異世界転生で白魔導士   作:3148

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軽装の鎧を身につけた青年が、台本を開く。
ヒイロ「久しぶりだな、俺はヒイロ! 冒険者もちょっとは板に付いてきたかな」
フンっ、と胸を張ると台本を捲る。
ヒイロ「今回はドラゴンについて、って殆ど分かんない事じゃん。会ったこと無いし、会ったことある冒険者もそんなにいないし。まぁ、いいか。伝説級の存在って感じだけど、他の魔物とは一線を画す存在なんだって。めちゃくちゃ強いし、幼体でも他の魔物じゃ相手にならないほど、かなり昔の伝説から存在してるって言われてるし、ちなみに翼竜種とかの祖先を遡っていくとドラゴンに行き着くとか? あくまで仮説でしかないみたいな話だけどな。まぁ、地表に現れるドラゴンは見たことないし、これからも見ることはないだろうな。俺も一回でいいから闘ってみたいなぁ、倒せたらゴールドクラスになれるって噂だし」
もう一度台本を捲る。
ヒイロ「おっ? そんなにビビらなくても、ドラゴンなんて出てこないよ。安心しろって」


第二章 第二十三話 ドラゴンと勇者

 協会の酒場で大声が響く。

「団長は一体どこに居るんですか!?」

整った身なりをした男性が叫ぶ。周りの酒場の連中はいつものことだと無視をしていた。

「団長代理は、今冒険に出られております。出直して頂くか、お待ちになるかお選び下さい」

ステラが何時ものやりとりを繰り返す。椅子に座り、肥えた腹を撫でている男性はステラに話す。

「団長さんは多忙を極めているようですね。前回も前々回も前々々回も冒険に出られていましたな。しかし、そんな偶然が本当にありますか?」

ステラを試す様な目でみるが、一切狼狽える様子はない。受付嬢が頼まれた飲み物を運んでくると、一言口をはさむ。

「あの人がここに居ることの方が珍しいですよ。白魔導士の依頼の現場から直行することも日常茶飯事ですし」

少なからず、ルージュも呆れた様子に、肥えた男は違和感を感じなかった様だ。

「ゴホン、何にせよ。我々にとってもこれ以上進展がないのは許されないのです。今しばらく待たせて頂きますよ」

ステラはその言葉に否ということはなかった。席を立つと、酒場の入り口から声が響いた。

「おーい! 団長代理が帰ってきたぞ!」

ギルドの団員が酒場の皆に帰還を伝える。

「おいおい、何ヶ月ぶりだよ」

「酒だ酒だ。今度はどんな大物を持って帰ってきたんだ?」

「……タイミングが良いのか、悪いのか」

扉が壊されんばかりの勢いで開かれたその先から現れたのは、フーリだった。

「皆の衆! 土産を持ち帰ったぞ!」

その両手には袋に溢れんばかりの食物、酒、兎も角この地では見ることすら出来ない食べ物ばかりだった。

「……優秀な白魔導士だと、お聞きしていたのですが」

想像とのギャップに、細く背の高い男が首を傾げる。ギルド団員に囲まれ、食料を狭まれるフーリがこのテーブルに付いたのは、手元の食料が配り終えてからだった。

 

 フーリは手に持っている何の肉か分からない骨付き肉を食べながら来客者に問う。

「で、なんの話だったっけ?」

おおよそ初対面の相手に臆した様子もないが、気遣う礼儀もない様に見える。

「現在のポーションの流通を良くしよう、という話です。基本的に冒険初心者が、先輩冒険者の補助の元、ダンジョンを捜索し、ポーションの元となる薬草を手に入れる。それが通過儀礼のようにもなっていますが、それだけでは現状末端の冒険者の手に届かない現状になっています」

その結果、冒険者によっては協会を通さず、現地の薬師に回復薬を求めたり、白魔導士が初心者のパーティにかり出されることが日常化している。

「我々は現状を憂い、回復薬の流通量を増やすことによって冒険者の安全を確保したいのです。その為には充分な人数と力を持つギルドと協力関係を取りたいのです」

なるほど、とフーリが頷く。

「それに貴方達にとっても、初心者達の保護に手を裂かれるのは本意ではないでしょう。充分に力のあるメンバーであれば、流通に必要な量を集めるのに然程時間が掛かる物では無いのです。全ては流通を独占するために、初心者に優先して斡旋する協会の懐を肥やす為の欺瞞なんですよ」

その言葉に、フーリがルージュに問う。

「そうなの?」

「大きな利益になっている事は否定しません。それと、冒険の基本を知って貰う為に有効な依頼として、初心者に勧めているのも事実です。私は、それがどういう意図で指示されているのかまでは、知りませんけど」

メンバーのココに問う。

「はン! 初心者に付き合ってボクの時間を割かれるのは、苛立たしいことだとは思うよ」

現状を好ましくは思っていない様だ。

「末端の協会の人達までが悪と言うつもりはありません。ただ、現状が歪である以上、不利益を被っているのは、冒険者達であると申し上げたいのです」

肥えた男がそういうと、フーリの返答を待つ。

「そっか、大体は分かった」

細く背の高い男が声を上げる。

「それでは!」

「お断りします」

 

 力尽くで来客を追い返すと、フーリは酒場で飲み物を飲み、一息を着く。

「ホットミルクです」

ルージュの運んできた飲み物を一口含む。その横にステラが腰を下ろす。

「良かったのですか? うちのギルドに利益がある話ですよ」

その言葉に、フーリは答える。

「良いのよ。損得勘定でギルド運営してる訳じゃないしね」

二人の会話に、ルージュが口をはさむ。

「でも、本当に良かったんですか? 私みたいな協会の人間が言うのもなんですけど、フーリさんのギルドにはいい話のようにも思えたんですけど」

ステラが笑って答える。

「まぁ、利益はあるでしょうね。少なくとも当分の間は需要のある回復薬を独占出来るんですから。だけど、その利益の半分は向こうに行くし、初心者の同行は結局のところ必要だから、手間は結局減らないのよ」

むしろ、全員が慣れた依頼をこなす訳では無いので、危険度は増えるかも知れない、という。

「要するに、面倒ごとを押しつけて、利益は手に入れようって話。分け前はくれてやるからって言われても、頷く理由にはならないわ」

ホットミルクをあおり、美味いと感想を溢す。

「複雑、ですねぇ」

ルージュがふと思いを溢す。それはもしかしたら、協会側から負担を掛けているルージュの罪悪感からかも知れない。

「そんなことないですよ」

ステラの言葉に、フーリが頷く。

「まぁ、面白くなさそうな話には、乗ること無い、ってだけ」

そう言ってミルクを飲み干すと、次の冒険の準備を始める。変わらないフーリの様子を見て、安堵した様な笑みをするルージュ。

 

 いつもの様に協会から依頼を受けてダンジョンに挑もうとするフーリに、ふと目に映ったのは負傷者達。

「どうしました!?」

フーリが駆け寄ると、多くの人間が怪我をしている。どうやら、ダンジョンの中でドラゴンに襲われた様だ。

「ドラゴン……古代種じゃなければいいけど」

ダンジョンから出てきた人間は、どうやら全く別の依頼でダンジョンに入った冒険者だった。だが、報告になかったドラゴンに襲われ、傷を負って命からがら逃げ出してきたらしい。

「助けてくれた冒険者さんが、まだ中に居るんです!」

囮を買って出た冒険者が、未だドラゴンと闘っているらしい。

「なんにせよ、僕たちには関係ない……って、言うだけ無駄か」

ココが呟くよりも早く、フーリはダンジョンに入っていく。それに対し、呆れた様子でココとキセキも入っていく。

「あの、貴方達は?」

剣士が答える。

「お節介焼きと被害者だよ……まぁ、なんとかなるさ」

 

 ダンジョンの中は、普通の洞窟の形状だった。細長い通路を抜けた先に開けた空間。水路が通っている場所や、袋小路、自然に出来た空間に様々な生物が生活することで迷路になっている。一つだけ特殊なことがあるとすれば、マナの肥沃な地下に繋がっているということだろうか。そのおかげで、様々な生態系が広がっている、そして極稀に、下層のモンスターが姿を現す事がある。

「……まさか、ドラゴンとはなぁ。皆無事だと良いけど」

モンスターに襲われている他の冒険者を庇う様に飛び出したのは良いが、闘っている最中に仲間とはぐれてしまった。いくら腕に自信があるとは言え、単独で魔力の多いドラゴンを相手をするのは自殺行為だ。

「痛っ」

だがしかし、足を負傷したため、遠くに逃げることも難しい。ゆっくりと進む、歩く位ならなんとかなりそうだが、下手に動けばドラゴンに居場所を知らせかねない。

「次にアイツにあったら、死ぬかもね」

独り言を呟いて、傷を確認する。右足に深い傷を負っている、他にもあちこちダメージがあるけれど、重傷では無い。だが、傷口が変色を始めているのを見て、ドラゴンに毒があることに気付いた。

「あれ、ちょっと不味いかな」

突然現れた白魔導士に驚き、なんとかこけるの防いだ少年。

「君が冒険者を助けた子? 思ってたより若いね」

笑顔で話しかけてくるフーリは、テキパキと応急処置をし、回復魔術を掛ける。

「あ、今魔術を使ったら!?」

そう言葉を話す少年を抱きかかえ、走り出すフーリ。間一髪のところで、ドラゴンと遭遇せずに済んだようだ。

「うん、まぁ、古龍ではなさそう。それどころか、生まれたて、かなぁ。どっちにしてもやばい相手ではあるけど……」

過ぎ去ったドラゴンの様子を確認しながら、ダンジョンの道を確認していく。どうやらダンジョンの深くまで潜ってしまっているらしく、ドラゴンと接触せずに戻るのは難しそうだ。

「マナに反応しているみたいです。魔術を使わずに戻る方法があれば良いんですが」

カイルと名乗る少年が、傷を抑えて呟く。全く使わずに戻ろうとすれば、時間が掛かりすぎる。その上、ドラゴン以外のモンスターと接触してしまえば、戦闘になる。そうなれば、魔術を使わなくても他のモンスターがマナを扱えば、ドラゴンの索敵に引っかかる。

「八方ふさがりねぇ」

狭い空間に身を寄せ合い、ドラゴンと他のモンスターをやり過ごす。

「助けに来て貰ったみたいだけど、ボクなら大丈夫です。だから、貴女一人で……」

カイルの言葉を途中で遮る。

「残念だけど、君を置いて戻ることはあり得ないからね。何のために来たか、分からなくなっちゃうし」

カイルがどうしてか、と問うとフーリは誤魔化した。

「君が居なくなるより、こっちの方がまだましだから、かな?」

悪いことにならない様に、なんとかしますか、そう言って魔方陣を描き始める。

 

 マナを集め始めると、直ぐにドラゴンが反応する。二人が居る場所まで来るのに、然程時間は掛からないだろう。

「リリィ、ドラゴンと闘わずにダンジョンから脱出できる?」

賢者の石に相談するが、答えは芳しくない。

(可能性は限りなく低いですね。貴方一人であれば、成功する可能性はあります)

リリィの言葉に、フーリは頷く。

「なら、逃げるのは無しね。脱出が無理なら……倒せる?」

フーリの言葉にリリィは答える。

(可能です。相手に大きいダメージを与えれば、深部への撤退を期待できます。相手はダークドラゴンの幼体であれば、尾の破壊及び一定以上の肉体の損傷で撤退すると思われます)

個体によりある程度変化しますが、と補足する。

「それなら、ぶっ倒して、大手を振って帰りましょ。尻尾は物理ダメージで破壊可能?」

(尾の先端は長年溜め込んだマナで老廃物などを固形化したものになります。硬度は高く、並の衝撃では破壊は不可能かと。破壊するのであれば、先端と尾の接続部分が望ましいです)

そっか、とフーリは頷く。

「それで、それは拳で狙えそう?」

(困難です。武器に使っているので、接近する際には高速で移動する対象にピンポイントで攻撃を与える必要があります。また、武器は尻尾だけではなく、牙も爪も、致命傷になりかねません、拘束するか、不意打つ必要があります)

だが、そうしようとすれば少年を巻き込む可能性が増える。

「少年を隠しての戦闘は?」

(不可、弱った個体を逃すことはしないと思われます。最悪の場合、マナの補充の為に捕食対象と取られかねません)

ドラゴンを弱らせたとしても、カイルが犠牲になるかもしれないのであれば、近くで守る方がまだマシだ。

「うーん、ある程度方針は決まったかな。あとはドラゴンをぶん殴って倒せばオッケー?」

(攻撃対象をフーリに固定する必要があります。その為、攻撃を避ける行為は行わず、また硬化によるダメージの無効化も危険です)

その言葉に、フーリは息を呑む。

「ふふっ、リリィは私に死ねっていうのね」

 

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風

最近温泉に行って来ました。
岩盤浴をしてみたんですが、良いですね、アレ。
サウナよりも楽っていうか、簡単に汗かけるし。
休みにまた行きたいなぁ。

それではまた、明日以降の暇時に。
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