異世界転生で白魔導士   作:3148

15 / 41
丁寧な所作でお辞儀をして、椅子に座り台本を開く。
コポン「皆様初めまして、コポンと申します。以後お見知り置きを」
一息ついて、台本を捲る。
コポン「今回は、海について、ですね。余りに大きなくくりでどう説明したものか……というか、私も地表に来るまで数える程しか海を見たことがないので。亜人ですので、生まれはダンジョン内部です。海は地表を覆う形であり、地表とは比べものにならない量の水で構成されています。ダンジョンでも海を見られるのは、地下で繋がっている場合があります。そして、多くの場合は湖を形成し、飲み水として貴重な存在になることが多いですね。そうです、湖を経由して海を、内部から見たことはあります、凄く短い時間だけですが……暗く深い闇の広がる景色は好ましいとは思いませんでしたが、地表における海は、違うみたいです」
フーリとの思い出を大切に思い返し、ゆっくりと台本を捲る。
コポン「海について多くを語る知識はありませんが、フーリさんの物語で少し、分かるかも知れませんね」


第十四話 白魔導士、孤島へ

 

 酒場に戻ると、いつもの活気が一瞬で静まりかえる。

「あれ、どうしたの?」

フーリが静まった酒場で言葉を発するとルージュが飛びつくような勢いでフーリを抱きしめる。

「お帰りなさい! 聞きましたよ、大活躍だったんですね!」

ルージュの喜びように少し驚くフーリ。

「そんな、活躍って……そんなに?」

「勿論です! ワイバーンの巣から村を守り切るなんて、そこらの冒険者じゃ出来ませんよ! それに、応援に出て貰った白魔導士さんほぼ全員から貴女の名前を聞くほどです!」

「そうだな。こんな事はかの大白魔導士以来といっても良いかもしれん。なんにせよ、君に感謝を述べたいと思っていてね」

そっと横から現れた男性に、フーリは疑問府を浮かべている。

「……誰?」

静まりかえった酒場で、ルージュが驚きで固まっている。他の面々も驚いた表情をしている中、ココが口を開いた。

「ラルフ=ルドルフ。協会の会長、つまり協会で一番偉い人さ」

「へぇ……ってえぇ!?」

 

 ルージュとフーリとテーブルについて、ラルフと向き合う形で座っている。

「ほぅ、あの大白魔導士の弟子というのは本当だったのかい? いやぁ、あのプイが弟子をとるとはなぁ」

ははは、と笑うラルフに、愛想笑いを返すフーリ。緊張でがちがちのルージュに助け船を望むべくもなさそうだ。

「……どうしてこんな辺境の地に?」

フーリの疑問に、ラルフは手に持つ飲み物を開けて、もう一つ注文をする。

「言っただろう、まずは君に感謝を。本来であれば依頼内容の範囲を大幅に超えることをしたのさ。そのおかげで人的損失も少ないし、人が住んでいる地域付近の魔物に対して有効な対策を打てているという実績を創ることもできた。これで二の足を踏む地域へと進出の足がかりにもなる」

という建前も勿論あるのだが、と前置きをすると。

「君がどんな人間か、直に見ておきたかったのだ。噂を聞く限り無法者という事はなさそうだったが……安心と同時に心配にもなる」

単独で行動する冒険者は少ない。チームやギルドを組んでいるものがほとんどだが、フーリはまだどこにも所属していない。

「そう言われましても、別に今のままでも不便がないもので……」

フーリが言い切る前に、大柄な男性がテーブルに座る。

「よぉ! 俺のギルドに入らねぇか!?」

大剣を担いでいる男は、いつか薬屋に訪れていた冒険者だった。

 

 レーベンの言葉に驚いていると、ルージュが口を開く。

「お二人が並んでいると、伝説のチームが復活、っていう感じがしますね」

レーベンが冒険する気になったのか、とラルフに聞くとそれについては否定する。

「残念ながら、今の仕事が忙しくてね」

そう言うと、周りをきょろきょろと見回す。

「……そう言えば、今日はお一人なんですね?」

ルージュの言葉に、一呼吸置いてラルフは頷いた。仕事が忙しいが、一人と言うことは。

(恐らく、仕事であれば同行者がいるはずかと)

リリィの言うとおり、恐らくは抜け出して来ているのだろう。

「伝説って?」

興味本位とあまりこの話は続けて欲しくなさそうな雰囲気だったので、フーリが切り出した。

「はい、ラルフ会長とレーベンさん、そして大白魔導士様、この三人のチームで古代種を撃退したことがあるんです」

その言葉に、ラルフは撃退と言っても闘ったわけでも、退けたわけでもない、付け加える。

「それでもな、思い出すだけでも震えるぜ。災厄の被害を最小限に抑えたんだ。まぁ、ラルフの力は勿論他の協力者があっての話ではあるがな」

レーベンの言葉にルージュは興奮したように続ける。

「ええ! 三人が居なければ、私もこの場に居られませんでしたから!」

どうやらその事件の時に、ルージュが関わっていたらしい。

「あれは幸運だったのさ。そのおかげでこうやって今の役職についているんだから、細かくは言わないけどね」

それから他愛のない話を続けて、しばらくするとラルフが席を立った。

「いや、今日は話が出来て良かった。すぐに決める必要はないが……仲間がいるということは悪いことじゃない。先輩の助言だとでも思ってくれ」

そう言うと、颯爽と協会を離れて行くラルフ。そしてそれと入れ替わる様に、レーベンのギルドの副団長が入ってくる。

 

 団長と呼ばれるレーベンは、後ろに二つの小剣を担いだ女性が後ろに立つと、勧誘を始める。

「いやぁ、村の先輩に話は聞いたぞ。やはり俺の想像通り、いや、想像以上の様だな!」

がはは、と豪快に笑う姿に、後ろに立つ女性が顰め面をする。

「私はおすすめはしません。今ギルドに白魔導士が不足している訳ではありません。報告については真偽は不明ですし、戦士でも回復術士としても中途半端な人材が必要とは思えません」

双剣士の女性の瞳が女性を貫く。

「……随分嫌われているのね。まぁ、別に入団希望っていう訳でもないんだけど」

ギルドのリーダーが双剣士の女性に告げる。

「まぁ、そう言うなステラ副団長! 俺はこいつを気に入っているんだ!」

相手の言葉を理解しているのかどうか分からないが、ギルドのリーダーの意思に変わりは無いらしい。ステラが再び進言を使用とした時、ココが口をはさむ。

「試してみれば良いじゃ無いか、フーリの力を」

そう言うと、ココがフーリに近づく。

「え、あの時のココさん? もしかして?」

ココがフーリの肩に手を回す。

「行くよね、海」

フーリが首を傾げる。

 

 レーベン、フーリ、ココ、そしてステラ、四人が揃って孤島へと辿り着く。

「わぁ、良い景色」

そうフーリが喋ると、孤島から見える海を眺める。青く澄んだ海は、水平線がよく見える。砂浜は白く、小さな生物が時折顔を見せる。孤島の方に目を向ければ、山が大きくそそり立っていて、それを中心に緑が生い茂っている。

「随分と呑気ですね。これから貴女のテストが始まるんですよ」

ステラは機嫌が悪そうに呟く。準備を始めると、レーベンが口を開いた。

「ステラとココに準備は任せて、俺達は浜辺の方に行くぞ」

慌ててレーベンについていくフーリだが、焦る。

「えっ、ステラさん達に任せて良いの!?」

レーベンが大きく笑って送り出す。

「おう! 結構時間が掛かるだろうからな、その間にテストだ!」

レーベンの許可もあってか、大きく手を振って浜辺へと走り出す。

 

 浜辺で釣り糸を垂らすレーベン。その先には先ほど岩陰で捕まえた蛙が繋がっている。

「……何を釣るんです?」

どう見ても釣りをしているのだが、その意図が見えない。

「おう、あれだ」

水平線に指を差す。何を差しているのか、一瞬では分からなかったが、よく見ると背びれのようなものが水面から出ているのがわかった。

「あいつなぁ、蛙が好物なんだよ。だから、こうして蛙を垂らしていると、ほらな」

背びれが浜辺に近づいてくるのが分かる。少しずつ大きくなっていく背びれに違和感を感じる時には、それはかなり近づいていた。

「……でかくないですか?」

フーリの疑問にレーベンは首を傾げる。

「いやぁ、前釣った奴はもっとデカかったぞ?」

比較で聞いて居るわけではなく、今迫ってきている個体が大きいと言うことなのだが、取りあえずレーベンからすれば驚く様なサイズでは無いということしか分からなかった。蛙を引き上げるとそれに釣られて浜辺に跳び上がってくるその姿に、見覚えがあった。

「魚竜種っていうけど、これ魚に足生やしただけだよね!?」

魚竜種、基本的には水棲生物だが、陸上に上がる事ともあり、肉食であれば狩猟をすることもある。サイズは大小様々だが、陸上の生態系よりも大きな個体に育つことがよく見られるのは、重力の影響を受けにくい水中を中心に生息していることが原因と見られる。今回の魚竜種は文字通り魚に足を生やした様な見た目をしているが、4mほどの巨体の突進、硬い鱗による防御、口からは溜め込んだ水を高圧で吐き出すなど、モンスターとしてはかなり厄介な相手である。

「それぐらい倒せないと、この先きついぞ?」

大きな尾が頭上を通り過ぎ、その風圧で足下がよろける。元々砂場なのだ、踏ん張りを利かせようにも足場が悪い。

「ちょ、これは結構きついのでは!?」

フーリの言葉が届いているかどうかは怪しい。巨体を唸らせながら突進に、はね飛ばされながら受け身をとる。慣れない足場に最初は戸惑っていたが、足下が悪いのはモンスターも同じである。全体重を乗せた蹴りを当てると、モンスターが転倒する。

「よしっ!」

その隙に首にあたる部分に正拳突きを当てるが、大きなダメージとはいえず、起き上がってしまう。もう一度足下を狙おうとすると、魚竜種は大きく跳び上がって海へとはいってしまった。

「なっ、ずるーい!」

海の方で泳いでいるのを遠巻きにみるだけのフーリに、魚竜種が海から顔だけをだす。

「?」

溜め込んだ水を高圧で噴射するのを見て、横っ飛びでなんとか避けるフーリ。

「撤退! 戦略的撤退!」

浜辺から全力で逃げ出し、洞窟へと走り出す。

 

 洞窟の中の空気は少しひんやりとしていた。

「んで、どうするつもりだ?」

レーベンの言葉に、フーリは頭を捻る。

「水中から攻撃を続けられると、手も足も出ないからなぁ」

水中にいるモンスター相手に出来る事と言えば、二つ。地上に引き摺りだすか、水中で闘うか。

「どう? 水中で闘える?」

リリィに尋ねると、あまり良い返答ではなかった。

(闘えますが、不利ですね。どちらにしても、準備が必要です。魔導士の協力が必要になります)

目的があの魚竜種の狩猟であれば、協力してもらえばいいだろう。だがしかし、現状別行動している上に、これは自分へのテストである。まともに手伝ってくれるとは思えない。となれば、地上に引き摺り上げるしかないだろう。

「餌で釣る以外に、方法はありますか?」

レーベンはフーリの問いに素直に答える。

「水中の種族だから、目はそれほど良くはない。だが、触角は敏感だ。遠く離れた場所からでも、水面に石が落ちたことにも気付く。だから逆に言えば、デカイ音とかには驚く。方向感覚が狂って地上に飛び出してくる事もある」

レーベンの助言に従い、洞窟の周りにある物を探り始める。壁に埋まっている鉱石や植物を一つ一つ調べていく。

「可燃性の植物と、鉱石を組み合わせれば……あ、虫もいるね」

めぼしい物を見つけ出し、なにやら準備を進めていくと、再び浜辺に出る。

「そぅれ!」

鉱石と植物と虫を入れたネットが放り投げられ、魚竜種の背びれが見える水面の上で弾ける。

「おおっ、即席の爆弾か!?」

爆発の規模自体はそれほど大きくは無いが、響く爆発音が魚竜種を驚かせる。水面から跳び上がり、方向を間違え陸地の方に飛んでしまい、崖に頭をぶつける。

「チャンス!」

魚竜種の首の鱗との境目を正確に貫手が貫く。

オオォォォォォォン

魚竜種の叫びが響き渡る。暴れ回る巨体に急いで離れるフーリ。

「ええっ、今ので死なないの!?」

貫手で貫いた部分から出血はしているが、どうやら致命傷ではないようだ。腹部が一部ふくれあがり、勢いよくフーリに水圧ブレスを吐き出そうとする。

「げっ、水上で撃ってきたやつ!?」

首が正面を向いた瞬間、朱と緑の双剣が魚竜種の首を落とす。

「ふぅ、魚竜種を一人で狩猟できないとは、まだまだ未熟ですね」

背中のホルダーに双剣を収めて、ステラがフーリを見る。

「おぅ、ステラ。準備は終わったか?」

レーベンの声にココが頷く。

「当然、いつでもいけるよ」

二人の姿を見て、フーリは緊張を解く。浜辺に座り込んだフーリが大きく息を吐くと、レーベンが声を掛ける。

「さぁ、冒険に行くぞ!」

レーベンの伸ばした手にフーリが首を傾げるが、ココが言葉を掛ける。

「合格さ。さぁ、行くよ」

その言葉に驚くフーリにステラが口を開く。

「貴女は回復役よ、別に魚竜種を単独て狩猟する技能は求めていない……充分、海中探索でも通用する能力はあることは分かりましたので」

フーリが再び疑問を口にする。

「海中……探索?」

 

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風

月曜日はジャンプを楽しみにしてる勢です。
この話が月曜日アップかどうかも分かってませんが。
ヒロアカ大好きです、ハンター×ハンターは本当に再開してますか?
虎杖は生きてますか? 若君は相変わらず変態で居られてでしょうか?
未来の自分に聞いても、来週月曜日を楽しみにしてろ、としか言われなさそうな気がしますね。

それではまた、明日以降の暇時に。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。