バンブ「村長のバンブじゃ。大白魔導士が住んでいた村のな」
蓄えた髭を撫でて、台本を捲る。
バンブ「ふむ、街についてか。儂も余り知らんでの。生まれて何度か足を運んだが、村に住んでいると言うだけで、田舎者扱いじゃからな。まぁ、ダンジョンの上に街を作っているのだから、資源は豊富じゃ。地表で見られない鉱石、エネルギーとなる宝石、魔物の爪、皮、鱗、見たことも無い果物、そこでしか手に入らない物を目的に足を運ぶ人間は多いじゃろう。輝かしい生活を夢見て、街を目指す村の若い物も多いしのう。権利者や貴族が住むのが上層、税金を納めている技能者や商人達が済むのが中層、納税の額が少ない者は下層にて警備の義務を負うことになる。村の出身は殆ど下層に行き、現実を見て逃げ出す者が殆どじゃ……一言に居場所とは言えんよ」
深い溜息をついて、台本を捲る。
バンブ「時間じゃ、街の下層がどういう場所かは、少し分かるのでは無いかのう」
市街地を歩くが、街灯が点いている為、道が分からなくなる事はなさそうだ。とはいえ、出歩いている人間は無い。
「上層とは違い、下層区域では暗くなるとモンスターが出現する可能性があります。露店がでているのは整備されている区画なので、まず被害が出るのは下層の住宅地域になります」
出てくるモンスターはダンジョンの表層レベル、地下一、二階程度だという。
「とはいえ、モンスターがでる場所に住んでるのは、どうなの?」
森の奥に住んでいたフーリが言うのも筋が違う気もするが、団員が応えてくれる。
「私達下層の人間がこの街に住居をかまえるには、警備団に入ることなんです。街灯や水道、熱器具などのインフラを利用するのに納金する必要があるんです。それだけ稼いでる人間であれば、中層以上に住む権利が得られるのですが、払えない場合はこうやって警備をする義務があるんです」
団員の男性は、後ろを歩いていても緊張しているのが分かる。当然だろうが、モンスターと対峙することになれているということは無いのだろう。
「まぁ、大ネズミくらいなら別に……ほら」
影が目の前を走る。一瞬だけの出来事は、薄暗闇の道では、その正体を捉えることが出来るのは冒険者くらいだろう。
「とはいえ、一匹じゃないよね?」
(ジャイアントラットは基本的に群生体です。ダンジョンから抜け出してきた個体だとしても、一匹と言うことはないでしょう)
あとは何体いるか、それと群で行動しているかどうか、だ。
「あっ、と」
影が飛びかかってきたのに反応が遅れる。団員の首を引いて、左手で大ネズミの牙を受け止める。長い前歯は人の皮膚を容易く食い破る。
「あ、あぁ」
初めて見た、という訳では無い。だが、殆どの場合は死に体の大ネズミしか見たことのなかった団員は、突然の出来事と併せて腰を抜かしてた。
「ふっ」
更に食い込ませようとする大ネズミが力を入れる前に首を掴み、力を込める。喉を指で押さえ呼吸を出来ない様にすれば、反射的に顎を開く。
「はっ」
そのまま地面に叩きつけ、体重を乗せて首を折る。
「無垢なる魂よ。彷徨う事無く、地へと還り母なる大地へと誘われん」
息を引き取った大ネズミを地面にうち捨て、フーリは声を上げる。
「キセキっ!」
別行動している魔術師は、肉体強化についてはからっきしだ。歩いたり坂を上ったりすることの補助や夜道を歩く程度だ。
「居たのか!」
叫んで数秒で来れる辺り、近くに居たらしい。新調したばかりの鞘と柄納めた刀を腰撓めに構え、フーリの後ろに着地する。
(既に周囲に集まってきています。探知の範囲に五体、まだ集まります)
触覚と聴覚を強化して周囲を探る、範囲内に五体は分かるが、どれだけの数が近づいてきているのか、分からない。それでも、一体が飛び出したことを皮切りに、次々に大ネズミが飛びかかる。
「ひ、ひぃぃぃぃいいいい」
団員が頭を抱えて縮こまる。キセキにとっては障害物が小さくなってくれて有り難いかぎりだった。鞘に手を掛けた瞬間、鞘に魔力が通い、刀身が加速する。剣筋の後には残光だけが置き去りになり、飛びかかった大ネズミ二体が四つの肉片になって石畳へ打ち付けられる。
「左っ、二体同時!」
フーリのかけ声に反応し、返す刀で両断する。背後から襲いかかってきた大ネズミを下から肘打ちを浴びせ、回し蹴りで壁に叩きつける。
「ひぃ、ふぅ……五体だけど」
(集まってきた大ネズミ、七体ですね)
リリィの声に、フーリが戦闘態勢を取る。
「さくっと片付けましょうか」
倒した大ネズミを一カ所に集め、フーリは両の手を合わせる。
「えっと、何をしているんですか?」
祈りを捧げていると、フーリが答える。
「魔物に宿るマナが、しっかりと大地に循環出来る様に、見送りが必要なんです」
そう言うと、気付いた様に頷く。
「大地信仰の方だったんですね」
団員が驚き、そこでココが合流する。
「ああ、巨大ネズミが……十二か。地上に出てるのはこれで全部かい?」
一匹ずつ、体液や骨などを採取していく。雑魚とはいえ、ダンジョンのモンスターだ。ダンジョンの付近に来なければ手に入らない素材ではある。
「まさか、それが目的?」
勿論とココが頷く。悪びれもしないその素振りに言葉を失うが、一通り調べ終えるとココが立ち上がる。
「北東から来たみたいだ。歩いて十分程の位置だろう」
ものの次いでではあるが、巨大ネズミが出てきた大体の位置が分かるらしい。
「地下道の入り口が分かる地図、ありますか?」
団員に尋ねると、幾つかの場所に印がついている地図を取り出す。どうやらそこが地下ダンジョンの入り口になっているらしい。
「さっきのココの話だと……ドンピシャだな」
方向と大体の距離を測ると、その場所に入り口がある。どうやら巨大ネズミが入ってきた場所の特定は出来た様だ。
階段を降りていくと、下水道の吐き出し口に辿り着く。柵は取り付けられているが、端が破られている。どうやらここから巨大ネズミが這い出てきていたらしい。
読了ありがとうございました。
これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
もっと魔物の種類増やしたい、生態系とか系統図みたいなの欲しい!
でも、作れないのだ……ないものは仕方ないのだ(絶望
それではまた、明日以降の暇時に。