號(Go)!!ゲッターロボDarkness ~世界新生の日~ 作:朝陽祭
世界中をゲッター線の輝きが覆い、なし崩し的に「恐竜帝国」との戦いが終結してから、5年。
「はぁっ……はぁっ……!?」
「ぎひひひひっっ!どーこーかーなー?どーこーかーなー!?」
崩壊し、まだ復旧もろくに進んでいない廃墟の中で、かろうじて生き延びていたこの少女は、『異形の存在』から必死に逃げ回っていた。
……いや、正確には『逃げ回っていた』というのは正しくない。
これは、『遊び』だ。
少女は必死であろうと……『異形の存在』からすれば、いつでも捕獲できるのを、あえて泳がせて楽しんでいる、『遊び』なのだ。
『異形の存在』はわざと大きな足音を立て、少女が隠れている物陰からあえて遠ざかるような音を響かせる。
だが、その「眼」はしっかりと少女を捉えている。足音が遠くなり、ほっと胸を撫で下ろし、安堵の表情を浮かべた少女を。
(そう、その顔が見たかったんだよ……そして)
「みぃぃぃぃつぅぅぅぅけたぁぁぁぁっっっっ!!」
「ひっ!?きゃあああああっっっっっっ!!」
少女の前では今まで見せなかったその伸縮する「首」で少女の死角から回り込み、少女の耳元でそっと囁く。
安心しきっていた少女の顔が恐怖に染まり、必死に逃げようと後ずさる。
だが、そうはいかない。首から伸びた触手が少女の足を捕らえ、宙吊りにする。
「ひぃぃっっ!?」
「あぁ……うまそうだなぁ……たっぷり楽しんで、その後で食べないとなぁ……!!なにせ、ここら辺の人間は、ほとんど食べちまったもんなぁ……!!」
ボロボロになった衣服から垣間見える少女の肌に舌なめずりをし、「異形の存在」は笑みを浮かべる。
この区域において、「異形の存在」は「外敵」が存在しない「支配者」として振る舞っていた。そこに住まう命をどう扱おうが、「異形の存在」の勝手だと、言わんばかりに。
――この「異形の存在」の名は、「
ゲッター線の影響により「突然変異」を起こした、人類の成れの果て。
その
もはや、人類に打つ手はないのか?
……いや、そうではない!!
「てめぇ、何してやがんだ
「ぐあああっっ!?」
――どこから現れたのか、わからない。
突如として飛びかかってきた少年が、
「ったく!!相変わらずのイノシシ頭ねっ!?」
続けて、日本刀のような武器を構えた少女が
「き、きさまら……っ!?」
「いいから、黙ってさっさと死にやがれ人間としての尊厳も捨てた
更に、体勢を立て直そうとした
「弁慶のオッサン!!その子を頼んだっ!!」
「任されたっ!!君、早くこっちに!!我々は自衛隊だっ!!生存者を救出しに来たんだっ!!」
いの一番に突撃した少年の声に合わせ、自衛隊の面々が「弁慶」と呼ばれる男の指示で少女を護るように動き、やがてすぐさま撤収していく。
若い自衛隊員に背負われながら、少女は
(まさか、あれが――)
「聞いた……ことが……あるぞ……っ!!貴様らが、「アレ」を名乗り、御方様に逆らう……っ!!」
……同時に、
それは、奇妙な三人組だった。
大型の銃を肩に担ぎ、深緑のコートに身を包んだ、
日本刀のような武器を構え、その豊満な肢体を惜しげもなく晒すかのような赤いパイロットスーツに身を包んだ、ポニーテールの少女。
そして、その中央に立つ、拳から禍々しい「闇」を漂わせる、青髪の少年。
彼らの名は、「マニウス・ジャコフ」、「
そして――
「あぁ、そうだ……俺達が、
――またの名を、
ゲッター線に侵食され、
その実働部隊たるのが、この3人なのだっ!!
「ひひ……っ!!だがよぉ、お前らを食えば……っ!!「アレ」を倒せばよぉ……!!」
だが、
廃墟の影に潜り込んでいくと、やがて地響きと共に……その本来の姿を、曝け出すっ!!
「きっと、御方様に褒めて貰えるよなぁぁぁっっっ!!特に、そこの女はせいぜい弄んでから食ってやるよぉぉっっ!!」
それは、禍々しい「怪物」。どこか、
「おい翔子、ご指名だぞ」
「はぁ?あんなの相手する訳ないじゃない。そもそもお水の商売なんかしたことないっつーの」
「水を売るくらいなら、翔子でもできるんじゃないのか?」
「そういう意味ちゃうわっ!?」
「じゃあ、どういう意味なんだよ?」
「え゛っ!?それは、その……マニウス!あんたも面白がってないでどうにかしなさいよっ!?」
「随分と、呑気な連中だなぁぁっっ!!」
だが、巨大化した
だが、
すると、3つの影――
『それで、誰から行く?』
『
「あぁ、わかったっ!!それじゃあいくぞ二人共っ!!」
マニウスの分析に答え、ゴウが
そして、翔子の乗る紅い
「チェェェェンジッッッッ!!ゲッタァァァッッッ、ディィィ、ワァァンッッ!!」
ゴウの掛け声と共に3機の
「出たな、恐れ多くも『ゲッター』の名を冠する、紛い物……っ!!」
「違うっ!!『
ゴウの叫びと共に、蒼き巨人……「ゲッターD1」が見得を切る!!
そう、この機体こそ、人類の新たな希望っ!!
「輝く闇」という矛盾した名を冠する、ゲッター線を無力化する謎の力、「アンチゲッター線」を炉心に宿す、闇の巨人っ!!
「ゲッターロボ、ダークネスだっっ!!」
新たな希望!!その名は、ゲッターロボダークネス!!
「チェェェェンッッッッ!!ナァァックルッッッッ!!」
「ごふぅっっ!?」
ゲッターD1の右腕から拳が鎖と共に射出され、
「まだだっ!!でりゃあああっっっっ!!」
ゴウの掛け声と共に、ゲッターD1が右腕を横薙ぎに振るうと、宙に浮いていた右拳が
そして、鎖を巻き取るついでにゲッターD1は背部と足裏のブースターを吹かせて加速し、
「き、きさ……っ!?」
「ショルダー、ミサイルッッ!!」
「オープンゲット!!翔子っ!!」
『はいはいっと……チェェェェンジッッッッ!!ゲッタァァァァッッ、ディィィ、ツゥゥゥッッ!!』
爆風の中から飛び出してきた
紅の巨人、「ゲッターD2」へと変形する!!
「このっ……!!」
「そんなの見え見えよっ!!プラズマ、ソォォォッドッッ!!」
「ついでに喰らいな!!ドリルアァァムッッ!!ドララララララララッッッッ!!」
更に、ゲッターD2の両腕が変形し、唸りを上げるドリルが、ボクシングの如き
「ぎゃはっ……!?」
『今だ、ゴウ!!』
『あぁ、オープンゲット!!』
マニウスの掛け声で、分離した
『プラズマ炉心、最大出力!!エネルギー開放、120%!!』
「ひっ……ま、待てっ!?わかった、もう人間は襲わないっ!!だから、見逃して……」
そして、プラズマは両腕を掲げたゲッターD1の頭上で、更に大きく、強く輝く!!
これこそ、ゲッターD1……いや、ゲッターロボダークネスが誇る最大火力の大技。
アンチゲッター炉心の補助として搭載されたプラズマ炉心が放出するエネルギーにアンチゲッター線を纏わせた雷撃、「プラズマサンダー」!!
その、「必殺」の一撃を感じ取り戦意を喪失した
「それで?お前は見逃したのか?自分が襲った人間を?」
「そ、それは……」
対するゴウの返答は、恐ろしく冷たい声だった。
それに、
なぜなら、既にこの区域に住んでいた筈の人間に対する、調査と救出は済んでいるのだ。
先程、
残りの人間はどうなったのか……それは、語るまでもない。
『人を襲わない
『まぁ、そんな
マニウスと翔子も、ゴウに続くように言葉を述べる。もはや彼らにとって、この
「くっ、くそおぉぉぉぉぉっっっっ!!」
「――くたばれ、
最後まで足掻こうと、
そして、
■■■■■
「また一人、同胞がやられたか。忌々しきは、
浅間山山麓。
かつて早乙女研究所と呼ばれる施設があった場所は、大きく変貌していた。
人ならざるモノ共が作り上げた、機械と生物が合わさったかのような宮殿。
その最深部にて、
「所詮は『ゲッター』の力を手に入れただけの、下級
「それに、『奴ら』には程遠い。
己と同格たる『
彼にとっては、
全ての
それが減るということは、『御方様』へ影響が出るかも知れぬというのに気楽なものだと、アバドンは内心毒づく。
「アスタルテ、『巫女様』はなんと仰られている?従騎として、何か聞いておらぬのか?」
「あいも変わらず、
「……そうか」
「そう……総ては、『御方様』……『光のゲッター』、『聖ドラゴン』様の導き。それが『ゲッターの意思』。紛い物が暴れたところで、些事である」
総ては、『御方様』の意思の元。それが、『
個々がどう思おうと、『御方様』、そしてそれに連なる『巫女様』の意思は絶対なのである。
「……せいぜい、小物退治で粋がっていろ、紛い物共。我らが動く時が、貴様らの最期と知れ」
故に、アバドンは座から動かない。自らの意思で動くということは、『御方様』の意思に逆らうことなのだから。
だが、アバドンは警戒する。危険視する。排除すべき存在として、
あの「輝く闇」は『ゲッターの意思』を阻むものだと、彼だけが察知しているのだ。
――今は、まだ。
■■■■■
「……行っちゃいましたね、あいつら」
「慌ただしいのはいつものことだ。
自衛隊に所属する「弁慶」と呼ばれる男と、その部下である自衛隊員は、空の向こうに去っていった
現状、
しかし、
自衛隊である彼らにできることは、
無論、それが重要なことだとはわかっている。後方支援を行える彼らが居るからこそ、
だが……『ある立場』に就いているこの若き自衛隊員は、その立場上
そんな中で、彼と同年代……あるいはかなり年下の若い男女が、自分よりも危険な任務に赴いているというのが、彼にはどうしても歯がゆかった。
「……何、いつかは俺達も、あいつらと肩を並べて戦う時が来る。その為の任務に就いているのが、お前だろ?」
「そりゃ、そうっすけど……」
「あ、あのっ!!すみませんっ!!」
そんな会話を二人が繰り広げていると、後ろから声がする。二人が振り向くと、そこには一番最後に救出した、少女の姿があった。
「あの……大きな音がしたと思ったら……もしかして、
「あぁ、ついさっき去っていったよ。彼らにはまだ、戦場があるからね」
「そう、ですか。お礼を言いたかったんですが……」
そうつぶやきながら、俯く少女の姿を見て、「弁慶」と若き自衛隊員は視線を交わす。「弁慶」が笑みを浮かべると、若き自衛隊員は頬をかきながら、少女の側に近寄ると、視線を合わせるように屈んで、少女の顔を見た。
「それじゃあ、手紙を書くといい」
「えっ?でも、手紙を書いたって……」
「実はお兄さん、
そう言いながら、若き自衛隊員は茶目っ気タップリと言わんばかりに、少女に向けてウィンクをしてみせた。少女は一瞬呆気にとられたが、やがて意味を理解すると笑みを浮かべ、彼に頷いた。
「それじゃあ、お願いしてもいいですか?」
「もちろんだよ!さて、善は急げとも言うし、仮設テントが居るうちに手紙を書いてしまおう!」
そんな会話を交わしながら、若き自衛隊員は少女と共に自衛隊が設置した仮設テントへと向かっていく。
その様子に笑みを浮かべながら、「弁慶」もまた二人の後を追うように、歩き出すのだった。
続く!!