ヒイロ「えーと、初めまして、ヒイロです。冒険者です、よろしく!」
台本を捲ると、顔を顰める。
ヒイロ「俺説明とか苦手なんだよなぁ。本読むのも嫌いだし、体動かす方が好きだし。そういうのはリーデかペルーサに……駄目か。まぁいいや、魔物について? 俺が聞きたいよ。知ってるのもゴブリンかジャイアントラットぐらいだし……初心者じゃねーし! 冒険者に登録したのが最近ってだけだ! これから大活躍するんだから、俺の活躍をみてくれよな! じゃなくて、ゴブリンについてだっけ? あいつらちっさい癖に色々武器を使えるから鬱陶しいんだよな。まぁ、大体ボロボロの使ってるからへでもないんだけど、確か自分で作ってる訳じゃないんだっけ? あとは、臭くて……ってもう時間か」
台本を再び捲る。
ヒイロ「じゃあ、俺の冒険譚、よろしくな!」
プイの家に仮住まいして半年が経とうとしている。
最初の内は、不審に思われていたが、慣れてくれば考えるだけでリリィと会話出来る様になった。
「ねぇ、いる?」
入り口の扉を開かれると、声が聞こえる。薬草や薬を求めて村人が訪れる事は多い。擦り傷の塗り薬くらいであれば、対応することも慣れてきたが、見たところ村人ということではなさそうだ。
「えーと、旅の人ですか?」
そう尋ねると、後から二人、合計三人が店の中に入ってくる。
「まぁ、間違いじゃ無いかな? 俺達は冒険者、違うとすれば村の人達に雇われてきた、ってことか」
まだ年端もいかない少年は、ヒイロと名乗った。振り回しやすいサイズの剣と盾を身につけている。
「付近にゴブリンが巣を作っていると聞いて、退治に来ました。薬を少々分けて貰えますか?」
丁寧に言葉を紡ぐのは、リーデと名乗る。先ほどの少年よりも少し年上だからだろうか。動きやすそうな服装をしている。
「……ゴブリン、ですか」
(ゴブリン、最初に出会った時にいた個体と同種ですね。規模によりますが、切り傷裂傷に対する塗り薬、及び消毒薬でしょうか)
消毒薬と言われ、それがあったかどうか記憶を遡る。
「傷薬なら直ぐに用意出来ると思いますが、消毒薬はちょっと……」
その言葉に、最初に来た女性が言葉を遮る。
「傷薬も最小限でいいです。消毒薬も必要ありません」
高圧的な態度に驚くと、リーデがフォローする。
「ギルドからの依頼だからね。報酬は少ないの。ホブゴブリン以上が居れば、追加もあるけど……期待も出来ないしね」
どうやら薬代も万全に準備出来ない程度の依頼らしい。ペルーサと呼ばれる女魔術師は機嫌が悪そうだ。
(下位の冒険者が請け負うものですね。上位の冒険者では、時間に見合わないと判断します。何十体と個体が居ても、不利な条件でなければ討伐は可能でしょう)
「そうそう、楽勝だって!」
ヒイロの言葉に、リーデが諫める。
「だから! 私の治癒なんて知れてるんだから、せめて傷薬は準備しよう、って言ったでしょ!?」
どうやら、事前の準備に揉めているようだ。村の事であれば、他人事ではないし、近くにゴブリンがいるというのであれば、協力するのも吝かではない。
(本来であれば、ギルドから白魔導士を雇って依頼を受けるはずですが、金額と依頼の規模のため、雇わなかったのでしょう。少額とは言えませんので)
そう言われると、目の前にいる駆け出しの冒険者が少し可哀想に思える。
「えっと、私で良ければ手伝いましょうか?」
簡単な回復魔術であれば出来る事を伝えると、一も二も無く協力を喜ばれた。上手くいけば報酬を多少分けても良い、ということだが。
「いえいえ、村を助けて貰うので」
手伝うと言っても、治療するのみ、戦闘行為については彼らに一任するという条件で協力を請け負った。これが師匠からの条件である。冒険について経験を積むのに良い機会だが、報酬に目を眩ませることがないように、ということらしい。
「任せとけって! ゴブリンなんざ楽勝さ!」
そう言って、四人は村から出発する。
四人揃って歩き出すが、目的地は在ってない様なものである。
「目撃情報を元に捜索していくけど、はっきりした場所は分からないから。見つけたら報告すること」
そういうとヒイロが一番前に立ち、左右にペルーサとリーデが立つ。その後ろにフーリが立つ、といった形だ。
「ところで、ゴブリンってどこに居るんだ?」
そう呟いたヒイロが、後ろを振り返る。リーデに集中しろ、と怒られる。
「基本的には群れを形成しているわ。自分で巣を作ったり、建築物を形成するということもないはず。横穴とか、岩陰とかを探して」
天候は晴れ、霧などもないため、見通しは悪くない。その為、隠れられるのは木陰や背の低い植物位だが、その程度では一匹二匹だろう。
「前方!」
リーデが声を掛けると、二人きょろきょろと見回しながら歩いている小柄な人影が見える。目を凝らすと肌が緑色で殆ど裸、手に弓をもっているのと、棍棒を持っているので二体だ。
「行くぜ!」
ヒイロが駆けだしていくと、ゴブリンに気付かれるが、対応される前に弓ごとゴブリンの首を刎ねる。
「炎よ、万物を焼け! ファイアボール!」
詠唱を唱えるとペルーサの杖の先から炎の塊が放出される。目標を違わず棍棒を持つゴブリンに命中し、火が小さな体を包む。
「ウギャアアア」
うめき声を上げてゴブリンが絶命する。
「ふぅ、他にはいなさそうね」
そうリーデが言うと、周りを探すが他にゴブリンは居なさそうだ。
「分かるのは、向かってきた方向ぐらいでしょうか?」
そう呟くと、ペルーサは溜息をつく。
「巣の外を彷徨いているのは斥候よ。どこから来たかまでは……分からないでしょうね」
(実際に巣があるとすれば、そこに近づく程斥候と接触する可能性は高くなりますね)
なるほど、と頷くと再び歩き始める。
捜索は難航するかと思われたが、岩陰に二体ゴブリン入り口の見張りをしている。どうやら山の横穴を巣穴にしているようだ。
「なるほど、結構簡単に見つかるもんだな」
探せば見つかるが、村から離れているため見つからなかったのだろう。実際に村よりかはプイの家の方が近いが、周囲の環境や散策を含めても、見つける事はない位置だ。
「とっとと狩猟を終わらせましょう」
今度は少女が見張りゴブリンの死角から近づき、首を折る。それとタイミングを合わせてヒイロがゴブリンを刺し殺す。
「さぁ、行こう」
拾った木の棒に布を巻き付け、簡易の松明として横穴の中を進む。中はかなり広く、人が同時に三人通ることが出来そうだ。足下はある程度整地されてはいるが、岩があったりなどで、油断すれば躓きそうになる。松明の明かりは頼りなく、ゴブリンが隠れていても気付かないかも知れない。
「まぁ、多少不意打たれても問題ないだろう」
ヒイロが一番前を歩いている。
(感知範囲を広げる魔術を使いますか?)
リリィが問いかける。流石に不安もあったので、リリィの言うとおり感知範囲を広げる魔術を使うと、音が良く聞こえる様になり、多少は夜目も利く様になった。
「ゴブリンの使う武器は、棍棒、短剣、弓矢ぐらい。油断しないでね」
ゆっくりと進んでいくが、ゴブリンの影は見えない。足下が悪い中、正面から棍棒を振るわれる。
「おっと!」
ヒイロが盾で受けると、返しの刃で殺す。
「やったぜ」
「よそ見しない!」
リーデが影から飛び出してきた短剣を持ったゴブリンをたたき落とすと、踏みつけ首を折る。
「結構深くまで来たみたい、次々出てくるわ」
ファイアボールがゴブリンを焼くが、ゴブリンの数が減っている様子はない。後ろに控えて警戒すると、後ろからひたひたと足音が聞こえる。
「えっ……?」
(警戒、ゴブリンの挟撃の可能性有り)
正面のゴブリン達に注意している三人は後ろに警戒を裂く余裕はなさそうだ。
「私でも、ゴブリンは倒せる?」
(不意打ちであっても、問題ないと思われます)
リリィの言葉を聞くと、身を翻し、足音がした方向へ走りだす。
「いた!」
夜目が利くこともあって、ゴブリンを先に見つける事ができた。暗い状態はゴブリンにとっても見えないらしく、先手を取ること出来た。首を掴んで壁にぶつけると直ぐさま気を失った。
「よしっ!」
(気絶しているだけの状態は良くありません。
ゴブリンの持っている短剣で胴体を刺そうとすると、突然暴れ出す。
「なっ!?」
噛みつかれ、引っかかれたが、胴に短剣を指すと体液を流し、ゆっくりと動かなくなった。
「……ごめんね」
罪悪感がゴブリンを押さえつけていた手から失われる体温と引き替えに襲いかかってくる。
(まだゴブリンが全滅した訳ではありません。気を抜かないで下さい)
リリィに言われると首を振り、気を取り直す。耳を澄ますとまだ足音がする。
「くそっ、くそっ!」
襲おうとしているゴブリンを一匹二匹と息の根を止めていく。
入り口の方向に戻っていくと、脇道からゴブリンが出てくるのを見つけた。
「えっ!?」
襲いかかってくるゴブリンを殴り飛ばし、蹴りつけ、短剣で止めを刺す。それを終わらせた後、脇道を進んでいくと三匹のゴブリンが襲撃の準備をしている。
「キィエエエ」
奇声を上げながら飛びかかってくるゴブリン。弓矢が手をかするが、一体一体に止めを刺していく。
(ゴブリンの弓矢には毒を塗られていることがあります。消毒をすることを推奨します)
自分の手を見ると、確かに傷口の色が変色している。手持ちの簡易の刃物で毒を取り、消毒薬をかける。
「早く戻らないと!」
分かれ道まで戻り、三人に合流するために走る。
読了ありがとうございました。
これから毎日小説アップしようぜ(某ジ風
漸く冒険者が出てきましたね。異世界転生の三種の神器の一つ、職業冒険者ですよ!
この世界では割とポピュラーな職業になるみたいですね、というよりかは副業として名乗っておくか、とか、技能は他にあるけど、活かす機会があるから取りあえず冒険者登録だけしておくか、っていうのも多かったり?
その辺りを話す機会があるかは、んにゃぴ(わからないです
それではまた、明日以降の暇時に。