レッド「俺の名前はレッド、所謂情報屋だ。何か知りたいことがあれば聞くと良い。但し、有料だがな」
再度台本に異常がないか確認しつつ、捲る。
レッド「今回は武闘家について、だな。いつか白魔術に関して話したらしいので思い出すと良い。比較的に自身の体に扱う白魔術は簡単だ。勿論適性はあるが、他人に施す程の白魔術は得意としない人間は、武闘家や戦士、といった職業に適している。物資の乏しいダンジョンでは自分を回復出来る事は生存率も高く、継戦能力も高い。そして、自身を回復する程度の白魔術を行えるかどうかで、クエストの達成率は大きく変わる。武闘家であれば自分の体を強化する白魔術を行う事が出来るので、武器を扱うよりも自分の拳や脚を武器に使う。逆にそこまで得意で無ければ魔術による強化を既に受けている武具を利用する、あくまで比率の話だ。武闘家も魔術による強化を受けた手甲や足甲を使う物もいる」
一度頷いて台本を捲る。
レッド「喋りすぎたな、これ以上は料金を貰わないと、な。これが仕事だからな」
カイルがオーソにドラゴンを倒した時の事を尋ねる。
「どうやってあの強力なドラゴンを討伐したんですか?」
幾度となく問われてきたその内容に、躊躇うこと無くオーソは答える。
「私だけで倒した訳じゃない。むしろ殆どの戦果は仲間のおかげだろうな。ドラゴン討伐の為のパーティを組んでいたんだ」
その数、十六人編成だという。通常のクエストで対象人数は四人だという事を考えると、その異常さは冒険者であれば想像に難くない。
「十六……そんなに!?」
カイルの驚きと同時に、フーリも驚く。
「そりゃあ、ドラゴン相手にするならそうなるわよね。でも、私達が出会ったドラゴンは流石にそこまで異常な強さでは無かったと思うんだけど」
カレンが首を傾げると、オーソはふと微笑む。
「そうか、それはきっと幼少の個体だったのだろう。ドラゴンに成り立ての個体であれば、上位のモンスターと変わりないからな。私が参加させてもらったのは、古代種でこそ無かったが、充分に成長した個体だった。討伐出来たことも、偏に運がよかったことと仲間が死力を尽くしたことに他ならない」
そう呟くと、カイルは頷く。
「……僕たちのパーティは幼少のドラゴンでさえ、一瞬で壊滅しました。あの時、助けがこなければ、僕もカレンも、生きていないと思います」
カイルの言葉に武闘家は首を横に振る。
「例え幼少のドラゴンであったとしても、力なき者では生き延びることは敵わない。生きて帰ってきたことを誇ると良い。それに、ドラゴンは力の象徴でもある、それと相対した冒険者は貴重だ、もっと誇っても良いと、私は思うよ」
その言葉に嬉しそうに頷くカイル。しかしオーソはフーリの方を見る。
「君は……」
オーソの言葉を遮る様に、モンスターの群れが現れる。
「数は、およそ二十! 赤の個体もいます!」
フーリがモンスターを索敵すると、多勢だということが分かる。遠距離ではあるが、酸をはきかけてくる個体もおり、立ち止まっていると直ぐに全滅するだろう。
「一旦引くぞ、南の洞窟の方に向かって走れ!」
フーリは白魔術による肉体の保護、及び強化を行いながら、カイルとカレンは牽制に魔術を放ちながら走る。
「はぁぁあああああ!」
四人が洞窟に入ると、入り口の一部を破壊し、足止めをするオーソ。
「これで少しは時間が稼げるだろう」
四人が一息をつくと、フーリが口を開く。
「私に良い考えがある」
オーソが神妙に頷く。
「これなら、上手くいくかもしれないな」
カイルはフーリの提案に賛成し、着々と準備を進めていく。カレンも協力していくが、こちらは半信半疑だ。
「理屈は分かるけど、そんなに上手くいくの?」
失敗してもデメリットは少ないから、とフーリは説明する。作業を続けている間にも、壁の向こうから、入り口を塞いでいる岩を嚙み砕いて進んでいる音が聞こえる。徐々に掘り進んでいく音が近くなり、ついには壁が破られる。
ギシャアアアァァァ
壁を破ってきた蟻の殆どが、弱り切っていた。
「はぁああ!」
オーソの蹴りが、弱った蟻の息の根を止める。
「くらいなさい! 氷の矢、アイスアロー!」
魔術が蟻の甲殻を貫き、倒していく。蟻の幾つかは岩の壁の外で倒れていて、当面の脅威は去ったようだ。
「……こいつら、共食いもするのね」
岩壁を食べて進む中で、餌の取り合いになったのか、それともそもそもお互いをあまり仲間意識をしていないのか、蟻の牙の跡が甲殻に残っている。
「しかし、蟻の腹の中で雷魔術を発動させるなんて、良く考えつくな……」
フーリの提案は、鉱物を主食にしているありであれば、食い進んでいくと予想し、岩に雷魔術を仕込む。蟻の腹に入った瞬間、蟻の魔力に反応して雷魔術が発動する。甲殻による防御がない内部からの魔術には蟻も抵抗する術がなかったようだ。
「上手くいってよかったね!」
そう言って、カレンとカイルを褒めるフーリ。その姿に、オーソが口を開いた。
「君が、ドラゴンを追い払った白魔導士だね」
その言葉にカイルが驚く。
「貴女が、僕を助けてくれた……!?」
フーリが照れくさそうに頷くと、カレンが突っ込みを入れる。
「何を照れくさそうにしてんのよ!」
カレンが何故オーソが気付いたのかを聞く。
「私も探していたのさ、凄腕の白魔導士をね。何せ幼体とはいえ、私達が苦労をして討伐したドラゴンを一人で追い返すなんて、どんな人間なのか、気になって仕方ないさ」
その言葉に嘘はなかっただろう。協会に協力している白魔導士で凄腕がいるというなら、探すのに然程苦労はない。
「高難度の依頼で、白魔導士を協会に手配すればいい。凄腕の白魔導士なんて数えるほども居ないし、その上で近接戦闘に秀でている人間なんて、君以外いないだろう?」
その言葉にフーリは困った様な顔をした。
「そんなことは、ないんじゃないかな?」
他の二人が無言で首を横に振った。
カイルがフーリに頭を下げる。
「あの時は助けて頂いてありがとうございました!」
カイルの熱心な姿に、圧されているフーリ。
「いや、いいって。私が気まぐれで助けた様なものなんだからさ」
そういうフーリは本当にカイルの態度に困惑している様な感じだった。
「まぁ、勿論私も感謝はしているわ。遅くはなったけど、礼は言わせて貰う」
オーソがカレンのことを意外そうに見つめる。
「なによ?」
「いや、意外と素直なのだな、と。フーリの事を嫌っている様に見えたが」
その言葉に、不機嫌になるカレン。
「好きでも嫌いでも、恩人に感謝ぐらいするわよ。他でもない、自分とカイルの命だもの」
ドラゴンに対して立ち向かう事は、言葉にするほど単純な物では無い。紙切れの様に命が失われる可能性があるのだから。
「困ったらいつでも僕たちを呼んで下さい! どこでもお手伝いしますよ」
胸を張ってフーリに宣言するカイル。フーリに睨みつける様に、私も同行する、とカレンが言う。その二人に腕を回して感謝を言うフーリ。
「ありがとう」
フーリの言葉の意味が分からない二人だったが、フーリからの説明は無く、依頼を引き続き行う。
「ここが最深部ね」
巨大蟻の巣の最深部は更に奥の洞窟に続いていた。だが、そこが最深部だと断言していたのは、そこから先が明らかに空気が変わっていたからだ。
「ここからは、更にマナが濃い。地核に更に近づいているのだろう」
そこから先の危険度は、それまでとは桁違いになる。ドラゴン討伐と同様に、万全の準備をして、生きて帰れるかどうか、という世界だ。
「……ん?」
カイルが何かを見つけ、拾い上げる。
「フーリさん、これって……?」
拾い上げたそれは、赤く光る石だった。感覚的に大きなマナを秘めていることが分かる。そして、明らかに他の魔石とは違うのが何らかの魔術的な痕跡が見て取れるということ。
「……賢者の石!?」
酒場に戻ると、フーリは一目散に駆け出し、ココの研究室に向かう。
「なんだい、僕は賢者の石の研究で忙しいんだ。くだらない用事なら、受付嬢か、酒場の馬鹿達にやって……」
「賢者の石が見つかったんだ!」
フーリの言葉に、扉を閉めようとしたココが、急いでフーリに確認する。
「賢者の石だって! 早く言え、嘘じゃ無いだろうな!?」
ココに賢者の石を手渡す。
ある程度調べがついたのだろうか、ココが研究室の扉を開ける。
「ど、どうだった?」
フーリの言葉に、溜息交じりで返答するココ。
「君は馬鹿なのか? そんなに早く解析の結果が出るなら、研究の対象にすらならないよ。魔力反応はあるが、自発的な活動は認められない」
フーリが言う、人格の様なものは認められない、ココはそう言った。
「そっ、か」
少し残念そうにするフーリにココは言葉を告げる。
「これは前の賢者の石の破片とも照らし合わせての結果だが、明らかに人工的な魔術が作用している。少なくとも自然にできあがった物では無い事は確かだ。まぁ、まだ構築が判明した訳じゃないけどね」
そういうと、白衣を翻し、研究室に戻るココ。感謝を述べて、フーリは酒場に戻っていった。
読了ありがとうございました。
これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
枝豆茹でてみた。
美味しいけど、茹ですぎて食い切れねぇ……
残った分は冷凍しないとなぁ……
それではまた、明日以降の暇時に。