異世界転生で白魔導士   作:3148

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小さなかけ声が聞こえ、妙にしっかりした足取りで台本の前に立つ。
リーデ「冒険者初心者、リーデです。基本的に三人組で協会のクエストを受けて生計を立ててます、よろしくお願いします」
深くお辞儀をすると、台本を捲る。
リーデ「はい、私の登場シーン終わっちゃってるらしいんですけどね。まぁ、それはそれとして……今日はダンジョンについて、ですか? 私も簡単な、それに表層までしかダンジョンに行ったことがないので。怖いところだと言うことは聞いて居るんですが。まぁ、地表にある入り口から入るのが一般的で、深く潜るほどマナが濃くなっていくので特殊な資源が手に入り易い代わりに、魔物のレベルも上がっていく、という風に聞いてます。ゴブリンに苦戦している駆け出しにはまだ先の話ですね」
苦笑いをすると、台本を閉じる。
リーデ「ソレではお時間のようですので、またフーリさんが活躍されると聞いてます」


第六話 辺鄙な村の大事件 前編

 プイは冒険者だった。有名な白魔術師として、ダンジョンに潜り、幾つもの財宝をつかみ取り、夢物語と呼ばれる景色を幾つも目の辺りにした。

「フーリに冒険者は未だ早い」

ゴブリン退治に参加させたのは、いずれ惹かれるだろう冒険を経験させる為だ。あわよくばそう甘いことばかりではないと知って貰いたかったが、そう上手く事は運ばないらしい。

「フーリは……私よりも才能がある。というより、人間離れしていると言ってもいい。だからこそ」

この世界では、魔力を上手く扱える人間は貴重だ。どの立場になったとしても、引く手数多となるのは想像に難くない。

「だからこそ……」

危険なのだ、そう感じていた。危ういバランスでなりたっている。あまりにも突出した才能がフーリの選ばない選択肢を否定しかねない。

 

 白魔術の鍛錬として、プランクをしていると違和感に気付く。

「あれ、誰か来たかな?」

魔方陣を建物の周囲に設置してあり、誰かが近づけば直ぐに分かる様になっている。それが例え人間で無くても。

「……あれは」

窓の外に目を向けると、ふらふらと体を揺らしながら、こちらを目指している女性の様だった。

「村の人、だけど……様子が変ね」

時折、薬を求めてココにくることはあるが、あんな風に足下がおぼつかないということは今までなかった。体調が悪いのかも知れないが、怪我をしててもあんな歩き方にはならないだろう。

(忠告、すでに生命活動が停止している個体になります)

リリィの忠告に素早く反応し、飛び出すフーリ。

「アリスさん! 分かりますか? フーリです!」

フーリの声に反応し、顔を上げるが、血の気を失い、窪んだ眼孔に生前の面影はなかった。

「治せる?」

(魔力生命体によって肉体の主導権を奪われている状態です。既に心臓は停止し、脳を無理矢理動かして肉体を魔力によって制御している状態です)

「……つまり?」

(蘇生の見込みは零に等しいかと)

「やってみなけりゃ!」

フーリが飛び込み、治癒魔術の詠唱を始める。魔力生命体の知識が乏しいが、ぱっと見で分かるのは、頭部、腹部、腕部における傷。

「”ヒール”」

普段行っている自分の肉体の回復促進を、他人の肉体で行う。それにはまず、自分が操る魔力を他人が扱える状態に変更する必要がある。それを波長を合わせるとか魔力を練り直すとか、言い方はあるが、やり方は人それぞれだ。

(一度他人の体内に魔力を流す)

それがフーリなりの回答だった。治癒魔術を必要とする人間は多い。そして多種多様だ。それら全てに柔軟に対応出来る白魔術師も居るかも知れないが、魔力操作の覚束ないフーリにとっては厳しい。だから成る可く純粋な魔力の状態に戻し、一度被術士の体内を巡らせ、そこからその魔力を操作する。その一手間を加える事で格段に精度は上昇した。

「……っ!?」

彼女の体に魔力が巡り、そして治癒のための魔力に変換されていく過程で、悲鳴を上げて膝から崩れ落ちる。息を呑むフーリにリリィが答えを出す。

(魔力生命体の干渉がなくなりました。恐らく治癒魔術を行うにあたって、魔力制御を行えなくなったからでしょう)

膝から崩れ落ち、物言わぬ死体となった村人を抱え、一度だけ強く抱きしめる。

「そいつは感染する恐れがある、扱いには注意しろ」

背後から師匠の声がした。

 

 「あれ……?」

白髪の少女が、椅子から脚をふらつかせていたのを止めて、何かに集中する様な素振りをする。

「どうかしたかい?」

もう一人の男が、尋ねると少女は首を横に振る。

「いや、何でも無いかも」

そう答えると、男は何事も無かったかの様に瞑想に戻る。

「ああ、もう少しだ」

 

 フーリは道無き道を駆け抜ける。師匠の家から村までの最短距離を、障害物を無視して駆け抜ける。

(あれは、魔力生命体の末端です。人から人へと感染していきます)

「村ぐらいの規模なら、どれくらい持つの?」

その問いに、リリィはいつもの様に答える。

(一晩と経たず、全員に感染するでしょう)

その答えに恐怖し、速度を上げる。

「見えたっ!」

恐らく村なりに対策を講じているのだろう。木材などをくみ上げ即席のバリケードを作っている。既に何人かはゾンビと化しているが、その頭上を飛び越え、村の内部に飛び込む。

「なっ、どうやって中に入ってきたんだ!?」

脚力で飛び込んで来たフーリに驚く村人に、フーリが叫ぶ。

「ゾンビに感染している人は私が治します!」

 

 村の中には未だ感染していない人間、感染から間もない人間、そして感染が進行している人間と状況は様々だった。

「ほ、本当に治せるのか!?」

村人の焦りに、フーリが答える。

「治癒魔術によって、少なくともゾンビ化は止められます。あとは進行度合いですけど……なんとかします!」

感染予備軍は暴れ出さない様に隔離されている場所に向かうと、順番に治癒魔術を施していく。一人、また一人と感染の進行が止まり、顔色が良くなっていくのを見て、村人達は明るい表情になっていった。

「やったぞ! 俺達は助かるんだ!」

 

 「っ、やっぱり!」

襲わせていた村からの魔力供給が途端に少なくなっていることに気付く。

「どうしたんだい?」

何か異変が起きている事を告げると、男は納得した表情になる。

「この付近にね熟練の白魔術師の噂があったのさ。十中八九それが原因だろう」

「何……嬉しそうね?」

少女がその姿に疑問を浮かべると、男は答える。

「ああ、今から実験が楽しみだ」

そう呟くと嬉しそうに少女が跳び上がる。

「じゃあ、行くのね?」

それに男は頷き、歩き始める。

 

 感染に倒れた村人を解析していくと、やはりなんらかの魔力生命体に魔力を奪われていた事が分かった。そしてその主は離れた場所に居て、恐らくは一人一人を治療しても根本的な解決にはならないだろう、ということも。

「しかし、かなり魔力を集めている魔物はかなり上位のモンスターだ。何故こんな人里に……?」

疑問とほぼ同時に、外の魔方陣に反応があった。フーリが戻るには早すぎる。つまり、

「貴方が噂の大白魔導士さん?」

白髪の少女が貼り付けた様な笑みを浮かべながら門扉をくぐる。

「噂の……というのは分からないがね。ここいらで白魔導士をお捜しなら私だろう」

フーリのことは気付かせないように、立ち上がる。

「あはっ。白魔導士がやる気になって、どーするの!?」

跳ねる様に飛びかかってきた白髪の少女は、勢いのままに爪をプイに突き立てる。だが、それを手元にあった杖で防ぐ。

「えっ?」

難なく受け止め、杖を捻り腕を床に叩きつけ、頭を踏みつける。

「ギルドやそこらの野良白魔導士と同じにされるのは心外だが、こうして無様を晒している姿を見ると浅慮を責める気にもならんな」

力任せに振りほどくと、白魔導士が少したたらを踏む。

「人間のくせにっ、舐めるな!」

無茶苦茶に腕を振り回すが、異常な膂力が掠れば致命傷になる可能性もある。違和感を覚えたプイは、振り回す腕を受け止め、時にははじき、受け流す。

「はっ!」

一瞬の隙を突いて、喉元を突くと白髪の少女は後ろずさる。

「がぁっ!?」

喉を潰され、痛みに喉を押さえていると、隙を見逃さずに、プイの蹴りが鳩尾を捉えて壁まで吹き飛ぶ。

「魔力で強化した蹴りです。傷の一つでも負っているはずだが」

立ち上がる少女の髪に所々血の赤がついていたが、直に真っ白い白髪に戻り、苦しむ様子もなくなる。

「その回復速度、やはり厄介だな」

「殺すっ!」

 

 




読了ありがとうございました。

これから毎日小説アップしようぜ(某ジ風

今期アニメが、「えっ、これも見て良いんですか!?」ってレベルで素敵。
米津の才能がヤバい、歌詞の語彙力の低さがまた最高。
KICKBACKスコのスコということで。

それではまた、明日以降の暇時に。
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