老「初めまして、儂は老(ラオ)だ。こういった形の会話は初めてだ。この歳になっても初体験はあるものだな」
老が呼吸をする度に、大気が震える。
老「今回はビッグアントの紹介だな。儂は嫌いじゃ。眠っている間に儂の甲殻をかじりに来た時があってな。一匹や二匹なら可愛い物じゃが、群体で押し寄せよって、全て焼き払ったが……思い出しても寒気がするわ。あやつらは鉱物の混じる石を食らう。見た目通り知性という物がないのだろうな、それらしいなら大体腹に入れてしまう。前の同族が喰えば、自分も喰う、倒れる姿を見ても尚だ。習性こそ単純だが、数が脅威じゃな。あとは餌が多ければ際限なく体を大きくするのも厄介だ。地域のマナによって大小があるが、種族的に同じになる。人の膝ほども無い地域もあれば、人の倍はある地域もある。だが、ダンジョンの下層にはおらんだろう。餌を取りに来る事はあるかもしれんが、巣穴はない。もっと厄介な奴がおるからな」
老の溜息のような鼻息は、洞窟全体を震わせる。
老「おお、もう時間か。いつでも来れば良い、会話だけであれば歓迎じゃ」
フーリが酒場に戻ると、ルージュが話しかけてきた。
「あ、あの、少し良いですか!?」
珍しく慌てた様子のルージュに面食らったフーリは、言われるがままについていくと、人気の無い場所まで来る。
「どうしたの?」
ルージュが周りを見渡し、人が居ないことを確認して口を開く。
「最近、各所で賢者の石が発見される様になったんです。未だ公表はされていない情報ですが、いずれ上位の冒険者さんに依頼が来ると思います」
その言葉に、自分も見つけたと答えるとルージュが更に驚いた表情になる。
「まさか既に手に入れているなんて……いや、それよりもです! 変だと思いませんか? 賢者の石なんて、伝説級の代物ですよ!?」
伝説級と言われても、フーリにとっては偶然この世界に来たタイミングで手に入れたことのあるものだったのだ、勿論今まで見ることが極端に少なかったことから、希少価値のあるとは思っていたが。
「何か問題があるの?」
その言葉にルージュが顔を伏せる。
「何が、と具体的なことは言えません。勿論杞憂の可能性も充分にあることは分かっています。だけど……」
フーリは黙って、ルージュの言葉の続きを待った。
「自然発生だとしても、人工的に発生しているのだとしても、何かの前兆かもしれない。いや、むしろ何かの異常の結果が突如現れた賢者の石だとすれば……」
もっと大きな事態になるだろうということが、予見されるということだ。不安そうなルージュの沈んだ表情に、フーリは頭を撫でる。
「大丈夫、何か起こったとしても、ギルドの皆もいるよ。今、ココが賢者の石について調べてくれているし、なんとかなるって」
その言葉に少し安堵したのか、ルージュは少しだけ表情を柔らかくした。
各所で賢者の石の情報を求める冒険者は多い。それの情報を知っているだけでも、当分の間飯には困らないだろう。もしも実物を持っている人間が居れば、争いになってもおかしくは無い。
「分からない事があったら、先人に聞くのが一番かな。挨拶していこうか」
そう言うと、フーリは出発の準備を始める。
古代種のドラゴンが住む洞窟に顔を出すフーリ。
「おう、こないだ振りだな。本当に話をしに来てくれるとはな」
そういうと、フーリを歓迎する古代種の老。
「そりゃ、この間は急いでただけだしね。ちょっと聞きたいことがあるんだけど、いいかな」
そういうとフーリは近くの岩に腰掛ける。
「ああ、儂の分かる事であれば答えよう」
その言葉に、少し安心した表情になるフーリ。
「ありがと。賢者の石って知ってる?」
その言葉に、老は少し目を細めた。
「知っては居るな。実物等、随分昔に見たきりだが。魔術生命体の行き着く先が、どうかしたか?」
その言葉に、フーリは首を傾げる。
「魔術生命体の……どういうこと?」
その言葉に、老は答える。
「人間達が精霊だの妖精だのと呼ぶ存在。要は決まった肉体を持たず、マナによる自我を形成している、生命体だ。その殆どが自意識を持つまではならないが、極稀に知識を得て、自意識を持つと肥大化するようになり、いずれ魔力の塊となり、マナと魔術式を内包する残骸になれ果てる」
その自我が喪失したものが賢者の石だと老は言う。
「まぁ、中には魔法にまで至る個体も居るらしいが……そっちは見たこともないな」
聞いた事があるだけで、本当かどうかは分からん、と老が言う。
「ふーん、そっか。じゃあ、リリィも魔術生命体だったのかな」
そう呟くと、老がそれを否定する。
「そいつは、違う。未完成の賢者の石だと呼ばれていただろう? ああ、そう言えば、似た様な劣化品が良く出てくる様になったか」
マナと魔術式を内包し、知識や経験、或いは自我を持つ鉱石の劣化品、それがリリィだったらしい。
「えっ、今出回ってるのって、劣化品なの? いや、個人的にはどっちでもいいんだけど」
意外だったと、呟くフーリが違和感に気付く。
「……マナと魔術式を、内包している生命体が、行き着く先?」
それに思い当たる節が、一瞬よぎった。それは、偽物とはいえ賢者の石と長い時間接していたからかも知れない。
「ああ、魔術を操れる生命体なら、どんなものでもそうなり得る可能性はある。特殊な条件下にはなるがな。魔術生命体が核に存在しない限り、マナは消費されていく一方だからな」
老はそれが劣化品の由来だという。とはいえ、本物に近いものであったとしても、精霊や妖精と呼ばれるものの摩耗や消費は避けられない。どの道、いずれ朽ちゆくものだと、話す。
「……ねぇ、一つ聞いても良いかな?」
酒場に入ると、緊張感が漂っているのに気付く。何事かと周りを見回すと、副団長とルージュが話し込んでいたのが分かった。
「どうしたの? 随分と深刻そうな顔だけど?」
フーリに気付いて居なかったのか、ルージュが慌てて机の上に広げていた資料を隠す。
「あっ、これは、その……」
珍しい慌て振りに、興味をそそられる。
「隠し通せるものではない。それに、知らないところで暴走されるよりかはマシ……のはずだ」
何故唐突にディスられたのかは分からないが、椅子に座ってその紙を手に取る。それはクエストの依頼書だった。
「……吸血鬼討伐?」
読了ありがとうございました。
これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
ちょこちょこモンハンやってます。
ガンスの砲術レベル上げれるってマ?
ルナルガとか稀ツネ武器が見直されるんですかね?
それではまた、明日以降の暇時に。