オリジナルジョジョの奇妙な冒険 〜別れの雨〜   作:ラタ

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貴女は私の夢の中に住んでいて
貴女は私が寝ている間に何処かへと消えてしまう


#36 銀

―私は、考え事をすることが多い。

 

恐らくその考え事の量は一般人のそれとは違う。

もちろん私が…空条助音が、探偵であることも関係しているのだが。大きく関係しているのは、多重人格であることである。

 

私の身体には、“人格のスペース”とでも呼ぶべき場所が存在している。

それは文字通りの、それぞれの人格の居場所である。

 

それは寝ている時、目を閉じている時、そして、身体を動かす人格を交代している時にいることができるスペースであり、私のもう一つの人格“ダブレ”と会話できるスペースでもある。

 

私とダブレは同一人物であるが、感性や考え、知っていることが違うので、ちょくちょくとダブレと“人格のスペース”で意見交換等をしているのだ。

 

2つの人格で身体を動かすことによって彼女と話すこともできるのだが、周りから「ずっと独り言を話している」と勘違いされるし、少しずつ精神力を削るので、やはり人格のスペースで話すことが多い。

 

ダブレ曰く、この“人格のスペース”は、「ココロの逃げ場」らしい。

 

ダブレと話す時…人格のスペースにいることを集中している時、現実世界に戻る際に周りの状況を瞬時に理解できない。それが、大きな難点なのだ。

 

 

……私はいつものように目を覚まそうとする。

確か、先程まで鑑定人さんに魂の鑑定をしてもらっていたハズだ。

 

鑑定人さんに、この“人格のスペース”の話をすると、彼は目を嬉々として「貴女とダブレさんが人格のスペースにいる時の魂を鑑定してみたい」と話した。

 

“ココロを覗かれる感覚”が無くなって数秒したから、私は現実世界に戻ろうと思った。

 

――抜け出す際に、目を閉じていてもわかるような、何か“異様な”雰囲気を私は感じ取った。

 

この鼻を掠める匂い…血!?

目を開けるのを躊躇いそうになる。

一体何が…?

 

……駄目だ。こんなんじゃ前に進めない。

 

ゆっくりと目を開ける。

 

 

目の前…数センチ先には、血塗れの“魂の鑑定人”が寝るように顔を項垂れていた。

 

外では雨が降り始めていた。

 

 

――助音「こ…これはッ!?」

 

TG大学病院の調査部診断室。

助音は、そこで鑑定人に魂を鑑定してもらっていた。

 

しかし、"魂の鑑定が終わったと思って目を開けたら、鑑定人が血塗れで動かない"。全く状況が読めない。

“鋭い何かで切り裂かれている”…?

 

助音(まさか…また夢!?でも坂根は死んだハズだし…身体も動かせる。てことは…)

 

反SPWのボスの腹心、坂根圭は彼のスタンド能力「"アナザーモーニング"」…相手に夢を見せる能力を持っていた。

彼はその能力を駆使し、助音に“翔太郎が死ぬ夢”を見せ、精神力を低下させて洗脳しようとしていた。

その夢の中では、助音を動けなくすることで"翔太郎の死体をまじまじと見せ続ける"というなんとも惨い仕打ちをしていたのだが…

 

助音は、前回と打って変わって動かせる身体を走らせ、鑑定人の元へ近づいた。

 

助音「ダブレッ!」

 

動揺を含む叫び声が、胸の内のダブレを呼び起こす。

彼女の目が、煌めく赤と碧のオッドアイへと変化する。

 

ダブレ「一体どうしたっていうん…」

 

発した言葉はすぐに途切れた。

出てきた目の前に血塗れの人間がいたら誰でも唖然とするのは当然だ。

 

助音「“ダブレもいる”…つまりこれは…"夢"じゃないッ!現実なんだッ!」

 

彼女は必死に「大丈夫ですか?」と問いかけるが、期待も虚しく返事がない。

 

近くの机の上に置いてあったペンライトで瞳孔を照らす。死亡を確認するための処置である。

 

ダブレ「瞳孔が散大している…心拍音も…ッ!」

 

助音「死んでる…」

 

呼吸が荒くなる。

ダブレがいること、身体を動かせること。まぎれもなくこれが現実であることを悲痛に示している。

ポツポツという雨の音が鼓膜を揺らす。

 

助音「“別れ”…」

 

彼女がぽつんと…雨のようなか細い声で呟いた。

 

ダブレ「甘ったれたこと言ってんじゃあねぇッ アタシたち探偵なら、“誰が殺ったか”を徹底的に調べるんだろ!ジョジョ!」

 

いきなり、ダブレが助音を鼓舞するように叫ぶ。

 

ダブレ「こんな雨なんて、アタシらには関係ないだろ?」

 

助音「…うん!」

 

彼女は、踵を返して走り出す。

 

……まさかとは思うけど…!

 

着いたのは、すぐ近くにある病室。

 

助音「いる…!“少女はいる”…ッ」

 

“をー”という名の少女。

反SPWに洗脳され、助音たちに差し向けられたのだが敗北し、洗脳が解かれ病院で治療中なのだ。

 

ダブレ(まだ敵かわからない。静かにしろ(小声))

 

その少女は未だにベッドに横たわっていた。

 

助音+ダブレ「“G・B・ドリームス”」

 

その“2人で1人のスタンド”を発現させ、彼女はゆっくりと少女に近づいて行く。

 

2m...1m...近づけど、オーラのようなものは見受けられない。目を瞑ったまま動かない。

 

……動かない…?もしかしてこの子も死んで…?

 

遂にすぐ隣に着く。

2人で1人のスタンドが、少女の胸元に触れる。

 

ダブレ「"触れた"… これでこの少女は動けないし、スタンドも出せない…!」

 

助音とダブレの2つの能力が合体した結果、2つの能力を同時に使える。今少女は精神力、そして身体を…つまりは完全に支配されているということだ。

 

助音「生きているし…起きていない。寝ている…まだ“夢を見ている”…!」

 

ダブレ「おいおい、本気で言ってんのか!?それじゃあ誰が鑑定人を殺ったってんだよ!」

 

2人(1人)でわちゃわちゃしている内に、何か…おかしな音が聞こえてきた。

 

助音+ダブレ「え?」

 

それは何処から聞こえるのか?2人(1人)は周りを見渡す。

 

???「お邪魔するぜ」

 

そんな声が聞こえた瞬間に、窓が割れる音がした。

 

ダブレ「何だッ!?」

 

見ると、少し離れた所の窓が割れていて、そこには“翼が生えた男”が立っていた。

 

助音「えぇ!?ここって高層階だよね!?」

 

その男…光る黄色い目をこちらに向けて言うに…

 

???「貴様が…"枕木"か…」

 

なにか、もはや憎しみを向けるような目である。

助音は動揺を隠せない。

 

助音(まさか…あの少女が…ッ!?)

 

ダブレ「おいおい、勝手に病室に入ってきやがって…訴えられる覚悟はできてんだろうな?不法侵入と器物損壊罪で訴えるぞ?」

 

そんなことを言いながらも、ダブレは冷静に状況を理解しようとしていた。

 

……目の前に翼の生えた男、後ろに元刺客の少女。

アタシたちは挟まれている。……もし、もし少女がまだ敵だとしたらとても厄介な状況だ…

 

よく見たら大きな爪が生えている…あの翼で空を飛んで、あの爪で窓を割ったということか…?あれはスタンド能力なのか…?まるで、“竜”だ…ッ!

 

ダブレ(まさか…あの男が鑑定人を殺ったというのか…?あの爪で…!しかし何故窓を割って入る必要があるのだ…!?わからん…ッ)

 

そうこう考えている内に、その男がかなり大きな声で話し出す。

 

???「なるほど…こんなところに隠れていやがったんだな…だから“生捕り”指定だったのか…」

 

???「さっきので確信した…さっきの行動でな…貴様が…枕木明ッ!!」

 

助音(枕木…明!?待って待って、意味わかんないッ!この少女が枕木明だと言うの? この男…反SPWの刺客なのか…ッ!?)

 

???「なるほど…“出てこない”のか…」

 

助音「さっきから何を言ってるんですか!?」

 

すると、男は視線を移し替えるように助音を見る。

 

???「お前…」

 

???「お前…ジョジョと言うらしいが…なるほど…2人もいたのか…口調が変わっているものな…」

 

助音(…!多重人格者であることを見抜かれた…!まてよ、てことは…今まで知らなかったってこと…?)

 

ダブレ「あんた…何者だ?」

 

凛とした、碧の視線が男を射抜く。

 

???「そういや名乗ってなかったな」

 

その男は、白いオーラを惑わせて言う。

 

???「俺の名は小林真司。反SPWの幹部だ …貴様を抹殺しにきた…ッ!!」

 

部屋に殺気が満ちる。空気が重い。

彼女は目を瞑ってゆっくりと、余命を宣告するかのようにしゃべる。

 

「殺害命令は出していないハズだが…?」

 

その顔を見た真司はニヤリと笑う。

 

真司「“銀色”か…アンタにお似合いじゃあないか」

 

 

 

……何が起こっているの!?

 

寝ている間に一体何がどうなっているのだろうか。

私はまだ“をー”…バグはまだ修正されていない。

 

"目が覚めた時のルーティン"で名前が変わっていないことを確認してから、今現在の状況を考える。

 

ことの発端はガラスが割れる音だった。

乾いた大きい音が鼓膜を揺らし、私はゆっくりと、ゆっくりと目を開く。

 

窓が割れた方向のX軸と、視線のY軸は垂直で、何が起こったのか完璧に確認することはできなかった。

 

今私が寝転がってる…病院のベッドから起き上がってもいいのだろうか…?

簡単な、どうでもいい原因で窓が割れたのならいいのだが、もし…私を狙った敵襲だったらマズい。

 

真司「貴様が…“枕木”か…」

 

考えているうちに、そんな言葉が聞こえて来る。

私の心臓が過度に跳ねた。

 

“何故”?

 

まず1つの疑問が思い浮かぶ。

寝汗をかいたかのように流れる冷や汗は脳を不安にさせて思考がままならない。

 

“私の名前はをー”。それなのに、何故“枕木と聞いて焦っているのだろうか”。

私が枕木翔太郎と交戦して負けたから?この部屋に翔太郎がいるのだろうか。

 

この“貴様”というのは、誰を指しているのだろうか?

ほんのちょっとだけ、私だけのスタンド“ビヨンド・ザ・ムーン”を出し、部屋を確認する。

 

部屋には…2人、見覚えのある人がいた。

 

1人は…先日、私が襲撃したオッドアイの女性。“生捕り対象”の空条助音。

生捕りにするために気絶させたとしても、“もう1つの人格”が出てきて簡単には捕まえられないと聞いた。

だから私は坂根と組んだのだが。

 

もう1人の男…この男は…何か、見覚えがあった。

名前も誰かも知らない。思い出せない。

 

まるで記憶の中に壁があるように、思い出すことはできない。“また”だ…

 

このような感覚で記憶を思い出せないのは、“私がをーになる前”の記憶だということがわかっている。

 

…?

おかしい。何かを思い出しかけている…

記憶の中の壁に、ヒビが入るイメージがした。

 

 

瞬間。記憶がフラッシュバックした。

 

大きな丘の木の上。

 

隣にいる老齢の男性。

 

目の前にいる、優しい黄色い目をした男。

 

遠くから見つめる姉。

 

移ろうモザイク。

 

をー「!!!」

 

私は驚きを口の中で噛み締める。

そして、スタンドでもう一度確認した。

 

“この男は…!”

 

真司「なるほど…こんなところに隠れていやがったんだな…だから“生捕り”指定だったのか…」

 

男の台詞を聞きながら、私は冷静に考える。

もしこの男が、“あの男”だとしたら…?

まだだ。もう少しだ。

もう少しで、全てを思い出せる気がする。

 

真司「さっきので確信した…さっきの行動でな…貴様が…枕木明ッ!!」

 

その言葉がトリガーだった。

 

これでもか、というほどの情報量が、頭の中に流れ込んできた。何故私がこうにもなってしまったのか。目の前の翼が生えた男が一体何者なのか。

 

そして私は、その親愛なる…いや、親愛なんてないかもしれない。そんな妹を思い出す。

 

私を“こんな姿”にした張本人…枕木明ッ!!

 

私は男が言っていることの“真意”に気づく。

“枕木明”はここにいる…

 

考えに熱中していたせいか、会話はいつのまにか先へ進んでいた。

 

助音「この少女には…指一本触れさせないッ この少女が一体誰であろうと!私には"護る"義務があるッ!」

 

真司「お前…少し着いてきてもらうぞ」

 

真司「"Degeneration"」

 

男がそう呟くと同時に、背中から生えている翼、手の爪がもっと大きくなった。

 

男がオッドアイの女性を掴むまで1秒もなかった。

彼女もスタンドを出していたようだがそれでも反応できないとは、どれだけの速さだろうか。

 

男はその女性を掴んだまま、窓の外へと跳んだ。

しかし私は気づく。その男が、窓の外へ跳ぶ瞬間私へ目配せしていたことを。

 

普段聞くことがない、翼がはためく音が段々と上へと向かっていく。この病院には屋上があるのだろう。きっとそこで戦闘するハズだ。

 

“寝てる場合じゃない”ッ…!

 

彼女は水色の患者服をはためかせて病室を後にするのだった。

 

 

いかにも不思議な状態。

"天空に"2人の姿がある。

雨はまだ降っていた。

 

真司「少しでもスタンドで攻撃してみろッ!重力加速度9.8m/s2(空気抵抗を加味した)の速度で地面とのキスをすることになるぜッ ファーストキスはそんなんで済ませたくないだろう!?」

 

その男…背中から翼が生えていて、手に大きな爪を持っている。そして、その爪で金髪の女性を掴んでいた。

 

助音「うぅっ…なんてことを…!」

 

すぐ真下を見れば、地面まで…何メートルだろう。数えたくないほど高い。

もしこのまま落ちたら、雨とほぼ同じ速度で落下することになるだろう。

 

今助音の生死を握っているのはその男、小林真司である。彼女は身動きを取れないでいた。

ちなみに怖くて目を瞑っている。

 

しかし、真司は笑うような口調で言う。

 

真司「お前とは少し話したかったからな…!もう少しの辛抱だッ」

 

ダブレ(この男…つくづくわからない…先程出していた殺気は…?本当にアタシたちを殺す気なのだろうか…?)

 

数秒して、真司は彼女を急に手放した。

 

助音「えっ…」

 

声を出す間もなく、体は重力に引っ張られる。

…が、すぐ着地した。

 

どうやら転落死は免れたようだ。

 

ダブレ「ジョジョ!目瞑ってんじゃねえ!」

 

助音「なッ、ダブレだって怖くて目瞑ってたでしょ!てかやろうと思えば片目だけでも開けれたでしょ!?」

 

するとすぐ近くに、助音たちをそこへと連れ出した男…小林真司が現れる。

 

真司(なるほど…身体は動いている人格に“色濃く”反映されるみたいだな…)

 

その興味を乗せた視線に流石に気づいたのか、助音は険しい目つきで男を見る。

 

助音「あなた…何が目的なの…!?“抹殺する”って…をーちゃんを抹殺するのかと思ったら私を連れ出して…しかも私を殺せる状況で殺さない…!」

 

真司「焦るな…お前は探偵なんだろ?推理してみせろよ…できるんだろ?」

 

ダブレ「テメー、ふざけたこと言ってんじゃあねえぜ!今この場でお前の正体を推理するなんて不可能だろッ!つーか何者だよ結局!」

 

彼女らは、口ぶりからわかるように、怒りを発していた。

 

ダブレ(反SPWの幹部と言っていたが…生捕りと言えるかどうかわからんが…ここは少なくとも…まだTG大学病院の屋上のハズだ…)

 

彼女は寝転がっている地面を見てみる。

黄色い線で、Hと書かれている。

Heliportの頭文字。つまりここは"ヘリポート"だ。

 

周りを見回してみる。誰もいない。

 

真司は、彼女が状況を察するために周りを見回していることを厭いもせずに考え事をする。

 

真司(やはり俺の考えは合っていた…つまりここからは…)

 

真司「推理の時間だ」

 

ダブレ「一体何を言ってんだ…?イカれてるのか?この状況で…」

 

助音「ダブレ!おじいちゃんのセリフ使っちゃ駄目!!!」

 

よくわからない茶番を無視して、真司は得意げに語り出す。

 

真司「まず…語るべきは"鑑定人"についてだな?お前も気になっているハズだ。」

 

ダブレ「鑑定人はアンタが殺したんじゃあないのか…ッ!?アンタのその爪で切り裂いたんじゃあないのか…ッ!?」

 

助音「鑑定人を殺して、一度外に出て窓を割って入ってくることで、殺人にまるで無関係のように見せかけた…ッ!」

 

鑑定人は、胸元に切り裂いた傷があって、恐らくそこからの失血で死んだ。

 

真司「違うな…お前はそう“思い込んでる”だけだ」

 

真司「お前は気にならなかったのか?何故“遺体を処理したり、証拠隠滅をしなかったのか”。」

 

ダブレ(…!たしかにこの男なら、違う殺し方もできるし、空を飛んで逃げることもできる…!)

 

真司「その前にだ…何故俺が殺す必要がある?」

 

その言葉に少し彼女は動揺を見せる。

彼女の顔を雨が濡らす。

 

真司「元々あの男は、洗脳されて反SPWに加入し、その持ち前の能力を駆使して“占った人がスタンド使いになれるかどうか”を調べてスタンド使いを量産していた。」

 

真司「しかし俺は奴がお前ら側についたとしても別になんとも思わない。ジョースター側が仲間のスタンド使いを増やそうなんて思わないことを知ってるからな…俺が奴に対してなにか殺意があるわけでもない。」

 

対峙するように彼を見つめる助音は言う。

 

助音「それなら一体誰が…まさか、あの少女が鑑定人を殺したとでも言うの!?あの少女はまだ眠ってたし、スタンド能力を使ったってあんな裂傷にはならないッ!」

 

真司「待て待て、落ち着け。焦るな…探っていこうじゃないか。状況推理というものがあるだろう?あの状況…あれだけの情報であの殺人は解ける。」

 

ダブレ(何かマズいぞ…屋上で戦闘するのかと思いきや何やら推理ショーが始まってやがる…"探っていこう"だと…?何を言ってんだホントに…!)

 

真司「まずお前らが言う通り…彼は胸に大きな裂傷があった。それが死因と見て間違いない。それをできる者は誰か…?あの大きな胸の裂傷は、並の刃物なんかじゃあ不可能だ。」

 

助音は、そんなことが一体誰が可能なのか考える…

 

真司「お宅の天久鷹優と小鳥遊ことりには少なくとも不可能だ…彼らは、先程このヘリポートで反SPWの幹部2人と戦っていた。どちらが勝ったにしてもな。」

 

助音「戦っていた…?」

 

真司「それについてはお前が知らないのも無理はない。まずまず、お前が今思う通りに彼らが犯人だったとしても動機がない。」

 

ダブレ「動機…」

 

真司「そう!“動機”なんだよ…!」

 

真司「“何故彼は殺されないといけなかったか”?そこから推理してみようじゃあないか。」

 

何か男は、上から目線で助音に話しかける。

 

助音「彼は…性格が悪いわけでもないし誰かから嫌われているとは思えない…」

 

彼は誰にでも礼儀正しく接していた。

そんな彼を、誰が嫌うだろうか。

 

真司「それだったら…何か、“どうしても殺さないといけなかった”理由があるハズだ…」

 

真司「お前が鑑定人の近くにいたことも関係しているのかもしれない…殺す対象の近くに人がいるのに何故殺したのか?それは最早、“罪をおっかぶらせる”為としか思えないよな?」

 

彼女に寒気が走る。

 

真司「まず彼の能力から考えてみよう…彼は、他人の魂の本質を見抜く能力を持っている。」

 

真司「もしそれが動機に関係しているとしたら、余程知られたくないことを“ココロに秘めている”人だな?もしそうだとしたら…それほど隠したかった“重大な何か”が存在してたってことだなぁ〜ッ」

 

彼女は男が話すにつれて、俯いていく。

それは、話についていけないのか、それとも…

 

真司「これが最後だ。何故“証拠隠滅”を行わなかったのか?」

 

俯く彼女を無視してでも男は話を続けた。

 

真司「眠っていた…?のかどうか知らないが、目を覚ましたお前は鑑定人の遺体を発見した。いやあ迅速だったなあ。お前の死亡診断は。」

 

真司「お前が鑑定人の死亡を確認してからの行動の切り替えもはやかった…一体誰が殺したのか?その犯人がまだ近くにいるのではないか、と思ったんだな。」

 

ポツポツと一定の間隔で降る雨と対照的に、心臓の鼓動の間隔が速くなる。

 

真司「それでも、"犯人は見つからなかった"。」

 

「…」

 

真司「じゃあ犯人は何故証拠隠滅をしなかったのか?」

 

 

真司「それは俺が、窓の外から犯行現場を目撃していたからだ」

 

恐らく、彼は敵陣の視察の為に空を飛んで助音の居場所を探っていたのだろう。

 

真司「普通の…いや、普通なんておかしいのかもしれないが、もし殺人を犯した犯人が他人に現場を見られたら…?目撃者も始末しようとするハズだ。」

 

真司「そこで犯人は考える…空を飛べる相手をどうやって始末しようか?犯人はきっと頭がキレるんだろうなあ〜ッ すぐに打開策を思いついたんだ。」

 

真司「その場に、“罪を着せれる人”がいたんだ。そして、罪を着せられることを恐れたその人が、犯人探しを行ってその男を始末するだろうということを、犯人は簡単に思いついたのさ。」

 

真司「もしそうすれば、ジョジョに“大きな爪を持った男が犯人である”と誤認させれるからな」

 

そう言うと、彼は助音から距離を取ったところを歩き始める。濡れた足音が響く。

 

真司「全く、困ったもんだぜ。"犯人"がそんなにも頭がキレるとはなあ…ジョジョに罪を着せるだけでなく、俺にさえ罪を着せるなんてなあ…」

 

そこで男は一息ついて一区切りをつけた。

その黄色い目で彼女を睨む。

 

真司「相手に大きな裂傷を与えれる奴…

ココロに特大な秘密を抱えている奴…

ジョジョに気づかれずに人を殺せる奴…」

 

すると、ようやくその女性は口を開いた。

 

「なんだ…はやく言ってしまえばいいだろう?その推理力…いちいち推理ショーなんてしなくても犯人を名指しできたハズだ」

 

真司「俺はな…人を追い詰めるってことが大好きなんだよ…まあそれだけじゃなくて、先輩探偵としては後輩にも成長して欲しくってなぁ〜ッ」

 

「成程…お前は探偵だったのか…私の組織にそんな奴がいたとはな…気づかなかったよ…スパイがいるなんて、この体にいちゃわからないよな…」

 

跪くように座っていた彼女は、ようやく立ち上がった。金色の髪をかきあげたその顔は、まるで無機質な…少なくともさっきまでの感じとは違った。

 

 

その男が彼女を指差して告げる。

 

――真司「貴様が犯人だ」

 

 

 

真司「枕木明…いや、“3つ目の人格”とでも呼んだ方がいいのかな?」

 

明「まさかお前がこの私を裏切るとは思わなかったよ…しかも私の“居場所”さえ見抜くとはな…」

 

彼女は殺意を込めた発言を男へと送る。

……その輝く“銀色の目”を男に向けながら。

 

 

真司「彼を殺せる犯人は…“空条助音の中に潜んでいて”、“実質的にその身体を乗っ取っている”貴様…枕木明だけだ。」

 

明「気づかれないと思ってたんだがな…まさか、鑑定人だけでなくお前にまで気づかれるとは。」

 

彼女は、濡れた金髪に銀色の目…

雰囲気が、“空条助音のソレ”ではなかった。

もはや、同一人物とでも思えないほど。

 

真司「真実はこうだ…“空条助音の身体に3つ目の人格として潜んでいること”が鑑定人にバレた貴様は、口封じの為に鑑定人を始末した」

 

真司「しかし、その行為はこの俺…小林真司に見られていた。そこで貴様は俺を始末するために、助音とダブレの人格に俺を追わせたんだ。」

 

口に出さずとも、“白銀色のオーラ”を纏っている彼女は男に近づきながら答える。

 

明「“運が悪かった”訳ではない…この世は全て運命で定められているからな…だから私はきっと後悔しないんだ。 …だから、“小林真司が枕木明に始末される”という運命を達成させにいく」

 

真司「それは違う…もしお前が病室でその“銀色の目”を俺に見せなければ俺は貴様の正体を知らずにいたようなもんだ。それに関しては運が悪かったんじゃあなくて、貴様がただ過ちを犯しただけなんだ」

 

明「黙れ」

 

明「貴様を始末した後に…病室に戻ってあの少女…バカ姉を始末しに行くとしよう…」

 

真司「おや、それが可能だと思うのか?

俺はさっき、わざと彼女の過去に関することを発言することで彼女の“バグ”を修正した…」

 

明「バグを…修正しただと?」

 

真司「簡単だったよ…彼女がバグに襲われる瞬間に居合わせていた俺は、彼女の名前を覚えていた…バグの修正方法は、そのバグが起きたところに居合わせていた者が近くにいることだったんだ」

 

真司「恐らく彼女はもう、貴様…枕木明が空条助音の中に潜んでいて、俺と屋上で戦闘することに気づいたハズだ。貴様は…そんな余裕でいられるのかな?」

 

圧倒的に彼女が不利な状況…

にも関わらず、彼女は“笑っていた”。

 

明「成程なあ…成程…なかなかやってくれるじゃあないか… だが万事を休するのはお前だ」

 

彼女は銀色の視線を男に向けたまま呟く。

 

明「“N o w h e r e”」

 

 

 

スタンド紹介

スタンド名「Degeneration(ディジェネレーション)」

スタンド使い名「小林真司」

竜のような体になれるスタンド。いわゆる竜人。

ツノ、翼、爪、鱗やキバが生える。

大きな竜の姿、そして人の姿のまま竜に近い形に変身できる。

攻撃手段は主に爪、キバ、火炎放射など。翼で空を飛ぶことができる。鱗で防御できる。

能力が相当強く、リターンとして、能力を使用している間、精神力を酷使する。なので制御や持続はかなり難しい。

また、生物なら竜に変えることができる。

破壊力 :A

スピード:A

射程距離:C

持続力 :E

精密動作:D




昇らない太陽は、雨が降る中に出づ。

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