とある転生者が夢を叶える物語   作:モッティ

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見辛いかなと思ったので三人称視点からアムール視点に変更しました。
それでも見辛かったらまた変えます。

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アムールの心情一部変更しました。


入学式と顔合わせ

「諸君、魔術師というものが剣士に見下されて、もう長い年月が経過する。

 なるほど、かの剣神らが作り上げた剣術は至高であろう! 

 だが、魔術もまた至高であるのだ──」

 

 

 やっぱ、どこの世界も校長の話は長いもんなのかもしれないな。

 

 俺が右を見ると、ルーデウスも同じ感想を持っているようだった。

 一つだけ違うのは、ルーデウスの目が校長の今にも飛びそうなカツラを追っていることだ。

 左を見れば、エリナリーゼが男を吟味している。

 

 

 入学試験の後、俺とルーデウスは特別生についての詳しい説明を受けた。

 基本的に学費は免除、場合によっては授業の免除もあり、月に一度のホームルームに出席すれば、校内で何をしても自由。

 ただし敷地外のトラブルについては事故責任。

 特別生の中でも、二人はかなり自由を認められていた。

 特に引っかかる部分もなかったので、俺たちはすぐに入学を決めた。

 

 

「──以上だ。諸君らに、魔導の道があらんことを!」

「ジ〇ダイみてぇなセリフだな」

 

 

 俺の言葉を聞いて、ルーデウスはにやりと笑った。

 

 

「続いて、生徒会長より新入生への言葉」

 

 

 校長と入れ替わるように壇上に上がってくる三人の少年少女。

 先頭に立つ金髪の少女、右後方に控える茶髪の少年は知らないが、最期の少年は、三人には見覚えがあった。

 ルーデウスが試験の時に打ち破った少年──フィッツだったからだ。

 

 

 三人が壇上に上がると、周囲の若い生徒が一斉に黄色い声を上げ始めた。

 聞き耳を立てると、金髪の少女がアリエル、茶髪の少年がルークというらしい。

 そのルークが騒めきに一喝したことで、歓声は一瞬で静まった。

 

 その後にアリエルが言ったことは、これぞ生徒会長、というべき秩序重視の発言で、俺の興味を失わせるには十分だった。

 ただでさえ校長の演説で重たくなった瞼をさらに下げにかかられると、もう抵抗するのも馬鹿らしくなる。

 

 ルーデウスが肘を当ててくるのを無視して、俺は立ったまま寝に入った。

 

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 

「お前な、ああいうところで寝たらダメだってわかるだろ?」

「しょうがねぇよ眠たいもんは眠たいんだから。

 だいたいな、あいつらがつまんねぇことばっか言いやがるから、興味が失せちまって眠たくなるんじゃねぇか。

 自業自得だぜ」

「はあ、よくあの中で寝られるよ全く。 

 周りの生徒みんな睨みつけてたんだぞ、俺とエリナリーゼさんまで針の筵だ」

「構いやしねぇだろ、どうせ束んなったって誰も俺たちにゃ勝てねぇんだから、堂々としてりゃいいんだよ」

「そういう問題じゃないって……これじゃ先が思いやられるな」

 

 

 入学式が終わった後、俺たちはエリナリーゼと別れて特別生の教室へと向かった。

 月に一度のホームルームなので、これには絶対に出席しなければならない。

 

 

「曲者揃いのクラス、か。

 面倒なことにならなきゃいいがな」

「六人とも問題児だからくれぐれも喧嘩するなってジーナスさんも言ってたからな? 

 マジで頼むぞ? 

 フリじゃないからな?」

「精々善処しますよ──お、ここだな」

 

 

 三つ並ぶ校舎の端、三階の一番奥にある教室。

 白線で『ここより先特別生の教室』と書かれているあたり、隔離されているようで本当にやばいのかもしれない。

 

 

「……失礼します」

「失礼」

 

 

 ルーデウスが静かに入った後ろで、俺は何も気にせずにずかずかと入っていく。

 

 

「……わりかし日本の教室っぽいんだな」

 

 

 俺は並べられた木製の机を撫でた。

 黒板、教卓、教壇……不思議と懐かしさを感じる作りに、一瞬気を取られた。

 

 

「し……師匠ォォォ!」

 

 

 故に、咄嗟の事態に対応が遅れた。

 ルーデウスめがけて机を吹っ飛ばしながら迫る男。

 二人の距離では今踏み込んでも遅い。

 

 奥の手を取り出そうとした俺は、そこではたと止まった。

 さっきこいつ、『師匠』って言わなかったか?

 

 

「岩砲弾!」

「師匠ォォォ!」

 

 

 ルーデウスの岩砲弾を食らってもびくともしない男は、そのままルーデウスの腰を捕まえて持ち上げた。

 

 

「師匠! 余のことをお忘れですか! 

 ザノバでございます!」

 

 

 どこのサ〇エさんだよ──そんなツッコミを抱きながら、俺はこの男、ザノバ・シーローンの話を聞き始めるのだった。

 

 

 

 シーローン王国第三王子、ザノバ・シーローン。

 彼はルーデウスとは旧知の仲らしい。

 今から三年前、転移事件で魔大陸から帰還の途上にあったルーデウスを、ザノバの弟パックスが監禁。

 ザノバはそれを助けたらしい。

 つまり彼はルーデウスの恩人ということになる。

 ではなぜルーデウスを師匠と呼ぶのかについては、彼の作る人形に心を奪われ、心酔したからだという。

 

 怪力の神子ということもあり、呪いや祝福についての研究のサンプルとして魔法大学に迎え入れられた。

 その代わりとして、授業を受ける権利を貰ったらしい。

 

 

 話を聞くに随分な人形愛だ。

 彼の話を聞くだけで、彼がいかに人形を愛しているかが良く伝わってくる。

 ルーデウスも、彼と話が合うのを見るに、恐らく前世でフィギュア愛好家だったのだろう。

 微笑ましく感じる一方、話についていけずに少し疎外感を感じた。

 

 それを感じ取ったのか、ザノバは俺に話しかけてきた。

 

 

「師匠、そろそろそちらの方を紹介して頂いても?」

「ああ、こいつは冒険者をやっていた時の知り合いでね、アムールって言います」

「──アムール?」

 

 

 後ろからの声に俺は振り返った。

 そこには机の最前列にいた少年が立っていた。

 

 

「アムール……どこかで聞いたことがある」

「あんたが冒険者なら知ってるだろうな」

「冒険者? ……あっ」

 

 

 少年はじりじりと後ずさった。

 

 

「せ、『穿孔』アムール……!」

「……ああ、あんた、ミリス人だろ?」

「な、何で分かる」

「ハッ、俺の二つ名を知ってて後ずさるなんざ、ミリスの連中以外に居ねぇだろうさ。普通の冒険者なら握手を求めてくるはずだからな。

 ……あんた、名前は?」

「ク、クリフ。クリフ・グリモル」

 

 

 俺は冷や汗をかいている彼が、心なしか震えているように見えた。

 いかんな、どうも怖がられているらしい。

 俺はハンドジェスチャーで手を下に振りながら言った。

 

 

「はは、リラックスリラックス。

 ご紹介にあずかりましたように、アムールっていいます。

 お見知りおきを、パイセンに、殿下。

 まあ、仲良くしましょうや」

 

 

 クリフ、次いでザノバを見ながらにやけた顔で言った。

 ま、これで多少は良い挨拶になったろう。

 こういうのは最初が肝心だ、一回舐められると後々面倒ごとになりかねないからな。

 

 そんな風に考えていた俺は、何かが叩きつけられた打撲音でにやけ面を真顔へと変えた。

 音の鳴った方へ向けば、獣族の少女が机に乗った足を片方だけ下ろしていた。

 

 

「ニャんだそのニヤケ面、気に食わないニャ」

 

 

 俺はゆっくりと彼女の目の前に歩いて行った。

 途中から早歩きになっていたと思う。

 俺は無言で少女の前に立った。

 

 

「………」

「あ? 言いたいことがあるニャら言ってみろや」

 

 

 ああ、そうか、舐めてんだな。

 俺を舐めてんだ。

 気に食わねぇな。

 

 気に食わないが、具体的に何をしようか決めかねる。 

 揉め事を起こさないっていうのは、ルーデウスと決めたことだからだ。

 さて、どうするか。

 そんなことを考え出したとき、ルーデウスが俺を押しのけるように割って出てきた。

 

 

「いやいやいやどうもはじめましてわたくしルーデウス・グレイラットと申しましてですねはいこちらにおりますのがアムールってこれがまたしがない冒険者風情な訳でございましてまあ色々とご迷惑かけることもございますでしょうが本日からどうぞよろしくお願いします!!」

「お、おう、素直な奴は嫌いじゃニャい。

 あちしはリニアーナ・デドルディア。五年生だニャ」

 

 

 そこからはルーデウスの独壇場だった。

 リニアが自分の知り合いの娘と知るや怒涛の勢いでドルディアと仲良しアピールをし、リニアに付け入る隙を与えない。

 

 つまらない流れから逃げようとすると、俺の首根っこを捕まえて強引に頭を下げさせた。

 俺の無言の抗議に、ルーデウスは完全無視を決め込んだ。

 

 

 その後はルーデウスが獣族の片割れのプルセナに発情の匂いを嗅がれてドン引きされたり、ルーデウスがクリフと喋った後に落ち込み、俺がクリフに無言の圧力をかけたところで教師が来て、ホームルームは二人の紹介と連絡だけで終わりとなった。

 

 

「なあ殿下、特別生はもう一人いるんだろ?」

「サイレント殿は月一のホームルームも免除されている」

「なんでだ?」

「余にはわかりかねるな」

 

 

 ザノバがいうところには、サイレント・セブンスターという人物はこの学校の様々なものに口を出しているらしかった。

 学食のメニューを増やし、魔道具を作り、制服までデザインした。

 七大列強の一人に推薦を受けて入学した、なんて噂話もあるとか。

 

 

 ……まあ、十中八九、あの人(・・・)だろう。

 半ば確信に近かった。

 これまでこの魔法大学に来るまでに食べた料理には、カリーであったりナナホシ焼であったり、どう考えても現代人が作り出したとしか思えない食事があった。

 

 そう、ナナホシ(・・・・)だ。

 恐らく、七の星だからセブンスターなのだろう。

 サイレントは、恐らく(しずか)だろうか。

 

 

「驚いたな、まさか殺さずに生かしておいたなんて」

「ん、どうした?」

「なんでもない」

 

 

 あんなことがあっても、彼は結局、助けずにはいられなかったのだろう。

 彼らしいのか、それとも、彼らしくないのか。

 俺に分かるのは、その問いは俺にはもう決してわかることは無い問いだということだけだった。

 

 

 なにはともあれ、俺たちは特別生の中に溶け込むことに成功した。

 

 

 

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