その中で最新で動き出したのが自分しかいなかった…頑張るよ。
いつも感想ありがとう…
第1処理場で巨大ミミズに襲われてからその後、俺たちは無事にシャッターを開けて先に進んだ。
扉を開けて部屋に入ると石造りの診察台のようなものと、そこに転がされた死体が幾つも目に入った。バラバラにされてるもの、焼け爛れているもの、潰されたようなものに臓器を抜かれてるもの……見ただけでわかる凄惨な死体だった。
「酷いな……これ全部あの殺人鬼が一人でやってるのか…」
「……」
「エンリさん?」
エンリさんがおもむろに歩いていくと、正面の診察台に刺さっていた斧を手に取り普通に引き抜いた。
え?普通に引き抜いたぞ。重くない?大丈夫?そう…
「まぁ…護身用と考えるべきか。俺は一応鉈があるし…」
「……(ふんす)」
「…すごいねエンリさん。ほんとに」
感触を確かめるようにブンブンと振ってから、満足そうにドヤ顔しているエンリさん。そんな顔も出来たんだ。可愛い。可愛いけど…それはそれとしてあんまりエンリさんの事は怒らせないようにしようと決めた。
部屋を出ると再び通路へ。今度は正面に扉、左右へ通路が続いているみたいだ。
「分かれ道だね。正面の扉から見てみる?」
「……(こくり)」
「おっけー。扉は…開くね」
正面の部屋の中には特に扉以外の物はなく、試しにノブを回してみるもののやはり鍵が掛かっている。また鍵探しをしないといけないな。
一旦部屋を出て別の通路を進み次の部屋へ。案内には”101”という番号だけ書かれており、そっと中を伺うと部屋の中はほの暗い。部屋の暗さに目が慣れてくると赤い線が見える。
赤い線は道を塞ぐように張られており、暗さで分かりにくい。
「奥に鍵があるみたいだけど…あの赤い線、なんだろう」
「……」
「こんな場所だし、分かりにくく張られてるところを見るに罠…かな?」
「……」
エンリさん的にも罠だと感じてるらしいし、不用意に近づきたくはない。何か投げ込んでみようか。
鉈は万が一失ったら困るし、エンリさんの持ってる斧を投げるのも微妙そうだし……上着でも投げてみるか。
大量の血を吸い込んで重くなったお気に入りのコートを脱いでから丸めて投げてみる。コートが赤い線に触れた時、ピッという機械音と共に天井から鉄の塊が降ってきて目の前を押し潰した。
とんでもない殺意ある罠に顔が引き攣るのが分かる。
「……迂闊に触らなくて良かった。こんなの初見殺しすぎる」
「……(こくこく)」
しかし鉄の塊で道が塞がれてしまったので奥に進むことが出来ない。どうしたものかと頭を悩ませてると再びピッという機械音と共に鉄の塊が重々しく天井に登っていく。ぺしゃんこになったコートが痛ましい。
今なら赤い線は張られていないし、行くなら今だろう。
「よし、サクッと行って鍵取ってくる。エンリさんはここで待ってて。赤い線が張られてるのが見えたら教えてほしい」
「……(こくり)」
途中でコートを広いながら奥まで走っていき、鍵を取ってからエンリさんを見る。エンリさんは首を横に振ってるので赤い線は張られていないようだ。
そのまますぐにエンリさんの所へ戻る。
鍵が掛かっていた部屋のものではと思い、二人で確かめに行くが鍵穴が少し違うようで別の場所の鍵のようだ。
再び別の部屋を探しに行くと、次の部屋には”000”の番号が記載されている。中へ入ると少し細道が続き、机の上にパスワードの紙を見つけた。2つ目のパスワードは”コ”みたいだ。
その後も下の階に続く階段の先で緑の鍵を手に入れるが、その先はまた鍵のかかった扉があるばかり。仕方が無いので次は”103”の部屋へとやってきた。
部屋の中央は崖のような大穴が空いており、向こう岸に細い板が掛かっている。どうやら橋代わりに使えということらしい。
流石に二人乗るのは危なそうだ。
「下に何かいるな…ここも俺が行ってくる。下から何か出てくるかもしれないからエンリさんは下がってて。もし俺が危なそうなら助けてくれると嬉しい」
「……」
「もちろん気を付けるよ。でもまぁ…見えてるなら多分大丈夫」
斧を握りしめて気合いを入れてるエンリさん。いつでも助けられるようにと待機してもらえているのはありがたい。
エンリさんの応援を受けてひょいひょいと軽快に橋を渡っていく。
すると俺の動きに反応して下から触手がいくつも伸びてきて足を掴もうとするので、ジャンプして躱していく。これくらいなら行けそうだと思ったところで今度は体を薙ぐように触手が迫って来たので、それは鉈で切り落とす。着地を狙おうとしてくる触手は逆に思い切り踏み潰し、両側から迫る触手はしゃがみながら右側を鉈で切断し返す刃で左側を切断して無事に横断に成功した。
「うん。これくらいならやっぱり平気だな。鍵取ったから今戻る!」
「……(ぽかん)」
「……なんだ。帰りはやけにあっさり帰してくれるな」
「……?」
「ん?あぁ。第1処理場の魔獣とは違ってデカイ訳でもないし太い訳でもないなから、後は動きさえ見えれば簡単かなって。鉈もあったしね」
実際ミミズの魔獣に比べたら対処は簡単だったし、速いだけなら見えるから対応できる。片手で扱える鉈さまさまだ。でも流石に無手で行くのは俺もキツイとは思う。
そんなこんなで無事に鍵を手に入れたので、次の方針はエンリさんと相談してまだ見ていない部屋を調べていくことにした。
おそらくまだ鍵があるだろうし、集められる分は集めてから鍵部屋に行った方が効率がいいだろう。
こうして各部屋を巡ったものの、すんなり行けたのはシャッターと”吊るし保管室”と書かれた部屋のある開けた場所と”000”部屋の地下の先で鍵を拾ったくらいだった。
試しに開かなかった”102”へ鍵を差し込んでみると開いたので扉を開けた瞬間、ドンッ!という何かを叩くような大きい音が聞こえてきた。しかも1度だけじゃなくて何度も叩いてるようだ。
俺とエンリさんは顔を合わせて頷くと、なるべく音を殺して先に進む。どうやら扉は無いようでそのまま部屋の中を伺えそうだ。
そっと壁越しから覗くと殺人鬼の後ろ姿が見えた。
殺人鬼は台の上の人間に向かって包丁を力強く振り下ろしている。やはり音の正体は殺人鬼だった。台の上の人間は既に息絶えているようで、絶望と恐怖に染まった顔がこちらへと向いていて虚ろな瞳がまるで俺たちを恨みがましく見つめているように感じる。
『なんでまだ生きている。お前も早くこっちにこい』
そう言われているようで落ち着かない。目を合わせないようにそっと視線を切りつつ、忍び歩きで部屋に近付いて改めて中を確認する。少し広い部屋のようで、診察台が複数ありどれも悲惨な死体が乗せられている。そして左の壁伝いに緑の鍵が吊り下げられている。
……つまり、あの殺人鬼にバレないように鍵を取らないといけない。そう気付いて嫌な汗が出てくる。
1度エンリさんのところに戻り、鍵を見つけた事と殺人鬼にバレないように鍵を取らないといけないことを伝える。
「……二人で行動するのは危険だ。ここも俺が行ってくるエンリさんは…」
「……(ふるふる)」
「……だめだ。エンリさんを危険な目に合わせられない。頼む、俺を信じてくれ」
「……」
「……(こくり)」
「ありがとう…行ってくる」
エンリさんが自分で行こうとするのを引き止めて、無理にでも納得してもらう。大切な女の子を率先して危険な場所に送り込む訳にはいかない。それに万が一やり合うことになっても女の子であるエンリさんより男である俺の方が生存する可能性が高い。
足音を極限まで殺しながら壁を伝っていく。ゆっくり、ゆっくりと鍵の傍まで近付き手が届こうとした瞬間。
───パキッと足元でガラスが踏み割れる音がした
ゆっくりと殺人鬼が後ろを振り向く。咄嗟に駆け出せば良かったものを、やってしまったという思いで反応が遅れてしまい殺人鬼に目視された。その後殺人鬼は辺りを見回して次にエンリさんを見つけて、自分の傍にあったレバーを引いた。
「っ!!下がれエンリさん!!」
「……っ!」
すると部屋と通路の間にシャッターが降りてきてエンリさんは通路に閉め出され、俺は殺人鬼と一緒に部屋に閉じ込められてしまった。
「……マジかよ……っ」
「……」
殺人鬼はのっそりと包丁を持ち直してこちらに向かってくる。
ここから逃げるならさっき殺人鬼が引いたレバーを作動させるしかない。奴から逃げながらだ。
こうして最悪なことに、そして幸いなことに俺と殺人鬼の鬼ごっこが始まった。
セドリック・アンバー
脅威度:A+
身体能力:A+
頭脳:B
発想力:B+
反射神経:A+
期待値:S
結果:人間にしては並外れた身体能力と反射神経、動体視力を持ち非常に興味深い。どこまでいけるのかを是非確かめておくべきだと断定して、継続して観察する。