異世界転生で白魔導士   作:3148

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赤い服を着た魔導士が、面倒そうに台本を捲る。
ペルーサ「はぁ、何でまた私が。魔導士のペルーサよ、早く終わらせましょう」
ぶつぶつと文句を言いながら台本を捲る。
ペルーサ「今回は、グールについて、ね。吸血種の使役する下等種族、ってイメージもあるけど、グールはもっと広い範囲を指すわ。他種族の死体を乗っ取って動く魔力生命体の事を指すの、だから吸血種が使役する魔力生命体もその中に含まれるし、グール単体で生態系を形成している種族もあるわ。そもそもがある程度マナの充実している場所じゃないと生息出来ないから、地表付近のマナの薄い場所では吸血種の使役する個体じゃないと殆ど発見例がないから、このイメージになるのもおかしくはないけど」
話し終わると再び頁を捲る。
ペルーサ「それじゃ、私はこれで。魔術の研究に忙しいのよ、最近は研究もつまり気味だしね」


第二十二話 吸血鬼討伐

 ダンジョンの入り口で白魔導士と合流すると、荷物のチェックをして入り口に入る。

「……ダンジョンなのに、道が綺麗?」

松明が灯されており、道は明るく、足下もあるくのに苦労するという事はなさそうだ。

「今回選んだルートは、冒険者が良く選ぶダンジョン深部に向かう道です。訪れる冒険者も多く、道の整備や調査のクエストもある、道中だけなら一番安全と言っても良い道ですね」

逆に言えば、その道に吸血鬼という危険度が高い魔物が現れた事が問題である、ということなのだが。

「とはいえ、絶対は無いぞ! 警戒は緩めるなよ!」

本人はソレで警戒しているのだろうか。他の三人の倍ほどのスピードで進んでいく。

 

 一行はステラの言葉通りに、大きな魔物と出会う事無く道を進んでいく。

「……妙ですね」

コポンが呟くと、白魔導士が考えすぎでは、と返す。

「いや、そうでもねぇぜ」

レーベンが呟くと、分かれ道に出る。片方は更に深く進み、そのまま進めば亜人の村に辿り着くルートになるだろう。

「こっちに行けば、故郷に行けるかもな」

レーベンは亜人の村の方向を指さす。だが、コポンが警戒しているのは、もう一方の道だ。

「……確か行き止まりになっていたはずですが、村人が崇めている神樹がある場所ですね」

聞いて居た情報を纏めると、行き止まりではあるが、今回の吸血鬼の犠牲者が多いのもこの付近であるようだ。

「よし! 見て確認するか!」

無ければないで、それで良いとレーベンは言う。違和感を感じたコポンとステラはしかりと警戒しながら進み出す。

 

 分かれ道からそれ程経たない内に目的の場所らしき開けた空間が見えてきた。

「止まれ」

コポンが警戒心を高めているのを確認したレーベンが指示をだす。

「居るな、間違いなく」

それほどマナ感知が優れている訳では無いが、それでも違和感は感じる。ステラやコポンは確信に近いものを感じていた。

「奇襲を仕掛ける」

前衛が先行する、といっても戦闘要員はレーベンとステラのみ、といった状態だ。残りの二人はサポートというよりも迷惑を掛けない様に離れている、ということになる。

「離れていても気をつけていて下さいね。エネルギードレインの範囲は未知数なので」

下手に受けてしまえば、途端に不利になってしまう。

 

 二人がほぼ同時に中に入ると、一直線に中央の玉座に座る少女にレーベンが斬りかかる。

「おぉりゃぁあああ!」

大上段から振り下ろされる大剣が少女を捉える前に止まる。少女の命令で、足下に倒れていた亡者達が盾になったからだ。

「なんだ、不躾な来訪者じゃな」

少女の瞳がレーベンを捉えると同時に、身体が傾く、回り込んでいたステラの双剣が交差し、少女の身体を三つに分割する。

「……やはり」

レーベンとステラが攻撃を止め、別方向に距離をとる。玉座の周りの亡者達が集まったかと思うとその中から少女が再び現れた。

「魔力が尽きない限り、無限に再生する、って事だな」

レーベンの言葉に頷き、溜息をつくステラ。今まで闘ったことのある魔物の中でも指折りの魔物相手に、緊張を高めていく二人。

「無礼者ではあるが、暇つぶしにはなりそうか」

吸血鬼との闘いの火蓋が切って落とされる。

 

 異常なまでの膂力で外れた蹴りが地面を砕く。

「あっぶねぇ!」

レーベンがすんでの所で避けると、吸血鬼が舌打ちをする。

「ちょこまかと、鬱陶しい下等種族が!」

魔力を込めた弾を振りかぶって投げる。ただそれだけだが、速度と数が異常だ。

「これは……厳しいですね」

ポーションと事前に受けていた白魔術による回復でなんとか凌いではいるが、何度吸血鬼を斬ったとしても、即座に復活するのは不利としか言いようがない。

「魔力切れはないな!」

肉体の再生に魔力は消費しているはずだが、現在この空間に貯蔵されているマナを考慮すれば。

「何百回死んでも殺せないな!」

闘いが始まって、数分も経っていない。吸血鬼の隙を見て何度か攻撃が通っては居るが、それに対して衰えを見せる様子はない、だが。

「あーっ、鬱陶しい!」

只管続く攻撃に苛ついたのか、吸血鬼の魔力が大きく動き出す。

「来たぞ!」

そういうとレーベンが全力で入り口へと逃げ出す。その反応と同時にステラもうごきだす。吸血鬼が広範囲魔術を使おうとした瞬間、ここから預かっていたアイテムが発動する。

 

 「膨大な魔力に反応する封印魔術?」

ココがレーベンの言葉に対して、考え込む。

「……吸血鬼の魔力を利用するのか。発動率を安定させるためには、いや、そもそも循環方式で変質を噛ませない方が確実だな」

そういって、それなら出来るかも知れない、と言った。

「吸血鬼の魔力を利用して、本人を封印するための魔術、ですか。魔力を注ぐの止めれば止まりますが……初見だけ通用する手段ですね」

種が分かれば突破されるだろうが、恐らくは力業でどうとでもなる魔力量だ。解除の為に慎重になることも、アイテムに対して警戒することすらないだろう。

 

 「走れ! 巻き込まれるぞ!」

吸血鬼の魔力量は膨大で、本来神樹があった広い空間を丸ごと呑み込む程だ。なんとか二人が抜け出した後、徐々に魔方陣が収まり始める。

「どうやら、封印魔術は上手くいきそうですね」

息を切らすステラに、白魔導士が近づく。二人に対して回復術式をかけて万が一に備えようとしている。

「ああ、思ったよりもうまくいったみたいだ」

流石にレーベンも肩で息をしている。肉体的な疲労も勿論だが、格上相手への緊張とそれからの解放で上手く制御出来ていないのだろう。

「あの……封印は、上手くいったんですね」

コポンが呟く。マナ感知の高い彼女が言うのであれば吸血鬼の動きは収まっているんだろう。

「あぁ」

『我が眷属よ!』

「!?」

辺りに響く声は、恐らく発声された物ではなく、魔術的な物。吸血鬼が動き出した訳では無い、だが。

「グールが動き出した!」

咄嗟に反応するステラが双剣で切り払う。足下から次々と動き出すそれは、物理攻撃でも魔術による攻撃でも、動きを止めていく。

「くっ、数が多い!」

一度や二度で倒れるとは言え、際限なく湧いてくる状態である。

「一度退くぞ!」

そう言うとレーベンが殿となって、元来た道を戻ろうとする。ステラが先頭、次に白魔導士、コポン、レーベンという順番だが、走る内に足下に亀裂が走る。

「っ!」

瞬間、コポンが踵を返す。二手にわかれたところから、足場が崩れ、一瞬で大きく離れていく。

「先に行けっ、俺達は別の道を探す!」

その声を最後に、レーベンとコポンの姿は見えなくなった。

「団長!」

ステラの声は、岩の壁に遮られ、届いたかどうかすら分からない。

「ここは危険だ、一先ず離れよう」

まだ地盤の崩れは収まっていない。後ろ髪を引かれながら、ステラはその場を後にした。

 

 そうして、白魔導士とステラは協会まで戻ってきた。

「……残念ながら、レーベンさん達が戻ってきているという報告はありません」

ルージュが告げると、フーリが立ち上がる。

「何処に行くんだい?」

ココがフーリを制止する。

「団長を助けに行く! まだ生きてるかも知れない!」

逸る気を抑えられないのか、ココを押しのけるが、それに対し冷静に言葉を告げる。

「そうだね、まだ死んでいないかも知れない。だが、その場合必要なのは、手ぶらの君じゃなくて、準備を済ませた救助隊だ」

ココの言葉に、少しだけ冷静になったのか、フーリは脚を止めた。

「ルージュ、こう言う場合は、探索隊が必要になるんだろう?」

その言葉に、ルージュが答える。

「はい、魔物の討伐が確認出来ていないので、現状の魔物の危険度を確認出来るものが必要になります。それと同時に、ダンジョンの現状も報告依頼が出ますね」

それは好都合だ、とココが呟く。

「元々、僕たちのギルドの依頼だ。継続は問題ないだろう?」

その言葉にルージュは頷く。

「それなら、僕とステラ副団長……あと一人団員で確認に向かう。手配を頼むよ」

「ココ!」

フーリがココに詰め寄ると、鬱陶しそうにフーリを見る。

「あと一人は別に誰でも良いよ、好きにすればいい」

 

 三人でダンジョンに潜り、進んでいく。整備された道を辿っていくのであれば、行きと同じ様に大きなトラブルはない。

「……これはまた、大きく崩落しているね」

通り道が塞がれていた。

「どいて」

フーリがぶち破ろうと構えると、ステラが止める。

「待って、下手に衝撃を与えるとここも崩れる可能性がある」

「ついでに言うと下手に道を開けようとすると亜人と敵対する可能性もあるからね。別の道を探すことを提案するよ」

道を探そうとするが、結局その先に繋がる通路は全て崩落していた。元々神樹があった地点に行くと、封印が発動しているのが見える。

「おそらくこの場所に縁のある魔物だったんだろうね。今は封印が安定しているけど、微量にマナが流れ込んでいる」

下手に封印に刺激をしても、マナが流れ込んで足下が崩れるのが加速する可能性がある。

「……」

追い詰められているフーリとステラに対して、平然とその場所のめぼしい物を採取しているココ。

「採取するのは構わないけど……」

「ああ、これ以上の探索は無駄だろうね。向こうに行く道もないだろうし、恐らく二人は亜人の村に逃げ込んでいるだろうしね」

その言葉に、二人は確かかと確かめる。

「冷静になりなよ。ここには神樹へと向かう空間と、亜人の村に向かう道、それからここに来た道しかない。探索した範囲に団長のいた形跡はない、あの人が崩落で倒れたとしても、何も抵抗しないとは考えにくいだろう」

先ほどフーリがしようとしたように、道をこじ開けようとはするだろう。他に道が無ければ。

「……信じるしか無い、か」

 

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風

日常回は何処? ココ?
フーリ君が村に碌に戻らないから、日常が冒険になっちゃったぁ!
コポンちゃんの出番はどこ?

それではまた、明日以降の暇時に。
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