プイ「ふむ、久しぶり……と言って良いのか。プイだ」
台本を捲る手に違和感を覚えたのか、自らの手を何度か見る。
プイ「今回は協会の酒場について、だ。私も何度も利用した施設だからな、専門では無いが知識はある。協会の施設の一つで有り、冒険者でなくとも利用は出来る。だが利用者の殆どは冒険者だ。酒場としては最低限の飲食物しかないし、アルコールの質もお世辞には良いとは言えん。とはいえ、受付嬢がサービスを兼任している場合も多く、依頼内容を吟味するには最適な場所だ。勿論他の客が騒ぎ立てていなければの話だ。中にはそこで同行者を探す者もいる。ギルドに所属していたり、協会に同行者を依頼する事も出来るが、冒険者同士であれば、他の伝手もある。クエスト毎に有効な職種が常に揃っていることなど有り得んからな。先ほどの話も合わせて待ち合わせ場所にされることもある、クエスト前の打ち合わせになると大概は協会の酒場だ。冒険者の中には教養の無い者もいるが、それでも協会の酒場が分からん奴いない」
顔を見上げると、そこには何も無い。だが、彼は何かを見上げる。
プイ「ああ、時間か。済まないが私も少し傍観させて貰うよ、数少ない楽しみだからな」
激しく椅子が倒れる音が、ギルドに酒場に鳴り響く。
「場所も、内容も……五年前と同じ?」
いつかこの日が訪れる。理屈の上では理解していた。だがしかし、目の色が変わったフーリをみて、ステラが止める。
「……止めないで」
その言葉にルージュが首を振る。
「どうして? もうあの時の私じゃない! 依頼もこなして、資格はあるはず! そうでしょ!?」
「行くなとは言わない。だが、今回は現地の協力者もいるという話だ。単独ではいけない」
白魔導士は勿論の事だが、パーティで準備をする必要がある。
「定員は四人。団長が遅れをとる相手だ……熟練のメンバーで挑みたい」
ステラとフーリでメンバー二人は決まったが、残りの二人を探さなければならない。
「ココ!」
「お生憎様、研究が忙しくてね。君の冒険に付き合う暇はないよ」
「キセキ!」
「里帰りをしていて今はいないよ」
「里帰り!? 何してるの!?」
呼び戻そうと地団駄を踏み始めるフーリに、ルージュが声を掛ける。
「長期クエストの後でしたので、家族と時間を設ける約束だったそうで……」
その言葉に、足を止めるフーリ。
「キセキに……カゾク?」
ショッキングな出来事に思考がフリーズするフーリ。
「高ランクのクエストになると、参加出来る冒険者は限りがあります。今から声を掛けるとなると、招集に時間がかかります」
その間に準備をしてください。と、ルージュに諭され、肩を落とすフーリ。
「焦る気は分かります。だが、準備を惜しむ訳にはいかないでしょう」
ステラに諭され、少し冷静になるフーリ。
「ステラは凄いね。私よりも焦ってると思ったのに」
口元を引き締めて、ステラは呟く。
「アナタが私よりも憤ってくれたからですよ。焦っているのは間違いないけれど、同時に冷静さを欠いて挑めるクエストでもない。今のフーリを見ると……まるで鏡を見ているようです」
フーリはもう一度ステラの顔を見る。強ばった表情に後悔と怒りと、少しの恐怖が見えた気がした。
「そうだね、万全で挑もう!」
酒場に入ると、少し違う雰囲気を肌で感じながら、見知った二人組に声を掛ける。
「久しぶり、カイル君、カレンさん!」
フーリの人影に気付くと、カイルは嬉しそうに立ち上がり挨拶をする。カレンは不服そうだが、それでも挨拶はする。
「今回は大物ですね! 全力で協力しますよ!」
はりきったカイルの声にカレンのトーンの落ちた声があとから追いかけてくる。
「危険な依頼よ、もしもの時は退かせて貰うんだからね」
フーリが頷く。
「大丈夫、私が皆を守るから!」
張り付いた様な笑顔に違和感を覚えたのは、カレンだけだったようだ。
ダンジョンに潜る途中、他の三人が気付いて居ない違和感にカレンは気付いた。
「ここで少し休憩しようか」
恐らく理由としては、復讐や後悔、そして羨望が目を眩ましているのだろうが、それらがないカレンは一歩引いた目線を持つ事ができた。
「予定通り、ね」
余りにも立てた予定通り過ぎる。綿密に組み立てられてはいるものの、遭するモンスターも、地形の変化もあるダンジョンで予定通りと言うことはあり得ない。つまりは予定通りに進めようと労力を注いでいるのだ。
「そうだね、ここまでは順調だね」
回復魔術を使う回数も、休憩のタイミングも、何度か通ったダンジョンだとしても、柔軟な対応の結果、早まったり遅くなったりするものだ。予定通りに進めようとする余り、何かしらを見落としている、冒険者初心者が陥りがちな状況だが、ステラとフーリの力によって、何とか形を保っている。
「二人のおかげね」
カレンの言葉に、カイルが喜ぶ。
「そうだね! 二人とも凄いです!」
どうして自分だけが気付いたのか、ふとした疑問に、陰が落ちる。
(このまま二人が消耗すれば、邪魔者がいなくなるかも?)
心の中に浮かぶ、仄暗い感情が顔を出す。
「カイル君もカレンちゃんも頑張ってるからだね」
確かに、フーリからすればしっかりと後を追える冒険者は数えるほどしか居ない。フーリ自身も気付いて居ないが、自分を他人と比較しなくなった悪癖がカレンを苛立たせる。
(このまま消えてしまえば良いのに)
自分は特に何かをするまでもない、ただ普段通りに冒険をこなすだけでいい。高難易度のクエストで誰かに負担がかかり続けるのであれば、モンスターの犠牲になるのは明白だ。
(万が一、カイルや自分が危険になっても、誰かが守ってくれるじゃ無い)
その誰かが傷つくことを気付かないふりをする、それだけで良いのだ、と。
読了ありがとうございました。
これから毎日小説をアップしようぜ(某ジ風
ウマ娘は難しい、俺達は雰囲気でウマ娘を育成している笑
推゛し゛と゛勝゛ち゛た゛い゛
それではまた、明日以降の暇時に。