シチーさんの話を描いたらシチーさんが出るんすかね?
2022/07/08 バクちゃんの瞳を修正
2023/04/03 ロブロイ中等部...? みたいなので修正
寝ぼけ頭のまま手元の書類作業を片付ける。
生徒会長としての朝は早いが、シンボリルドルフの朝は弱い。
しかし朝会に向けての資料の準備は一切怠らない。
何故ならそれが私の仕事であり。
仕事がわたしへの報酬となる。
「理事長の長期出張に関する手続き、か」
とはいえ、この状況がおかしいと思わないでもない。
見よ、汝この陳情書類の山々を。
どう考えても小娘がやる作業量ではないだろう、これは。
副会長のエアグルーヴも、たわけ君の手を借りなければレースには出れなかったぐらいだ。
まあ、私はこの量を一人で捌くのだが。
「全く。我々の理事長にも困ったものだ」
ウマ娘を見ていると手前等のような学生がいるか、と思わないでもない。
どいつもこいつも、レースに覚悟決まりすぎである。
異世界の魂が入っている時点で、あまり見た目の年齢は当てにするべきではないか?
「我々のトップが
秋川やよい...一体何者なんだろうね。
実績のない親の七光りとしても限度があるだろう。
仮に周囲の傀儡政権だとしても、個人が与える影響が大きすぎる。
「ふああ。眠」
誰かというならばノーザンなテーストなんだろうが。
「この様子だと、学園は卒業後も私を手放す気などないだろうな」
引退後に普通の小娘へ戻るとしても、あまりにも私は知り過ぎた。
学園の頂点に立ち、良いも悪いもを受け入れて。
それらが私の日常となったのだ。
もはや、何処にも行くことは出来ないだろう。
「会長」
「オカベ君?」
声の方を向くと。
副会長であるエアグルーヴが心配そうにこちらを覗いている。
「お休みの所失礼します。お時間です」
「ん。わかった」
朝会として集まるは、トレセン学園の生徒会役員たち。
メンバーは高等部によって構成され、名の知れた生徒が役職を務める傾向にある。
勿論、歴史に沈んだ名もなきモブウマ娘も一員として頑張っているのも事実だ。
で、私としては会議を始めたいのだが。
会議室の中にトウカイテイオーが潜り込んでいたようで。
そのことをバンブーメモリーが詰めている。
「何度も言ってるっスが、生徒会の仕事の邪魔をしたらいけないっス。我々はこれから大事な会議っスよ」
「えー。今日ぐらい良いでしょー? ねーカイチョー?」
仕方ないなあ。
そう言いたい所をぐっと我慢する。
小柄な体格を利用され、風紀委員長に首元掴まれて。
消費者金融に出てくるチワワの目でトウカイテイオーが見てくる。
我慢するんだ、私。
彼女はまだ中等部だぞ、私。
ここでの甘やかしは彼女のためにもならないぞ、私。
しっかりするんだ、私!
「すまない。頼んだぞ。バンブーメモリー」
「了解っス!」
「なんでボクだけがー!」
テイオーが私に憧れるのは、まあ悪い気もしないのだが。
アレではまだ時期早々だな。
憧れは最も理解から遠いとは、オサレ漫画の台詞だったな。
いずれは彼女も私に挑んで欲しいものだ。
「では、さっそく会議を始めよう」
「おい」
組んだ手に顎を乗せて。
ようやく始めれると思ったのだが。
「何かね、ナリタブライアン」
「その前にいう事があるだろ」
周囲のメンバーを見渡すと、皆ある一点に集中している。
もう一度周囲を見渡すと、皆一斉に目を背ける。
一点にはウマ娘の中でも抜群のスタイルを持った葦毛の。
その神経質そうな姿があった。
「何でコイツがここに居るんだよ」
「あんだよ。アタシがここにいちゃいけねーってのかよ。あーん?」
高等部所属のゴールドシップ。
彼女の実力は確かなのだが、その気性難からくる奇行もまた有名である。
よく生徒会のお世話になるウマ娘ではあるが、当然生徒会役員ではない。
「ああ。ゴールドシップは私が呼んだんだ。彼女は今回の件に関係があるからね」
「また何かやらかしたのか、コイツ」
ナリタブライアンが頭を抱える。
彼女もまた副会長だ。
普段から問題児達の面倒を良く見ているのが良く伝わってくる。
「改めて会議を始めよう。この度、アオハル祭が開催されることは周知の事だろうが―」
アオハル祭。
それはかつて学園内で行われていた、ウマ娘がチームを組んで競い合う団体競技である。
今の時代では廃れてしまっていたが、秋川理事長の思い付きによって復刻することになった。
のだが―
「その間、理事長は海外出張により不在となる。そのため三年間、学園幹部である樫本理子トレーナーが理事長代理を務めることになる予定だ」
秋川理事長は長期出張で学園を離れるため。
そのため、全権を委任された理事長代理が学園を仕切ることになる。
これが、今回の話題となる。
「彼女がっスか」
「知ってるのか?」
「幅広いウマ娘達の面倒を見ているトレーナーさんっスよ。その厳格さで、風紀委員の中では有名っスから」
その学園幹部の名を聞いて。
バンブーメモリーが凛とした表情を険しくする。
「いやしかし。代理と言うには、ちょっと今の理事長の自由な方針とは合わないとも感じるっス」
その表情が語るのは困惑。
まあ、彼女がそう思うのも無理はない。
「フフ。君もトレーナー君と風紀違反をした以上―」
「わーわー! その件は勘弁してほしいっス!」
風紀委員長キャラなんて、だっちな目に遇うのがお約束だろうに。
そう思っている私も、この学園にだいぶ毒されているのかね。
「失礼。彼女の掲げる理念はまさに”徹底管理”。一時的とはいえ与えられた権限を持って、現状の学園の大改革を行うことは想像に難くない」
「む、無茶苦茶ですよ。理事長とはいえ、代理ですよね? そんなこと出来るんですか?」
図書委員長(本日は代理)のゼンノロブロイが動揺して口にする。
その懸念は最もだ。
全権委任とはいえ、理事長が戻った後にどうなるかは想像容易い。
「うむ。だが、彼女なら出来るではなく”やる”だろう」
彼女の悲しき過去については、私も理事長から話を聞いている。
その間違いを二度と繰り返さぬよう、彼女は自らが悪となることも躊躇わないだろう。
例え、その立場を奪われようと、ね。
「間違いなく生徒からの反発は必ず起こるでしょう。では。この件に関して、学園はどのようなお考えで?」
エアグルーヴが冷たく私へ問いかける。
現状の秋川理事長や生徒会の方針は、生徒の自由を尊重している。
そんな樫本理事長代理の考えは、生徒の自由を重んじるのではなく規則を徹底することを重んじる。
この学園において間違いなく異端であるのは間違いない。
「この件に関して、学園幹部と生徒会は静観する方針だ」
つまり様子見。
それを聞いて、ここに居るメンバーの反応は半々。
一方は納得、もう一方は困惑。
「彼女の徹底管理主義は急進的だが、現状の学園は自由主義に傾きすぎている。少なくとも私はそう考えている」
私のその一言で、思い当たる所があるのか殆どが納得した反応を見せた。
まあ、これは当然だろう。
「おい、まさか野菜を食えって言うんじゃないよな。野菜食っているような、そんな連中が強くなれるってのか?」
「その為のアオハル祭さ」
数少ない反対派のナリタブライアンが疑問を示す。
木の枝を銜えて強がってこそいるが、根の臆病さは隠し切れんよ。
自分たちが”守られている”という自覚があるのは大変よろしい。
「自由と支配の何方が正しいか。証明するため、間違いなく彼女とレースで勝負する者達が必ず出てくる。この祭りは学園の自由を巡る戦いとなるだろう」
丁度良い時期にアオハル祭が開催されるのだ。
タイキシャトル辺りが間違いなく喧嘩を売るだろう。
個人的にはゴールドシップにも、この辺りに上手く乗っかってくれると嬉しい。
「今こそ正に盛者必衰。ブライアン、君の持つ”誰も寄せ付けない強さ”とはまた別の”強さ”を見ることになるだろうさ。興味があるならば君も対立すると良い」
「フン。― 面白い。いいだろう、乗ってやる」
現状の学園は”素養のある個人を伸ばすこと”をメインとしているが、個人的にこれは間違いだと思っている。
本来、学校の役割は”レベルの底上げ”なのだ。
中央トレセン学園は日本でもトップとはいえ、その点が重要なのは変わらない。
初めから才あるウマ娘だけを伸ばすだけでは限界がある。
遅咲きの者などの取りこぼしもあるだろう。
能ある私も、全てのウマ娘を面倒は見切れてはいない。
シリウス(シンボリ)やメジロパーマー君、理解のあるトレーナー君みたいな子がもっといてくれたら、と思ってしまう時点で私も皆に甘えているのだろうな。
この点、モブウマ娘でも一線級へと育て上げる理事長代理は優秀なトレーナーだと言える。
「とはいえ、彼女の管理体制も完全ではない。最終的には理事長がタオルを投げるだろう。どう転ぶにしろ、極端な改革とはならないさ」
まあ、彼女もまだ若い。
これを機に理事長代理や生徒達にも成長してもらいたい所である。
...改めて思うのだが、コレ私や秋川理事長が考える事かね。
「生徒会諸君は、各々の判断を持って、気軽にアオハル祭に参加するといい。少なくとも、ここにいるメンバーの責任は私が持とう」
「質問です!」
話が纏まったと見て。
生徒会の中から勢いよく飛び出す者が居た。
「ふむ。何か質問かい? サクラバクシンオー」
「私は何から始めましょうか!」
桃の花を瞳に宿す彼女は高等部の学級委員長の一人。
伝説の
「いい質問だ。君は最強だ。チームの方からスカウトが必ず来る。それまで鍛錬に励むと良い」
「成程、当然ですね!」
私が伝えたのは現状維持であり放棄でもある。
それに対して彼女は完全に理解したとばかりに自信満々に返事をする。
「本当に分かっているのかコイツ」
「彼女なら何も問題ないよ」
普段の彼女を見ているからか皆が不安を示す。
普段世話をする側からしたら、そう見えるのかもしれないがね。
「彼女については全面的に信頼できる。何なら私から生徒会長の座を譲ってもいい」
「ちょわっ!?」
私の言葉にピーンと毛を逆立て、サクラバクシンオーが反応した。
周囲もこの言葉には驚きを隠せないでいるようだ。
「そんな、生徒会長なんて。学級委員長でない私は、スピードと瞬発力と、溢れんばかりの才能しか―」
「フフフ、甘いな。バクシンオー」
「何ですと!」
「生徒会長になるということは、全ての学級委員長を統べる者。つまり、どういうことか分かるな?」
私は腕を組み。
悪そうな顔を浮かべて話を続ける。
「つまり。私は、学級委員長を超えた学級委員長― !」
すごいぞ。
別クラスの学級委員長であるナリタトップロードが。
その、とんでもなく凄い顔でこっちを見ている。
「こうしてはいられません! 失礼します! うおおおおお! バクシンバクシーン!」
一気に興奮し、落ち着いては居られぬと。
彼女は会議室を全速力で出ていった。
「バクシンオーに次期生徒会長が務まるのか?」
「いやいや。本気だよ私は」
副会長二人が特に難色を示している。
かつて生徒会長の座を競った二人であり、現状の問題児側であるバクシンオーの面倒も見ているのだ。
そう思っても無理はないがね。
そういえば私はこの話を特にしていなかったな。
今はいい機会かもしれない。
「ふむ。なら、こういうのはどうだ? この中で”自分の土俵でなら誰にも負けない”と言える者はいるのか?」
この言葉により、周囲が大分委縮するのを感じる。
私はこういうのが得意だとはいえ、何度やってもこの雰囲気は慣れないな。
思わず駄洒落を言いたくなる。
「私と彼女なら出来るぞ。やあやあ我こそは、と言う者はいないのか? 彼女を正面から打ち負かして見せる、そう言える者はいないのか?」
私もバクシンオーもレジェンド中のレジェンドだ。
最強クラスのウマ娘が多いトレセン学園だとはいえ。
一番を絶対に譲らないが実践出来る者は大分限られるからな。
「私は、違うからな。アイツの土俵だろうが、絶対勝って見せる」
「あ、あの。わ、私は中山2500mでなら」
「アタシも混ぜろよ。ウマ王の座はまだ諦めた訳じゃないからなー。 何ならマックイーンの魂を賭けてもいいぜ」
ナリタブライアンがげんなりした表情でこちらを睨み。
ゼンノロブロイが自信なさげに手を上げ。
ゴールドシップは腕を頭の後ろに組んで挑発してくる。
ちなみにエアグルーヴは腕を組み、それもそうかと静かに目をつぶっている。
「うむ。まさに前途有望。我々は君等の挑戦を歓迎しよう」
まあ、こんなものか。
これならば私が居なくなっても大丈夫だろう。
私が就任する頃も反発があったのだ。
これくらいの反発があるのが健全と言える。
「しかし現状。集団の上に立つ者という意味で彼女以上の適任は居ないのも確か。彼女の愛嬌と傲慢さこそ、この学園に必要なのだ。私の座や、それ以上に挑戦したいというのであれば、その意味を考えておくといい」
私はそう締めくくって会議を終えるのだった。
当然ですけど、この時空のカイチョーは独自設定ですんで。
あんまり真に受けないでね。