話がブレているような気がする。
昔は、もっと自分の作品が受け入れられるって自信に満ちてたような...
2024/10/20 口調を修正
メジロ家。
それは現代ウマ娘における名家であり。
一言でいうとお嬢様方である。
北海道にあるメジロ家の豪邸の一つ。
そこに集まる四人は、ウマ娘のトレーナー達。
メジロアルダン、ライアン、パーマー、そしてマックイーン。
彼女たち一人ひとりに専属のトレーナーがついている。
そんなトレーナー等がメジロ家で一緒の部屋に招待されていた。
「何で、お前らがここにいるんだよ」
「そりゃ。自分の担当に呼ばれたからでしょう」
「お前もかよ」
冬休みの休暇中(ただしトレーナーに休みはない)、自らの担当に連れてこられた彼ら。
アルトレ以外の彼らは、お互い見知った顔を見てゲンナリしていた。
彼らは全員が中央のトレーナーなので、当然お互いに良く知った仲である。
担当の実家というアウェーのはずなのに、このホーム感よ。
そんな三人を見て。
アルダンのトレーナーだけが、養豚場のブタを見送るような生暖かい視線を送っていた。
ああ、こいつらもメジロにされちゃうんだね、と。
年頃の少女に、あんな甘い台詞を吐いたんだからしょうがないよね、と。
先駆者は後輩たちの将来に対して達観的であった。
「ライアン達は。今は、メジロの”おばあ様”にお呼ばれしているらしいが。どんな話をしているんだろうな」
彼らはウマ娘のトレーナー。
しかし、彼らの担当はここにはいない。
「マックイーンは、メジロの今後に関わる重要な話があると言っていた」
「それって、俺らに関係あることか?」
「どうだろうな? ここに呼ばれたって、参加しろとは言われてないな」
メジロ家は現当主であるメジロのウマ娘を頂点とする女系社会。
といっても、彼らも内情に詳しい訳ではない。
彼らはお互いの顔を見る。
「自由にしていいとは言われているんだよな。暇だし、車でも借りてどっかに行くか?」
「北海道を短時間で移動するのは無謀ですよ。お互い知らない場所とかあるでしょうし。ここは情報交換と行きません?」
「といってもなあ。北海道とか仕事で散々行っているだろうに。ウチのパーマーとも良く行ってるし」
まあ、余所の事情に突っ込むのも野暮というものだろう。
幸いウマ娘・トレーナー同士ライバルではあるが、お互いの仲は良好である。
男は男同士、楽しくやっていればいいのだ。
こんな機会もそうないのだし。
「ウマ娘の集まりか。仲は悪くないんですよね。彼女ら」
「同じメジロのウマ娘だからな。ライアンから話には聞くが。あまり集まっている所は見ないな。全員が揃うことはめったにないらしい」
**
「こうして、皆と集まるのは久しぶりだよね。あたしは出来れば、ドーベルやブライト達とも一緒したかったけど」
所謂、”ライアンカット”のウマ娘。
メジロライアンが紅茶を音を立てず、机に置く。
「だよねえ。私もヘリオスと一緒に来たかったし」
場の雰囲気には似合わない、良くも悪くも活発なウマ娘。
メジロパーマーが、手元のコーラとフライドポテトをつまむ。
「正気ですの? メジロで無い者をこのような会に呼ぶなんて」
執拗に自らの髪をいじる葦毛のウマ娘。
メジロマックイーンが、手元にメロンパフェを置いてパーマーを睨む。
「つーてもさ、アルダンやマックイーンもさ、ヘリオスやネイチャをしょっちゅうメジロの施設に招いてるじゃん。私知ってんだよ」
「何を当然のことを。彼女とはあくまでも私的な関係でしょう? 場をわきまえよと言うのです」
「ま、まあまあ」
パーマーとマックイーンがにらみ合うが。
このウマ娘たち、お互い仲が悪いとは思っていない。
この程度の小競り合いはいつものこと、で済まされる程度の話である。
それでもライアンからしたら、この二人の関係は危うく見えてしまう。
とはいえ今の所、大事には至ってはいないのも事実であるが。
「私も、出来ればラモーヌ姉様に来て欲しかったのですが。…アルダンに従うようなウマ娘でもないですね」
この中で一番の恵体、メジロアルダンはそんな三人を静かに見守っている。
紅茶を楽しみながら、透き通る髪をゆらめかして。
彼女は既に第一線から引いた身であって、この中では一番気楽でもある。
「いやー。こう見てみると、ウマ娘にメジロ家実装されすぎだよねえ。しかも、ここにいるの全員転生者でしょ」
何の因果だろうか。
ここにいるウマ娘全員が”前世の記憶”を持っている。
そして彼女たちメジロ家のコミュニティ内に限り、彼女達はその秘密を共有しているのだった。
「
紅茶を口にし。
メジロマックイーンは平然と言い切る。
彼女は、自分たちの存在が某サンデーの存在ぐらい重要だと信じて疑わない。
「そこまで言っちゃうかあ。あたしぐらい、居なくても変わらない気もするけど」
「ライアンは、オグリさんのラスボスですから」
彼女たちの中で、マックイーン程に自信を持つものはいない。
この中で一番弱気なライアンに、アルダンがフォローに回る。
「私としては、こうしてこう、シンパシー感じる連中が身内でよかったと思う訳よ」
「レースに出る以上、お互い敵ですわ。それとも貴方が私の庭をエスコートしてくださるの?」
あのマックイーンと良くじゃれあえるな。
この中ではパーマーが一番の陽キャとはいえ。
他のメジロたちはパーマーに対して、そう思わざるを得ない。
「マックイーンは相変わらずだなあ。もっと仲良くしようよ。そんなこと言ってるとゴルシやドリジャが悲しむよ?」
「…今世では血の繋がりのない者です」
自分を慕ってくれる先輩(レース上では後輩)の事を思ってか。
マックイーンがコメントするに、少々というにはあまりにも間が空いた。
「あたしとドーベル、ブライト達との間に親子の関係はないハズだけどね」
「私たちは精神の存在です。恐らく、メジロの血は水よりも薄い」
メジロライアンがマックイーンに共感して苦笑いする。
メジロドーベルに”ライアンってさ、アタシのパパだよね?”と言われたことを思い出したのだ。
ウマ娘は学生同士である以上、論理的に言えば親子の関係はあり得るはずはない。
とはいえ精神的繋がり、と表現できるものがあるのも確かである。
「最も、最強の名を持たない者、そんな貴女には分からないことでしょうが」
そして、精神上においても。
このメジロマックイーンの”最強”は決して揺るぎのないものなのだ。
中央においても”最強”の称号を持つウマ娘は希少であるが。
”最強ステイヤー”が誰かというと、このメジロマックイーンなのだから。
「ふん。まあ、いいでしょう。こうして揃ったことです。この私が、ここにいる全員におばあ様からの命をお伝えします」
「ここにいない子は、あたし達から伝えるってことだよね」
この場にメジロ家全員、とはいかないが。
それでもメジロの主要なメンバーが大体そろっている。
重要な話をするには十分だろう。
「メジロ家の”店じまい”は、予定通り行われるとのことです」
マックイーンが口にするのは、史実におけるメジロ家の終焉。
メジロの名は、これ以上続かない。
ここは現実に由来する世界とはいえ、ここでもそうなってしまうのは運命なのか。
「拡張主義を採っていれば、また違った結果であったかもしれませんが。私が歴代の現当主であったとしても、採用できたとも思いませんね。…もはや過ぎたことですわ」
独り言のように、マックイーンが呟く。
沈黙の中、ギリリと歯ぎしりの音が良く響く。
「やはり。ですか」
「そっか。だよね」
ライアンとアルダンは、静観の姿勢を見せた。
この件に関して、彼女たちも”いずれ来る”と聞かされてきたのだ。
今更、驚くことでもないのだろう。
「それで。私たちに何をしろっていうのさ?」
「それは私やおばあ様が決めることではありません」
ライアンとアルダンとは異なる姿勢のパーマーに対して。
マックイーンはピシャリと言い切る。
「パーマー。これはもはや義務ではないのです。ドーベルを見るに…我々のやってきたこと全てが無駄となるとは、貴女も思わないでしょうが」
「アルダンやライアンは分かるけど。この話、私いる?」
私いらないと思うんだけどなあ。
どこか他人事のようなパーマーの態度に対して、マックイーンはため息をついた。
「おばあ様は。貴女達の自信を奪うような方針を反省なさっていました」
「!」
パーマーがメジロらしくないと言われること。
あるいはメジロのウマ娘たち全体に、自主性が欠けていること。
それはマックイーンも良く知ることである。
そして、その原因が外ならぬメジロの教育にあったことも認めている。
「それは必要な方針であったとは、私もそう断言しましょう。それ故。貴女方へ独自の判断を求めるようになったことは、メジロとしての敗北。今回の責は取ります」
特にパーマーは、”私は期待されていないのではないか?”と思ってしまっている。
とはいえパーマーが期待以上の結果を出したこともあって、メジロの当主も自らの行いを反省していた。
「です、が! メジロである、なし以前に。貴女も自分自身が競技者であることを、お忘れでないでしょうね?」
確かに、メジロの名は終わりを迎えるのだろうが。
それでも彼女達にはまだすべきことが残っている。
「あー。そっちに持ってく?」
「貴方もユーザーであるならば。最低限、プレイヤーとしての職務を全うすることです」
彼女たちはトゥインクルシリーズを走っただけであり。
まだその後のレースが延々と続いているのだ。
レースで走る仲間や後輩たちの面倒も、見なければならないだろう。
「そうだよね。ネームド以外のシイナ家とかも残っているんだよね」
「少なくとも、彼女たちにも出来るだけの補填はしなければなりませんね」
これにはライアンとアルダンも頷く。
メジロの活動が終わっても、彼女達の人生は続くのである。
「最善は尽くします。後は、天命を待つのみ。ですわ」
「マックイーンはさ。怖くないの?」
「怖くないかと言われれば嘘になります」
本当は、メジロに終わってほしくない。
そう思うのが、マックイーンの本音ではある。
しかし、終わりは必ず来てしまう。
「ですが最後まで役割を全うする、これが強者としての務めです」
ならば、今出来ることをするべきなのだろう。
メジロが終わっても、メジロの名を永遠にするために。
本日の楽曲はラジオネーム「名優」さんからのリクエストです。
それでは聞いて下さい、マドンナの同名のアルバムより「ライク・ア・バージン」。