異世界転生で白魔導士   作:3148

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台本の前に赤い石が置かれている。
リリィ「初めまして、賢者の石ことリリィと申します。本編で喋ることが少ない為、こちらで話してみるのはどうか、と提案されたため、一先ずご挨拶の程、お見知り置きを」
まるで風でも吹いたのか、独りでに台本が捲られる。
リリィ「まずはフーリとプイ様がいる村について。人口は百人程の小さな集落です。多少標高が高い山林地帯にあり、動植物が多く、治水、食糧問題も殆どなく平和な村です。珍しいかと聞かれれば、各地によく見られる集合形態であり、むしろポピュラーと呼ばれても良いぐらいなのですが……平地にある街と比較すればどうしても人口規模が少なく、田舎者とされることが多いようです。街にいる人達も村出身の人間も少なくないはずなのですが……っと時間が来たようですね」
再び台本が独りで捲られる。
リリィ「それでは、異世界と呼ばれる物語を」


第二話 白魔術を特訓し、岩を割る

 体調も万全となり、軽くストレッチをして、プイが来るのを待つ。

「白魔術の素質かぁ、転生したならそういう素質があっても良いよね」

漫画や小説の世界であれば全ステータスマックス! という物語も有り得るだろうが。

「初手ゴブリン敗走だもんなぁ、あんまり期待は出来ないかも」

現実は非情である、となる可能性も十分にある。何しろこの世界に来て未だに何も分かっていないに等しいのだから。

「待たせたな」

プイが持ってきたのは、小枝の様なものの先にルビーの様な宝石がついた物。

「杖だ!」

魔術師っぽいものに、テンションが上がる。

「コホン、お前の素質を見せて貰う。主に二つ、魔力量と白魔術の適正があるかどうか、だ」

そういうと、プイは杖を振るう。緑と白が混ざった様な柔らかな光が舞い、地面に触れるとその周りに植物が生え始める。

「白魔術は端的に言うと、自分の魔力を他者に分け与える様なもの。この杖には幾つかの白魔術を刻み込んである。魔力を込めるだけで白魔術が発動するが……魔力や適正がなければ、何も起きん」

杖を手渡し、それを握る。緊張で手が震えるが、でこぼこした感触のおかげで、無様に取り落とすということだけは避けられた。

「……」

魔力という物がなんなのか、全く分からない。RPGでいうMPで良いのだろうか。何をすれば証明出来るのか。

 そんな疑問は、握った杖から溢れる光が払拭してくれた。

「……ほう」

溢れる光が指の間から零れ、色とりどりの光がふわりふわりと揺れながら、地に落ちていく。落ちた光の内の幾つかから、植物の芽が開いた。

「やった!!」

喜びの表情を見せると、プイが一呼吸置いて答える。

「合格だ」

 

 それから一月、プイを手伝いながら過ごしていく。村の外れにある家屋であるが、交流が無いわけではない。むしろ多いと言っても良いだろう。殆ど毎日村人がこの家を訪れるからだ。時折村人以外も訪れるが。

「いらっしゃいませー」

プイが森に薬草を採りに出かけたり、他の人の治療をしている間の受付をしたり、案内したり、清掃や片付けもする。

「へぇ、あの偏屈魔術師が弟子とはね。年を取ったから丸くなったのかね」

偶に訪れる冒険者と呼ばれる職種の人間に驚かれるのにも慣れてきた。

「ここは品揃えが良くて助かるよ」

「ありがとうございました、またよろしくお願いします」

代金である銀貨を受け取り、薬草からつくりだした飲み薬と解毒薬と塗り薬を手渡す。どうやらこれが本日の最後の客らしい。

「さぁて、今日も魔術の特訓しますか」

そう言って、鍛錬を開始する。

腕を頭の後ろに組み、脚を肩幅に開いて、ゆっくりと腰を落としていく。

「い~ち」

ゆっくりと息を吐く様に数字を数える。いわゆるスクワットだ。なるべく時間を掛けて膝を九十度に曲げ、ゆっくりと息を吸いながら立ち上がる。

「にぃ~」

数えながらなのは単純に息を吐きながらになるための物である。ちなみに白魔術の訓練に何故筋トレなのかというと、魔術には体力が必要なのだ! という体育会系の理論では無く。

「ひゃ~く」

スクワットの回数を重ねると、体力を消耗する。充分な負荷も掛かっている様で、汗の量も衣服に跡が出るほどかいている。

「”ヒール”」

師匠から預かった杖で、自らに回復魔術を行う。つまり、自分の体を癒やしたり、体力を回復する魔術は難しくない。魔力を代謝出来る人間であれば多かれ少なかれ行っていることだからだ。問題は他人を治す時には、他人に合わせなければいけないということだ。千差万別の肉体にその時々の体調に合わせるのは至難の業である。故に白魔術を扱える人間は少ない。多くの人間に割に合わないと思われるのだ。

「えっと、体力の回復と肉体の修復は別々に行わないと、だっけ?」

細かく白魔術を使い分ける事に寄り、経験の回数を増やし、寄り精密に操れる様にという特訓だ。

「よし、回復したし、特訓再開だ!」

白魔術により疲労の回復を感じた後、再びスクワットを再開する。

 

 「頂きます」

食事の前に手を合わせ。習慣付いた行動をする。その所作に、プイは驚いている様な、不思議な物を見る様な顔をする。

「この辺りの地域は、太陽礼賛だったはずだが」

太陽礼賛と、知らない単語が出てくる。

「太陽……なんですか?」

それを知らないことに驚いている様だ。

「大地信仰ではないのか? いや、形骸化している作法だけが残っていたのか……」

ぶつぶつと呟いた後、プイは太陽礼賛と大地信仰について語り始める。

「簡単に分けると、魔術師は基本的に大地信仰だ。そしてそれ以外の地表に暮らす人間が太陽礼賛だ」

その言葉に素直に聞き入れるフーリ。

「頂きます、が大地信仰なんですか?」

そうだ、とプイが頷く。

「マナを感じることが出来なければ、神を知ることが出来ないからな。そうでない地表の民達は太陽礼賛が殆どだ」

神を知る、と言う言葉に驚く。

「神が、いるんですか?」

フーリの言葉に、ふむ、と返答に一拍置く。

「神、という人間も居る、というのが正しいな。手を合わせ、祈りを捧げる事で病を遠ざける。そう言い伝えられている」

マナを感じる魔術師は、マナの流れが大地に還るのを、神の業だと信じているようだ。

「実際に、祈らず死骸を放置すれば、魂とマナが離れず無意識に病原菌を運ぶゾンビになることもある。食事に至っては、しっかりとマナに還元されていなければ、吸収する過程で内蔵にダメージを受けることさえある」

所作や祈りは、魂がマナと離れて行く事を、大地に還る事を観測することが肝心らしい。原理自体は不明だが、観測すれば大地に還ることを知り、そこに神の存在を見いだす、ということだ。

「まぁ、信仰心等という物を持ち合わせなればいけない、というつもりはない。しかし、その所作と慣習を覚えておくべきだろう」

食事の前後の所作と死に対して祈ること、これらは続けていくべきだという。

「それらの恩恵を忘れ、太陽の恵みに感謝すべし、というのが太陽礼賛だ」

言いたいことは分かるが、魔術に通ずるものであれば、宗旨は問わずとも所作を覚えるべき、と言うことなのだろう。

「ご馳走様でした」

両の手を合わせ、空になった皿に感謝の言葉を紡ぐ。

 

 プイがフーリを見ている。いや、凝視している。

「……どうされました?」

特訓を命じられてから一ヶ月か経つ頃、師匠がつぶやく。

「特訓はサボっていないか?」

フーリは心外だと言わんばかりに答える。

「サボるどころか、最近は回数を増やしているくらいですよ」

特訓以外で杖に触れる事は禁止されているので、暇があれば特訓をする様にしている。プイが見ているかどうかにかかわらず。

「そうか……その割には体つきが変わらんな」

どうやら筋肉がついたかどうかを見ていたらしい。一ヶ月やそこらで簡単に肉体改造ができるのであれば世話は無い、そう思ってはいるものの口には出さなかった。

「まぁいい、特訓の成果をみるとしよう」

そういってプイは岩を指さす。

「え、なんでしょう?」

フーリが首を傾げると、当然だといわんばかりの表情で告げる。

「岩を割って見せろ。手段は問わん、それが出来なければ、特訓は次に進まんぞ」

岩を割ることの何が白魔術の特訓になるのか分からない。だが、プイの雰囲気に嘘のようなものは感じられない。というよりは、特訓の成果として当然だ、と言わんばかりだ。

「……岩を割るための特訓じゃなかったと思うんですけど」

「口答えする気か?」

その言葉に口を噤む。フーリは思考する。どうすれば岩を割れるのか。そもそも人の力でどうこう出来る様なサイズの岩では無い。全長1メートル程度の岩は、成人男性四人がかりでも持ち上げることすら不可能だろう。少なくともフーリの元いた世界では、そんな事が出来る人間は存在しなかった。映像の向こう側ですら、素手で瓦割りをする程度のものだ。

「仕方ない」

覚悟を決める。一ヶ月程度鍛錬したところで、焼け石に水にすらならないだろう。格闘技を習っていたわけでも無いし、喧嘩をしたことすらない。拳の握り方すら知らないフーリ逆立ちしても出来るとは思えない。それでもプイは、別の指導をしてくれるとも思えない。そうでないなら、一ヶ月筋トレだけを指示しないだろうし、事前に目標を伝えているだろう。

「おおおぉぉぉりゃああぁぁぁ」

岩なんか殴ると、自分の方が痛いに決まっている。それでも躊躇いなく拳を突き出せたのは、特訓の一環であるならば、治癒魔術を掛けて貰えるか、或いは杖を借りて治す事が出来るはずだ、という打算的なものだった。

ガンッ

拳が岩に衝突し、予想外の事態がフーリの眼前に繰り広げられる。

「……は?」

訪れるはずの拳の痛みは、驚きに因って感じるのが遅れた。相当な速度で岩にぶつかった以上、皮膚は破れ、一部の骨は歪んで割れているかも知れない。握った指が固まったまま悲惨な姿になっているが、それに気付くには少し時間がかかった。

「肉体の保護の魔力制御が出来ていなかったか。だが、魔力補助は機能している……いや、単純に魔力量が多いだけかも知れんな。どちらにせよ、魔力制御の訓練が先か」

そういうとプイは杖をフーリに投げて渡す。右手で受け取ろうとして、初めてボロボロになった拳を認識した。

「いったあああぁぁぁぁ」

急いで落とした杖を拾い、回復魔術を自分の右手にかける。痛みで中々集中出来ていないが、それでも、数分で骨折も含めて右手は元通りになった。

「……岩、だよなぁ」

飛び散った破片を拾い上げて、岩の硬さを再確認する。それは紛れもなく硬い石で、何度触ろうが易々と砕ける類のものでは無い事を確認する。

「いや、それでも白魔術とは関係ないよね!?」

 

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
ようやくフーリの白魔導士の道が始まりました。
この先どうなるのかというと、私にも分からん(適当
あっ、見た目は銀髪ポニテの可愛い系です。
それではまた、明日以降の暇時に。
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