Fate/Grand Order-仮想虹彩乱戦にじさんじ-   作:七倉八城

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メインストーリー
第一節~20XX年 東京~


人理継続保障機関ノウム・カルデア

 

人類史最後のマスター。藤丸立香は僅かな休息を楽しんでいた。

ベッドに横たわり、携帯端末で動画を流して、視聴していた。

 

「へぇー…………エレキシュガル、YouTube始めたんだ。なんだか胡散臭いけど」

「失礼します、先輩」

 

ノックと同時に部屋が開き、そこから眼鏡を掛けた少女が入ってきた。彼女の名はマシュ・キリエライト。藤丸立香のサーヴァントであり、頼れる相棒(後輩)である。

マシュの足元には謎の生命体『フォウさん』も尻尾を振りながら立香のベッドにダイブした。

 

「やぁ、マシュ」

「お休みのところすみません。ココアとお菓子を頂いたので、宜しければご一緒にいかがでしょうか?」

「そうだね……いただこうか」

 

立香はマシュからココアを貰うと、一口飲む。ココアの温かさと優しい甘みが心に染みる。

ふぅ。と息が漏れる。そして、ベッドでくつろぐフォウの毛並みを優しく撫でる。モフモフの毛並みが心地よい。

 

「そういえば、先輩は何をご覧になっていたのですか?」

「ん? ……あぁ、YouTubeだよ」

「YouTube…………すみません。勉強不足で、YouTubeとは何なのでしょうか?」

「そうだなぁ」

 

マシュに分かりやすく説明するために、頭の中で言葉をかみ砕く。

 

「インターネットの動画サイトって言えば良いのかな? 誰でも気軽に動画を投稿することができて、色々なジャンルの動画を見ることができるんだ。釣りとかキャンプとか結構、マニアックなモノもあるんだよ」

「なるほど……誰でも投稿できる分、その筋に詳しい方も動画を投稿できるとうことなんですね」

「そうだね」

 

二人はココアを飲みながら、お菓子をつまみ談笑を進める。

 

「平和だね」

「そうですね……このような時間が続けばいいのですが……」

「フォウ! フォウ!」

 

フォウも専用のお菓子を頬張る。

 

ウーー。ウーー。ウーー。

 

突如、警報が鳴り響く。

 

「「ッ!?」」

 

突然の警報に二人は反応し、立香はココアを一気に飲み干した。

 

「先輩ッ!!」

「まずはブリーフィングルームに行こう!!」

 

二人は慌てて部屋を飛び出した。

 

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

 

ブリーフィングルームに着くと、既にスタッフ達が慌ただしく対応していた。

所長のゴルドルフ・ムジーク。経営顧問のシャーロック・ホームズ。技術顧問のレオナルド・ダ・ヴィンチ。そして、アトラス院出身の錬金術師シオン・エルトナム・ソカリスとそのサーヴァントであるネモが揃っていた。

 

「すみません! 遅くなりました!!」

「遅いぞ! まったく何をしているんだ!!」

 

立香とマシュが部屋に入るなり、所長のゴルドルフが喝を入れる。

 

「特異点の位置は!!」

「過去の特異点と類似している波長がないか、比較分析中ですッ!!」

「比較分析、完了です!! 特異点Fに58%類似! さらに特異点新宿に89%類似! 場所は日本です!!」

「日本だとッ!?」

「しかも年代がおかしいです!!」

「説明を簡潔に!!」

「場所は日本の東京、年代が20XX年と表示されています!!」

「20XX年……どういうことだッ! 技術顧問ッ!」

 

戸惑うゴルドルフを他所にダヴィンチは深く考え込む。

 

「ホームズ……君はどう見る?」

「…………まず、白紙になったこの世界で特異点が発生することが、まず気がかりだ。それに20XX年……おそらく別の世界線に存在する特異点ではないだろうか?」

「別の世界線の特異点? どういうことだね!?」

「つまり、白紙にならなかった世界で、さらに未来で発生している可能性があるってことだ」

「そんな所にレイシフトは可能なのかね!?」

「それ自体は問題ないかと」

 

ゴルドルフの質問にシオンが答える。

 

「座標さえ分かればレイシフトすることは可能です」

「よし、それなら話が早い! 藤丸立香! マシュ・キリエライト! 二人には特異点の修復を命じる!」

「「はい!!」」

「今回は日本。藤丸君にとっても親しみやすい場所だと思うけど、十分に注意してね!」

「ダヴィンチちゃん……了解!」

 

立香とマシュはレイシフトの準備に取り掛かる。

 

「マシュ、いくよ!!」

「はい、マスター!!」

 

二人はレイシフトで20XX年に向かった。

 

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

20XX年。

東京某所。

 

時刻は深夜3時。

この時間帯でも人が疎らに往来するはずのビジネス街だが、今は人、一人存在せず、静寂に包まれていた。

 

「やれ! バーサーカー!!」

「はぁい」

 

そんな静寂を破るように少女の声がビジネス街に響き渡る。それと同時にビルとビルの隙間から青い炎が燃え広がる。

広範囲で燃え広がる蒼炎の先には少女を抱えながら走る鎧の騎士の姿があった。

抱えられた少女は学校の制服ような服を着ており、銀髪のポニーテールをなびかせていた。一方、鎧の騎士は赤いラインが入った鎧に角の生えた兜を身に纏っていた。左手でポニーテールの少女を抱え、右手には赤い剣が握られていた。

 

「あちっ! あちちっ! セイバー! もうちょい、はよ走らんかい!!」

「うるせぇな!! 舌、噛みたくなかったら喋るな!!」

 

鎧の騎士は地面を思い切り、踏み込むと空高く跳躍し、ビルの屋上に着地する。

着地と同時に抱えていた少女を放り投げる。少女は「うげっ」と声を漏らしながら尻もちを着く。

 

「いたた……もうちょい優しく運べんのかい」

「優しく運んでいたら、今頃、丸焼きになってたぞ」

 

鎧の騎士がさっきまでいた場所を指差すと、そこは既に蒼炎の波が押し寄せていた。

 

「うわー……えげつなっ。で、これからどうするん?」

「どうするもこうするもねぇ」

 

鎧の騎士の視線の先には蒼炎でできた大蛇がいた。炎の大蛇はビルを這い上がり、顔を覗かせていた。

そして、その大蛇の頭の上には着物姿の青髪の少女と銀髪の少女が立っていた。二人とも角が生えており、青髪の方は扇子で口元を隠していた。

 

「えらい派手な攻撃するやん、奈羅花!!」

「そっちこそ、逃げ回っているだけで良いんですか? 樋口先輩」

 

奈羅花と呼ばれた銀髪の少女はクスクスと笑いながら、ポニーテールの少女。樋口楓を煽る。

その言葉に楓の額に怒りマークが浮き上がる。

 

「やっぱりシメるか!!」

「そう来なくっちゃな!!」

 

楓の言葉に鎧の騎士は嬉しそうに持っていた赤い剣を肩に担ぐ。

 

「立地的にはこっちが優勢。ここで決めるよ、バーサーカー!!」

「えぇ、分かってますとも」

 

青髪の少女が扇子を仰ぐと周囲に蒼炎の火の玉が無数に現れる。扇子を鎧の騎士の方に向けると蒼炎の火の玉が一斉に発射させる。

飛んでくる火の玉を鎧の騎士は剣を振り回りて、弾いていく。飛び散る火の粉が楓に降りそそぐ。

 

「あっつぅ!!」

「馬鹿ッ!! 離れてろ!」

 

鎧の騎士は飛んでくる火の玉を払いながら青髪の少女と距離を取る。

 

「くそっ!! 降りてこい!」

「セイバー相手に接近戦を挑む、お馬鹿がどこにいらっしゃいますか?」

 

青髪の少女は次に扇子を仰ぐ。すると仰いだ方向から蒼炎の波が押し寄せる。蒼炎の波は鎧の騎士を飲み込む。

しかし、鎧の騎士が剣を振り払い、蒼炎を掻き消した。

 

「やはり……一筋縄ではいきませんか。なら、これならどうでしょうか?」

 

今度は扇子を水平に持ち、口元に近づけると、フー。と息を吐く。すると蒼炎が花びらのように舞いながら、鎧の騎士に向かって放たれる。

鎧の騎士はそれを真っ正面から受け止める。

 

「くっ……さすがバーサーカー。一個一個の攻撃がいちいち重たい」

 

花びらのように舞っているが実際は灼熱の炎。鎧の騎士は苦悶な声も漏らしながら、振り払う。

しかし、相当なダメージを負ってしまった。

 

「おらぁ!!」

 

痺れを切らした鎧の騎士は青髪の少女に向かって、剣を投擲する。

 

「なっ!?」

 

思わぬ行動に驚いたのか、青髪の少女は大きな動きで投げつけられた剣を回避する。そして、青髪の少女の視線は飛んできた剣に向けられる。

それは一瞬の隙だった。しかし、その一瞬を鎧の騎士は見逃さなかった。地面を強く蹴り上げ、跳躍する。一気に青髪の少女との距離を詰めた。

 

「しま……」

「落ちろッ!!」

 

鎧の騎士の踵落としが青髪の少女の背中に入る。青髪の少女は成す術もなく、ビルの屋上に墜落する。

墜落した青髪の少女は立ち上がると、着物に付いた汚れを扇子で払い落とした。

鎧の騎士は満足そうにしながら落下した自らの剣をキャッチする。

 

「なんて野蛮な。それでも騎士ですか?」

「あぁん? 戦いに野蛮も糞もあるか。勝ちゃ良いんだよ」

 

鎧の騎士は一瞬で青髪の少女に詰め寄る。接近戦となれば鎧の騎士の方が上手だった。

距離を詰めると、持っていた剣を青髪の少女に向かって突き刺す。青髪の少女は扇子で剣を弾き、軌道を変える。だが、鎧の騎士の猛攻は止まらない。

そのまま、膝蹴りを青髪の少女の腹部に喰わらす。直撃した膝蹴りに思わず、口から空気が漏れだす青髪の少女。

 

「かはっ……ッ!!」

「おら! さっきまでの威勢はどうしたぁ!!」

 

相手が怯んでいる隙に今度は剣の柄頭で、後頭部を殴りつける。青髪の少女はたまらず、苦悶な表情を見せる。

そのまま、トドメと言わんばかりの回り蹴りで青髪の少女を吹き飛ばす。青髪の少女は地面にバウンドしながら壁に激突する。

 

「バーサーカー!!」

「はぁ……はぁ……問題ありませんよ。ますたー」

 

涙目で心配する奈羅花を安心させるために笑みを浮かべる青髪の少女。

それを見た奈羅花は何かを決意するように真剣な表情に変わった。

 

「バーサーカー、あれやるよ」

「……えぇ……分かりました。ますたーにお任せします」

 

奈羅花は右手を掲げると手の甲に刻まれていた紋章。令呪が輝きだす。

 

「真名開放ッ!! 【清姫】!!」

 

その瞬間、青髪の少女の魔力が増幅された。

 

清姫。

「安珍清姫伝説」に登場する童女。

熊野詣途中に一夜の宿を求めた美形の僧、安珍に一目惚れ。だが、夜更けに安珍の下を訪れた清姫は、すげなく拒絶される。それでも安珍は、熊野詣の帰りにまた会おうという約束を交わす。

ところが清姫を恐れた安珍は約束を破り、清姫に会うことなく逃げてしまう。そのことに気付いた清姫は裏切られたことに絶望し、悲嘆し、憤怒し……。

そして竜にその身を変え、彼を追いかけ、追いついた先の寺で鐘に隠れていた安珍を焼き殺した。安珍を焼き殺した清姫は、彼の後を追い入水。自ら命を絶ったと云う。

悲しき運命を背負った童女だ。

 

清姫は扇子をクルクルと回すと周囲の蒼炎が螺旋のように渦巻いていく。

 

「真名開放したってことは……宝具かッ!! マスター!!」

「なら、こっちもやな!」

 

楓も奈羅花と同じように手の甲に刻まれた令呪を掲げる。

 

「真名開放ッ!! 【モードレッド】!!」

「あいよ! マスター!!」

 

モードレッド。

アーサー王伝説に登場する円卓の騎士の一人、不義の息子にて叛逆の騎士。

父に認められる立派な騎士であろうとしたが、王は後継者としても息子としても彼女を受け入れることを拒否。

モードレッドは裏切られたと絶望し、伝説の通り、カムランの丘にて相討ちになる形で王の槍に倒れた。

 

モードレッドも同様に魔力が増幅され、頭の兜を取り外す。その姿はキリっとした顔立ちの少女だった。

増幅された魔力を赤い剣--【クラレント】に集める。クラレントから真紅の光が溢れ出す。

 

一方の清姫も増幅させた魔力を燃料として蒼炎も燃え上らせる。渦巻いていた炎はやがて炎の柱となった。

 

「いくよ、清姫!! 宝具開放ッ!!」

「承りました。宝具開放……」

 

清姫が静かに唱えると、自らの肉体も炎と化していった。やがて、清姫自身が蒼炎と一つとなり、炎の柱から一体の大蛇が飛び出した。

大蛇は炎のブレスを周囲に放つ。その大蛇は紛れもなく竜だった。

 

「どうかご照覧あれ! これより逃げた大嘘つきを退治します。【転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)】ッ!! 」

 

転身火生三昧。

自身を竜に変化させ対象を焼き殺す宝具。

 

炎の竜となった清姫がモードレッドに襲い掛かる。

モードレッドは清姫の突進をクラレントで受け止めるが、その威力は凄まじく後ろに押されてしまう。踏ん張っている地面は抉られ、みるみる後方に追いやられています。

それに今の清姫は炎そのもの、灼熱が容赦なくモードレッドを焼き殺す。モードレッドの鎧が熱で溶けだしていった。

 

「くっそ垂れがぁぁぁぁぁ!!」

 

モードレッドは気合でクラレントを振り上げ、清姫の突進の軌道をずらす。

清姫は空中で方向展開し、再びモードレッドに襲い掛かる。

 

「その手は喰らうかよ!!」

 

再び、クラレントに魔力を束ねる。すると先ほどと同じように真紅の光が溢れ出す。

クラレントを両手で握り、構える。魔力が最大までクラレントに束ねられ、それが漏れだすように周囲に赤い稲妻が走り出す。赤い稲妻は周囲の地面を削りながら、どんどん広がっていく。

 

「喰らいやがれ!!」

 

モードレッドがクラレントを振り下ろすと、膨大な魔力が斬撃となって放たれる。その斬撃は真紅の光を放ちながら、赤い稲妻を纏わせる。まるでビームそのものだった。

ビームのような斬撃は清姫に直撃し、青い炎と赤い稲妻が激しくぶつかり合う。その衝撃で周囲のビルのガラスは粉砕し、看板などは吹き飛んだ。

楓と奈羅花は吹き飛ばされないように必死に地面にしがみ付く。

しばらくぶつかり合っていた青い炎と赤い稲妻だったが、拮抗していたパワーバランスはやがて崩壊していく。清姫の炎が弱まり、モードレッドが放った斬撃が炎の竜となった清姫を貫いた。

清姫は悲鳴を上げながら、元の姿に戻っていく。しかし、その姿は粒子となって消滅していく。

 

「清姫ッ!!」

「申し訳ございません。ますたー……」

 

落下していく清姫を優しく受け止める奈羅花。

奈羅花の瞳には大粒の涙が溜まっている。それを見た清姫は微笑みながら、指で涙を拭う。

 

「どうか泣かないで下さい」

「でも……清姫が……」

「召喚されてから僅かな時間ではありましたが……貴女様と過ごした時間はとても貴重な体験で楽しかったです……」

 

清姫の下半身はほとんど粒子となって消滅していた。

奈羅花は泣きながら清姫の手を強く握る。

 

「最期に……これだけは聞かせて下さい……」

「……何?」

「……私が……私がサーヴァントで……貴女様は良かったですか?」

「そんなの……そんなの……良かったに決まっているじゃん!! 清姫は私にとって最高のサーヴァント(友達)だよ!!」

 

その言葉に嘘偽りは無かった。

嘘に裏切られ、嘘を憎んだ童女。しかし、最後は嘘偽り無い、真実の友情がそこには存在した。

 

「あぁ……その言葉だけで……私は……私は……救われました……」

 

清姫は満足そうに微笑みながら完全に消滅した。

 

「あぁ……清姫……そんな……あぁ……あ……あぁぁぁぁ!!」

 

泣き崩れる奈羅花の叫びがビルの屋上にこだまする。

それを見ていた楓は心配そうにしながら、奈羅花に近づこうとする。しかし、それをモードレッドに阻止されてしまう。

 

「行くぞ、マスター」

「でも、モードレッド……奈羅花が可哀想で……」

「いいか? これは【聖杯戦争】だ。……いや、正しくは【聖杯乱戦】か。勝つ者がいれば負ける者もいる。それが真理だ。情けをかける暇なんちゃないぜ……それに……」

 

モードレッドも寂しそうな目で泣き崩れる奈羅花を見つめる。

 

「……それに……一人にさせてやれ」

「…………あぁ、そうやな」

 

楓とモードレッドは邪魔をしないように屋上から出ていった。

 

ビルの階段を降りている中、楓はボソッと呟いた。

 

「【聖杯乱戦】かぁ……」

 




【清姫】
嘘に裏切られ、嘘を憎む、悲しき童女。
奈羅花とは似たような見た目や価値観が近く、『マスターとサーヴァント』というよりは『友達』に近い存在だった。戦闘が無いときは一緒にウインドウショッピングを楽しんだり、清姫にFPSを教えてたり、恋バナ(めちゃくちゃ重い)をしていた。

ステータス:筋力E、耐久E、敏捷C、魔力E、幸運E、宝具EX
宝具:『転身火生三昧(てんしんかしょうざんまい)』ランクEX、対人宝具(自身)
自身を竜に変化させ対象を焼き殺す宝具。
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