Fate/Grand Order-仮想虹彩乱戦にじさんじ- 作:七倉八城
都内某所。とある学校の校舎。
一つの人影が物凄い勢いで会談を駆け降りる。途中で廊下へ出ると、その勢いのまま廊下を駆け抜ける。
通り抜けた勢いで廊下の窓が揺れ、ガラスにヒビが入る。
その人影の後ろから別の人影が追いかけてくる。
「ちょっ! どこまでも追いかけてくるし!!」
先頭を走っている人影は女子高生の格好をした少女だった。肩にはアクセサリーを大量につけたカバン。そして、その姿には似ても似つかない刀の鞘が腰に差してあった。
「どうすんのよ!」
頭についている獣耳をピコピコ揺らしながら一人で声を荒げている。
その後ろを追いかける別の人影。その人影は文字通り、影だった。西洋風の甲冑を身にまとい、手には長い槍を持っていた。1mは超える柄に剣のように長い刀身、その刀身も歪な形をしていた。
影の鎧騎士は無言で女子高生の後を追いかけていた。
「え? 準備が終わるまで時間を稼げ? もぉー! これが終わったらケーキ奢ってもらうからね!」
女子高生は急ブレーキをかけて停止すると、来ていた服が変わり制服から白拍子風のミニスカ装束になった。頭には烏帽子が乗っていた。腰に差してあった刀を抜くと、腰を落として姿勢を低くした。
女子高生が武器を構えたのを見た鎧騎士は片手で持っていた槍を両手で持ち直し、そのまま剣先を女子高生に向けて突進してきた。
「そんな見え見えの攻撃!」
女子高生は跳躍して、突っ込んできた鎧騎士の頭上を飛び上がった。鎧騎士の背後につくと刀を横一線に振りぬいた。背後を取られた鎧騎士は前に突き付けていた槍を地面に突き刺し、棒高跳びの要領で飛び上がり、女子高生の攻撃をかわした。
「マジぃ!?」
確実に不意を突いたつもりだった女子高生は驚愕しながらも、右足を前に出して今度は刀を振り上げた。鎧騎士の着地を狙った追撃だ。
鎧騎士は着地する前に槍を振り下ろし、女子高生の剣戟を受け止めた。そのまま着地すると同時に右肩を前に出してタックルをしてきた。女子高生はバックステップで直撃をかわしたが、タックルの風圧で吹き飛ばされた。吹き飛ばされながらも数回ステップを踏んで体制を整え、乱れた衣服を直した。
「お気にの服なのにー! チョー怒ったし!」
女子高生の顔つきが変わり、真剣な表情になった。その様子を見て鎧騎士は槍を構えた。女子高生が指を鳴らすと上空に2本の刀が展開された、2本の刀は宙を浮いていた。女子高生は鎧騎士に指を差すと2本の刀は鎧騎士に向かって飛んで行った。
鎧騎士は槍を振り回し、飛んできた2本の刀を払うが、弾かれた2本の刀は軌道を変え再び、鎧騎士に向かって飛んでいく。まるで自動追尾のように襲い掛かってきた。
鎧騎士が2本の刀を相手をしている隙に女子高生は鎧騎士との間合いを詰めた。
「これでも喰らえ!」
女子高生が刀を振ると、刀が変形に水流となった。突然現れた水流に鎧騎士は回避しようとするが、一本道の廊下では逃げ場がなく、そのまま水流に飲み込まれた。やがれ水流に耐え切れなくなった窓ガラスが割れ、そこから水が流れ落ちる。廊下の水かさが低くなると、そこには倒れている鎧騎士の姿があった。
「ふぅ、いっちょ上がりっしょ!」
「あーあ、滅茶苦茶だよ」
女子高生の背後から一人の大柄な男がやってきた。大柄な男は奇抜な格好でメイド服を着たムキムキのオカマだった。さらに耳が尖っており、メイド服を着たムキムキのオカマはエルフでもあった。
メイド服を着たムキムキのオカマエルフの名前は花畑チャイカ。
チャイカは廊下に散らばったガラスを踏まないように歩きながら女子高生に近づいた。
「あー! チャイちゃん! 命令が適当過ぎるし」
「いや、マスターって呼んでよ。鈴鹿御前さん?」
鈴鹿御前
坂上田村麻呂と共に数多の鬼を退治した逸話を持つ女性。
互いに一目惚れしていた両人は色々あって一緒に暮らすことに。その後は逸話通りに悪路の高丸など数々の鬼を二人で退治し、宿敵大嶽丸を倒すため鈴鹿は三年間かけて偽りの花嫁を演じ神通力で強固な皮膚を柔らかくし、討ち取った。
鈴鹿御前は不服そうに頬を膨らませながらチャイカに近づいた。
「マスターって柄じゃないっしょ? それよりも折角、準備したのに呆気なく倒しちゃったね」
「まぁーね……何事もなく倒せたのは良いことだし。さっさと帰るとしますか」
二人は身支度を整え、帰宅しようとした瞬間、微かに倒れている鎧騎士から物音が聞こえた。
鈴鹿御前は表情が一変し、チャイカを突き飛ばした。突き飛ばされたチャイカはバランスを崩しながらも前に進んだ。
「ちょっとー何?」
「チャイちゃん、まだアイツ死んでない」
「はい?」
鈴鹿御前が鎧騎士の方を指さすと、鎧騎士に纏っていた黒い靄が濃くなってきた。やがて黒い靄は鎧騎士に吸い込まれ、ボロボロになっていた鎧が直っていった。完全に元通りになると鎧騎士は立ち上がり、槍を構えた。
その構えは投擲するような構えだった。構えられた槍に魔力が集中される。魔力は黒い靄となり、やがて黒い渦になって槍に集まる。
その魔力量で鈴鹿御前は察した。敵は宝具の準備をしているのだ。
「……マジですか」
「チャイちゃん逃げて! あれはマジでヤバい!!」
「嘘だろぉぉぉ!!」
鈴鹿御前の合図で猛ダッシュんで廊下を走るチャイカ。
転びそうになりながら階段の所の曲がり角に滑り込んで、身を隠した。
「あの鎧は何をしようと!?」
「…………おそらく宝具っしょ。チャイちゃん、魔力を頂戴。こっちも最大火力で対抗っしょ」
「……うーん……」
チャイカはポケットからスマホを取り出し、操作した。誰かに通知を送るとすぐに返信が返ってきた。
「そうだね……30秒。そんだけ稼いでくれればいける」
「了解!!」
その言葉を聞いて鈴鹿御前は笑みを浮かべた。
「真名解放! 【鈴鹿御前】!!」
力が解放されると鈴鹿御前の魔力が増幅された。剣を構え、空中で浮遊していた2本の剣にも魔力が増幅され、光の刀となった。
鎧騎士の槍に黒い魔力が溜まり、その槍を放つ。投擲された槍は黒い嵐となって、鈴鹿御前に襲い掛かる。
黒い嵐は廊下を抉り、崩壊させた。校舎が崩れる中、一直線に襲い掛かる黒い嵐。
「うおぉぉぉぉ!?」
「チャイちゃん!?」
崩落に巻き込まれたチャイカも宙を舞い、落下していく。
それを見た鈴鹿御前は宙に浮いてある刀の1本を操作して、チャイカの方に飛ばした。刀はチャイカの服を貫通し、チャイカごと崩壊されていない柱に突き刺さった。チャイカは柱で固定された。
「ちょっとぉ……私の扱い雑じゃない?」
「死ぬよりマシっしょ? さぁてと、あの投擲をどう受け止めようか」
黒い嵐の前に鈴鹿御前は刀を構え、空中に展開させていた刀を正面に出して高速で回転させた。
回転した刀と黒い嵐がぶつかり、衝撃が放たれる。刀と槍がぶつかる度に火花が散る。
「くぅぅぅ!!」
鈴鹿御前は受け止めている槍まで近づくと握っていた刀を力いっぱい振りかざす。黒い嵐の槍は打ち上げられ軌道を変えた。黒い嵐の槍は空中で放たれ、散った。
瓦礫が落ちる中、鈴鹿御前と鎧騎士は地面に着地し各々、武器を構えた。
「30秒経ったっしょ」
「あぁ、上出来だ」
突如、鎧騎士の足元が光り出すと、光の柱が現れ、鎧騎士を閉じ込めた。閉じ込められた鎧騎士は槍を振り回して破壊しようと試みるが光の柱はビクともしなかった。
「無駄だ。私の魔力を込めた結界だ。易々と破壊することはできない」
スーツを着た眼鏡の男が現れた。男は煙草をくわえ、鈴鹿御前に近づいてきた。
「ちょっとー、孔明っち遅すぎ!」
「孔明っち……?」
諸葛孔明
中華は三国時代に謳われた天才軍師、諸葛孔明。
中国は三国時代に優れた政治家・軍人として広く知られており、弱小国である蜀が長きに渡り大国である魏に抵抗できたのも、彼の力に依るところが大きいと伝えられている。
ただし、この諸葛孔明は別だ。
諸葛孔明が時計塔の魔術師ロード・エルメロイⅡ世の肉体を器(依り代)にすることで疑似サーヴァントとして召喚された存在。本来は乗り移られた人間側の人格は英霊のものに上書きされるのだが、「自分の計略を十全に使える者がいるならば自分自身が活躍する必要はない」という極めて合理主義的な孔明の判断により、現代に詳しいエルメロイⅡ世が肉体の主導権を持つことになっている。
「そのあだ名は何とかならんのか……」
ロード・エルメロイⅡ世改め諸葛孔明はため息を漏らしながら結界に閉じ込めた鎧騎士に近づき、観察した。
「シャドウサーヴァントに近い存在のようだが、先の戦闘で回復しているところを見ると、どこかに魔力リソースが存在するのか」
「あー、死ぬかと思った」
「流石にチャイカでも死んだと思ったよ」
柱にぶら下がっていたチャイカは孔明とは別のスーツ姿の男に助けられていた。
スーツ姿の男はワイシャツと少しラフなビジネスファッションをしているが完全に目が死んでいた。
「社~」
「はいはい、今下ろしますよ」
スーツ姿の男の名は社築。
30歳男性IT企業の社員、プログラマーでそれなりに優秀。
また、自他ともに認めるオタクでもあり、一般的な漫画の他に萌え系の漫画や昔のアニメ、レトロゲームやカードゲームにも造詣が深い。
「で、孔明。コイツは?」
「うむ……おそらくシャドウサーヴァントに近しい存在なのは間違いないが……ただ」
「ただ?」
「何の英霊なのかが分からないのだ」
「はい?」
孔明の答えに社は唖然とし、近くにいたチャイカと鈴鹿御前は首を傾げた。
「何の英霊か分からないって……いやいや、孔明さん? 相手は宝具も使っていたのだから一発で分かるでしょ?」
「あぁ、確かにヤツの宝具は見た。嵐を呼ぶ逸話を持つ槍自体も存在するが……問題ないのはその逸話の槍とヤツの持っている槍の構造が大きく異なる。逆に言うとあの槍の構造で嵐を呼ぶことができる逸話を聞いたことがない」
「それってつまりどういうことだってばよ?」
思わず頭を抱えるチャイカ。それを横目に苦笑いをする社。
「つまりだ。ヤツは存在しない英霊……もしくは複数の英霊が混じった存在。ということだ」
「そんなことがあり得るのか?」
「普通はありえん。だが、今は聖杯乱戦の真っ最中。この戦いに使用している儀式も特殊だ。このようなバグが起きる可能性は十二分にある」
「なるほどね……で、コイツはどうするの? このままってわけにいかないでしょ?」
チャイカは閉じ込められている鎧騎士を指さす。鎧騎士はいまだに結界を攻撃していた。
「あぁ、中途半端に攻撃しても再生するだけだ。だからこそ、一撃で葬れる力を持つ者を呼んできた」
孔明が手を上げると木々の影から高そうなスーツを着た男がやってきた。その隣には傷だらけの黒いフルプレートを纏った漆黒の騎士が立っていた。
「誰かと思ったら加賀美じゃん」
「こんばんわ、チャイカさん」
加賀美ハヤト
玩具会社、「加賀美インダストリアル」の若き社長。
爽やかな声とユーモアのあるキャラ性を持った、少年の心を忘れない大人。自身を娯楽コンテンツと称し、リスナーを楽しくさせることを基本行動理念としている生粋のエンターテイナーだ。
「加賀美のサーヴァントって」
「えぇ、ランスロットさん」
ランスロット
円卓の騎士の一人で、湖の騎士にして裏切りの騎士。
あまりにも多くの栄誉に浴しながらも悔恨のうちに果てた騎士の執念、とりわけ王と王妃に向ける決して答の出ない愛憎の念ゆえに、彼は永劫の狂気に囚われ続ける。
「なるほど、確かにバーサーカーの火力なら一撃で倒せるわ」
「では、準備をいたします。真名解放! 【ランスロット】!!」
ランスロットは光の結界に近づくと握っていた剣に魔力が集まる。膨大な魔力で握っていた剣は黒い魔力で包まれた。
人ならざる者によって鍛えられた、決して刃こぼれしない無窮の剣。同胞殺しの魔剣。
魔力が満ちた魔剣をランスロットが構えた。
「加賀美、孔明が結界を解除した瞬間がチャンスだ」
「えぇ、分かっています。それにこの一撃を逃したら、私は魔力切れで負けです」
「相変わらず、バーサーカーの燃費は悪いな。んじゃ、孔明!」
「承知した」
孔明は指をなぞると鎧騎士を閉じ込めていた結界の光が弱くなった。やがて光の結界が消滅すると鎧騎士はランスロット目掛けて突っ込み、槍を振り上げた。
「宝具解放!
「Aaaaaarthurrrrーーーー!!」
ランスロットは雄叫びのような声を出しながら鎧騎士の懐に潜り込み、漆黒の斬撃を放った。漆黒の斬撃は鎧騎士を一刀両断し、そのまま校舎及びその裏にある山も一緒に一刀両断した。凄まじい衝撃で周面の瓦礫は粉々になり、木々は折れて吹き飛んだ。
衝撃の突風で各々、飛ばされそうになるが何とか踏みとどまった。
やがて、突風が収まり様子を伺うと一刀両断された鎧騎士はその場に倒れ込み消滅していった。
「……勝利を……聖杯を……この手に……」
鎧騎士はそう言い残すと完全に消滅してしまった。
「いったい、あの影のようなサーヴァントは何だったのでしょうか?」
「分らん。だが、ベルモンドから似たようなヤツを見たって連絡があったぞ」
「本当ですか!?」
「あぁ、そいつは刀を持っていたそうだ。それに体中から刀を生やして触手のように戦っていた共言っていたな」
「体から刀を……刀ということは」
社、加賀美はチャイカと鈴鹿御前の方を向いた。チャイカも釣られるように鈴鹿御前を見た。
「ちょっ!? 流石に体から刀を生やせる英霊とか知らないし! 確かに刀っていう事は日本だと思うけど……妖怪とかの類かな?」
「確かにそのような逸話を聞いたことがありません」
「刀に……槍……セイバーとランサー?」
「つまり、他のクラスのサーヴァントもいる可能性が」
憶測が飛び交う中、加賀美は自身のスマホを取り出した。
「どなたかが遭遇する可能性もあります。急いで情報を共有します」
「あぁ、頼む。……しかしまぁ」
社はため息を漏らしながら天を仰いだ。
「聖杯乱戦どころの騒ぎではなくなってきたな」
【???】
鈴鹿御前達の前に現れた人影。
槍を使う西洋風の騎士であることは間違いないが姿形は黒い靄で覆われている。
猪突猛進だが、意外と戦闘では冷静に敵の動きを回避する器用な部分も持っている。
パワー、敏捷性、魔力量共にバランスの良いタイプのサーヴァントである。
ステータス:筋力A、耐久B+、敏捷B、魔力A、幸運C、宝具A+
宝具:『???』
黒い嵐を発生させ、その嵐の槍を敵に向かって投擲する。その破壊力は凄まじい。