憧れのVtuberは未来の自分だったようで ~技術派Vtuberは未知の体験を生み出したい~   作:Atlantis

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Vtuber 4月31日 前編

「今日はマーガレット・エイミーちゃんとのコラボの日だね。彼女にいいところを見せなくちゃ!」

 

 メアリーが声をかけて、気合を入れてくれる。……だけど。

 

「メアリー。夜風リンの3Dモデル、イジった?」

 

 メアリーからもらった夜風リンのデータ。初めて見たときは、あまりのクオリティーの高さに心躍らされたものだった。

 

 しかし、二回目の配信の時には、何故か夜風リンのモデルのクオリティーが低下していてある意味で驚かされた。想像できないような超技術で作られていた夜風リンの体が、現実的なレベルまで落ち着いていたのだ。

 

 そして、コラボ当日の今日。夜風リンの体は平面になってしまったのだ。奥行きが全くなくなってしまった。

 

 動きもかなり劣化しており、今まではかなり滑らかに動いていたのにもかかわらず、今はカクカクな動きしかできない。今までは口を開けたらゆっくり唇が動いていたのだが、今では閉じた口が一瞬で開いた口に変わるだけだ。これはおかしい。

 

 ボイスチェンジャーに至っては、完全に機械音声の音になってしまい、とても配信で使えるようなものではなくなってしまった。

 

「……もう、潮時なのかな?」

 

 メアリーが良く分からないことを呟く。……どうすればいいんだ、これ。夜風リンの姿に関してはまあ何とかなるだろう。可愛さは失われてないからな。

 

 でも、問題は声の方だ。無機質な機械音声をずっと聞かされたらたまったもんじゃないだろう。かといって、ボイスチェンジャーを使わないと男の声を隠すことが出来なくなってしまう。夜風リンに男の声でしゃべる設定はいらないのだ。

 

 配信まで後3時間。……こうなったら、今から俺がボイスチェンジャーを編集してどうにか使えるようにするしかない。

 

 ボイスチェンジャーのアプリを開いて、設定の編集っと……うわぁ、何これぇ!

 

 内部のデーターが、無茶苦茶に設定されていた。こんな滅茶苦茶な数値で、よく機械音声を出すことが出来たなって感心するほど中のデーターは荒れていた。一体何が起こったんだよ。

 

 予想よりひどいことになっていたため、今からこれを直すには凄い時間がかかってしまう。

 

 俺は今までデータを編集する知識は身に着けてきたが、あまりそれを試す機会がなかった。そのため、時間までに素早くボイスチェンジャーの調整を行うのは難しいだろう。どうすれば……

 

「やはり、早すぎた技術は……あっ、今のは気にしないで。こんなこともあろうかと、この時代のボイスロイドのデータを用意しておいたよ。著作権フリーの子の声を選んだから、配信でも使えるはず。ちょっと扱いは難しいと思うけれど、キミならうまく使いこなせると思うな」

 

 メアリーからデータを受け取る。早速受け取ったデータを使用してみたところ、聞き覚えのある声が聞こえてきた。これは、解説動画でよく聞く声だ。

 

「ボイスロイドの瀬頭ふう香ちゃんだよ。キーボードで打ち込んだ文章を可愛い声で読んでくれるの。彼女にはたくさんの単語が登録されていて、それらを正しいイントネーションで読んでくれるから、調整なしでもある程度はうまくしゃべることが出来るんだ」

 

 おお、そういう仕組みだったのか。意外と興味深い技術だ。もっと関心を持つべきだったな。

 

「とりあえず、今回のコラボは瀬頭ふう香ちゃんの声で乗り越えるよ。素早くタイピングを打つ準備をしておいてね」

 

 正直、ボイスロイドを使った生放送なんて聞いたこともないんだけれど。本来ボイスロイドは生放送には不向きなんじゃないだろうか。……でもま、タイピング速度には自信がある。何とか乗り切るしかないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おつ~   天使だ……   夜風ちゃんと違って、凄く落ち着く  可愛かったよ~    レベルの高さを感じました     みんなにも勧めるね   大好き♪    とっても魅力的だった   おつ~   これはすごい

乙~   乙  すばらしき王道   お疲れ様です  これからも可愛いお歌の投稿をお願いします配信ありがとう♪ 可愛すぎ   エイミーちゃん大好き!   いいお歌だった   NO1Vtuberとして、頑張ってください   凄く練習したんだろうね

     凄く練習してきたんだなってのが伝わってきました   エイミーちゃんの歌声大好き! 乙  すばらしき王道    可愛すぎ   生き生きした              配信ありがとう♪ 可愛すぎ   エイミーちゃん大好き!   凄くレベルが高かったですね  いお歌だった

      おつ~       とても、愛くるしかった      夜風ちゃんと違って、凄く落ち着く  可愛かった♡   とても、とても魅力的だった   みんなにも勧めるね   大好き♪               おつ~   これはすごい
  ああ、耳が幸せだった……  他のVじゃ、誰もエイミーちゃんにはかなわないだろう すごい好き 本当にお疲れ様  可愛い!     ラスボス前の回復魔法 可愛いが詰まった動画だった  乙   可愛かったっ、ファンになります おつ~  本当に好き   凄かったね
エイミーちゃんの歌声大好き!  乙  すばらしき王道 生き生きした  配信ありがとう♪ 可愛すぎ   エイミーちゃん大好き!   いいお歌だった
エイミーちゃんこそ第二のメアリーだ 何もかもが高クオリティー  凄い    おつ~        乙~  凄く魅力的だった   コラボ前なのにこんなに歌って大丈夫?   すこ  とても楽しい40分間でした   夜風さんとのコラボ、頑張ってくださいね
おつ~   圧倒的王道感   夜風ちゃんと違って、凄く落ち着く  可愛かった♡      みんなにも勧めるね   大好き♪   おつ~   これはすごい     目と耳の保養になる
  可愛い  可愛い~  これから何度も繰り返し聞きます 本当に可愛かった 楽しかったよ   みんなにも勧めるね おつ~   好き、本当に好き  滑らかな歌声だった 最高のクオリティでした  乙~    みんなにも勧めるね  おつ~ 乙~(2回目)   おつかれ~   魅力いっぱいのお歌でした 

【マーガレット・エイミー】夜風リンさんとのコラボ前。何曲か歌います

 2000000人以上が視聴中です 40分前にライブ配信開始

 

 

「ふぅ」

 

 動画を取り終えて、一息つく。

 

 マーガレット・エイミー、それが私のバーチャルでの姿。本物の私とは全然違う。華やかなブロンドの髪をたなびかせ、幼くあどけない笑顔が愛くるしいが、どこか美しい雰囲気を漂わせている。

 

「いつになったら、たどり着けるのだろうか」

 

 思わず独り言を呟いてしまう。歌はうまく歌え、ファンとのコミュニケーションも完ぺきだった。それらは、自分でも納得するほどうまくいったのだ。

 

 だが、何かが及んでいない。自分でも分からないが、何かが足りないのだ。

 

「メアリー……」

 

 あこがれの人の名前を呟く。あの人の配信に、心を動かされた。人の心を動かす何かを、彼女は持っているのだ。歌やおしゃべりのうまさではない。言葉にできない、何かを彼女は持っているのだ。

 

 その何かを、私は知りたかった。その何かを、知るために私はVtuberになると決心したのだ。

 

 今回のコラボ相手である夜風リン。メアリーと同じように、この世のものとは思えないほどの質の高い声とグラフィックを誇っている存在。雰囲気もどことなくメアリーと似ている。

 

 もしかしたら、彼女もメアリーと同じものを持っているのかもしれない。少しだけ期待が膨らむ。

 

 ……そろそろ配信開始だ。私の求めるものが彼女にあるのか、確かめさせてもらう。

 

 

 

      え、夜風リンどうした?  エイミーちゃん、頑張って!      約一名、様子のおかしい人がいます   劣化芸?    夜風よ、エイミーちゃんを困らせるな

  可愛い♡    二人とも大好き     絵じゃん          夜風リン 特技『平面化』     夜風リンちゃん、動画を投稿するたびに姿が劣化してないか?   ああ、やっぱり女の子同士の並びは最高や   頑張って

早速コラボ先を困らせてるな      伝統芸         様式美     二人とも頑張って♪    いつもの劣化

      コラボ先で劣化芸はどうかと思うぞ、夜風リンよ        まぁ、姿が劣化しただけなら問題はないよ、姿だけならね     エイミーちゃんは夜風ちゃんの狂気についていけるのだろうか?    二人とも大好き

    劣化芸      竜頭蛇尾       押しが二人で配信してくれるなんて、これ以上ない幸せ   これを見たかった

          エイミーちゃん、困ったらいつでも相談してくれてもいいからね    好き      夜風リンちゃん、動画を投稿するたびに姿が劣化してないか?   ああ、やっぱり女の子同士の並びは最高や   頑張って  待機中     楽しみ         これが生きがい

   夜風ちゃん、コラボの前に、劣化癖を直すべきだったね……       劣化癖ってなんだよ              待ってます

エイミーちゃん、頑張って!      この日をどれだけ待ち望んだか       可愛い子が二人      可愛い

       この動画の結果によって、今後のV業界が変わるかもしれないぞ       待ってました!           待機中       二人とも可愛い

これが、二大Vtuberのコラボなのか?     1人だけ平面ですね   平面でも、良いんです。二人が仲良く配信してくれるなら     ガチで歴史に残るコラボじゃないか?   片方平面だけれど

【夜風リン&マーガレット・エイミー】初コラボです

 53400人が視聴中です 00分前にライブ配信開始

 

 

 え、なんで? 配信画面に現れた夜風リンの姿が完全に平面なんだけれど。あの時の高クオリティ3Dモデルはどこに行ってしまったの?

 

マーガレット・エイミーさん、こんにちは。夜風リンです。今日は貴重な時間を使って私とコラボしてくださってありがとうございます

 

 

 

おい、声!

とても、ききおぼえのある声

夜風リンです× 瀬頭ふう香です〇

これは夜風リンコラボに見せかけた瀬頭ふう香コラボだった?

まさかのマーガレット・エイミー×瀬頭ふう香コラボ

まあ、VとVのコラボではあるな

調べてみたら、瀬頭ふう香は完全著作権フリーじゃねえか。法律的にはセーフだな

 

 

 何で、ボイスロイドを使っているの? 初配信の時の声を使えばいいじゃないか。姿は平面だし、声はボイスロイドだし……認めない。こんなの認めないわ。

 

……ふざけているのかしら? 私とのコラボという事を知っておきながら、こんなおふざけをするなんて。コラボは中止よ。中止っ!

 

 

妥当な結果

まあ、そうなるわな

王道キャラと狂気キャラは相容れない

夜風ちゃんにも、何か事情があったのかな?

どんな事情だよ

 

……そうですか。事前に連絡しておくべきでしたね。コラボ直前にバタバタしすぎて連絡を怠ってしまいました。楽しみにしていた皆さん、本当に申し訳ありませんでした

 

 夜風リンの伝説も、ここまでか。最後に謎の自滅をして消えてゆく……Vtuberとは儚いものだわ。

 

 

え? コラボこれでおしまい?

悲報、1分でコラボ終了

早すぎないか?

え、嘘だよね?

新しい伝説を生み出してしまったか

 

 

 

   

         え、終わり?  エイミーちゃん、頑張って続けてよ      これで終わりなのか?   乙~ 俺の心は死んだ

  お疲れ様です          消化不良     俺はこのコラボの為に仕事を休んだのに……                   早すぎる配信終了なのであった      夜風リンちゃん、動画を投稿するたびに姿が劣化してたからな、いつかはこうなるって思ってた   ここまで分かりやすいコラボ失敗を見たことがない   頑張って

開始一分で終了      伝統芸         様式美     予想してた    悲しすぎる結末

      これはもう、夜風さんはコラボ呼ばれませんね        まぁ、姿が劣化しただけなら問題はないよ、姿だけならね     本当に楽しみにしていたのに    二人とも大好きだったよ

    劣化芸      一分で配信終了       とても、悲しい   やっぱりこうなったか

          エイミーちゃん、困ったらいつでも相談してくれてもいいからね    悲しい      夜風リンちゃん、動画を投稿するたびに姿が劣化してたからね   女の子同士の並びは最高なのに   頑張って  無理やり続けさせるんだ、夜風リンよ     楽しみだったのに         これが生きがいだったのに

   夜風ちゃん、コラボの前に、劣化癖を直すべきだったね……       劣化癖ってなんだよ              待ってたのに……

エイミーちゃん、頑張って続けてよ      この日をどれだけ待ち望んでたのか       悲しいな、コラボが見れないなんて……      可愛い

       嘘だ、嘘だと言ってくれよ、夜風リン!       え、終わり?           続けて……       二人とも可愛い

これが、二大Vtuberのコラボなのか?     悲しい   二人が仲良く配信してくれたなら……     ガチで歴史に残るコラボじゃないか?   終了

【夜風リン&マーガレット・エイミー】初コラボです

 83957人が視聴中です 1分前にライブ配信開始

 

 

 

 

 彼女は、もしかしたら私の求めているものを持っているかもしれないと思ったのに。これは、とんだ期待外れ。彼女はVtuberを何だと思っているのか。

 

 彼女との交流で、メアリーに一歩近づけるかもと期待した私がバカだった。コラボなんて、するべきじゃなかった。

 

 

 ……メッセージアプリから通知が来てる。ええと、これは……社長からだ!

 

「面白い情報を収集できそうだ。すまない、コラボを続けてくれないか? 彼女の不思議な点について、問い詰めてくれると非常に助かる」

 

 ……社長からの命令じゃ、しょうがない。コラボを続けるしかないか。

 

 

……仕方ないわね。本当はこんな失礼な方と一緒に配信するなんて反対だけれど、楽しみにしてくれてくれる人たちもいることだし仕方なく続けてあげることにするわ。感謝しなさいよね、夜風リン

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