異世界転生で白魔導士   作:3148

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道着を着た女性が、台本を手に取る。
リーデ「お久しぶりです、冒険者のリーデです。訓練をする時は道場に通っていた時のことを思い出して、道着を着る時もあるんです」
少し恥ずかしそうに微笑み、台本を捲る。
リーデ「今回は土竜種、つまりはワームについてですね。これがまた厄介な魔物で、私達だと巣や痕跡を見つけたら引き返すぐらいです。ダンジョンに灯がある保障はないので、暗闇だと殆ど見つけられないです。奇襲を受けて丸呑みなんてしゃれになりませんから。比較的柔らかい地層であれば掘り進む事が出来るし、彼らの体液が土を固める事になるので、ワームがいるからと地層が崩壊することは稀だそうです。ですが、割とダンジョン内部でも上層部で発見例が多いみたいですね。土に含まれるマナや栄養素を主食としているので、地形ごと変えてしまうような強力な個体がいるダンジョン深部では生き残れないのでは無いか、って言われてます。割と臆病な性格らしいですよ、知りませんが」
くすりと微笑むと再び台本を捲る。
リーデ「それでは、冒険の様子をどうぞ」


第二章 第二十四話 去りゆく賢者

 魔方陣が効果を発揮して直ぐに、ドラゴンが現れる。マナが低下している少年には目もくれず、魔術を発動しているフーリに向かって。

「ようし、そうそう、こっちこっち」

両手を広げて、ドラゴンと向き合う。長いリーチを活かし、尾による攻撃が得意なドラゴンは必殺必中のその尾の先端を恐ろしい速度でフーリへと突きだす。

「……ガハッ」

大量の血液が逆流し、口からあふれ出す。腹部に突き刺さる尾の先端は易々と体を貫き、風穴を開ける。その瞬間に、ドラゴンは違和感を覚える。

「はなさ……ないよ」

貫いた尾の先端とその繋ぎ目を掴み、足を踏ん張って固定する。ドラゴンが襲う前から発動していた魔方陣は再生魔術で、貫かれた部分から再生し始めている。

「はぁああああっ」

両手に力を込めて、繋ぎ目の一番弱い部分を引きちぎると、ドラゴンが悲鳴を上げる。無理矢理尾の先端を引き抜くと、腹部から大量に血が流れるが、直ぐに穴が塞がる。

「……覚悟しなさい」

尾から流れる血と、バランスを失い転倒するドラゴンその頭部に拳を突き立てる。

グォォオオオオ

額の甲殻が一部割れ、更に悲鳴を上げる。爪を振り回すが、その全てを紙一重で避け、足下に蹴りを放つ。転倒するドラゴンに向かって更に手刀を振り下ろし、首の根元の鱗を吹き飛ばす。

「かかってきな! 魔力がからっけつになるまでぶん殴ってやる!」

フーリが拳を構えると、ドラゴンは怯み、威嚇する。何度か吠え、後ずさりするとダンジョンの奥へと後退していった。

 

 ココとキセキが合流した時には、既に事態は終わっていた。

「……来てくれたんだ」

「当然だ、君一人だと無茶するからね。放っておくと何が起こるか分からない」

ココがフーリを一瞥し、目を見開く。

「……それは」

フーリが首を横に振ると、それ以上言葉を言わない。疲れ果てているカイルと共にダンジョンの入り口を目指していく。

「折角ドラゴンと闘って、何も戦果がないと言うわけにはいかないだろう。尾の先端と、賢者の石を回収してくる」

そういうとココは、キセキと共にドラゴンと闘った場所に向かい、戦利品を手に入れた。その後、合流してダンジョンの入り口まで戻る。

 

 「それじゃ、この子を頼みます」

治療をして、安全地帯まで戻ってきたからか、安心して眠っているカイルをダンジョンの入り口に来ていた協会の人間に手渡すと、ココは戻ると告げた。

「ボクは戻らせて貰うよ。研究したいものが出来たからね。ドラゴンの尾と鱗は君たちが持って帰ると良い」

キセキは頷き、ドラゴンの尾を手にする。言葉の少ないフーリに、ココは言葉を放つ。

「……未完成品とは言え、賢者の石だ。ボクの研究に大いに役に立つはずだ。その礼じゃないけどね、進捗があれば君にも報告しよう、光栄に思うと良い」

その言葉に、一瞬呆気にとられた顔をして、フーリは微笑んだ。

 

 酒場で魔術師に嬉しそうに語る少年。

「僕の傷を一瞬で治してくれたんだ。彼女が居なかったら、僕は今頃ダンジョンの中でドラゴンに食われていたに違いない」

助けてくれた恩人を嬉しそうに語るカイルと、機嫌が悪そうに聞く魔術師。

「そう、何回目よ、それ」

何度目か分からない話を、それでもなお聞いているのは、少なくとも魔術師がカイルに好意を向けているのだろう。

「会ってお礼を言いたいけど、どこにいるんだろう武闘家さん」

そう呟くカイルは、肉料理を口にする。

「そろそろ出る時間じゃ無い?」

魔術師に言われて、冒険に出かける準備をまとめ、剣を担ぐ。

「それにしても、カレンは一緒に行かないの?」

いつもの様に、同行していたので急に別行動を言い出したことにカイルは疑惑と言うよりは不安を抱いていた。

「そうよ、説明したでしょ。偶々、私の欲しい依頼が舞い込んできただけだから、次からはまた一緒に冒険しましょ」

そう笑顔で告げると、カイルは冒険へと出発した。それと入れ替わりで席に座るのは情報屋と呼ばれる青年だった。

「折角俺が貴重な情報を教えてやったのに、まだあいつには伝えてないのか?」

そういうと、酒を煽る情報屋。随分と高値で売れた様で、羽振りは良さそうだ。

「買った情報をどうしようと、私の勝手よ。まぁ、先に私にくれたのは感謝してるけど」

そういうと、カレンは食事を終える。

「おっと、行くのかい? 愛しの勇者様の愛しの探し人の所に」

情報屋の言葉に舌打ちをすると、苛立たしげに席を立つ。

 

 今回はダンジョンの深部、そこから溢れる湖の調査になる。各々の判断で採取した物は回収できるため、魔術師にとって垂涎の依頼だ。しかし、マナが濃い場所になるため、危険なモンスターが現れる可能性も充分にある。その為、協会から白魔導士も同時に派遣されている。というのは建前で、生態系を悪戯に破壊するような採取行為を防ぐ為でもある。

(例の白魔導士も来るって聞いてたけど)

集まったメンバーは、魔術師とそれに同行する戦士、それと武闘家だけだ。

「折角だから、自己紹介からはじめましょうか」

マントを羽織り、手甲をつけた女性が仕切り始める。

(魔術師、どうみても攻撃系の黒魔術士に見えるけど、白魔導士なのかしら)

カレンが物思いにふけっていると、武闘家が話を続ける。

「私が協会から派遣された白魔導士。皆さんからしたら鬱陶しいかもしれないけど、極端な行動さえしなければ基本的に行動を規制するつもりもないから。出来れば仲良くして貰えると嬉しいかな」

爽やかな笑みと同時に、魔術師に電撃が走る様な衝撃が訪れる。

(こいつが、敵だ!?)

 

 ダンジョン自体は複雑な事は無く、洞窟をくぐっていき、奥にある湖に辿り着くだけだ。だが、マナが濃い目的地に近くなれば成る程、凶悪なモンスターと遭遇しやすくなる、というだけだ。

「ストップ、足下が悪くなってる」

先頭を歩いていたフーリが制止する。

「足下が悪くなってるから何? そもそも何で白魔導士が先頭立って歩いてるわけ?」

カレンがいらいらをぶつける様に言葉を投げつける。どうやら、戦士ともう一人の魔術師も同様の感想のようだが、次の瞬間、何故足を止められたのか理解する。

ボゴボゴボゴッ

奥から地面が隆起し、目の前の地面から現れたのはワームだった。地表付近ではそもそも生息していないので恐れることはないが、洞窟内などの閉鎖空間では、縦横無尽の動きに苦戦させられるモンスターだ。挟み撃ちにあい、全滅したという噂も少なくない厄介なモンスター。

「やっぱり、地竜種だったか」

牙が多数着いている頭部の一つ先の節に両手で貫手を突く。そうすることで、不自然にワームが空中で停止する。

ノッキング

魔術に寄り変換されたマナが対象の筋肉、或いは神経系に作用し、肉体の自由を奪ったり、意識を奪う事も出来る。正確に作用させるには対象の対組織について詳しく無ければならない。

「ワームにしては、ちょっと小型かな。ってことは、単体じゃ無くて群れでの可能性があるね」

そういうと、空中で停止しているワームにゴメンねと告げて胴体にあたる部分に手刀を突き立てる。勢いよくワームの体液が飛び散り、洞窟内にまき散らされる。

「さ、行こっか」

そう言うと、ワームのノッキングを解いて歩き出すフーリ。

「……折角出てきたワームを逃して良いの?」

戦士と同行している魔術師がフーリに問う。

「うん、あのワーム達は多分襲ってこないだろうし、良いと思う」

その言葉に戦士が首を傾げる。

「ここがもしもワームの巣であれば、他のワームが襲ってくるのでは無いか?」

戦士もワームと戦闘経験がある様で、その厄介さは知っているらしい。

「だから、ワームの体液を撒いておいたの」

ワームの体液には二種類ある。地面を柔らかくする体液と硬くする体液だ。柔らかくする体液は勿論地面を掘り進む際に頭部付近から噴出されるが、掘った後に地面を固める体液が排出されているのはあまり知られていない。これにより、地盤の崩壊を防ぎ尚且つ再度同じ場所を通るのに役に立つ。

「そして、地表に撒かれたワームの体液は同種族避けになるからね」

その言葉に、カレンは疑問を抱く。

「どうして?」

嬉しそうに答えるフーリに、多少に苛立ちを感じるカレン。

「地面を掘り進んでいるなら、地中にしか体液は撒かれる事は無いはず、同種族は天敵の存在を危惧して近づかないの。ついでに言うと、地表が固まると獲物を襲いにくいしね」

そもそも地中の獲物で普段生活している生物なのだ、巣の近くに獲物が現れるか、餓えが無ければ地表の生物を襲うことも無い。

「一応、冒険者さん達が依頼を受けているから義務っていう訳じゃないんだけど、護衛みたいな事もあって先頭を歩いてるんだけど。誰か代わる?」

フーリの言葉に対応する人間はいなかった。

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風

創作してると食生活とかインフラとかどうなってんのかな、って考える時があります。
興味が湧きますが、現実世界を探索するところまでは行かないですね。
そう思うと、ダムを見に行くツアーとか楽しそうと思う、時間があれば行きたい、あとお金(笑)

それではまた、明日以降の暇時に。
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