どうかよろしくお願いします。
「さようなら、立香、マシュ。
恐れなく進まれますよう。貴方たちの道行きには、
それは終わりゆく妖精國での出来事。異邦の魔術師と共に奈落の虫と戦い、これに勝利した時のことだ。
私は役目を終えた。『予言の子』としても、『聖剣の騎士』としてもだ。
心残りがないといえば嘘になる。何故なら、本来であれば私はここにいなかったのだから。本来消えるべきところで、その役割を代わってくれた人がいた。
『髪飾りは作ってやれなかったがな』
消えゆく中、|鍛治師(アルターエゴはそう口にした。
妖精國でずっと支えてくれたサーヴァント。異邦の魔術師とは敵同士だったというのに、味方をしてくれる義理なんかなかったというのに、命を買ってもらったからという理由だけで、命をかけて最後まで走り抜けたサーヴァント。
彼が誰かを依代にしていたのは見てわかった。
本来であれば彼は彼女を召喚するだろう。しかし、もしもの話。彼が運命の夜に彼女と出会わなかったら?
「いいんじゃねえか? 嬢ちゃんがやりたいと思ったのならそれで。
妖精國から消えゆく間際、そんな声が聞こえてきた。
それが幻だったのか、それとも本物だったかは分からない。けれどアルトリア・キャスターの耳にしっかりと響いたのは事実だ。
「……ええ。ではその召喚に応じましょう」
言葉とともに彼女は降り立つ。
異聞の世界で役目を終えた彼女は、運命の夜へ。そこで彼と邂逅を果たす。
「——問おう。貴方が私のマスターか?」
私はこの日のことを忘れることはしないだろう。月光が照らすマスターの姿を。私を助けてくれた人によく似た少年のことを。
彼がかつて私の助けになってくれたように、私も彼の助けになると決めたのだから。
***
かくして運命はねじ曲がる。第五次聖杯戦争。本来参戦するはずがないサーヴァントの召喚により、この戦いは大きく変動した。
しかし運命がねじ曲がろうと、少年が志す道が変わるわけではない。聖剣に出会えずとも、聖杖に出会っても、彼は正義の味方として戦うことになるだろう。
例えその道がどれだけ過酷だとしても、どれだけ苦しいものだとしても必ず。