セレネ「ほう、珍しい来客だな。初めまして、セレネだ」
距離感を狂わせる巨躯が、ゆったりと佇む。
セレネ「冒険者の武具について? ほう、古代種の我に聞くとは、酔狂だのう。まぁいい、冒険者という職があるのだから勿論、鍛冶師という職もある。店舗を構える者もいれば、卸売りの者に売る者もいる。採算が取れるか分からないオーダーを受ける専属の者もいると聞くが、功績を残す冒険者には自らの武具を勧める者も少なくない。当然のように、自分が作った物が脚光を浴びる姿が見たいと考えるのはおかしな話では無いからの。やはりメジャーな武具で言えば剣、盾、鎧だな。魔導士であれば、軽く動きやすい物になりがちで、糸を編み込むことでマナを蓄えやすい利点を兼ね揃えているローブや帽子を好む傾向がある。逆に鉱石などは独自の魔力を蓄えている為、攻撃を弾く鎧に使用される場合もある。魔物の皮や鱗といった素材は、どう活かすかが鍛冶師の腕の見せ所じゃろうな」
口元に泡が零れ、見えもしない水面へと向かっていく。
セレネ「ふむ、時間か。やはり他者と話す時間は短いのう。我で良ければいつでも良いぞ。何せ時間だけは、途方も無く持てあまして居るからな」
キセキが担いでいる武器に、フーリは見覚えがあった。
「それって、鞘とか、鍔はつけないの?」
他の冒険者の剣と同じ様に、抜き身の刃に柄を取り付けられているだけだ。キセキはフーリの言葉に反応し、肩を掴み興奮しているようだ。
「お前、コレを知っているのか?」
普段言葉が少ないキセキの反応に驚く。
「ま、まぁ……少しだけ」
その言葉に、キセキはぶつぶつと呟いている。
「そういえば、異国の民だったか? 東のほうの出身なのか?」
フーリはその言葉に返す言葉がなく、曖昧に言葉を濁した。
「ふーむ、まぁいいか。それにしても、サヤとツバとは何だ?」
どうやらフーリの知識とキセキの知識に齟齬があるようだ。それが互いに伝わったのはキセキの質問攻めに時間を浪費した後だった。
「成る程、サムライソードは本来装飾自体も在ったわけだ。由来を考えれば然もありなん、ということだな」
キセキに伝わっていたのは、刃の作り方だけだったらしい。しかも、書物を読んだだけの様で、むしろここまで再現出来ていること自体が驚きなのだろうが。
「確認するが、サヤというのは、サムライソードを納める部分で、木製である事が多い。刃を一回り大きくした様な形で、内部の加工方法は分からない、ということだな」
その言葉にフーリは頷く。
「成る程、恐らくくり抜くのではなく、堀って合わせるのだろう……それなら、魔術を付与するのも簡単だな」
やはり考え込まれている、と呟いたキセキにフーリが声を掛ける。
「多分、作った人はそこまで考えてないと思うよ?」
実物を見たわけでも無ければ、聞きかじりの知識を披露した訳だが、魔術が無い元の世界の物だ。魔術的な事は無関係だろう。
「そうか。ならば別の理由が在るのかも知れないな。とはいえ、何度も精錬するこの刀の作り方は魔術の彫り込みと魔力の貯蔵の相性が良い。となれば、サヤとやらにも期待してしまうな」
自然なマナを取り込みやすい木材を使用するのであれば、それを使わない手は無いと呟く。
「さぁ、そうと分かれば材料調達だ!」
「……えぇ?」
疑問を挟むまもなく、キセキに連れられて材料調達に都合の良いクエストに行くことになる。
刀の鞘に必要な材料を集めてくると、フーリが気になる事を聞いた。
「君の刀は他の人達の剣とは違うみたいだけど、どうして?」
キセキがそれに答える。
「剣の精錬に、火の魔術が必要となる。大体の剣は、鉄等の金属を溶かして、型枠に流し込んで鋳造する。もう少し、魔術の才能があれば、俺もそうしていただろう」
どうやらキセキは、鍛冶師の家系ということだ。火の魔術の適正はあったが、それ程高温を出せる訳でも無く、色々と思案している内に刀の精錬方法に辿りついたらしい。
「元々は東方のどこかの国の技術、らしい。詳しい事を知っている人間には未だに会ったことが無いからな。ともかく、俺はサムライソードとかかれた剣を作ることと他に武具をメンテナンスをすることを生業にしていた」
他の剣は魔力で強化したり、使い続ける事で魔力を帯びたり、魔術式を刻みこむことで更なる強化や切れ味を手に入れていた。だがしかし、
「サムライソードは、既にその力を持っていた?」
どうやら鎚を叩き、刃金を伸ばし、折り合わせ、と繰り返す工程がそういった研鑽と同様の効果を持つ事に気付いた。
「多くの人間が、サムライソードを求め始めた。扱いは難しいが、こと切断において右に出る武器は無い、と考えている」
そして、それを編み出した技術に興味をもち、由来を探すと共に技術を鍛える為に冒険者になったのだという。
「へぇ、いろんなことに魔術が関連しているんだね」
そう感心しているフーリ。
「そうだな。鞘を取り扱うにも、魔術を彫り込むのに問題なさそうだ」
キセキの言葉に、フーリが尋ねる。
「刀を抜くの同時に魔術が使える、ってこと?」
「マナを込めるだけで、魔術を発動することが出来る。鞘での攻防にも扱えるが、抜刀時の追加魔術の方が色々と使いやすそうだな」
そう呟くと、フーリは使える魔術を色々とキセキに話した。技術的な話をする事は、キセキにとっても楽しいらしい。
「そっか、日常的にも魔術が使えるよね。その辺はどうなんだろう?」
フーリのその問いに、キセキは答える。
「インフラ周りは知らん。ルージュかココにでも聞くと良い」
黙々と作業をこなし始めるキセキを尻目に、鍛冶場を後にした。
「はい、この協会でも魔術をインフラとして扱っていますよ」
ルージュが丁寧に答える。ただ、都会とは違い限定的にはなる、と言った。
「火とか、水とか? 灯とかは魔術かな」
協会内を見渡してみると、所々に魔術式が刻み込まれている。だがそれとは別にして、蝋燭や水を汲む桶など、魔術を使わない物も多い。
「結構魔術を使わない物も多いんですね。そんなに便利でもないのかなぁ」
机に頬杖をついて、溜息交じりに呟く。
「いえ、便利ですよ。夜道を照らす明かりも、火事にもならない火、枯れない井戸、どれ一つでも革命的な物です」
ルージュの説明にほぅ、と関心するフーリ。
「勿論、万物を癒やす白魔術も新生児から老人までの生存率を跳ね上げる事になりますね」
ルージュの言葉に、そうか、と呟くフーリ。村での活動は、引き続き協会のあるこの街で続けている。勿論、冒険の間にという形にはなるが。
「それじゃあ、魔術のインフラはこれから広がっていく感じなのかな」
今はその過渡期にあたるのか、と呟いたフーリ。そして偶々居合わせたココに否定される。
「ここ三百年くらいはこんな感じだね。富と知識を持ち合わせている富裕層だけが得られる特権になっているよ」
そういうと、ココは甘い飲み物を受付から受け取る。
「えっ、なんで?」
常識知らずを見る瞳がフーリを捉える。
「整備するのに経費がかかるということもありますが、それ以上に人材が足りませんね。覚えていますか? 魔術を扱えるのは適正があり、なおかつ知識がある人間だけだということを」
その言葉で漸く思い出したフーリ。
「人材が足りないということはないはずだよ。上位の魔術師になれば整備出来る範囲は広がっていく。現に都市一つのインフラを造り上げた魔術師もいるくらいだ。こんな末端の町でも、場末の魔術師が何人かいれば整備も管理も間に合うさ」
差し出された飲み物が熱すぎるのか、ちびちびと口をつけるココ。フーリが何も考えずに呟く。
「ということは、ココが何人かいればこの町も発展するっていうこと?」
その言葉にココが苛立たしげに返事をする。
「全く、常識知らずは恥も知らないみたいだね。僕一人でもこの町の規模ならどうとでもなるさ。そんな事をする義理があれば、の話だけどね」
それが何故かという問いには、ココは答えない。
「理由は幾つかありますよ。ココさんも自分の研究や目的があります。この町の発展のために時間を費やして頂くのも有限ですし、何より冒険者でこの町を離れることも多いですから」
管理を担う人間がいない。
「人の手垢が付いた魔術を触ろうとする魔術師は二流だよ」
その例えならばフーリも理解出来る。他人を治す白魔術と自分を回復させる白魔術の難易度の違いは、最初の鍛錬で痛い程身にしみた。
「まぁ、魔術の一般化について知りたいなら、丁度良いクエストがあるんじゃない? そんな季節だろう?」
ルージュに対してココがあまり興味なさげに告げる。
「そうですね。あまり難易度があるわけではないので……良ければフーリさんも受けてみますか?」
ルージュが取り出した依頼書には、何度か耳にした都市の名前と地下ネズミの討伐とかかれていた。
「へぇー、大都市にもこんなモンスターがでるんですね」
興味本位で受けることにする。ココに上手く誘導されていたことに気付くのは、クエストが終わった頃の話だ。
馬車に揺られて運ばれていくのは、フーリとココとキセキの三人組だ。
「都市に行くのは初めてですね。どんな場所になるんですか?」
これまで経験したクエストの殆どは地下ダンジョンだ。あとは採掘とか採集などの山に入っていくもの程度。
「交易の中心である大都市、そして世界で有数のダンジョンの上に作られた街だ」
ココがそう言うと、フーリのテンションが上がる。
「ダンジョンの上に!?」
特に驚きはしないキセキが呟く。
「地下にダンジョンがあるということは、マナ資源が豊富、ということだからな」
理屈の上では、分かりやすい。貴重な資源が取れる場所の近くに拠点があるのは、利便性が高い。だが、問題はマナ資源が豊富ということはモンスターが発生するということだが。
「そっか、それで冒険者が必要に?」
ココが半分正解だ、言う。
「常に冒険者が必要ということであれば、街という体裁すら取れない。流石にモンスターが現れる場所に家を建てる事は無いだろう? つまり、居住区は上部にある、ということさ」
高くなれば成る程、身分の高い居住区間ということらしい。
「とはいえ、下層にモンスターが溢れているということではないけどね……っと、到着したみたいだね」
続きを聞きたいと呟いたが、聞こえなかったのかココはそのまま街に歩いて行く、その後にキセキが歩き、渋々後ろをフーリがついていく。
入り口を入ると、露店が並ぶ。交易の拠点というだけはあり、その種類は豊富だ。果物や野菜は勿論、各種アクセサリや織物、なにやらよく分からない像等、値札が下げられているが、適正価格か分からない。
「流石に現地で買うより高いけどね。他の都市で買うよりかは安いはずさ。ぼったくりでさえなければ」
そういうココは露店には目もくれず、大きめの建築物を目指す。
「ここが今回の依頼主の自警団さ」
中には、鎧を着込んだ男性が何人かいる。その中心にいるのが、リーダーだろうか。
「自警団の代表だ。今回はジャイアントラットの目撃情報が多い。警戒、及び討伐で報酬を払う……討伐については数によって増やすつもりだ」
そう呟くと、代表が握手を求めてくる。ココが興味なさそうにしていたので、代わりにフーリが応えた。
「白魔導士殿か?」
「フーリです、よろしく御願いします」
フーリが丁寧に答えると、代表が指示を出す。
「うちから一人先導を出します、共に警備を廻って頂き、見つけ次第対処を御願いします。また、巣を見つけた場合も処理を御願いします」
挨拶をする団員の一人に、フーリが話す。
「すみません、地理がまだ分からないので、案内おねがいします」
団員が丁寧に頭を下げて先頭を歩く。
読了ありがとうございました。
これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
イカになりたいね♂
なお、スプラに触ったことは無い模様
でも、プレイ動画は面白そう(小並感
それではまた、明日以降の暇時に。