キセキ「キセキだ」
彼は言葉少なく、台本を捲る。
キセキ「今回は、魂についてだ。そんな物は無い、と言い切ることは出来ない。魔術士の間では、しばしば研究されているらしいが、正確に観測することは出来ないが、無視できない偏りが存在する。その理由は、それを形作る何かが在るのでは無いか、それを便宜的に魂と呼称している、ということだ。それはマナや魔力と切っても切れない関係……らしいから多くの魔術士の研究対象になっている。ココもその一人だな」
喋るのに疲れたのか、口を動かすのを止めて台本を捲る。
キセキ「それじゃあ、な」
魔人の言葉に、ステラ達は動きを止める。
「はははっ、これは素晴らしい! 人間達! 古代種を差し出すなら、見逃しても構わないぞ!」
両手を広げ、返事を待つ魔人に、レーベンとカイルが答える。
「「断る!」」
カイルが雷を纏い、高速で移動し魔人の足を切り落とし、レーベンが大剣を振り回して魔人を吹き飛ばす。
「……時間稼ぎにもならんだろうな」
レーベンが顔を顰めると、他のメンバーを連れてその場所を離れる。
「策も無しに闘える相手じゃない! 一度地表まで引くぞ!」
一行が地表を目指し、ダンジョンを戻っていく間、不気味なまでに異変はなかった。
「魔人からの追撃は……ないみたいですね」
カイルが呟く。もう地表までそう遠くはない。警戒はしているが、普段と違う事は無く、魔物が現れる様な事もないだろう。よかった、と溢したカイルが足を止めるフーリに気付く。
「……私は此処に残る。皆は地表に戻って」
俯いた表情は読み取れず、カイルが口を開く前にカレンが言葉を発する。
「よかった、あんたから言ってくれて。もし地表まで一緒に来るつもりだったら、どうしようかと思ってたもの」
カレンにつかみかかろうとするカイルに、ステラが止める。
「魔人が追っているのは、フーリさんです。フーリさんが地表に戻れば……危険に晒すのは私達だけではないんですよ」
止める手は震えていた。それは、共に旅をした友を見捨てるからか、それとも横に並んで歩いていたのが化け物だったからなのか。
「レーベンさん!」
カイルが団長に言葉を掛けるが、レーベンは静かに首を横に振る。
「コポンはどうする?」
コポンは一度フーリの顔を見ると、首を横に振る。
「ご主人様と共に行きます。一人では地表で生きていきませんので」
そうかと一度頷いて、レーベンはフーリを置いて地表へと歩きだす。カイルがフーリの元へと駆け寄ろうとしたが、カレンが止める。
「どうして!?」
「止めないわけないでしょ!」
カイルの腕を掴むカレンの腕は、震えて、跡が残る程握り締められる。ここに居る人間誰一人として、余裕などないのだ。
地表に出た四人は、協会に着くまで、無言だった。
「おかえりなさい……あれ、フーリさんは?」
受付嬢のルージュが、帰ってきていない冒険者の姿を探す。今回の顛末を離すと、顔色が青ざめる。
「う……そ」
近くにあるテーブルに手を付くが、それでも足下がふらついているのは分かる。
「ルージュは、ちょっと休んでろ。他の受付嬢に言って、協会に連絡して貰う」
レーベンがステラにルージュの事を任せて、報告を行う。
「吸血鬼を討伐したが、古代種と魔人が現れた、ってのはどう報告したものか」
言葉にするのが難しいと呟くレーベンが協会の奥に向かい、ステラはルージュを解放するために部屋を移動する。残されたカレン達に、声を掛ける男が現れる。
「ああ、丁度良かった。すぐに研究所まできてくれたまえ」
ダンジョン内で過ごすこと自体は珍しくない。食料と寝床を現地調達するのは慣れが必要だが、多少の疲労や毒も治す事が出来る白魔術は有効だ。
「……眠ったかな」
倒した魔物の毛皮を羽織り、寝息を立てるコポン。動いている間は常に周囲を警戒し、疲労は溜まっているのだろう。安全そうな洞窟内で、最小限の焚き火で暖をとる。
「どれくらい経ったかな、時間の感覚があやふやだけど……もう三日ぐらいかな」
なるべく一つどころに留まらないようにと動いているが、魔人が現れる様子はない。だが、直感のように魔人が再び現れると、研究対象を逃すはずがないとフーリは考える。
「……観察してる、ってことかな」
地表には、協会には、ギルドには戻れない。その事実が、フーリを蝕んでいく。横で眠る亜人の頬をそっと撫でて、独りでないことに少しだけ安堵を覚える。
「最近、魂が減ってるのぉ」
その言葉に、フーリは言葉を失った。古代種であるドラゴンの目の前で大きく手を振って自分を認識しているかを確認すると、眼球がフーリを追いかけたので、安堵する。
「大丈夫?」
「失礼な。そもそも古代種が現れるのは、他の星から魂が呼び寄せられているからじゃろうが」
どうやらドラゴンの言葉に因ると、フーリがこの星に呼び寄せられたのも、魂が減少しているからのようだ。
「原因までは、わからんがな。続けばまた彷徨える魂が此処に来るんじゃろうな」
溜息をつく古代種。別にそれに対して憂いているわけでもないのだが、最早癖のようなものだ。
「そっか、でも、止めないとね」
フーリが呟くと、古代種は首を傾げた、訳ではないが興味をフーリに向ける。
「私は別に此処に来て嫌な訳じゃないけど、他の人は分からないし、色々と大変だったしさ……多分、ない方が正常なんでしょう?」
フーリの言葉に古代種は頷いた。
「そう、倒さなきゃ」
例え独りで闘う事になったとしても、他人の魂を好き勝手に踏みにじる事を許してはいけない。そう何度も心の中で呟いて、拳を握る。
「……」
後ろを歩くコポンが、心配そうにフーリを見つめる。日に日に力を失っていく後ろ姿に、掛ける言葉を見つけられない。
読了ありがとうございました。
これから毎日小説を(以下略
最近、この映画イイネェってのに出会って無い気がする。
シンウルトラマンとかトップガンとか、そんなの。
転スラが面白かったらいいな〜。
それではまた、明日以降の暇時に。