遊戯王世界に転生したら、ラスボス達に懐かれました 作:今こそ一つに
基本頭空っぽにして書いているので、細かい矛盾は気にしないでいただけると幸いです。
ズァークとは、遊戯王ARC‐Ⅴのラスボスである。主人公、榊遊矢を始めとした遊矢シリーズと呼ばれる四人が合体した姿であり、作中でかつて存在したという『一つの世界』で最強のデュエリストである。
その割にはデュエルで世界を滅ぼすでも征服するでもなく、ただデュエル相手を求めるだけだったり、《覇王龍ズァーク》のペンデュラムスケールが1だったため、「ラスボスにしてはやることのスケールが小さい」だとか言われていた。
しかし、ボクの横たわるベッドの近くでうんうん唸りながら自分のデッキを調整している姿を見ると、それも納得である。「カードの声が聞こえる」という特殊な能力があるとは言え、彼はただの一般人だ。他の作品のラスボスのように、特殊な生まれでも無ければ、確固たる信念を持っている訳でもない。
先日、プロデュエリストの試験を受けたのだって、自分の夢を叶えるためでもあるが、一番はプロとして活動することで収入を得て、この孤児院の経営費に当てるためだ。そんな彼の心意気に孤児院の大人達や、記憶が戻る前のボクも多大な期待を寄せていた。その『期待』の所為で、彼は悪魔になったのだが。
「うーん、このカードは重いか? でも出せれば強いしな・・・・・・種族も噛み合うし、やっぱ入れたままにするか」
ズァークが手にしているカード達は、どれもOCGでは環境デッキには入らないようなカードだ。
やはりというか何というか、この世界のデュエリストのレベルはかなり低いらしい。今世の記憶を鑑みるに、手札誘発も無ければ《神の》シリーズを始めとしたカウンター罠もあまり使われていない。まぁ、ライフポイント4000スタートだし、ライフコスト支払うのを躊躇する気持ちはわかる。
「なぁズァーク。心配してくれるのは嬉しいけど、君のデッキ構築にボクは大した助言も出来ないし、一人でやった方が集中できないか?」
ボクが怪我をしてから、ズァークはこうして四六時中ベッドの近くに居る。別に介護が必要なほどの大怪我でもないし、私生活を送るのに支障はないのだが、心配性なズァークや孤児院の大人達に安静にするよう言われているのだ。以前はなんとも思っていなかったが、過保護が過ぎると思う。
「別に、心配だから側に居るだけじゃない。オレ、お前の近くに居る方が集中できるんだよ。昔っからずっと一緒に居たからかな?」
「・・・・・・そうか。なら好きにしなよ」
そして、この距離感である。爽やかな笑みを向けてくるズァークだが、ボクからすれば距離感が近すぎて怖い。その懐き具合たるや、もはやBL同人誌レベルである。読んだことないけど。
それに、こんな彼もいずれは覇王龍になってしまうと考えると、正直距離を取っておきたい気持ちはある。いや、彼が覇王になったら世界滅びて四つに分裂するから、ボクに助かる道とか無いんだけど。
彼の親友として仲良くしていきたい気持ちと、この後起きることを知っている故に離れたい気持ち・・・・・・正に
どうにか頑張って彼が覇王龍にならないように奮闘しようにも、彼はもうプロデュエリストとしての道を歩き始めてる。それを止める方法なんて思いつかないし、そもそもデュエルでは彼に勝てない。前世の知識を使って強いデッキを組もうと思ったら、カードが全然足りなかったのだ。
アニメを参考にしようにも、『一つの世界』の描写が少なすぎて手がかりすらない。いや、思い出せていないだけかもしれないけども。
「どないせーっちゅーねん」
「? どうかしたのか、キョウジ」
「あ、いや。何でも無いよ」
思わず口に出てしまったらしい。不思議そうな顔をするズァークに曖昧な誤魔化しをしておく。今のは『キョウジ』の発言じゃなかったな。
今世でのボク──キョウジという名前とこの姿だが、どっからどう見ても『
正直、メッチャ焦った。焦りに焦った結果、孤児院内に
「そう言えば、この前のプロ試験の結果って、いつ届くんだ? もう一週間経つけど」
「そろそろ来てもおかしくないんだけどな・・・・・・」
願わくば、その結果が合格であることを祈る。一人の友人として。でも不合格だった場合、そこで「別の道を探そう」と誘導してプロデュエリストの道から引き剥がすことも出来るのでは──という思考を巡らせて、そんな自分に嫌気が差した。なんでボクは親友の不幸を願わなくてなならないのか。やっぱり、前世の記憶なんて思い出したくなかった。
「キョウジ、どうかしたのか? 落ち込んでいるように見えたけど」
「いや、気にしないでくれ。少し自己嫌悪していただけだから」
ボクの異変を察して、心配してくれるズァーク。彼は本当にイイヤツである。けど世界滅ぼすんだよなぁ・・・・・・どうすれば良いんだろう。
その日の晩、ボクはベッドを抜け出して、孤児院の中庭に出ていた。どうにも寝付けなかったのだ。静かに横になっていると、ズァークや自分の未来のことを考えてしまって、寝ようにも眠れなかった。
こうして出歩いていることがバレたらお説教だろうが、別にもう痛みはないのだ。自分の身体のことは、自分がよくわかっている。
「完全復活、パーフェクト八雲様だぜ! とかやれば良いのか? はぁ・・・・・・」
気を紛らわせようと
こんな時、この世界の住人ならばデュエルでもすれば気分も晴れるんだろうが、前世の記憶が邪魔でそんな気分にもなれない。それに、ここでのデュエルはリアルソリッドビジョンを用いた、本当に怪我をしかねない代物になっている。正直、怖い。
そう、怖いのだ。夜という時間は、恐怖を加速させる。宵闇に照らされたボクの中で、どんどん恐怖心が剥き出しになっていった。
死ぬのが怖い。二度も死んでしまうのが怖い。死ぬ瞬間の、絶対に目が覚めないと自覚した上で意識が失われていく感覚が怖い。折角こうして転生したと言うのに、再びこの命を失うことが、どうしようもなく怖い。
デュエルが怖い。モンスターが実体化して、実際に攻撃してくるのが怖い。怪我で済めばマシだが、ここは遊戯王の世界だ。死因がデュエルなんてザラにある。前世のデュエルを知ってしまった以上、この世界でのデュエルは、全て恐怖の対象だ。
ズァークが怖い。いずれ世界を滅ぼすこともそうだが、何より、ボクが今まで一緒に過ごしてきたズァークが失われて、覇王に成り果ててしまうのが怖い。無二の親友が、怒りのままに世界を破壊する悪魔になってしまうなんて、耐えられない。
「どうしろって言うんだ・・・・・・ボクに、何が出来るっていうんだ!」
前世の知識を活かそうにも、それは虫食いだらけで。家族同然の友人は、世界を滅ぼすかもしれなくて。それを止めるには、ボクは余りにも無力で。でも、生への執着だけはあって。
こんなことなら、前世の記憶なんていらなかった。このまま世界が滅びるとしても、せめてもっと楽しみたかった。友人の不幸を願うようなことなんて、したくなかった。
絶望に打ちひしがられていると、ふと視界の隅に一枚のカードが映った。誰かの落とし物だろうか。そんな思考が
『・・・・・・そうだ。我が力を手にしろ。そして、世界を滅ぼすのだ』
妖艶で蠱惑的な女性の囁きが聞こえる。それに抗うことはできず、ボクは一枚のカードを手に取った。それと同時に、ボクの周囲に黒い瘴気のようなものが溢れ出す。
『ククク、アハハハッ! やはり八雲興司は
瘴気と共に現れたのは、黒と金の長髪を持ち、闇を具現化したような漆黒を基調とした神々しさと禍々しさの合わさった衣装を身につけた、美しい女性──
「絶望の神、
『誰がe・ローか!? 我が名は
・・・・・・ん? お前、何故まだ意識が残っている!?』
ボクと絶望の神の邂逅は、なんとも気の抜けた物となった。
キョウジ
今世と前世で板挟みになってしまった転生者。遊戯王ネタに走っているのは、現実逃避もあったりする。
絶望の中でも煩悩は残っていた。
e・ラー
漫画版ZEXALのラスボス。漫画版における全ての元凶。あとキャラデザがエロい。
主人公の絶望を感知して彼を取り込もうとしたが、まだ本調子じゃなかったらしく、意識までは乗っ取れなかった模様。詳しくは次回(いつになるかわからない)。あと格好がエロい。
因みに、漫画版ZEXALの作者が八雲を描くのに飽きたため生み出された、おっぱいの大きいキャラ。つまりエロい。