遊戯王世界に転生したら、ラスボス達に懐かれました   作:今こそ一つに

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お久しぶりです(約三ヶ月ぶり)。

この小説を投稿し始めてからどうやら一年経ったみたいなんですが、ようやく11話目という・・・・・・なんたるスローペース。

あ、今回もいつもの如くR15ですのでお気を付けください。


e・ラー! お前、(頭が)弱いだろ!

「はぁ・・・・・・」

 

 ボクは自室でベッドに腰掛け、大きく息を吐いた。そのまま両手で額にかかった前髪を掻き上げ、声と共に脱力する。そして重力に身を任せ、背中からベッドへと倒れ込んだ。

 レイと連絡先を交換した後、いつかの喫茶店でズァークのことについて質問攻めにされ、ついさっき帰ってきたのだ。ボクとしては最近のズァークの様子を訊きたかったのだけど、彼女の勢いに押されて幼少期のズァークとの思い出話をする羽目(はめ)になった。彼女のことが、もっと苦手になりそうだ。視界の端で嘔吐(えず)いていた絶望の幼神のことを気に留めないようにするのにも苦労した。

 

 そのe・ラーは、近くで何やら思案している様子だった。もしや、力が溜まったからどうやって世界を破壊するのか考えているのか、とボクの背中に緊張が走る中、e・ローリは小さな口を開いた。

 

幼い(この)姿で駄目となると・・・・・・やはり人形か? ふむ、試しにあの人形に魂を与えてみるか』

 

「お前なに考えてんの・・・・・・?」

 

 違った。もっとスケールの小さいことだった。そんなに絶望を過剰供給されるのが嫌なのだろうか。

 

『お前にはわからないかもしれないがな、キョウジ。我にもそれなりにプライドというものがあるのだ。

 何度も何度もお前の絶望を注ぎ込まれているというのに、その度に吐き出していては勿体ないだろう?』

 

ロリ(その)姿で居ることでプライドは傷付かないのか・・・・・・?」

 

『・・・・・・それもそうだな』

 

 ボクの言葉に納得の姿勢を見せたe・ラーは指を一つ鳴らすと、見慣れてしまった大人へと変化する。なんだか久しぶりだ。

 

『ふう、やはりこの姿の方が我の威厳がよくわかるであろう。

 ・・・・・・って、折角溜めた絶望(ちから)かなり使ってるではないか(ワレ)ェ!?』

 

 バッカじゃねぇの、という言葉はなんとか飲み込んだ。一人で何やってるんだろうこの絶望神。こんなのに人生を狂わされた八雲興司や漫画版ハルトのことを思うと涙が出そうだ。

 溜めていた絶望を消費してしまったのがよほど悔しいのか悲しいのか、e・ラーは両腕で己の身体を抱き、目に涙を浮かべながらこちらを睨んでくる。

 

『おのれ・・・・・・よくも我を(もてあそ)んでくれたな!?』

 

「いや、お前が勝手にあの姿で居たんだろ」

 

 まるでボクが幼い姿を強要したかのような言動だ。ボクは別にロリコンじゃないと伝えたし、それを聞かなかったのはe・ラーだ。いや、ボクも力が削がれるならと敢えて指摘しなかったけれども。

 というか、その言い方は語弊がある。今更だけど。

 

『くっ、こんなハズでは・・・・・・!

 キョウジ! もっと絶望するのだ! さぁ!』

 

 涙目のままe・ラーがボクの肩を掴んで揺らそうとするが、その手は(くう)を切り、ボクの身体を通り抜ける。まだ実体化できるような力は無い様子だ。目の毒な二つの球体は大いに揺れているが。

 そのことに少し安堵しながらも、時間の問題なのだろうと思ってしまう。e・ラーが力を取り戻さないように時間を稼いでも、ズァークをどうにもできなければ、結局この世界は──

 

『む。なんだ、この気配は』

 

 ふと、e・ラーが何かに気づいたように動きを止める。いつもとは違う様子に、ボクは眉を顰めた。

 

「どうしたんだ、e・ラー」

 

『さっきまでは気づけなかったが、何かの鼓動を感じる。この感覚は・・・・・・我に近しい?』

 

「ッ!?」

 

 e・ラーに近しい気配、ということは、十中八九『遊戯王シリーズ』のどれかに登場するラスボスだ。やっぱり、e・ラー以外にも居たのか。

 ボクは思わず身体を強張らせた。背中に、今までに無いくらい冷や汗が流れているのがわかる。

 

『ふむ、そう遠くない内に動きそうだ。面倒だな』

 

「!? なんでもっと早く気づけなかったんだ!」

 

幼い(あの)姿を保つのに集中していたのでな。思ったより大変だった』

 

 コイツ本当に巫山戯るなよマジで・・・・・・!

 ボクはなんとかe・ラーへの罵倒を飲み下し、代わりにギリリと歯噛みする。e・ラーに怒りをぶつけたところでどうにもならない。遊戯王世界のラスボスは、基本的に主人公以外には倒せない。ボク程度が何をしたって、どうにもならないだろう。

 

「──思ったよりも早かったな、世界の滅亡・・・・・・」

 

 ズァークが悪魔に成り果てるか、e・ラーが力と知性を取り戻すか。そのどちらかが起きない限りは、安泰だと勘違いしていた。ボクは舐めきっていたのだ、この世界を。

 

『何を絶望している? いや、絶望するのは構わんが、なぜ諦めている?』

 

 e・ラーが、横になったボクと目を合わせるように覗き込んでくる。濡れたような、美しい瞳が視界を占める。日が沈んで暗くなった部屋の中で、それは一際、闇黒(あんこく)を孕んでいた。ボクは目を逸らすように天井を見る。

 

「e・ラーと同じような存在ってことは、止めようが無いだろ。諦める以外に、どうしろって言うんだ」

 

 デュエルを怖がっているようなボクに、止められる筈も無い。ズァークには避けられている。他に強いデュエリストなんて知らないし、第一ヤバい存在が目覚めそうです、なんて言って信じてもらえる訳がない。

 ボクの言葉に、e・ラーは何か言おうとして、直後に口元を押さえた。

 

『ぅぷ、待て、絶望が早い・・・・・・』

 

 ・・・・・・・・・・・・コイツ本当に巫山戯るなよマジで・・・・・・。

 

『んふ、このままだと、我も巻き込まれて消える可能性が高いのでな。我としてもそれは避けたい』

 

 ボクの呆れが絶望よりも(まさ)ったためか、何事も無かったかのように仕切り直す絶望の神。やはり威厳もクソも無い。

 極力(きょくりょく)天井を眺めながら話を聞くボクから逃げ場を奪うように、e・ラーが体を浮遊させてベッドの上に移動し、寝転がるボクと向き合うような形になる。

 ボクが再び視線を逸らすと、『フフフ』と絶望の神は笑った。

 

『良いのか? お前が諦めれば、お前も、お前が大切に思っている存在も、確実に助からないのだぞ?』

 

「ボクが足掻こうが諦めようが、変わらないだろ」

 

 ボクは、『遊戯王』の主人公じゃないんだ。彼らのように、誰かのために戦って、誰かを守るなんてこと、出来やしない。それが出来るなら、ボクはとっくにズァークを止めているだろう。真正面からぶつかる勇気も、その上で勝てる実力も、ボクには無い。

 

『そうとは限らぬぞ? 何せ、この我が付いているからな』

 

 口の端を釣り上げ、己の胸元に手を当てるe・ラー。何故か得意げにしているが、正直コイツの有無で何か変わるとも思えない。いや、目の前の存在は腐ってもラスボス、変わりはするのだろう。けれど、それで他のラスボスに勝てると思えるほど、ボクは自惚れていない。自惚れられない。

 

『我もまだ完全には力を取り戻してはいないが・・・・・・それは相手も同じ事。不完全な状態で勝負に持ち込めば、勝率は五分といったところだろう』

 

 だから我も感知できていなかったのだ、と付け足す絶望神。勝率が五分、つまり、ボクは半分の確率で負けて死ぬということ。

 途端に、腹の底から暗い感情が湧き出してくる。だがそれをどうにか堪えつつ、目の前の存在に問いかける。

 

「ちなみに、その勝負っていうのは・・・・・・」

 

『デュエル以外に無いだろう』

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

『ぉぶ、む、無言で絶望を深めるな!?』

 

 口元を抑えて視界から外れるe・ラー。やっぱり頼りにならないな、と思いつつ、ボクはテーブルに置いたデッキへと目を向ける。

 

 デュエル。前世においてはただの娯楽で、この世界においては全てに通じる絶対のモノ。価値観が違いすぎる。娯楽に命をかけて、ただのゲームに世界の命運を委ねるなんて、意味がわからない。心の底から。

 だから、プロとして戦うズァークにも、ボクは応援こそすれど本心からは共感できないのだ。娯楽を仕事としてお金を稼ぎ、その頂点を目指そうとする心が。

 記憶を取り戻す前は、同じ情景を見ていたはずなのに。ボクはもう、彼の理解者であることが、出来ない。

 

『はぁ、キョウジ、いったん止ま、ぁえ、』

 

 なら、どうするか。・・・・・・決まっている。ボクが取るべき選択肢は、最初から決まっていた。決まっていなかったのは、ボクの決意だけだ。ただボクが、臆病()()()だけ。

 

『待っ、もぅ、やめ・・・・・・』

 

「決めたよ、e・ラー。どこの誰かは知らないけど、戦ってやるよ」

 

 どうせこの破壊神が消えるなんて話、ウソだろうし。このまま養分になるくらいなら、みっともなく足掻いてやる。

 そう決意してe・ラーへと向き直ると、件の絶望神は、真っ黒で粘着質な液体(絶望)を吐いて、自らの艶姿を汚しまくっていた。

 

「・・・・・・うわぁ」

 

『ぇほ、はぁ、はぁ・・・・・・

 か、覚悟は決まったようだな、キョウジ』

 

「お前の姿は決まってないぞge・ロー」

 

 唇やら胸元やら腹部やら、何故か髪の毛にまで黒く濁った液体に(まみ)れた状態では、何を言われても頭に入ってこない。

 

『な、誰がge・ローか!? 我は世界の破壊者にして絶望の神、e・ラーであるぞ!』

 

「ゲロ吐いたりロリになったりしてる奴に威厳があると思うな!?」

 

『何故そんなこと言うのだ! 泣くぞ!? 我、泣くぞ!?』

 

 前から思ってたけど、面倒くさいなこの神様!

 

 

 同時刻。ズァークは、普段から使っているサーキット場で、D‐ホイールを走らせていた。午前中に他のプロデュエリストと模擬戦を行い体力が減っているにも関わらず、彼は自分自身を追い込むようにコースを駆ける。

 

 速く、もっと速く。いま彼の頭の中にあるのは、誰よりも強くなることだけだった。

 

 あの日。死んだように眠っているキョウジの部屋へ行った、あの日。床に落ちているカードから流れ込んできたのは、キョウジの抱く、底抜けに深い絶望だった。

 どうしてそんなに絶望しているのかわからない。だが、何に絶望しているのかは痛いほど伝わってきた。

 

 世界だ。この世界そのものに、キョウジは絶望している。それを変えられない自分自身にも、そして、それに気付いてやれなかった己にも、絶望している。

 

 実際はズァークがラスボスであるが故に彼に絶望しているのだが──そんなことを知らない彼は、己への絶望が自分の不甲斐なさのせいだと、本気で思っている。

 

 故に、彼は疾走(はし)る。更なる強さを求めて。次のライディングデュエルの大会で優勝し、自身に呼びかけてくる白龍を手に入れる。そしていずれは、紫の龍も。

 

 そしてオレは最強となり、世界を変えるのだ。彼の絶望を拭い取るために。彼が絶望しない世界を作るために。

 それが出来なければ、壊そう。この世界を。彼に絶望を与え続ける世界を。

 

 孤児院の皆や、レイには申し訳なく思うが・・・・・・きっとわかってくれる。だって、オレは今までお前達の期待に応え続けたのだ。少しくらい、期待されていること以外をしても良いだろう?

 

 キョウジの抱く絶望()()を感じ取り、精神の歪んだ彼は、知らず知らずにキョウジが一番望んでいない道を最短で突き進む。それこそが、親友のためであると、己の贖罪であると疑いもせず。

 

 尚、キョウジどころかe・ラーすらズァークが覇王への道(ラスボス街道)を突き進んでいることを知らない。新たなラスボスより真っ先にこちらをどうにかするべきだが、知能指数が絶望的なまでに下がったe・ラーは、彼の異変に気付けないでいた──




そろそろキャラ崩壊タグを付けるべきですかね。主にポンコツゲロインになったe・ラーと、ヤンデレヒロインっぽくなっちゃったズァーク用に。

色んなキャラクターのテーマがOCG化したり強化されていますが、八雲興司はいつ出るんでしょうか。無理に【スパイダー】じゃなくても【冥界】強化とかでも嬉しいんですがどうでしょうかKONAMIサン。

髙橋和希先生、ご冥福をお祈り申し上げます。
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