Fate/Grand Order-仮想虹彩乱戦にじさんじ-   作:七倉八城

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第四節~強くて可憐なキャットはワンダフル!?~

都内某所の広い公園。

時刻は深夜0時。公園は月明かりで照らされ、昼間の楽し気な雰囲気とは裏腹に不気味な雰囲気が漂っていた。

 

「おい! アイツを止めろ!!」

「無理だって!!」

「動きが意味わからねぇ!!」

 

そんな真夜中の公園で怒号が飛び合う。

三人の男が逃げ惑うように駆け回っていた。その背後から物凄い量の土煙が舞い上がっている。

土煙を巻き起こしている正体はメイド服を着たケモ耳少女だった。

 

「ふふふっ! 私の勢いは誰にも止められない!!」

 

ケモ耳少女は獲物を狙う猛獣の如く、鋭い眼光で目の前の三人をロックオンしている。

 

「クソォォ!! 誰だよ! 三人なら倒せるって、言った奴!」

「長尾景です!!」

「ちょっ! おい、とーじろー!! 言い出しっぺはハルだろ!!」

 

追われている三人は甲斐田晴、長尾景、弦月藤士郎の三人だった。三人、並列して走っていたが甲斐田が立ち止まった。

 

「仕方ない! 三人で撃つぞ!!」

「ハルゥ!?」

「しょうがないなぁ」

 

三人は令呪を掲げた。

 

「来い! 【トリスタン】!!」

「ヤツを止めろ! 【佐々木小次郎】!!」

「出番だよ! 【バーソロミュー・ロバーツ】!!」

 

三人の前に三体のサーヴァントが現れた。

ハープのような弦楽器を持った赤髪の騎士。紺色の陣羽織に長大な太刀を帯びた、耽美な青年剣士。黒髪に褐色の肌をした美青年。

 

トリスタン

『哀しみの子』を意味する名を持つ円卓の騎士「トリスタン」。

円卓随一の弓手で、数々の武勲を打ち立てた。愛に生きる男であった為に、「王には人の心が分からない」といい円卓を去っていった。

 

佐々木小次郎

日本において最も名の知れた剣士のひとり「佐々木小次郎」―――その本人ではない。

「佐々木小次郎という英霊を形作る上で、最も条件の当て嵌まる無名の剣士の亡霊が選ばれた」という特異な存在である。

 

バーソロミュー・ロバーツ

浅黒い肌から「ブラック・バート(Black Bart)」の異名を持つ。バートはバーソロミューの愛称、もしくは準男爵の意味。

海賊の黄金時代と呼ばれた最後の時期にカリブ、ブラジル、ギニアなどを中心に海賊行為を働き、莫大な財をなした「大航海時代最後にして最大の海賊」。

 

「はぁ……私は悲しいです……呼び出されたと思えば、目の前には猛獣」

「やれやれ……イノシシは狩ったことはあるが、獣少女は初めてだな」

「トリスタン卿。小次郎殿。飽きられて、あれを倒しましょう」

 

三人は各々の武器を構えた。

 

「私とトリスタン卿であれの動きを止めます。トドメは小次郎殿が」

「かしこまりました」

「あい、分かった」

 

トリスタンは持っていたハープの弦に指を掛ける。バーソロミューは二丁拳銃を構える。

ケモ耳少女は目の前まで迫ってきていた。

トリスタンは弦を弾くと、ケモ耳少女の足元に斬撃が走る。

 

「何っ!?」

 

思わぬ攻撃にバランスを崩すケモ耳少女。

バーソロミューはその隙を見逃さず、拳銃を乱射させる。弾丸が地面に着弾し、ケモ耳少女は無理矢理、回避しようとして転んだ。

そのままの勢いで転げ回りながら向かってくる。

 

「うわぁぁぁ!!」

「来たか」

 

小次郎は刀を抜かず、鞘に入れたままケモ耳少女を殴りつけた。

ケモ耳少女は軌道を変え、空高く飛んで行った。飛んで行ったケモ耳少女はそのまま墜落した。

 

「お見事です」

 

トリスタンがハープを鳴らせながら小次郎に近づいた。

 

「いや、何。軽く力を入れて軌道を変えただけだ」

「……どうやら、まだ元気なようですね」

 

バーソロミューが墜落した方角を見ると、泥だらけになったケモ耳少女が立っていた。

肉球の手で器用に数本の包丁を持っていた。

 

「私を怒らせたいようだな」

 

ケモ耳少女は獣のような唸り声を上げる。

その様子にVΔLZの三人は後退りした。

 

「ご主人!!」

 

ケモ耳少女が公園のベンチの方に顔を向けると、そこにはベンチに横たわっている少女がいた。

ベンチで横たわっている少女から寝息が聞こえる。

 

「コラッ! 起きろ、ご主人!!」

「にゃ!!」

 

寝ていた少女はケモ耳少女に呼ばれると飛び起きた。

寝ていたのは文野環。

 

「もぉー……せっかく気持ちよく寝てたのに」

「戦闘中だ。目を覚ませ」

「うーん……別に私が何かしなくても勝てるでしょぉ」

「そういう訳にもいかん。真名解放を求む」

「仕方ないなぁ」

 

環はあくびをしながら令呪を掲げた。

 

「真名開放。【タマモキャット】。あとは宜しくね」

「これで私の本気が出せる……ワン!!」

 

タマモキャット

タマモでキャットなバーサーカーなメイド。

語尾はワン。そして好物は人参なナマモノ。

好きなモノはご主人。嫌いなものは自分と芸風がかぶってるもの、あと自分以外のタマモナイン。

 

タマモキャットの魔力が膨れ上がる。

 

「これはマズいですね……マスター!!」

 

バーソロミューが藤士郎に向かって叫ぶ。

 

「相手はバーサーカー。下手に宝具を喰らうと全滅します!!」

「……どうしよっか」

「決まってるべ!!」

「あぁ! 迎え撃とう! トリスタン! 宝具開放!!」

「かしこまりました。マスター」

 

トリスタンは再び、ハープを構えるとタマモキャット同様に魔力が膨れ上がった。

 

「んじゃ、決めようぜ! 小次郎!! 宝具開放!!」

「まったく……随分と勢い任せだのぉ……だが、嫌いではない」

 

小次郎も刀を抜き、魔力を高める。

 

「……ということなので、僕たちもいこうか」

「そうですね」

「宝具開放!!」

 

バーソロミューも二人同様に魔力が増幅していく。

三体のサーヴァントによる同時宝具。

 

「痛みを歌い、嘆きを奏でる」

「秘剣」

「全砲門一斉掃射!」

 

三体のサーヴァントの魔力は最大限まで高められる。

トリスタンは静かに弦を弾くと、空気が揺れ、風が巻き起こる。巻き起こった風はトリスタンを囲むように渦巻く。

そして、再び弦を弾くと、渦巻く風から真空の斬撃が放たれる。その斬撃は空気も切り裂く。

 

佐々木小次郎は呼吸を整えると、静かに息を吐く。余計な力は抜き、無我の境地に入る込む。

そして、刀を構える。その瞬間、目にも止まらぬ速さの斬撃が放たれた。その斬撃は円弧を描く3つの軌跡。三方向から放たれた神速の剣技は回避することは不可能。

 

バーソロミューの周囲に無数の海賊船が展開される。海賊船からは砲台が伸び、照準をタマモキャットに合わせる。

そして、彼の掛け声と共に天地上下左右から一斉砲撃が開始された。

 

痛哭の幻奏(フェイルノート)

燕返し(つばめがえし)

高貴なる海賊準男爵の咆吼(ブラック・ダーティ・バーティ・ハウリング)

 

三体のサーヴァントの宝具が一斉に解き放たれる。

 

「甘いワン! …………というわけで皆殺しだワン!」

 

魔力が最大限まで高められたタマモキャットの表情が豹変した。

己の中の野生を開放した。眼光は鋭く、口元から涎が垂れる。

足に力を入れると、足の血管に血が回り、筋肉が膨張し、足が一回り太くなる。力いっぱい踏み込むと地面に亀裂が走る。

そして、地面を蹴り上げると、その衝撃で地面が抉れ、タマモキャットの背後に衝撃波が放たれる。

凄まじい速さで駆け抜ける。

 

「貴様らの攻撃は見切ったワン」

 

バーソロミューの砲撃が降りそそぐ中、お構いなしで直線に突き進む。

目の前にトリスタンの斬撃が迫ってくる。スピードを落とすどころか、さらに加速させる。そして、トリスタンの斬撃を紙一重で躱す。

タマモキャットは斬撃を直感で回避した。

実際に目視で認識し、回避する行動をとっていたら、斬撃は喰らっていた。しかし、タマモキャットは無意識でそれを感じ取り、脳で考えるより先に野生の勘で攻撃を回避していた。

 

「なっ!?」

 

宝具を回避され、驚愕するトリスタン。

三体の元に迫ってくるタマモキャット。しかし、小次郎の回避不可能の剣戟が残っていた。

3つの斬撃がタマモキャットの首を狙う。タマモキャットは両手を上げ、自らの両腕を犠牲にして、小次郎の攻撃を受け止めた。

両腕は切断されたが、そのおかげで小次郎の懐に潜り込めた。

そして、タマモキャットは口を大きく開くと小次郎の喉元に食らいついた。

 

「ッ!!」

おあっああん(貰ったワン)

 

喰らいついたタマモキャットはそのまま小次郎の喉を引き裂いた。

小次郎の喉元から血しぶきが噴き出し、そのまま倒れる。

 

「小次郎ッ!!」

「次ィィ!!」

 

タマモキャットは小次郎の体を踏み台にして、トリスタンに向かって飛び掛かる。トリスタンは弦を弾いて、斬撃を飛ばす。

トリスタンの斬撃を体を捩じりながら避ける。

そして、そのままトリスタンの肩に食らいつく。

 

「トリスタン卿!!」

 

バーソロミューが拳銃を構え、タマモキャットに向かって発砲する。

タマモキャットは飛んで回避する。着地と同時に蹴りを打つ。タマモキャットの蹴りはトリスタンの脇腹に入り、そのまま吹き飛ばされる。

トリスタンは数本の木をなぎ倒しながら吹き飛ばされ、最後は公園にあるジャングルジムに激突する。

 

「くっ!! この化け物め!!」

 

発砲を続ける。

タマモキャットは飛び跳ねて弾丸を回避する。当たらない弾丸に焦るバーソロミュー。

そんなバーソロミューを弄ぶかのように周囲を走り回るタマモキャット。

タマモキャットが木々の間を駆け抜けた、その時。一瞬でタマモキャットの姿が消えた。

 

「何ッ!!」

「バーソロミュー! 上だッ!!」

 

見失ってしまったバーソロミューに指示を出す藤士郎。

消えたはずのタマモキャットがバーソロミューの頭上に飛び上っていた。

 

「しまっ」

「遅い!!」

 

くるくる回転しながら踵落としをバーソロミューの後頭部狙って打つ。

タマモキャットの踵落としがバーソロミューの後頭部に直撃し、地面に叩きつけられる。

倒れ込んだバーソロミューは動けなかった。

 

「宝具! 燦々日光午睡宮酒池肉林(さんさんにっこうひるやすみしゅちにくりん)!! 私の勝ちだワン!!」

 

血まみれで倒れた佐々木小次郎。ジャングルジムにもたれて倒せるトリスタン。地面に倒せ付すバーソロミュー・ロバーツ。

三体のサーヴァントは粒子となり、消滅しかけていた。

 

「ま……マジか……」

「全滅だとッ!!」

「バーソロミュー……」

「あ、終わった?」

 

ベンチでくつろいでいた環がタマモキャットに近づく。

 

「うわっ……血だらけじゃん。私に近づかないでね」

「そんなことを言うなよ、ご主人」

 

大満足な表情のタマモキャットは芝に寝転んだ。

いつの間にか切断されていた両腕が元に戻っていた。

 

「と、いうことで私は一休みするワン」

 

タマモキャットはそのまま眠りだした。

 

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

 

「どうだい、藤丸君。これが【聖杯乱戦】さ」

「…………これが…………」

 

立香はベルモンドに差し出されたタブレットで戦いの様子を見ていた。

立香とマシュはベルモンドの誘いで、ベルモンドのバーに来ていた。バーにはお客はおらず、カウンターにいるベルモンドとその向かいに座る立香とマシュ。そして、カウンターの端でビールを巨大なジョッキで飲み干しているイスカンダルだけだった。

イスカンダルが豪快にビールを飲み干すと、勢いよくジョッキを置く。

 

「カーーーッ!! このビール。という酒は上手いな!! 葡萄酒も美味ではあったが、葡萄酒とは異なる香り……そして、なんと言っても! この喉ごし!! 飲む手が止まらんわ!!」

「飲んでも良いけど、ジョッキは割るなよ」

 

ベルモットは空いたジョッキにビールを注ぐ。並々に注がれるとイスカンダルはすかさずジョッキを手に取る。

 

「ごめんね、騒がしくて。……それで実際に【聖杯乱戦】を見た感想はどう?」

「そうですね……やっぱり……多彩なサーヴァントが戦っている分、それぞれの対策が大変そうですね」

「ベルモンドさん、質問なのですが」

 

マシュが手を上げる。

 

「【聖杯乱戦】のルールで強制的に戦うことにはなりますよね」

「そうだね。さっき見せた、文野環VS長尾景がそうだったね」

「ですが、先ほどのように三対一でもルール違反にはならないのですか」

「おっ? 良いところを突くね。ルールでは『戦わなければならない』。としか、提示されていないから乱入や加戦することは禁止されていないんだ」

「そうなんですね」

「なるほど……だったら、徒党を組んだ方が勝率は上がるのか」

「まぁ……文野環に関しては完全にイレギュラーだけどね」

 

ベルモンドは苦笑いしながら、立香とマシュの前にフライドポテトを出した。

 

「イレギュラー?」

「彼女は……なんて言えば良いのかな? 彼女自身が狂人(バーサーカー)なんだよ。良い意味でも悪い意味でも常識外れ。どんなどんなこ行動を取るかが予想できない」

「す……すごい方なんですね……ん?」

 

ふと、立香はタブレットに目がいった。

先ほどの映像に進展があったようだ。

 

「あれ? 誰か来ましたよ?」

「ん? おや? これは…………イスカンダル!!」

 

ベルモンドは手を拭い、カウンターを飛び出した。

 

「行くのか?」

「あぁ!!」

「了解した!!」

 

イスカンダルはベルモンドの思考を理解したのかビールを一気飲みし、バーの入口に戦車を呼び出した。

 

「どうしたんですか?」

「言ったと思うけど、俺は極力【聖杯乱戦】を止めたいんだ。強制的な戦闘はシステム上、仕方ないけど……無意味な戦闘なら止める」

「…………僕たちも行きます! マシュ!!」

「はいッ!」

「分かった! イスカンダル! この子たちも頼む」

「まったく……仕方ない」

 

イスカンダルは三人を乗せると戦車を走り出させた。

 

「ベルモンドさん、さっき映像に映った人は?」

「あー……彼女は樋口楓。この【聖杯乱戦】の優勝候補さ」

 

 

 

 

 

――――――――――。

 

 

 

 

 

「なんや、野良猫か」

「あ、でろーんさん」

 

深夜の公園で寝転んでいる環とタマモキャットの所に楓とモードレッドがやってきた。

モードレッドは警戒して剣を構える。

 

「マスター、アイツもライバーか?」

「ん? あぁ、モードレッドは知らんのか。アレは文野環。結構、やんちゃな子や」

「で、やるのか?」

「そうだなぁ……どうする? 野良猫」

「どっちでもいいよー」

「なら、行かせてもらうぜ!!」

 

モードレッドは剣を構えながら走り出す。

 

「来たよ、バーサーカー」

「ご主人。申し訳ないが吾輩は休息中である。非常に眠い」

「え?」

「おらぁ!!」

 

モードレッドが剣を振り下ろす。剣が環の目の前に迫ってくる。

しかし、その剣をタマモキャットが受け止めた。受け止めた本人は眠気眼だった。

 

「サーヴァントにだって休息は必要だ。だが……」

 

タマモキャットは目を擦ると、目つきが変わった。

獣のような瞳孔になっていた。

 

「私のお昼寝タイムを邪魔する、不届き者には制裁だワン!!」

 

受け止めていた剣を振り上げる。

 

「うぉっ」

「ワン!!」

 

バランスを崩したモードレッドにタマモキャットのパンチが入る。

モードレッドは吹き飛ばされるが、上手く着地して態勢を整える。

 

「コイツ、バーサーカーのくせに意外と頭が切れるヤツだな」

 

再び、剣を構え直し、タマモキャットと距離を詰める。

モードレッドが剣を振るうとタマモキャットは自身の包丁で受け止める。モードレッドは力ずくで剣を押し込む。

タマモキャットも負けじと力を入れ、押し返す。交差する剣と包丁に火花が走る。

するとタマモキャットが大きく口を開き、モードレッドに噛みつく。その行動に気が付いたモードレッドは剣を握っていた左手を離し、そのままカウンターでタマモキャットのアゴにアッパーを放つ。

モードレッドのアッパーは綺麗にアゴに入り、タマモキャットが吹き飛ぶ。

 

「おいおい、これで終いか?」

 

吹き飛ばされたタマモキャットが立ち上がると唾を吐く。

血が混じった唾と一緒に鋭い牙も吐き捨てる。先ほどのアッパーでタマモキャットの牙が折れた。

モードレッドのアッパーが効いたのか、ふらつきながら口の端に付いた血を拭う。

 

「ブチ切れちまったぜ」

 

タマモキャットの表情が変わる。

怒りで理性を失った猛獣の顔だった。

 

「ウオォォォォォン!!」

 

タマモキャットは雄叫びを上げる。その咆哮は空気を揺らし、環や楓は思わず耳を塞いだ。

 

「ここからが本番か」

「グオォォ!!」

 

モードレッドが気合を入れなおすと同時にタマモキャットが走り出す。

四つん這いの状態だが、今までよりも早く駆け抜ける。

 

「くっ! 速ぇ!!」

 

向かってくるタマモキャットを捉え、切り裂く。しかし、手ごたえはなく虚空を切り裂いていた。

モードレッドが切り裂いたのは残像だった。

 

「なっ!!」

 

いつの間にか背後に回っていたタマモキャットがモードレッドの頭を掴み、地面に叩きつける。

地面に叩きつけられたモードレッドはタマモキャットの怪力によって、身動きが取れなかった。

 

「くそっ!! どきやがれ!!」

 

タマモキャットはモードレッドの頭を押さえ突きながら腹部を殴りつける。

 

「がはっ……」

「ウオォォォォォ!!」

 

何度も何度も腹部を殴りつける。

その衝撃で血を吐くモードレッド。

モードレッドは鎧で守られているがタマモキャットの打撃は鎧ごと砕く勢いで殴り続ける。次第に鎧にひびが入っていく。

打撃を防ごうとするが、身動きが取れないのとタマモキャットの猛攻で、ただ受けるしかなかった。

 

「モードレッド!!」

「くっ……ふざけやがって!!」

 

モードレッドは無理矢理、足を上げると膝蹴りでタマモキャットの打撃の軌道をずらした。タマモキャットの打撃は地面に当たり、凄まじい勢いだったのか、地面に埋まってしまった。

地面に埋まってしまった腕を引き抜こうとするが、中々抜けない。

 

「ぐっ!! だが、隙はできた!!」

 

モードレッドはその隙を逃さず、剣を握り、押さえつけられていた腕を切り裂いた。

 

「グゥゥ……」

 

腕を切られよろめくタマモキャットにモードレッドは蹴りを入れ、吹き飛ばした。

吹き飛ばしたタマモキャットは地面に落ちると、むくりと立ち上がる。モードレッドも体勢を立て直し、剣を構える。

互いに先ほどの攻撃で深手を負ってしまった。

肩で息をするモードレッド。切断された腕から血が滴るタマモキャット。

先に動いたのはタマモキャットだった。

タマモキャットは飛び上がると公園の木々の間を飛び跳ねるようにモードレッドに近づく。モードレッドは魔力をクラレントに集約させる。

 

(…………互いに消耗はしているはず。ヤツは次の一撃で俺を仕留めるつもりだ。なら、ここは真っ正面から叩き切るのみ!!)

 

魔力が集められたクラレントからは真紅の光が放たれ、赤い稲妻が漏れだす。

クラレントを両手で握り、突っこんでくるタマモキャットをただ待つ。

 

「ウオォォォォォン!!」

「喰らいやがれ!!」

 

タマモキャットは雄叫びを上げながら、腕を振り上げた。対するモードレッドはカウンターを仕掛けるように剣を振るう。

しかし、ここでタマモキャットの直感が動いた。脳で考えるより先に体を捻らせ、振り上げた腕で剣を受け止めた。受け止めた腕は魔力を集ったクラレントによって焼き払われた。

タマモキャットは腕を犠牲にしながら、そのままモードレッドに突っこむ。そして、喉元目掛けて噛みつこうとする。

 

「アンタなら、そのまま突っこんでくると読んでいたぜ!!」

 

モードレッドはクラレントを離し、逆手に持ち替える。

そして、そのままクラレントを振り上げる。振り上げられたクラレントは突っこんできたタマモキャットを切り裂いた。

 

「ガッ…………」

 

タマモキャットはそのまま倒れ込む。

モードレッドの一撃により、致命的なダメージを負い、タマモキャットの体が粒子となって消滅していく。

 

「はぁ……はぁ……俺の勝ちだ!!」

「負けてしまったか」

 

消えかかっているタマモキャットに環が近づく。

 

「すまんな、ご主人」

「別にいいよ。今度は二人でのんびりお昼寝しようね」

「…………ふふっ……そうだな」

 

そう言い残すとタマモキャットは消滅した。

モードレッドは深く息を吐くと剣を閉まった。モードレッドに駆け寄る楓。

 

「お疲れさん」

「おう」

「…………でろーんさん」

「ん?」

 

タマモキャットを見送った環は楓に近づいた。

 

「今度は負けないからね」

「…………せやな! また、あの猫サーヴァントと出会えたら戦おうな!!」

 

楓は環の手を握った。

 

 




【タマモキャット】
タマモでキャットなバーサーカーなメイド。
だらしない環の身の回りの世話をしている。主に部屋の掃除や料理などを振る回っている。天気がいい日は二人そろって外で日向ぼっこしている。
どちらも独特な雰囲気と言い回しをしているがフィーリングで奇跡的に通じ合っている。

ステータス:筋力B+、耐久E、敏捷A、魔力A、幸運B、宝具D
宝具:『燦々日光午睡宮酒池肉林(さんさんにっこうひるやすみしゅちにくりん)』ランクD+、対人宝具
己の中の野性を解放し、並みいる敵を本能のままに血祭りに上げた後、勢いのまま寝転がって日向ぼっこに興じる何ともアレな技。
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