YOU CAN(NOT) GIVE ONE LAST KISS. 作:tubuyaki
「ええー! アスカに彼氏が出来た!?」
驚くケンケンの顔を見て、私はほくそ笑んだ。
「そうよ。私ってば誰にでもモテるから、ケンケンみたいに相手が出来るまで何年もかかったりはしないのよ」
ケンケンは、私の言葉に過去のトラウマでも掘り起こされたためか、だいぶショックを受けた様子だった。悪いこと言ったかしら? まあでも、既に彼女が出来たっていうんなら今更よね。
「いや、それにしても、まさかなあ…… 驚いたよ」
「まあ、とは言うものの、相手は冴えない男なんだけどね。だけど私のことが好きみたいだし? 今のところは寛大な心で付き合ってあげているわ。この先どうなるかは、まあ相手次第ってところね」
ケンケンは私の明け透けな物言いに、苦笑を漏らしているみたいだった。まあ、ケンケンならいいか。
「でも出会ってすぐなんだろう? 疑ってるわけじゃないけど、どんな人かちょっと気になるよ」
「ケンケンは心配性ね。でも、そう言うと思って連れて来てるわ」
「ええー!? 嘘だろ!?」
こんなにあたふたしているケンケンを見るのも珍しい。最近じゃ大人らしく余裕ぶってるケンケンのこの表情が見れただけでも儲けものね。そう思っていると、話を聞き付けたバカシンジが、そそくさと私たちの座るテーブルにやってきた。
「や、やあ、相田君。アスカと付き合うことになった碇だ。よろしく」
「あ、ああ、君が…… よろしく…… え、いかり?」
なんだかぎこちない挨拶ねえと思っていたのも、束の間だった。
「いかりって、え、あれ、もしかしてあの?」
「覚えていてくれたんだね、ケンスケ」
んん……? どういう、こと?
「うわ――!! 久しぶりだな、碇! 中学以来じゃないか?」
「うん。あれっきりだと思うよ、ケンスケ。本当に、久しぶり」
……!?!?!?
「ええ――!! あんたたち、知り合い!?」
私は驚きすぎて叫んでしまっていた。
「うん、そうなんだ。中学時代は友達でさ」
「ちょっと、まさかあんたたち! 私に隠れて通じ合ってたりしないでしょうね!」
真剣に言っている私を、ケンケンはぽかんとした表情で見返してくる。
「なんでだよ? 中学以来だって言っただろう? いやー、それにしてもこんな形で再会するなんてなあ」
「うん、僕もびっくりだよ」
ケンケンのことは信じているから、本当に何もないのだろうとは思いつつも、なにか釈然としないものを感じてしまう。こんな偶然、出来過ぎよ!
「……まあ、いいわ。ところであんたの彼女、どこにいるの? 今日連れてくるって話だったわよね。まさかもう振られたなんてことないでしょうね」
「冗談。もう間もなく来るはずさ。まあ、しばらく待っててくれよ…… ああ、ほら!」
ケンケンが手を振った先を目で追うと、こちらへと同じく手を振りながら元気よく駆け寄ってくる女の姿があった。
「遅くなってゴミ~ン。待たせちゃったかにゃ? ……に゛ゃにゃにゃっ!!!???」
その女は私たちを見て衝撃を受けたように固まった。うん、そこそこきれいな女だけど、まあ無理もないわね。私ってば、控えめに言っても美人だし? 彼氏の友人にこんな美女がいると知ったら、女として不安になるのも無理ないわね。なーんて思っていたら、なんとバカシンジの方も相手を見て固まっていた。
……私を差し置いて、他の女に余所見? 胸か、やっぱり胸なのか? 首絞めてやろうかしら
「嘘だろ? 真希波……!?」
「なーんでワンコ君が一緒にいるのかにゃ~!?」
私はもう、唖然としてしまった。
「ちょっと、一体誰なのよ?」
「真希波は…… 僕の同僚だったんだ。もっと面白いことがやりたいって、すぐに会社を飛び出しちゃったけど」
「あんた、どんだけ知り合い多いのよ」
バカシンジの意外な一面を垣間見てしまった。やっぱりこいつ、謎が多いわね……
私はケンケンとその彼女から、バカシンジのことを色々聞き出すことに決めた。
決めたのだが……
「ああん、姫~♪ そんなに根掘り葉掘り聞きたがるなんて、私たち以上にラブラブなんだにゃ♪」
「姫って呼ぶな!」
こいつ、なんか凄く苦手!
私がそうやって手こずっていると、バカシンジの口から助言とも言えないような助言が飛び出した。
「真希波のこと、まともに相手してたら身が持たないよ」
「あー! そういうこと言っちゃうんだ。大恩人に向かって!」
「真希波は確かに恩人だけど、なんだかそれと同じぐらい、隠れて色々やられてる気がするよ」
「うわー! ワンコ君がいじめる! ケンケン助けて♪」
「マリはみんなが愉快になれるように頑張ってるだけだもんな」
「そうだそうだ! もっと感謝しろい!」
バカシンジは苦笑気味に微笑んだ。
もっとも、そんな表情も長続きはしなかったのだけれど……
「そうだ姫、ワンコ君の恥ずかしい過去、知りたくないかにゃ?」
「全部教えなさい!」
バカシンジは、真希波・マリ・イラストリアスの一言一言に悶絶した。
ちょっと騒がしすぎるぐらいの時間は、あっという間に過ぎていく。
まったく、バカシンジと来たら…… けれど、退屈しないわね。
その日、私はたくさん笑うことが出来た。
“I love you more than you’ll ever know.”
終劇