Fate/Grand Order-仮想虹彩乱戦にじさんじ-   作:七倉八城

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第二節~暗殺者からの奇襲~

20XX年。

東京某所。

 

レイシフト特有の眩き光を抜けると、お馴染みの青い空だった。

立香は「あぁ……またか」と落胆した。

 

「マスター! マスター! 着地しますので、掴まってください!!」

「了解」

 

立香は慣れた手つきでマシュの手を掴み、抱きかかえられる様にしがみ付いた。

 

「間もなく、着地します!衝撃に備えてください!!」

 

マシュは立香を抱えたまま、地面に着地する。着地時の衝撃で周囲に土煙が舞い上がる。

 

「ゲホッ……ゲホッ……ありがとう、マシュ」

「いえ……無事、レイシフトは成功したのでしょうか?」

 

『もしもーし。聞える?』

 

モニターからダヴィンチの声が聞えたので、映像を写す。

そこにはブリーフィングルームにたメンバーが映し出されていた。

 

『バイタル安定……。座標確認……。うん、まずは無事、レイシフトできたみたいだね。藤丸君、そこは君の知っている東京かい?』

「そうですね……見た感じ、テレビで見たような光景と一緒ですね……でも……」

『でも。とは何だね』

 

割り込んできたゴルドルフが問いかける。

 

「人が見当たりません」

『何?』

「人一人いないんです」

『ダヴィンチ。周囲に人除けの結界か何かが貼られていないか確認を』

 

ホームズの指示で直ぐ確認するダヴィンチ。確認が済んだダヴィンチは驚いた表情をしていた。

 

『これは凄い。東京全域に結界が貼られている』

「えぇっ!?」

「そんなことが可能なのですか?」

『おそらく、何かしらの儀式の途中かもしれない。だが、これは好都合だ。内側に潜り込めたのだ探索のしがいはある』

「た、確かに……よし、マシュ。ここは何か手掛かりがあるかもしれないから、探索しよう」

「そうですね、マスター」

『ホームズ!! 勝手に意見を出されても困る! …………ごほん! 藤丸立香! マシュ・キリエライト! 直ちに周辺捜査を行い、特異点修復の手掛かりを見つけるのだ! 何かあればすぐに報告だ!』

「「了解しました!!」」

 

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

 

「むっ」

「どうしました?」

 

高層マンションの屋上で二人の人影があった。

1人は制服姿に紫がかったショートの髪の少女。もう一人は赤い服を着た銀髪の男だった。少女は本を読み、赤い男は周囲を警戒するように遠くを見渡していた。

 

「突如、上空からサーヴァントとマスターと思われる二人組が現れた」

「何ですか、それ」

 

赤い男の話に食いつく少女は本を閉じて、赤い男に近づく。男の方は一瞬、嫌そうな顔をしたがすぐに話を戻す。

 

「7時の方角。ここから3km先に落下した。どうする、マスター」

「そうですね……気になりますし、行ってみますか。あ、私は面倒なので連れていってくださいね」

 

少女は両手を広げて抱っこのアピールをした。それを見た赤い男は再び、嫌な顔を浮かべながらため息を漏らす。

 

「さ、行きますよ。アーチャー」

「全く……了解だ。マスター」

 

赤い男は少女をお姫様抱っこすると屋上から飛び降りた。

 

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

 

周辺を探索していた立香とマシュは大通りに向かった。

本来なら車や人々が往来しているのであろう、広々とした通りだが今は車もおろか人の姿もなかった。

 

「いやー、東京に人がいないっていうのも新鮮だね」

「そうなんですか?」

「そうだね……日本の人口の約3分の1が集まっているからね」

「このような狭い地域でそんなにも……それなら、この大通りも人で賑わっているわけなんですね」

「そうなんだけどね」

 

立香はふと視線を並んである店の方に向ける。そこはレディース服の店のようで華やかなワンピースなどを着たマネキンが陳列されていた。

するとガラスに反射して、立香達とは反対側の方で何かが動いたように見えた。

 

「っ!!」

 

立香は慌てて、何かが動いた方を向く。

そこには何もなかった。

 

「マスター?」

「マシュ……周囲に魔力の反応はある?」

「ッ!?」

 

立香の意図を読み取ったマシュに緊張が走る。背負っていた巨大な盾を構える。

 

「いいえ……魔力反応はありません。ですが、気配遮断などで姿を隠している可能性もあります。注意してください」

 

二人に緊張が走る。

次の瞬間、何か風を切るような音が近づいてきた。その音にいち早く気が付いたマシュが盾で払いのける。

音の正体は飛んできたクナイだった。

 

「クナイ……ってことはやっぱりアサシン!!」

「あれー……上手く隠れたつもりだったのになぁ……」

 

物陰から人影が出てきた。

赤いマフラーを首にかけ、男性とも女性とも取れる中性的な顔つきだった。

スコップを引きずりながら立香達に近づいてくる。

 

「君たちライバーじゃないよね?」

「ライバー……?」

「ここら辺は人除けの結界?で、ライバー以外は近づけないはず。って運営さんが言っていたのになぁ」

 

赤いマフラーの子は頭を掻きながら独り言をつぶやく。

明らかに一人だが、さっきの攻撃はこの子がしたのではない。と立香とマシュは確信していた。おそらくサーヴァントが潜んでいる可能性がある。

マシュは盾を構え続け、立香は警戒しながらマフラーの子に近づく。

 

「僕たちは怪しい人間じゃないんだ。実は迷ってしまって……」

「えぇー、もの凄く怪しんだけど……それに……そこの盾を持ている子はサーヴァントでしょ?」

 

「サーヴァントを知っている……マスター。やはり、あの方も」

「うん。マスターみたい……どこかにサーヴァントがいるはずだ」

 

サーヴァントの存在を知っていたマフラーの子に対して、聞えない声量で話す立香とマシュ。

 

「うーん……怪しいっちゃ怪しいけどな……どうする? アサシン?」

「…………」

「おーい、アサシン?」

「…………」

「アサシン?」

「…………はぁ……マスター……」

 

マフラーの子の背後から仮面をかぶった女性が現れた。

 

「私達はアサシン。基本、闇討ち・不意打ち・奇襲を得意とします。向こうもアサシンだと感づいていたようですが、こちらから暴露する必要はありません」

「別にいいじゃん……正体がバレたって勝てば良いんでしょ?」

「っ!?」

 

マフラーの子の目つきに立香は寒気を感じた。

殺気にも取れる不気味な視線だった。

 

「あれは百貌のハサンさん!!」

「あれ? 真名までバレてる?」

「…………どうやら、敵も優れた情報網を持っているようですね。マスター、命令を」

「そうだね……もちろん……殺ろうか」

 

マフラーの子は右手の甲を掲げ、令呪を見せた。

 

「真名開放…………【百貌のハサン】…………」

「はっ!!」

 

百貌のハサン

暗殺教団の教主『山の翁』を務めた1人で、百貌のハサンの異名をとる暗殺者。

特技である多種多様な転身ぶりを駆使し、場面場面で必要なスキルを持つ性格となって仕事を完遂してきた。

同一人物とは思えぬほど多彩な能力を誇り、老若男女、ありとあらゆる変装もこなすため、真の実態は側近すらも掴めなかった程である。

その正体は多重人格者。

 

「バレてるようなら自己紹介しないとね。僕はましろ。それで相方であるサーヴァントは……」

「ハサン・サッバーハが一人。百貌のハサン。いざ、その命、貰い受ける!!」

 

百貌のハサンは一瞬で立香との距離を詰める。そして、手に持っていたクナイを振りかざす。

しかし、その攻撃はマシュの盾によって、防がれてしまう。盾とクナイがぶつかり合い、火花が散る。

百貌のハサンはバックステップで距離を取ると、再び、マシュを無視して立香に襲い掛かる。

マシュが立香と百貌のハサンの間に割り込むように入り、盾を構えるが、百貌のハサンの姿が変貌していた。先ほどまでは長身で細身の女性だったが、筋肉隆々の大柄の男にすがたを変えていた。

筋肉隆々の百貌のハサンがその巨大な腕を振り上げる。

 

「しまった!!」

 

マシュは盾で百貌のハサンの打撃を受け止めるが、凄まじい威力のため吹き飛ばされてしまう。

吹き飛ばされたマシュは先ほどのレディース服の店のガラスを突き破り、マネキンを巻き込んで倒れ込んだ。

 

「マシュッ!!」

「よそ見をしている場合か?」

 

百貌のハサンは今度は細身の男性と姿を変えていた。ムエタイのようなスタイルで構えると、立香に向けって蹴りを放つ。

鍛えられた鋼のように固い足から放たれる蹴りはまるで砲弾のような凄まじい破壊力で、立香は吹き飛ばされてしまう。うまく受け身を取ろうとするが、受け身に失敗してポールに叩きつけられる。

 

「ぐはっ……」

「マ、マスター!!」

 

吹き飛ばされたマシュは慌てて立ち上がり、立香に駆け寄る。立香はあばら骨が何本か折れており、立ち上がれる状態ではなかった。

百貌のハサンは再び、長身の女性に戻っていた。

 

「アサシンだからと舐めてもらっては困る。私達は百貌のハサン。その名の通り百個の人格を持っており、接近戦に優れた人格も存在する。貴様らに勝ち目はない」

 

クナイを取り出し、振り上げる百貌のハサン。

マシュは立香を庇うように覆いかぶさる。百貌のハサンがクナイを振り下ろす。

 

その瞬間、彼方から赤い一閃が飛んできて、百貌のハサンの腕を吹き飛ばした。

吹き飛ばされた腕とクナイが無造作に転げ落ちる。

 

「ぐわぁぁ!!」

「アサシンッ!! 今のは狙撃ッ!? アーチャーか!!」

 

ましろは飛んできた方向を見るが、目視では確認することが出来なかった。

 

「……分が悪いか? どうする、アサシン?」

「いえ……不覚を取られましたが問題ありません。漁夫の利を狙うアーチャーと目の前の敵を一気に叩きます。マスター、宝具の許可を」

「あー……確かにアサシンの宝具なら可能か。いいよ」

 

ましろの令呪が輝きだす。

 

「宝具開放……殺れ、アサシン」

「かしこまりました。宝具開放! 我ら群にして個、個にして群、百の貌持つ千変万化の影が群……いざ妄想幻像(ザバーニーヤ)!!」

 

百貌のハサンが宝具を唱えるとましろのと百貌のハサンの周辺に似たような姿をした複数の人影が現れた。

 

「これこそが我が最強の技……妄想幻像。我らの攻撃を避けきれるか?」

 

無数に増えた百貌のハサンがマシュと立香に襲い掛かる。

 

「詰めが甘いな。アサシン」

 

マシュ達の目の前に突如、赤い服の男が現れた。

そして、握られていた白黒の双剣で襲い掛かってくる百貌のハサンを薙ぎ払うように切り裂く。その攻撃により、大半の百貌のハサンが消滅した。

 

「な、何ッ!?」

「おや? 大半は消したつもりだが……まだ残っているということは全て倒さないと駄目なようだな」

「その声は……」

 

立香に覆いかぶさっていたマシュが顔を上げると赤い服の男と目が合った。

 

「エミヤ先輩……?」

「ん? すまないが、私は君達を知らない。もしかしたら……過去に私を召喚したことでも?」

「あ、いえ……何といったら良いか……」

「おっと、おしゃべりは後だ。まずは目の前の敵から排除だ」

 

エミヤ

とある未来において、正義の味方を目指したとある青年が辿り着いた成れの果ての一つ。

 

エミヤは双剣を構え、百貌のハサン達を睨みつける。

睨まれた百貌のハサン達はエミヤに恐れたのか一歩、後ろへ下がる。

 

「さっきのアーチャーか……てか、このサーヴァント見覚えが……」

「マスター……命令を……」

「うーん……やれそう?」

「命令であれば」

「よしっ。なら、頑張れ」

「かしこまりました」

 

長身の女性の百貌のハサンが指を鳴らすと他の百貌のハサンが一斉にクナイを構えた。

 

「我らの最大の攻撃は数だ。数で押し通せ!」

 

クナイを持った百貌のハサン達が一斉にエミヤに襲い掛かる。

エミヤは持っていた双剣を百貌のハサン達に向けって投擲する。二つの双剣は回転して、次々と百貌のハサン達を切り裂く。

 

「馬鹿が! 武器を捨てたか!!」

 

1人の百貌のハサンがクナイを振り上げる。

 

投影開始(トレース・オン)

 

エミヤが呟くとさっき投げた双剣と全く同じ剣が手元に現れた。

そして、そのままカウンターで百貌のハサンを切り裂く。

 

「何ッ!?」

「いくら数で襲い掛かろうと無駄だ」

 

エミヤは再び、双剣を投擲すると今度は先に投げた双剣が引き寄せられるように戻ってきた。投擲した双剣と戻ってきた双剣。計4本の剣で百貌のハサンを切り裂く。

そして、戻ってきた双剣をキャッチすると、その剣でクナイと受け止め、蹴りつける。襲い掛かってくるクナイをいとも簡単に受け止め、回避する。

エミヤは一切、ダメージを負っていなかった。

 

「つ、強い」

 

エミヤの強さに驚愕するマシュ。

気絶していた立香も目を覚まし、身体を起こそうとするが体に激痛が走る。

 

「マ、マシュ……くっ!?」

「マスター! 起きちゃダメです! 骨が何本か折れています」

「だ、大丈夫……戦っているのはエミヤ?」

「はい。私たちを助けてくれています。ですが……敵の数が多いです」

「…………マシュ、僕は大丈夫だからエミヤの援護を」

「ですが!」

「大丈夫だから」

 

立香の真っ直ぐな瞳にマシュは押し負けてしまい、ため息を漏らす。

 

「分かりました。マスターはここで安静にしてください」

 

マシュは盾を持ってエミヤの元に駆け寄った。

そして、そのまま複数の百貌のハサンを盾で薙ぎ払う。

 

「援護します」

「…………承知した」

 

マシュはエミヤの背後を守るように盾を構え、背を向けるように立った。

百貌のハサン達の攻撃をマシュが防ぎ、エミヤが反撃する。

マシュは盾で防ぎつつ、そのまま盾で叩きつけたり薙ぎ払って、百貌のハサンを倒していく。一方、エミヤはクナイを双剣で受け止めたり、紙一重で回避しつつ、双剣で切り裂く。

そうしていく内の百貌のハサンの数も減ってきていた。

 

「くっ……強い」

「どうする? ここは大人しく引き下がるかい?」

「…………攻め切れないのは私の責任です。ここで命を捨ててでも倒せ。というのでこの命に代えても」

「そういうのは良いよ。自分の命を粗末にするヤツは嫌いだし。……じゃ、ここは逃げるか」

 

ましろが手を叩くと長身の女性の百貌のハサンが近づき、ましろを抱きかかえた。

 

「貴様らはマスターを逃がすための盾となれ」

 

長身の女性の百貌のハサンが他の百貌のハサンに命令すると抱えたましろと共に一瞬で姿を消した。

命令のせいか残った百貌のハサン達の攻撃が激しくなる。

筋肉隆々の百貌のハサンが巨大な腕を振り回す。マシュが盾を両手で持って、全力で受け止める。百貌のハサンの打撃が強烈で、全力で受け止めたはずのマシュがじりじりと後ろへ押される。

しかし、負けじとマシュは巨大な腕を押し返し、隙ができた腹部に盾を叩きこむ。

 

「逃がすか」

「エミヤ先輩! とにかく目の前の敵を倒しましょう」

「くっ」

 

エミヤの真似か一人の百貌のハサンが二本をクナイを持って、乱撃を繰り出す。エミヤも対抗するように双剣をぶつける。クナイと双剣がぶつかる度に火花が散る。

エミヤがクナイを弾き、隙ができたとこを見逃さず、そのまま百貌のハサンを真上から切り裂く。

マシュは盾を構えたまま突進する。盾の突進により、百貌のハサン達が吹き飛ぶ。

残りはあと僅か。

エミヤが三組目の双剣を作り出し、計6本の剣を巧みに使いこなし、残りの百貌のハサンを倒し切った。

 

「ふぅ……これで全部か」

「マスター!!」

 

百貌のハサンとの戦闘が終わり、マシュは立香の元へ慌てて駆け寄る。

 

「お疲れ様、マシュ」

「まずはマスターの治療を!!」

「それなら」

 

立香を心配するマシュの元にエミヤが近寄ると、ビルの間の薄暗い裏路地の方を見つめる。

そこから制服姿に紫がかったショートの髪の少女が出てきた。

 

「戦闘は終わりましたか?」

「あぁ、だが、敵を倒しきれなかった」

「いえ、このお二人が無事なら構いません……と、言いたいところですがマスターさんの方は重症ですね」

 

少女は立香の全身を見渡す。立香はボロボロで一人で立ち上がることが不可能だった。

 

「確か事務所に健屋さんがいたと思うので、そこで治療してもらいましょう。アーチャー、彼を事務所まで運んであげてください」

「…………了解した」

 

エミヤは少々、不満そうにしながらも立香を背負った。

 

「あ、あの……貴女は?」

「え? あぁ、そうでしたね。自己紹介がまだでしたね。私の名前は静凛。それでこっちは……」

「私のことは知っているようだ」

「あ、そうなんですね」

 

凛は興味なさそうに答えると方向を変えて、歩き出した。

 

「では、事務所まで案内しますね」

「じ、事務所ですか?」

「えぇ、私たち『にじさんじ』の事務所です」

 

 




【百貌のハサン】
暗殺教団の教主『山の翁』を務めた1人で、百貌のハサンの異名をとる暗殺者。
マスターのましろとの相性は良くも悪くもなく、普通の主従関係を築いている。ましろに忠誠を誓い、命令であれば命を差し出すことも厭わない。
ましろがいい加減で放浪気味な所があるため、百貌のハサンが面倒を見ている部分もある。

ステータス:ステータス:筋力C、耐久D、敏捷A、魔力C]、幸運E、宝具B
宝具:『妄想幻像(ザバーニーヤ)』
人格の1つ1つを別個体として分離させることができる能力。
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