食堂を出るとふらついた足取りで自分の部屋を目指す途中、一度洗面所に寄って冷たい水で顔洗う。悪夢のことを考えていた頭の中を一度リセットし、顔を濡らしたままで鏡を見つめそこに自分に言い聞かせるように呟く。
悪夢なんて慣れたものでしょ?──と
洗面所を出るとゆっくりと階段を上がり自分の部屋へと入り鍵をかける。
他の団員の部屋から遠く、誰かが間違えて入るということもない、とはいえ誰かが来る可能性がゼロではないならかけておくにこしたことはない。他のエルフ達と同じく肌をあまり見せたくない、というのもある。ただ私の場合それだけが理由ではなくどちらかと言うと傷痕を隠すため、という側面が大きい。
「アミッドでも傷痕は完全には消せない……か」
自室に据え付けられた姿見に映る自分を見て深く息を吐き、かつて体についている傷痕を【戦場の聖女】に治療してもらった時に言われたことを思い出す。
『私にはこの傷痕を消してを完全に元に戻すことはできません、ある程度は残ってしまいます。もし、完全に消されたいと考えているのであればアスクレピオス・ファミリアで外科的な処置を行ってもらうくらいしか……』
悔しそうな顔をして小さく謝るアミッドに少しでも減らせるのなら完全に消えなくてもいいと告げ治療してもらった。かなりの費用がかかったけど少なくともなにかの拍子で見えるかもしれない腕や脚に残っていた傷痕は消すことができた。
「まぁ、アマゾネスみたいに肌を露出させるわけじゃないからローブで隠せる背中くらいならいいんだけど……たまに疼くのがなぁ……」
ぶつぶつ言いつつも衣装棚を開いてどれを着るか考える。
戦闘衣、館の中で着る為のローブ、外出用の衣装、パーティ用の服、なんだかんだと数十年もいるだけあってそれなりの数の服は持っている。
といってもパーティ用のドレスなんかはここ数十年でも両手で足りる程度しか使ったことはない。
「今日はヘファイストスのところに行くくらいだし何でもいいか」
取り出したのは全身を覆う白地に青と銀のラインが入ったローブ、それに合う濃紺のグローブに黒のショートブーツ。
インナーを着て、ローブを羽織り腰のあたりにローブを固定する紐を結ぶ。
高めの位置でまとめ上げていた髪をほどき、右側で1本の三編みを作る。その三編みにした髪を前髪の裏を通して反対側に引っ張り、それを紐のように使いまとめた後ろ髪を固定する。
「これくらいなら大丈夫かな」
鏡に映る自分を見て、こんなもんかと一人で納得したら懐に財布を入れてブーツを履いて部屋を出る。
フィンの言っていたものを受け取りに。
館を出た私はフィンから頼んだよ、と渡された1枚の紙に目を通してため息をつき、懐にしまいこむ。
カツ、カツと音を立てながら石畳を歩いていると門番に話しかけられる。
「あれ、シグさん出かけるっすか?」
話しかけてきたのはLv4、フィンが次期団長にと考えている【超凡夫】ラウル・ノールド。個性的なメンバーの多いロキ・ファミリアにおいて貴重な普通、どんな武器もそれなりに使いこなし、戦闘中に的確な指揮もこなせるという貴重な人材。
「うん、ヘファイストスに預けてた武器を受け取りにとフィンからの届け物をね」
そう答えるとラウルは何か解ったような顔をしてこの前の『遠征』の、とこぼす。
「さすがに酷使しちゃったからね、ヘファイストスにも怒られたし……」
大人しくしてたと思ったらいきなり無理するっすからねぇ……と言われてしまい言い返せなくなる。前回の遠征の前も今のようにしばらくダンジョンに潜らずにいた直後のことだったから。
「大丈夫大丈夫、しばらくしたら深層遠征もあるし"しばらくは"自重するよ」
その言葉に疑いの目を向けてくるラウル、まぁ今までのことを考えると当然といえば当然だけど……
じゃ、行ってくるね、と告げて門を出ていき、ラウルの気を付けてという声を館に背を向けて聞きながら身に纏う雰囲気をよそ行きに変える。
黄昏の館のあるオラリオの北区画からバベルの方へ向かう為に表通りに出る、確か今の時間帯ならヘファイストスはバベルにある店にいるはず、と。
外に出る時は基本的に館の中にいる時と違いリヴェリアのような喋り方をし、本当の自分に蓋をして【怨讐姫】という仮面をかぶるように近寄り難い雰囲気を纏う。
都市で唯一のLv8というのも相まって外向けの私には知り合い以外誰も近寄ってこない、それでなくとも今までの偉業と『奇行』で団員と知り合い、それにエルフ以外からは変な目で見られることの方が多い。
バベルへ向かうまでの間、特に誰かに話しかけられることなく、エルフ以外からじろじろ見られていたことに気付いてはいたけどいつものことだと気にせず無事に店までたどり着く。
長い付き合いのため顔パスで店の奥に通され、ヘファイストスの執務室へ向かい扉を叩けばすぐに中から声がする。
「開いてるわよ」
来るのがわかっていたのか声をかける前に入室を促され、言われるがまま扉を開けて中に入ればジト目でこちらを見る鍛冶神が目に入る。
ヘファイストスとは別に専属契約をしているわけではない、使っている武器が特殊すぎるせいか他の鍛冶師では調整できず唯一できるヘファイストスに頼んでいる。
「……大変だったのわかってる?」
ジト目のままそう言われ返す言葉もございません、と頭を下げる。
「まぁいいわ、今取ってくるから適当に座って待っててちょうだい」
ヘファイストスの言葉にいつも座っているソファーに座り、つけていたグローブを外して一息つく。
しばらくしすると2本の剣が収まった鞘を持って奥の部屋から戻ってくる。
「まったく、よくあんなに酷使して折れなかったわね、魔宝石の方なんて完全にダメになってたのに」
2本の剣は見た目だけならただの鋼鉄でできた剣のように見える、普通の剣と違うところと言えば私の魔法を補助するために柄の部分に魔宝石がそれぞれ1つずつ埋め込まれていることくらい。
「えっ、魔宝石また壊れてた……?」
今回で何度目か分からない魔宝石の交換、今回も交換しないといけないほど酷使しているとは考えてもいなかった。
この剣に付けている魔宝石はそれほど大きくないといっても品質のいいもので結構な値段がするから懐事情に小さくない影響が出る。
「もう10回目よ?、あんたの武器の整備は魔宝石を取り寄せるのが一番時間かかるんだから……」
さすがにもうこの前みたいなことはしない、と宣言するもあんたそれ言うの何回目だと思ってる?と言われ何も言えなくなる。
「さて、この話はこの辺にしておいて……」
代金の話をしましょ?と言って手を叩くヘファイストス。
フィンから頼まれたメモについては椿に渡しておくと言われる、何でも椿は今朝鍛冶場に籠もったばかりでそうなると少なくとも丸一日は出てこないらしい。
「そうね……諸々込みで1500万、ってとこかしら?あんたの魔法じゃ並の魔宝石は役に立たないから仕方ないわ、工賃なんかをまけてあげてそれなんだから感謝しなさい?」
そう言われると頭が上がらない、ソファーに座ったままでタケミカヅチさんに教えてもらった土下座のような姿勢を取るとそれはやめて、と真顔で言われてしまう。
「ま、あんたは今まで滞納なんてしてないし、心配はしてないわ。次の遠征までに支払ってくれたらいいから」
次の遠征までに、というヘファイストスに心配しなくても早めに持ってくると答えると急がなくてもいいのに、と言われいつもすまないねぇ、と。
「はいはい、冗談はいいから。話は終わり、さぁ帰った帰った。私はこれから厄介な仕事に取り掛かるんだから」
厄介な仕事?と聞いてみると、なんでも素材の持ち込みで依頼された仕事で使う金属の加工が面倒らしい。何日徹夜することになるのかしら……とぼやくヘファイストス。
なら仕方ないと剣を持ちソファーから腰を上げ、部屋を出ようとすると声をかけられる。
「また来なさい?今度はあんなに酷使せずにね」
その言葉に苦笑しながら善処する、と返して部屋を出る。
まだ昼にもなっていない時間帯、この後どうしよう……と悩みながら。
今回適当になってすまんかった
進行早めようとしてガバガバになったしいっそのこと一気に時間進めるか……
武器の名前とかステイタスは次かその次あたりで出したい
シグの服はFF14の装備でイメージしてる
今回のイメージ
髪:ギラバニアンブレイド
頭:なし
胴:ヘヴンスソーサラー・ローブ
手:ヘヴンスソーサラー・ドレスグローブ
脚:クレセントキュロット
足:ウェザード・エーベルサイブーツ