セレネ「久しいな。まぁ、ゆっくりしていくといい」
そのうねりは、遙か遠くまで続いていくが、その先もまた、海底と言う名の闇に続いている。
セレネ「今回は、そう冒険者達が身に纏う防具について、じゃのう。素材については、絹や皮、様々あるが人が産み出した技術の中で面白い事は、魔物の素材を利用する、ということじゃな。皮を鞣したり、時には鱗を纏めて鎧にしたり、毛皮を纏う事もあれば、それを糸にするものもいる。中には、巨大な昆虫の魔物が作り出す糸すら、素材にする事もある。続いてある技術に、既に作られた物を特殊な工程を追加することで魔力を帯びさせることも出来る。素材が持つ防御力以上の効果を発揮したり、肉体を強化したり、回復力を高めたり、或いは魔術の触媒にもなる。この技術は、儂が見てきた世界の中では、珍しい部類になるんじゃ」
揺れる海底が、また砂埃を舞わせる。
セレネ「もう時間か。それでは儂はまた海底で待つとするかのう」
魔人が賢者の石から炎の塊を放つと、カレンが土塊を盾に防ぐ。
「ほぅ、賢者の石を持つ魔術士か。だが、人間ごときではな!」
ココとカレンが協力して魔人に立ちはだかるが、魔人が優勢なのは変わりない。一瞬の隙を見て、コポンが掛けだしフーリを抱えて走る。
「小賢しい!」
追撃の魔術がコポンの背を追うと、カイルが盾でそれを防ぐ。
「振り向かないで、後ろは僕が守ります!」
激しい魔術の攻め立てに、必死で防ぐカイルだが、そう長くは持たないだろう。
「カイル君……」
フーリが呟くと、カイルが叫ぶ。
「大丈夫です! 必ず、皆で帰りましょう!」
カイルが魔術を防いでいる間に、フーリの脳内に声が響く。
(フーリ!)
リリィの声にフーリが反応する。声を聞くだけで色々な感情が蘇り、だが、言葉は出てこない。
(まだ諦めないで! フーリのことを必要とする人間は大勢いるんだから! 魔人なんかに負けないで!)
その言葉に、フーリが顔を伏せる。
「はっ! 威勢良く来たのはいいが、もう限界の様だな!」
魔人の言葉にココが返す。
「僕たちはあくまで助っ人に来ただけだよ。魔人が古代種に敵う訳ないだろう?」
その言葉に魔人が苛立ちを覚え、魔力をさらに注ぎ込む。
「賢者の石の消費を考えていたが、止めだ。お前達を生かしておくのも腹立たしい!」
古代種の老と話している内に、ふと疑問に思った事を聞いてみた。
「そういえばさ、昔も今みたいに人間が地表に住んでいて、ダンジョンは魔物の巣だったの?」
その言葉に老は頷く。
「ああ、私が生まれた二億年前ほどはな。だが、それより前は違ったらしい。人が地表に現れたのは、その少し前くらいからだったようだからな」
本来ならば、植物や微生物だけの住処だった地表に突然現れたらしい。
「へぇ、そうだったんだ。まぁ、それだけ時間を遡れば変わりもするよね」
腰掛けた岩に、片目だけを動かしてフーリを見る老。
「それで、いつまで人間といるつもりだ?」
老の言葉に首を傾げるフーリ。
「古代種である以上、いつまでも人間といられる訳では無いだろう。寿命が違いすぎるし……何より、今の状態でも体よく利用されているだけではないか」
老はあくまで、フーリを思っての言葉だった。数少ない古代種の友が人間を優先していることが気に入らない、というのもあるかもしれない。
「あぁ、いつまで人間として居られるかは分からないけど、できる限り人間として生きて……死にたいと思ってるよ」
フーリの言葉は意外だったのだろう。老は言葉を無くす。
「老は、空を飛ぶことを夢見て、竜になったんでしょ? それと同じで、きっと私は、この姿になりたくて、憧れに近づきたくてこの姿になったんだ」
その為に、ノッキングの習得まで行った。理想の姿とは違う自分を封じ込める為に。
「……貴様の憧れとは、自ら死を選ぶような物なのか?」
信じられない、という風に聞く。その答えに対しては静かに首を振るフーリ。
「ううん、むしろ逆だろうね。周りに優しくて、元気を与えて、誰かの生きがいになれるような、そんな人間だったから」
それならば、という老の言葉を遮って、フーリが呟く。
「あの人は、私の憧れで、そうなりたい人だけど……でもやっぱり、私は人間でありたい。私が好きな人達に出来るだけ近づきたい、それがどれだけ傲慢な願いだとしても」
その為には、何千年何万年という年月は長すぎる。この憧れや激しい感情が錆び付いてやせ衰えてしまうくらいなら。
「きっと、多分、それこそが私の望む世界だと思うんだ」
どうしようも無く死を恐れながら、それから遠ざかることに怯える姿は、或いは滑稽に映るのかも知れない。だけど、自分が望む姿をそうだと呟き背を向けるフーリは、小さい体がより一層小さく見えた。
読了ありがとうございました。
これから毎日(以下略
健康診断終わった……
バリウムとか言う検査に慣れ始めている自分が怖い(´・ω・`)
それではまた、明日以降の暇時に。