憧れのVtuberは未来の自分だったようで ~技術派Vtuberは未知の体験を生み出したい~ 作:Atlantis
「要するに、未来の技術によって生まれた夜風リンは、目立ちすぎたために修正されてたってことか。そして、存在が大きくなりすぎたことによって、存在自体が出来なくなってしまったんだな」
「そゆこと。技術のクオリティが下がったことによって、本来ならもう少し長く存在する事が許されていたはずんだけれど、さらに大きな存在へと変わってしまったことによって存在が許されなくなってしまったの。未来の技術によって生まれた存在は、その技術が失われたとしても、やがて消えてしまう運命にあったんだ」
俺は前回のコラボ配信についてメアリーと話している。
……夜風リンの存在が、許されなくなってしまった。なんでだろう、なんかすごく悲しい。
たった二週間の存在だったはずなのに、何か、凄く大きなものが失われてしまったような気がする。自分の中の人格を一つ消されたような、なんだか儚い気持ち。
……もっと、配信したかったな。夜風リンとしての活動を、もっと続けたかった。
エイミーちゃんの質問にも最後まで答えることが出来なかった。もし、消えてなかったのならエイミーちゃんに自分の事を知ってもらって、彼女の事も教えてもらって仲良くなって、今後も一緒に仲良く配信出来た未来もあったのかもしれない。そして、個性の強すぎる例の三人と一緒に配信することだってできたかもしれない。さらに、ファンの人たちとももっと長く交流できたはず。
もっと、夜風リンとして配信することはできないのかな? イラストも変えて、ボイスチェンジャーだって新しく作り直して、再び夜風リンとしてやっていけないだろうか?
「……何のために瀬頭ふう香ちゃんに夜風リンが引退する事を説明させたのか覚えてないの? これ以上夜風リンとして活動すると、あなたの存在自体が消されてしまうって説明したよね? ……これ以上は、危険なんだよ」
そうだった。だから、エイミーちゃんの質問に最後まで答えることが出来なかった。消されてしまう可能性があったから。
「……ファイルを送信したよ。」
エミリーが何かを送ってきた。ウイルスを警戒するのも今更なので、何も考えずにそのファイルを開く。すると、そこにはたくさんのイラストがあった。
男の子や女の子、動物や化け物など、実に多様なキャラクターたちがファイルの中に含まれていた。
「Vtuberのサンプルイラストだよ。私がこの時代の技術を利用して作成したイラストだから、消されてしまう事は絶対ない。これを参考にしてもいいし、参考にしなくてもいい。今はつらいと思うけど、新しいVtuberを作る事が重要なんだ」
今はちょっと落ち込んでいるから、新しいVtuberを作る気にはならないな。……ちょっと時間がたってから、新しいVtuberを始めよう。
「キミはまだVtuberとしては未熟。配信の実力はもちろん、動画の拡散方法、炎上回避方法、動画投稿主として知ってて当然のことをまだ知らない」
メアリーが厳しいことを言ってくる。それじゃ、どうすれば……
「私がキミをサポートするよ。私のサポートがあれば配信者としての前提を満たすことが出来るはず……まぁ、声とトークと3Dモデリングに関しては力になれないけど」
え? それらが一番大切なところだと思うんだけれど……
「低い能力は、技術の力で補えばいいんだよ」
……技術の力で低い能力を補う?
「ボイチェを進化させれば水準以上の声を出せるようになる。そう、最初のころの夜風リンのようにね。そして、完璧なモデリングを作ることが出来ればサムネで人を釣ることが出来るし、見ている人に感動と驚きを与えることが出来る。」
そんな技術力、今の俺にはないんだけれど……
「今のキミに必要なのは配信する事。Vtuberとして活動するたびに、動画の質を上げる新しいアイディアが生まれるはずだから」
……メアリーは何を言っているんだ? 動画を投稿して、アイディアが思い浮かぶって、そんなことがあるのか?
「キミは天才だよ。才能は私が保証する。キミには、配信することで新しいアイディアを思いつき、そのアイディアをもとに凄いものを作ることが出来る才能があるの」
俺には、そんな力があるのか? メアリーの言う事だから本当か嘘か分からないや。 ……でも、仮にそんな力があったとしても、俺にはお金がない。金がなければ発明はできない。バイト禁止の学校に通っているせいで、自発的にお金を稼ぐ手段すらない。
「? お金ならたっぷり稼いだじゃない。それをもとにして色々作ればいいと思うんだけれど」
たっぷりお金を稼いだ? 確かにメアリーに言われた通りめんどくさい収益化のための作業は行ったけれど。まだ三つの動画しか投稿していないから大したお金にはならないはず。
「最初の動画が今現在で300万再生以上、次の動画が400万再生以上、最後のコラボ動画が600万再生以上、合計して1300万再生以上。まだ最初だからという理由で一番条件がゆるい収益化方法を選んだから100再生で1円しかもらえないけれど、それでも13万円は手に入るわ。契約次第では100万円くらいは稼げたかもしれないけど、まあ最初だから仕方ないよね」
じゅっ、13万円も手に入るの? それさえあれば試してみたいことが色々と実行できるじゃないか。それに、100万円だって? Vtuberって、そんなに儲かるのかよ。
「まあ、夢があることは否定できないけど。でも、炎上やアカバンのリスクもあるし、飽きられて再生数が伸びなくなる可能性も低くないよ。特にキミは技術系のVtuberだからね。常に新しい発明をみんなに見せ続けないと人気が落ちてしまう可能性が高い」
でも、メアリーは未来の俺なんだよな。もしそれが本当ならいまの俺が成功する可能性が高いってことだ。いやあ、成功することが分かっている人生はいいな。
「……そうだといいね。でも、キミは私の時とは大きな違いがあるよ。キミと同じ初心者だった時に私をサポートしてくれたのは、メアリーじゃなくてカッコイイ男のVtuberだったから。それに……」
「大変よ! お父さんの会社がつぶれちゃったって。しかも、会社に多額の借金を押し付けられてしまったって」
母さんの叫び声が、部屋の中にまで響いてくる。え、どういう事?
「それだけならばどれだけよかったか。借金を押し付けられて冷静さを失った父さんは慌てて怪しい所からお金を借りて借金を返済してしまったのよっ!」
「残り1000万。10月が始まるまでに払えなければ、私たちは遠い国に売られてしまうわっ!」
え? 母さんが何を言っているのか良く分からない。借金だって、1000万の? 遠い国に売られる? 何それ。ちょっと、現実味がないよ……
「……ほら。私の時にはなかったイベントだよ。私が成功しているからって、キミが成功しやすい保証なんて全くない」
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