異世界転生で白魔導士   作:3148

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鎧を纏った青年が、テーブルの台本を開く。
アレス「またか、久しぶりだな。アレスだ、よろしくな」
肩の力を抜いて、リラックスした様子で台本を捲る。
アレス「今回は、古代種について? いや、俺に聞かれても、というか。分からないから古代種、だぞ? 他の強力な魔物は地下深くのダンジョンの下層部に生息している。膨大なマナを手にするために、縄張りを取り合っている、っていう話なのに。人間が到底太刀打ち出来ない大きさや魔力を誇るそれらは、何故か地表に顔を出すことがある。あるっていうか、大体が伝説になってるな。島を丸ごと一つ腹の中に納めたとか、上陸したら古代種の背中の上だったとか、山より大きな龍だったとか、地震の原因だ、とか。挙げたらキリが無いけど、兎に角、天災みたいな生き物で、どこから現れたのかすら分からない様な奴らのことを、分からないから古代種ってことにしてる。人間には、分からなくても良い事があるってことだろ?」
語っていて、自分の小ささに嫌になったのかも知れない。溜息を一つついて台本を捲る。
アレス「近くのダンジョンでも現れたらしいけど……それもどこまで本当なんだろうな?」


第二章 第三十六話 特別じゃ無い日々

 気がついた時には、自室のベッドの上だった。どうやらフーリが古代種だったこと、魔人が現れた事を聞いて気を失ってしまった、という訳では無く、一応肩を借りながらも歩いて戻ってきたらしい。余りにも意識が朦朧としていて思い出せないのは事実なのだが。

「……結構時間が経ったかな」

ここ数日間は酷く曖昧な時間を過ごしていた。ベッドから動くことも無く、時折様子を見に来てくれる同僚からの差し入れを口にすることで何とか息をしている様な状態だ。

「フーリさん」

協会の受付嬢になったきっかけは、故郷を襲った古代種の所為で家族を失った事だ。それから会長に拾われて協会関係者に世話になっていく内に、この仕事をこなすようになっていった。

「古代種」

今までなら、この言葉を聞くだけで怒りがこみ上げてきた。許せなかった。幸せな日々を奪ったあの存在が。なにより、目的があった訳でも無く、意図があった訳でも無く、その巨体が通っただけでルージュの家族は命を失い、古代種はその事を認識すらしていない事に込み上げてくる無力感が苛立ちを募らせた。それなのに、今は頼りにしていた冒険者がソレと同類だということを、上手く認識出来ないで居る。

「フーリさん」

フーリとの思い出は、最初の出会いから思い出せる。田舎の白魔術師、協会も冒険者もダンジョンもろくにしらないのに、白魔術と魔物に関する知識は豊富で困難な依頼も必ず生きて帰ってきた。しょうも無いミスや期限切れで支払いを受け取り忘れる様な抜けている一面もあった。人助けと聞いて報酬額も見ずに飛び出していった時の話は、協会のテーブルでいつも酒の肴になっている。

「古代種」

変な人間だとは思っていた。周りからも変わり者だという評価は変わらない。本人にその話をしても、笑って誤魔化すが。損な役回りを進んで受け入れる。白魔導士は数が少なく、需要が高いから、何時だって不平不満の対象なのに、協会からの依頼を笑ってこなす。そんな人間はきっと世界の何処を探したって見つからない。

「フーリさん」

冒険に関しては危なげなんかないのに、人間関係だったり身の回りのことになると、途端に杜撰になる。ギルドに所属するまでは色々と世話を焼いた物だった。宿が見つからなくて村の外で野宿したと聞いた時には、頭を抱えたものだ。そのくせ、困っている人がいると放っておけなくて、自分の取り分なんか考えずに食料も寝床も分け与えてしまう。フーリの部屋にはいつも他の誰かの私物が散乱していて、殆ど依頼で戻らない家主の私物を探す方が難しいなんて話も聞くほど。

「フーリさん」

協会が斡旋する依頼の傾向によっては白魔導士が必須になる。日数が長く、討伐モンスターが強力な場合、或いはダンジョン自体が危険である場合だ。腕の立つ白魔導士は多くない。それに、危険な依頼は犠牲がつきものだ。最早比較するのも嫌になる量の依頼をフーリに任せた。フーリに休日などないのだろう、依頼を済ませて協会に戻ってきて、宴会をして、次の日の朝には居なくて依頼に行っているなんてのは日常茶飯事だ。

「……フーリさん」

あの人のただいまと言う言葉に、心底ホッとしている自分が居る。あの人の行って来ます、に寂しくなる。あの人が会いたくなった、って言う時には、心臓が早鐘を打ってどうにかなるかと思った。受付嬢になる時には、いつもあの人が帰ってくる時間ばかりが気になるようになった。

「……フーリさん」

一緒に居た時間は、数えると少ないはずなのに、思う時間ばかりが増えている。

 

 足取りは重い。まるで靴底に鉛でも仕込んでいるかのように上がらない。だけど、何も考えなくても協会までの道を歩いて行く。体は重くても、慣れた道程を歩く事に淀みはない。

「……えっ?」

協会の職員入り口をくぐると、思わぬ人と顔を合わせる。

「丁度良かった、君の意見も聞きたいところだったんだ」

会長がルージュの手を引いて、集まりの輪に加える。協会員と主立ったギルドの中心人物が顔を揃えている。

「こ、これは?」

レーベンが言葉を返す。

「魔人種と古代種の対策会議だ。あんたの意見も欲しいのさ」

 

 




読了ありがとうございました。

これから毎日(以下略

皆既月食を見ました。
綺麗!って感じではなく、へぇ〜って感じ。
月が地球に隠れて、って書くと少し詩的かなぁ?

それではまた、明日以降の暇時に。
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