異世界転生で白魔導士   作:3148

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どれだけ時間が経っただろうか、漸く刀を調整する顔をあげて台本に目を落とす。
キセキ「……自己紹介? 冒険者のキセキだ」
言葉を短く区切る。
キセキ「今回は、勇者か。勇者というのは冒険者の一部だ。これという決まりがあるわけじゃ無い。あるのは一つ、過去に功績を残した者がその栄光を称え、勇者と賞賛する、それだけだ。誰が決めるということはない、協会やギルドも否定も肯定もしない、ただ自分が名乗る者に関しては、気をつけた方が良いだろう。詐称目的の者も少なくないと聞く」
話を区切ると一息つく。再び台本を捲るとほっとした表情だ。
キセキ「話は終わりだ。後はフーリの働きでも見ていくと良い」


第十二話 ワイバーンと辺鄙な村 下

 「助けて下さいっ!」

自分よりも大きな男性を担いだ青年が入ってきた。フーリが駆けつけると、片腕が無く既に体温も低く、脈もなかった。

「俺を助けて、先輩がっ……ここなら助かるかもって」

手の施しようもない状態だった。せめてまだ息をしていれば、だが言葉にせずに男性に黒い布を巻く。

「この人を連れて奥へ。青年は休憩所に連れて行きます」

周囲にいた村人に男性を預ける。

「あ、あのっ……」

「安心して任せて下さい。貴方も傷と疲労がありますので、治療してから休んで……ね」

そう言うと連れて行かれる男性を心配そうに見送る青年。極端に疲労し、たどりついた此処で気が抜けたのか、放心したような状態で休憩所へと連れて行く。

 

 「……ひっ」

 運び込まれてきた患者は腹部が大きく損傷している。恐らくワイバーンに噛みつかれたのだろう。肉を削がれ、内臓が見えているが、欠損しているのは血管と肉だけで、致命傷ではないらしい。

「ただ出血は酷いから、直ぐに血管を塞がないといけない。縫合はこっちでやるから、死なない様に回復術式で体力の回復と、傷口の消毒を御願い」

そういうと、殺菌したピンセットと縫合用の糸と針に手をつける。

「……助かるの?」

回復術式を唱え、体力の維持に努める。だが、それに合わせて血管からの出血が増える。

「回復術式はそのまま、縫合が終わるまで続けて! 傷口の消毒を、感染症にならない様に!」

フーリの言う言葉通りに動く。溢れた血を拭き取るために清潔な布をとろうと振り返ると、いつかの子供達がそこに居た。

「はい、布!」

「頑張って!」

自分が助けた命が、繋がっているのだ。自分がやっていることの意味が、少しだけ理解出来たかも知れない。ふと感じて泣きそうになるのを堪えて、フーリの手伝いをする。

「縫合完了! まだ、しっかりと繋がっていないから回復術式を一旦抑えて!」

回復術式の出力を抑えると、血流が静まる。その一瞬でフーリが別の回復術式を唱える。血管と肉が再生していく。

「傷口は回復した。あとは、黴菌が入らない様にガーゼと包帯を! 体を起こすから巻いてくれる?」

「は、はい!」

力強く上半身を起こすと、傷口にガーゼを当て、包帯を巻き固定していく。

「よし、これで処置は完了だね」

そう言われると、戻ってきたイェーガーに処置した患者を任せて、次の患者に向かう。

「わ、私も手伝います!」

今は、今だけは考えるを止めて行動をしていたかった。

 

 ワイバーンが襲撃してきてから一週間、フーリが来てから四日目。

「おい、女王を討伐したって連絡が来たぞ!」

大声で野戦病院に響き渡る。それは、人類側の勝利だという報告だった。

「やった……やりましたね、って、あれ?」

クレアがよろこんでいたら、フーリとイェーガーが出発の準備をしている。

「あ、あの」

「それじゃ、ここは任せるね」

肩に手を置かれ、そのままフーリは去ってしまう。

「いや、あの……まだ患者さん一杯……えー!?」

 

 野戦病院を出て、ワイバーンが出てくる洞穴に向かいながら話す。

「おう、女王が死んだなら、残りが一斉に出てくるはずだ。そいつをなんとかする案はあるのか?」

イェーガーはハルバートを肩に持ち、首を鳴らす。

「これで勝ったも同然なんだから、怪我人減らす方が楽になるでしょ。いけるいける」

そう言うと、フーリは白衣を脱ぎ捨て、肩を鳴らす。

「へいへい、それじゃいっちょやりますか」

 

 洞穴の中からワイバーンが飛んでくる。

「行ったぞ!」

その内の一体が、フーリに向かって飛んで行く。真半身に構え、露出している腕と足に魔方陣が光る。ワイバーンが飛ぶ角度に合わせて正確に正拳が頭部捉え、一切力が分散されず、首の骨が折れ、首があらぬ方向に曲がる。

「ワイバーンは鱗が硬いが、軽く脆い……とはいえ、拳一つでああなるものかね」

ハルバートでワイバーンをたたき落とし首を切る。

「爪や牙の傷を見れば、攻撃のパターンも見えてきますよ」

フーリは冷静というよりは、感情のブレが見えなかった。淡々とワイバーンを殺していくその姿は、余りにも普段と様子がちがいすぎる。身動きを封じて、首を折る。その姿には、殺意しかなかった。

「おっそろしいな」

 

 ワイバーンクイーンを討伐した冒険者達は急いで村へと向かっている。

「ど、どうして? こんなに急いでいるの?」

魔導士が戸惑いの声を出す。冒険者達が知らないのも無理は無い。ワイバーンの牙や爪、飛行能力が有名でも生態系まではそれほど知られていない。女王を失った群れは統率を失い、個々に活動する様になる。寿命等で女王を失った場合、新たな王を決めるために争い合う事もある。ある程度に別れ、それぞれで群れを再形成する個体も存在するが、今回の様に女王が巣を形成している時に死亡した場合、行動は一定している。

「女王を殺した種族に対し、強い警戒心と闘争心を抱く様になる。今回だと俺達、人間だ」

勇者の言葉に、武闘家が疑問を浮かべる。

「俺達が狙われることに何の問題があるんだ? 女王クラスならいざ知らず、そこらの雑魚が来たところで……」

そうして気付く、女王を殺した勇者一行がそれ以降ワイバーンに襲われていない事に。

「あくまで、その種族に対して、だ。奴らは女王を誰が殺したかなんて、判別がつかないのさ」

弓手が呟くと、勇者が苦虫を噛み潰した表情で呟く。

「村が危ない! 急ぐぞ!」

そう叫んで勇者は洞窟の入り口に向かう。遠くからでもワイバーンの鳴き声耳に入り、戦闘になっていることが分かる。

「大丈夫か!?」

 

 低空を飛んで襲い来るワイバーンの首にかかと落としをたたき込むと、衝撃で跳ね上がった尻尾を掴み、上空を飛んでいるもう一匹に放り投げる。上手く飛べずに地上に落ちるワイバーンの腹部に、フーリの貫手が刺さる。

「やはり、腹部の鱗が無い部分は柔らかい」

貫手を抜くと、そのまま臓物もついてきた。程なく二匹とも絶命する。背後を襲おうとする個体の牙を半身で避け、肘と膝で胴と首の付け根を挟み撃ち、首の骨を外す。

「おい! 勇者様が戻ってきたぞ!」

洞穴の入り口の方から叫び声が届く。その声を聞くとフーリは翻す。

「おっ、どうした?」

イェーガーがフーリに尋ねると、手を振って野戦病院の方に戻っていく後ろ姿が見えた。

「勇者が戻ったなら、戦力は足りてるでしょ。あっちが心配だし、あとは御願いね」

勇者と魔導士の広範囲の魔術があれば、有象無象の雑魚は一掃される。これでワイバーン殲滅戦は人類側の勝利に終わった。

 

 遠くで人の声が聞こえる。祭り囃子の音ともに。時間はもう夜だが、それでもその騒ぎが収まる気配はない。

「おう、嬢ちゃん達まだいたのか」

イェーガーが祭の料理を両手一杯に持ち、野戦病院ののれんをくぐる。

「そりゃそうでしょ。皆帰っちゃうし、誰か居ないとこの村の人達誰が治すの?」

フーリがへそを曲げる振りをする。実際の所、他の白魔導士達にはそれぞれのチームやギルドがある。今回の依頼は村の護衛とワイバーンの群れの撃退。それら全てを完了した以上、彼らがこの地に留まる理由は無い。

「そうかい、それじゃ個々にいる物好きは、嬢ちゃんと……おや、もう一人いたか」

クレアがフラフラとした足取りで歩いてくる。

「あれ、祭に行ってたんじゃなかったんですか? こっちは一通り終わったんで、あとは経過観察で大丈夫です~」

ベンチに腰掛けると、フーリとイェーガーも休憩を取る。

「凄かったんですよ。来てた白魔導士さん達は皆、フーリさんに挨拶をして帰って行ったんですから」

来てないのは勇者組の白魔導士さんぐらいだと、クレアは言う。

「そりゃあ、とんでもない奴が来たって、冒険者組でも噂だったからな。まぁ、そいつらは祭の方に行っちまっているが」

イェーガーは、酒を煽る。

「……え、依頼って完了してたの?」

フーリの一言に、二人が驚く。

「……内容見てないんですか?」

「いつまでだと思ってたんだ?」

そう言われると、考え込んでしまうフーリ。

「いや、治療に夢中で依頼のこと忘れてたわ」

そもそも、それ以前の話だった。

「はっはっは、面白いお嬢ちゃんだ!」

そういうとイェーガーは更に料理を勧める。

「それで、そっちの白魔導士さんはどうしてまだいる?」

クレアは、目を伏せると俯いたまま話を始める。

「フーリさんと、話をしたかったんです」

フーリが、首を傾げる。

「私と?」

クレアが力強く頷く。

「どうすれば、貴女みたいになれますか?」

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風

ブリーチはいいぞ(唐突
虚圏編とか、破面編とか、オサレの塊みてぇなモンだからな。
お前が、かぁちゃんの腹ん中に居る時からや、って言いてぇな(予定無

それではまた、明日以降の暇時に。
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