リリィ「お久しぶりですね、賢者の石のリリィです。本日もよろしくお願いします」
動きは無い、ただ机の上の台本が風で捲られるだけだ。
リリィ「今回は魔物について、特にケルベロスについて語りましょうか。とはいえ、生態系の全てが把握されている訳ではありません。目撃例が少ないといえば、そう、ダンジョン中層部以降に生息する魔物です。特徴的な部分は勿論、胴から生える三本の頭部ですね。研究が進む前では、二つの頭は擬態であるという説がありました。頭を潰しても生きている目撃証言があった為ですね。近年、観測されたのは一本の頭が眼を開き、他二つが睡眠状態であるだろう、という状態ですね。物音や光に対しての反応が一本の頭部のみ見られ、同個体を別時間帯で観測した時、他の二つの頭部に対しても同様の反応が見られたため、三本の頭部全てに脳に値する機能があると結論づけられました」
再び風で台本が捲られる。
リリィ「お時間ですね。街の地下、下水道、その下のダンジョン……人には知らない方が良いこともあるようです」
少し遠回りになるが、整備用の通路を通る事で、下水道の内部に入る事が出来る。
「巨大ネズミが繁殖している、訳でもなさそうだね」
純粋に数が増えているのであれば、ネズミの食べ残しや、死骸、糞尿の数が夥しい数になっているはずだ。現状、異常と呼ばれる程では無い。
「みたいだね。巨大ネズミはスカベンジャーだ。廃棄物に群がったり、死骸を食料にすることはあるが……今のところどちらともそれらしい物はないね」
この先は危険だと、警備の人達は地上に残ってもらい、下水道に入ったのは、フーリ、ココ、キズナの三人だ。道幅一人分の通路と脇に流れる下水、ココの魔術で最低限の灯を確保して、キズナを先頭に探索を行う。通路を歩けば、何度か巨大ネズミと出会い、討伐するが、直接の原因は見つからない。
「う~ん、下水道が入り組んでるから、ネズミも分散してるし、数も原因も分からないね」
考え込むフーリと脚を止めるココ。それに気付いて二人も止まる。
(巨大ネズミが下水道が繁殖に適した場所であるため、ここが原因と推測して探索を行いましたが、その結果として前提が間違えている可能性がありますね)
「前提が、間違ってる?」
フーリの言葉に、ココが何かを閃いたように歩く方向を変える。
「ちょ、ちょっと!?」
早歩きで進むココを追いかける様にフーリとキセキも歩き始める。
ココが足を止めたのは、少し開けた空間に出た瞬間だった。
「なになに? 何に気付いたの?」
フーリの疑問に、独り言を溢すように呟くココ。
「この時期に、巨大ネズミは繁殖しやすい。理由は繁殖に適したマナと垂れ流される下水に栄養が含まれているからなんだけれど……それにしては数が少ないんだ」
その言葉に、フーリが驚く。確かに魔物ととしての数はかなり多く感じる。どこを歩いても出会うのは、魔物としては異常だ。だが、個体一つ一つの力は弱く、正面から対峙すれば普通の人間が武装しただけでも討伐出来てしまう。
「繁殖に必要な何かが不足しているのか?」
キセキがココに尋ねると、ココは首を横に振る。
「いや、今年もちゃんと繁殖しているよ。ただ、下水道に現れる巨大ネズミの数が少ないだけだ」
そこでフーリが疑問を抱く。
「でも、地上に現れる巨大ネズミは増えてるんでしょう? なのに、全体数が減っているのは、おかしいんじゃ……」
言い切る前に、フーリが戦闘態勢をとる。
「地表の巨大ネズミが多くなったのは、繁殖の所為じゃない。天敵から逃げ出す為に、本来の住処から逃げ出したからだ。ほら、その天敵が現れるよ」
開けた場所は、下水道の更に下に空洞がある場所。底は本来であれば分厚い鉄板の足場があったはずなのだが、ひしゃげて曲がり、穴が空いている。そこから双頭の狗が舌なめずりをしながら這い出してきた。
「……ケルベロス!」
目が血走り、口からは絶え間なく涎が流れ落ち、その口の端からは巨大ネズミの頭が迴間見え、租借されて呑み込まれる。
「つまり、アレを斬れば解決する訳か」
そういうとキズナが、腰に差している刀の短い方をフーリに投げ渡す。不意打ちに取りこぼしそうになりながら掴むと、魔術の感覚にフーリが気付く。
「鞘に魔力を流し込むだけで、抜刀の型が出来る。試してみたい、だったな」
キセキが以前喋っていたフーリの言葉を覚えていたらしい。その言葉に嬉しそうに鞘を握り、柄に右手を掛けて魔力を流し込む。体格だけで言えば三倍近い巨躯のケルベロスと対峙し、ケルベロスが三人を見つけ認識した瞬間、フーリの姿が消える。
抜刀術 閃刃
魔力で強化した肉体が地面を蹴り上げた力はすさまじく、それこそ消えたと錯覚するスピードで迫り、それよりも早い速度で抜刀された刃は魔獣の首の片方を切り落とす。
「あっ、あっ、あっっ、制御出来ない!」
刀を振り切った後の速度を殺すことが出来ずに、背中から地面に落ちて転がり、幾らかスピードが落ちた所で壁に激突する。
オオオオォォォォン
墜ちた首を嘆いているのか、現れた強敵に威嚇しているのか、ケルベロスの雄叫びが地下に響き渡るが、キセキが刀を構える。
「どうやら、動きだけを模倣しても使えそうにない、か」
居合い術 空断
刀が動いた様に見えない程、素早い抜刀。その斬撃は三度ケルベロスの首を切り裂き、二つあった首は両方とも地に転がっていた。
「ダメダメ! 私じゃ無きゃ死んじゃうかも?」
指や腕がおかしな方向に曲がっているのを白魔術で回復しながら駆け寄るフーリ。
「分からない魔術を肉体が壊れるレベルで魔力を注ぎ込むのも君ぐらいだよ」
ココが呆れるが、キセキの魔術に欠陥があったこともまた事実のようだ。刀を鞘に収めて再び腰に戻す。
読了ありがとうございました。
これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
最近AI絵師のニュースを見るようになりました。
AI小説は前からあったようですね、最近知りました。
良くも悪くも、「誰が」描いたことに評価が左右される時代です。
それはゴッホでも、北斎でも、AIでも、同じということでしょうか。
……なんかの手違いで俺も評価されねぇかなぁ。
俺の描いたモンも評価してくれ! 頼む!
それではまた、明日以降の暇時に。