奈落の赤鬼   作:黒三葉サンダー

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パート2

エンリさんと友達になってから数週間以上経過した。

残念ながら未だエンリさんはクラスに馴染み切れてはなかった。

 

やはり話し掛けても無言であることが大きいのか、それとも会話が成り立たないことに問題があるのか。

そりゃ人間は言葉を話してコミュニケーションを取る生き物である以上、そもそも話し合いが成立していない時点でクラスに馴染めとは無理な話だったのかもしれない。

 

でもまぁ、俺は大体はエンリさんの言いたいことが分かるようになってきたし、一緒にいて落ち着く人でもあるから率先して声を掛けたり、ご飯を食べたりと共に行動することが多くなってきて嬉しい気持ちはある。

やはり友達とは良いものだ。ぼっちでいても何も楽しくはない。

最近だとエンリさんの笑顔(少しだけの表情変化だが)も増えてきてるし、笑った顔も可愛いので役得です。

 

そしてエンリさんと関わっていくと、必然的にあの腹黒貴族様とも関わりが出てくるもので……。

と、ほら来た。ニコニコ笑顔で俺の所に向かってくる腹黒貴族様が……!

 

「あ、セドリック君!今お話しても大丈夫かな?」

「ん?あぁ、エマさんか。大丈夫だけど…何か用か?」

「用って程のことでもないんだけど……セドリック君ってエンリちゃんと仲良いよね?いつも一緒にいるし」

「悪くはないと思うが……それがなにか?」

「えーっと……ちょっと聞きづらいんだけどね……セドリック君って、エンリちゃんの事が好きなのかな?って気になっちゃって……」

「エンリさんとは友達だぞ。数少ない友達。うっ、自分で言ってて悲しくなってきたぜ……」

「あ、あはは……ごめんね。ならセドリック君にお願いがあるの」

「お願い?」

「うん。私ともお友達になってほしいな~って……ほら、エンリちゃんって基本的に無口だから、いつも一緒にいるセドリック君ならエンリちゃんが何を言いたいのか分かるかなって思ったの」

 

エマさんと友達……?こ、今度は何を考えている?

俺はエンリさんの言いたいことは何となく分かるが、他の人のは分からない。故に今どんな考えでエマさんが態々庶民である俺に友達になりたいだの提案してきたのかが予測出来ない。

ただ分かるのは、明らかに友達になりたいから提案している訳ではない事か。直訳すれば俺にエンリさん専門の翻訳者になってほしいってことだろ。

 

しかしその必要があるか?

寧ろ上手く意思を伝えられないエンリさんだからこそ、エマさんは便利な駒として利用しているはず。そこに俺という翻訳者がいたらエンリさんの意思を(漠然とだが)伝えられてしまう。それはエマさんにとって少しだけ面倒なのでは?

となると、俺も何かしらの利用対象に入ってしまったということか?これは一番可能性がありそうだ。

 

ここまでの考えを含めて、是非ともお断りといきたいがそうはいかない。

なにせ相手は貴族様。それも貴族様よりも上な大貴族様だ。接する態度は変えないが、庶民である俺がこのお願いを蹴る事は今後非常に不利になる。下手すれば俺だけじゃなくてエンリさんや俺の家族にまで影響が出る可能性もある。

結果、俺にこのお願いを拒否する選択肢はない。

 

「いいぞ。友達が増えるのは大歓迎だ。だが、俺もエンリさんの言いたいことを完全に理解出来る訳じゃないからな。読心術なんてものがあれば良かったんだがな」

「ふふ、何それ~♪流石に読心術でもエンリちゃんの心を読めるなんて無理じゃないかな~?」

「さぁ?それは分からんぞ。もしかしたら意外と近くにそんな奴がいるかもな」

 

というか、そんな奴がいるなら是非とも教えを乞いたいものだ。

もし可能ならばもっと円滑にエンリさんとコミュニケーションが取れること間違いない。ついでにこのニコニコ顔の腹黒貴族様の心情も探れそうだ。

 

「……それじゃあ私、そろそろいくね!またね、セドリック君♪」

「あぁ、またな」

「エンリちゃんもまた明日♪」

「……え?」

「……(ぺこり)」

 

エマさんの言葉に後ろを向けば、いつの間にやらエンリさんがいた。

しかもなんか……怒ってる?いや、拗ねてるのかほんの少しだけ眉が寄ってしまっている。

なんというか、ジト目で見られてる気分だ。

……まさかエマさんはこれを狙った?なんて、考えすぎか。ほんとに偶然なんだろう。

 

「……(ジーッ)」

「……」

 

取り敢えずはじっと見つめてくるエンリさんに訳を話す方が最優先だな。

このままだとあらぬ疑いを持たれてしまう可能性があるし、それでせっかくの友達関係が崩れるのは避けたい。

 

「……まぁ、なんだ。歩きながら話そうか」

「……(こくこく)」

 

これが浮気がバレた男の心情なのだろうか。

無表情ながらもチラッチラッと此方を伺うその姿は大変可愛らしいものだが、俺が友達(強制)になった相手はエンリさんにとっては苛めっ子だ。この話題は慎重に取り扱わねばならない。

 

 

こうして、何とか別れ際までエンリさんと先程の件を話して理解してもらう事が出来たのだった。

俺たちの友情は守りきったぜ。

 

 

 

 

 

……しかし、あの様子からするともしや嫉妬でもしてくれてたり?いや、そんなことあるわけないか。

 

 

 

 

 

 

 

 




本編突入まで、残り2パート
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