リリィ「こんにちは。本日もよろしくお願い致します」
台本が独りでに捲れる。
リリィ「今回は白魔術と黒魔術の違いについて、お話していきたいと思います。一般的には白魔術は回復、治療などに用いられます。黒魔術は炎を産み出したり、水を操ったり、攻撃に用いられるイメージになります。厳密な違いを語るとすると……同じですね。神話の時代には、白と黒をイメージする神のような存在があり、その際に魔術において、白は治療、黒は攻撃というイメージが浸透しています。どちらもマナを利用して、魔力に変換し、魔術として行使する、と行程は同じになります。但し、色がイメージになっているように、白黒どちらともイメージが大切になります。魔力に変換するにあたってマナが自分にとってどちらのイメージを持つかで、どちらの魔術を得意とするか、という傾向は強く、両方を扱える者は極少数と言えますね」
台本が再び次の頁を開く。
リリィ「それでは、未だに剣の気配がしない魔術の世界にようこそ」
それでも筋トレが続きながら店番をしている時にプイに尋ねる。
「筋トレが白魔術のトレーニングになるんですか?」
「当然だ」
その当然の内訳を教えて欲しいから質問しているのだが、それを読み取ってくれるまで少し時間がかかった。
「筋トレとは、肉体に負荷を掛ける事だ。それを治癒する事で、治癒魔術の感覚を養う事になる。治癒魔術による補助で、魔力を制御しやすく、溜めやすい肉体造りを行い、感覚と肉体面両方に治癒魔術を刻み込む」
それが出来てから他人への治癒魔術だ、とプイは告げる。
「なるほど、それなら石を割れる位まで訓練しているのが基準になるってことなんですね」
フーリが頷くと、師匠が首を振る。
「普通は岩なんぞ割れんが」
「んなっ!?」
驚きで甲高い声を出すフーリ。
「筋トレでの治癒魔術は限界があるからな、そう都合良く怪我をしている人間もいないし、命に関わる傷をひよっこに任せる訳にもいかん。自傷させるのがてっとりばやいんだが……」
それで岩を割れ、という無理難題だったらしい。
「それじゃあ、僕は特別ってことですか?」
転生者なのだから、何かしら特典、所謂チートがあるかもしれない、と考えてはいた。それが何かは分からないが。
「恐らくはお前の胸にある赤い宝石。賢者の石のせいだろう。異常なまでの魔力量の所為で回復が早すぎる。肉体補助も制御がいまいちな割に強力なのもその所為だろうな」
残念ながら、呑み込んだ宝石のせいらしい。
「そうなんですね」
「しかし、そんなものを体内に取り込んだ人間なんて、寡聞にして聞かないぞ?」
どこで巡り合ったのかを尋ねられたので、包み隠さず話してみた。
「……それで、その声はまだ聞こえるのか?」
プイの疑問に首を傾げた。
「そういえば、あれ以来聞こえませんね」
経緯はどうあれ、命の恩人だろうということは間違いない。お礼の一つぐらいは伝えさせて欲しいところだが。
「恐らく不可能だろう。わざわざそうやって取り込ませたのは、そうしなければならない理由があった。そして、取り込まれた途端に意思を失ったと言うことは……狙った通りにはならずに、力を失ったのだろうな」
力を失うということは、意識も失っている可能性が高い、らしい。
「まぁ、そんな事に感謝するのはお前くらいだろうな」
「……馬鹿にしてます?」
フーリの疑問に答えてくれなかったので、話を変えることにした。
「しかし、一ヶ月でこんなに成果が出るなんて、白魔術は凄いですね」
そうするとプイは呆れた視線をフーリに向けた。
「魔術における鍛錬を単純に時間で計るのは止めておけ。感覚のズレは魔術習得の邪魔になる」
とはいえ、ずれていると言われても、どうずれているのか分からない。尋ねると面倒臭そうに答える。
「筋トレの結果は、肉体が治す時、つまり回復するタイミングで現れる。魔術を扱わないなら適度な食事と睡眠をとって結果が現れる物だが……治癒魔術を使う度にその結果が現れる」
その言葉に、息を呑む。普通であれば筋トレをして肉体を休ませることで筋肉が増加する。何日か経たなければ効果は現れない、そしてその変化は微量だ。だが、治癒魔術を行うとすれば、一日単位ではなく、それを行う度に超回復が行われる。回復するのを良いことに、限界ギリギリまで筋トレを行い、治癒魔術を掛けて再び筋トレ、コレを繰り返すことで、一日に何十日分もの効果を得ることとなったのだ。
「あ……」
その割には体つきが変わらない、というのはそういうことだったのだ。
「効果は現れているからな、そういう体質なのだろう」
或いは、呑み込んだ賢者の石の効果なのかも知れない。
筋トレと平行して治癒魔術の訓練を始めた日から、唐突に夢を見る様になった。
「……」
何かを話している、だが声が聞き取れない。日に日に近づいて行っているのだが、彼女の声が聞こえる事はない。
「貴女は、誰?」
そう呟いて目を覚ました日に、治癒魔術のトレーニングをしようと魔方陣を描き、呪文を唱えると、
(治癒魔術に込める魔力量を制御することを推奨します)
驚き制御を誤って、治癒対象に力を込めすぎる。
「だ、だれっ!?」
周りを見渡しても誰も居ない。だがしかし、その声に聞き覚えはある。
「……まさか」
(フーリの魔術特訓により、停止していた賢者の石との魔術回路が形成されました。特訓の継続により、安定化し、意思の伝達が可能となりました)
驚きと同時に納得した。あの時の声は幻覚ではなく、現実だったのだと理解した。
「そっか、あの時に助けてくれてありがとう」
ずっと抱えていた思いを伝えることが出来、少し胸のつっかえが降りた気がした。
(礼には及びません。私の為に必要な行動だったのですから)
そう返事を聞くとフーリは自分の胸に視線を落とす。
「そっか、それならよかった。因みに貴女は今後どうするの?」
(質問の意図を問いかねます)
どうするの、と聞かれても彼女は答えられないのかもしれない。
(賢者の石の主はフーリになります。決定権はフーリにありますので、個人の意思で行動を起こすことはありません)
その言葉を聞くと、違和感を覚える。
「それじゃあさ、貴女の名前を教えて?」
(賢者の石、以外の固有名称ということであれば、リリィとお呼び下さい)
「オッケー、リリィ。貴女の願いは無いの? 私は恩返しがしたいな」
その言葉に、リリィは答える。
(フーリの見る世界を、共に見ていきたいです)
読了ありがとうございました。
これから毎日小説アップしようぜ(某ジ風
ここに書くネタが無いなぁ。
あっ、秋競馬が始まりましたね!
ウマ娘楽しいよ、皆モルモットになろう(ペカー
それではまた、明日以降の暇時に。