

「ありがとう、でも大丈夫」

リーダーの様子に驚いたのか、大人しい男性が歩き出そうとするが、フーリは止める。

「駄目、先に進めば治す時間が取れる保証は無いの」

フーリの迫力に圧されたのか、大人しく傷が治るのを待つ。

 

 階段を降りきった時、周囲の雰囲気が変わる。

「これは……目的が近い?」

大気中のマナが濃くなった事は、冒険者四人が気付いていた。その中の違和感に気付いていたのはリーダーとフーリだった。

「ゴブリン……キング級ね」

所々に錆び付いた巨大な剣を引き摺るのは、緑色の肌をしている、人型のモンスター。但し、大きさは優に三メートルを越している。四肢の太さは、人間のそれとはかけ離れ、腕を振るうだけでも死を覚悟しなければならないだろう。

「俺が前に出る。援護しろ」

リーダーが剣を構える。その後ろに弓を構える大人しそうな男性、更に後方に女性の魔術師が構える。大型モンスターと対峙した時の陣形だ。

「よろしく」

フーリは弓を構える男性と魔術師との間に陣取る。ゴブリンキング相手に打撃では相性が良くないからだろう。

「オラァ!」

リーダーが振るう剣が、ゴブリンキングの腕を捉える。出血はあるが、大きなダメージとは言えない。

グゥァアアア

ゴブリンキングが唸り声を上げ、大剣を振り上げる。その一瞬動きに隙が現れ、それをついてリーダーは避ける。

「リーダー!」

大人しい男性が弓を射ると、ゴブリンキングの眉間に当たる。鏃は分厚い皮膚に遮られるが、注意は大人しい男性の方に向く。

「任せろっ!」

深く踏み込んだ一太刀は、膝裏の皮膚の薄い部分を深く切りつける。腱まで届いたのか、暴れる様子を見せながら膝まつき両腕を地面につく。

「凍て付く風 氷の土 舞い狂う氷雪に 彫像と化せ」

魔術師の詠唱が、ゴブリンキングの周囲の温度を急激に下げていく。足下から氷付いていき、最後には氷付いたゴブリンキングは身動き一つ出来ない状態になった。

「へっ、他愛ないぜ」

剣を担ぎ上げ、リーダーは先に進み、階層の奥でゴブリンキングの住処を見つける。

「わぁ、色々ありますね」

魔術師の女性が声を上げる。魔石や稀鉱石、年代物の武具や書物などもある。

「こいつが持っていたとは考えられんな。襲った奴が持っていたものを溜め込んでいたのか、或いは手下達から巻き上げたモノか、だな」

財宝を抱えて、一行は教会へと向かう。

 

 リーダーが協会に報告すると、激昂する。

「なんだぁ、この金額は! 何もしてない白魔導士にこんなにも渡さなきゃいけないのか!?」

酒場中に響き渡る大声に、ある者は驚き、ある者はいつものことだと呆れていた。

「冒険に同行する白魔導士に支払われる金額は、協会の取り決め通りになります」

受付嬢とのやりとりに納得出来ない様子のリーダーに割って入るフーリ。

「いや、割り引いて貰って良いですよ。今回は本当に何もしてないですし」

フーリが吐いた言葉に、受付嬢が激昂する。

「よくありません! これは、貴女が正当に受け取るべき報酬なんです!」

声を荒げたことに、フーリは驚く。冷静を取り繕いルージュが続ける。

「それに、値下げを認めれば、他の白魔導士達にも影響が出ます。そうすれば全体数の減少にも繋がります」

フーリだけの問題では無いと、説明するとリーダーも機嫌が悪そうに引き下がる。

「わ、わかりました」

フーリの驚いた顔を見て、ルージュが溜息をつく。

「はぁ、そこまで来ると嫌味にも見えますね。少しは自分の価値を理解して欲しいですよ」

報酬を手渡すと、フーリはらしくない小さな声で返事をする。

「善処します」

 

 ルージュが酒場にいるフーリに声を掛ける。

「あ、すみません。出来れば協会からの依頼は断って貰えませんか?」

テーブルに座って食事を楽しんでいたフーリが聞き間違いを疑って聞き返す。

「協会からの依頼を断るの?」

フーリの言葉に、ルージュが頷く。

「山岳部の農村の近くから、ワイバーンの出現が確認されました。目撃例の数から、恐らく繁殖期のワイバーンの巣が近くにあると思われます」

ワイバーン、翼竜種の一番数が多いモンスターだろうと言われている。は虫類に近い硬い鱗と、全長と同等の大きさの翼をもち、飛行能力に長け、牙やツメで捕食活動を行う肉食獣である。

「げっ、やばい奴じゃん。大丈夫なの?」

ルージュは否定する。

「大丈夫では無いです。協会からはできる限りの冒険者を総動員して事態を収束させる必要があります。早期に解決しなければ問題は悪化する一途ですので」

フーリはルージュの態度に違和感を覚える。

「それなら尚更、私は行く必要があるんじゃない?」

自身の腕を過信して、と言うわけでは無い。猫の手も借りたいという状況のはずなのに手を貸すなというのは、どういうことだろうか。

「前例はいくつかあります。表層付近に巣を作るモンスターはワイバーンだけではありませんから……しかし、それらの災害が発生した際、例外なく多大な損害を人間側が被って来たのです」

ルージュの言葉が震えている様に聞こえた。フーリは確かに、ルージュの動揺を感じ取っていた。職務と正反対の行動をとっているからなのか、発生している災害の規模に怯えているのか。

「再起不能になった冒険者も、数多くいます。これを機に協会からの所属を離れる白魔導士も……少なくありません」

ただただ、ルージュはフーリの身を案じているのだ。見ず知らずの誰かの命よりも、フーリの安全を優先したいのだ。実際に協会から指令が降りれば、フーリも他の白魔導士も例外はない。そうなる前に、フーリに断って欲しかったのだ。

「そう、そんなに危険なんだ」

ルージュの話を聞き、クエストの危険度についてフーリは頷いて理解した。

「行くよ、心配してくれてありがとう」

 

 馬車の中で揺れていると、出発前に頬に受けたビンタがまだ痛む事に少し罪悪感を覚える。

「あぁ、着いたよ。早く降りてくれ」

馬車の運転手が、フーリを急かす。

「まぁ、そりゃそうか」

既にワイバーンの行動圏内入っているのだ。馬車の運転手からすれば既に気が気でないはず。むしろ、よく馬が逃げ出していないと感心するほどだ。そう思いながら、馬車から降りようと足を伸ばすと、何かが足を掬い無様に地面に転ぶ。

「ふぎゃっ」

珍妙な悲鳴を上げて転んだ地面から見上げると、馬車の屋根部分が大きくツメの形に引き裂かれているのと、ハルバートを担いだ壮年男性が立っているのが見える。

「おう、嬢ちゃんが白魔導士さんか。頼むぜ、現場はもうしっちゃかめっちゃかだからな」

一瞬だけフーリの方を見ると、折り返してきたワイバーンを切り伏せる。地に落としたワイバーンの首に一太刀浴びせると、フーリに向かって笑顔を向けた。返り血を浴びた笑顔で男性はイェーガーと名乗った。

 

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風

ファイアパンチ最高!ファイアパンチ最高!
藤本タツキは天才!藤本タツキは天才!
……でもスターウォーズは未視聴なんだよなぁ

それではまた、明日以降の暇時に。
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