遊戯王世界に転生したら、ラスボス達に懐かれました   作:今こそ一つに

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お久しぶりです。デュエル構成練ってたら遅くなりました。決してマスターやトレーナーやドクターをやっていた訳ではありません。後半は嘘です。

投稿していない間にもお気に入り登録者増えてびっくりです、ありがとうございます。なんなら評価もしてくれていいのよ? 0評価二つも付いてると正直やる気出ないので。


これでどうやって戦えばいいんだ。しかもラスボス相手に。

「やった! やったぞキョウジ!」

 

「あ、あぁ。おめでとうズァーク」

 

 目の前で灰髪の青年に抱きつかれている宿主(キョウジ)を横目に、e・ラーはフッと微笑んだ。また絶望が濃くなった、と。

 

 希望の影に生まれる存在、絶望の神であり、世界の破壊者たる彼女にとって、他者の絶望とは己の養分であり、力の大部分を失った今のe・ラーにとっては必要不可欠なものだ。切り札たる《絶望神アンチホープ》もその影響を受け弱体化してしまっている上、彼女自身のデッキも失われてしまっている。

 そのため、再び作る必要がある。幸い、現在の宿主であるキョウジは常に絶望を抱いており、ズァークという青年と関わることでその絶望を色濃くしている。何故そうなっているのかは不明だが、e・ラーにとってはその程度は些事だ。今はその絶望を利用して力を取り戻し、自らに敗北を与えた九十九遊馬の居た世界とアストラル世界へ再び攻撃を仕掛け、破壊することが最優先。キョウジがあちらの世界での出来事を知っている理由も、力を取り戻した後で記憶を読めばわかることだ。

 

 今はまだ宿主以外にも姿を見せられるほどの力も無いが、何ら問題は無いだろう。アストラルのような存在がいないこの世界ならば、自身を倒せるような存在もそう多くないはずだ。今は力を貯める時だと、e・ラーはほくそ笑んだ。

 

 《SNo.0ホープ・ゼアル》の攻撃で受けたダメージが大きすぎて、今は背後霊として話しかけるくらいしか出来ないし、ズァークが覇王龍になるまでに次元を跳躍できるほどのエネルギーを取り戻さないと彼女もこの世界と一緒に四分割される可能性が高いのだが・・・・・・ややポンコツ気味になってしまった彼女は、まだそれに気づかないでいる。

 

 

 ズァークがプロ試験を合格してから、数日が過ぎた。ボクもベッドの上生活から解放され、自由に出歩いて良いことになった。もうとっくに完治していたんだけども。まぁ、ボクは昔から身体が弱かったし周りが過保護なのは仕方ないのかもしれない。

 

「・・・・・・憂鬱だ」

 

 目が覚めて、ぼんやりと呟く。今日はズァークとデュエルする約束なのだ。なんでも、明日プロとしての初めての試合があるらしく、その前にボクと戦っておきたいらしい。病み上がりということで普通のソリッドビジョンでの対戦にしてもらったが・・・・・・正直、まだ恐怖が拭えない。闇のゲームなどではないと頭ではわかっていても、あのズァークとデュエルする、というだけで、気が滅入る。

 

『フフッ、起き抜けに絶望するとは器用な奴よの。ようやく我の器としての自覚が出てきたか』

 

「寝言は寝て言ってくれe・ラー」

 

 ふよふよと浮かびながらこちらの顔を覗き込んでくるe・ラー。少しテンションが下がっただけで直ぐにコレである。今はまだ力が弱いらしくこうして話しかけてくることしかしないが、将来的にボクの意識も乗っ取られるのかと思うと嫌になる。

 カードを拾った時に出現したあの黒い瘴気も今は目くらまし(対ボク専用)状態だが、アレって人を突き落としたりできるような威力出るんだよな・・・・・・

 

 現実逃避気味に目を閉じて二度寝しようとすると──

 

「あー! まだ寝てるー!」

 

「ぐふっ!?」

 

 ボスン、とボクの腹の上に何かが飛び乗った。

 

「もう、早く起きてよキョウジお兄ちゃん! 今日はズァークお兄ちゃんとのデュエルなんでしょ!」

 

「わかった、起きる、起きるからお腹から降りてくれ・・・・・・」

 

 腹部の衝撃に軽く呻きながらそう告げると、「はーい」という返事と共に赤い髪をツインテールに結んだ褐色肌の少女が、ベッドから飛び降りる。

 

「起きた? きゃは☆」

 

 ボクは上半身を起こして、満足そうに笑っている彼女へと苦笑混じりの笑みを向ける。

 

「ああ。おはよう宇里亜(うりあ)

 

「おはよー、キョウジお兄ちゃん! 今日のデュエル、楽しみにしてるねー!」

 

 彼女──遊戯王TF(タッグフォース)に登場する、《神炎皇ウリア》を使う少女とうり二つな彼女は、そう言って部屋から出て行った。

 

「・・・・・・なぁにこれぇ」

 

 その後ろ姿を見送ったボクの口から出てきたのは、なんとも気の抜けたセリフだった。

 

 

 《神炎皇ウリア》。遊戯王GXに登場するラスボス『三幻魔』の内の一体であり、《オシリスの天空竜》をデザインベースに作り出され、アカデミアの影丸理事長によって復活させられた存在だ。他の精霊を吸収して影丸理事長を若返らせたり、《ユベル》の操るモンスターとして戦ったりと、世界を滅ぼすレベルのことはしていなかった、はず・・・・・・記憶が薄れているので、正確には思い出せない。

 そんな《神炎皇ウリア》を使う少女が、ゲーム『遊戯王TF』シリーズに登場する安田宇里亜──TF6では小野宇里亜──だ。何でこのカードを持っているのかは一切わからない上、なにやら家庭環境が複雑らしいことは描かれていた。

 

 何故かこの世界にも存在していて、そしてこの孤児院に住む孤児の一人でもある。名字が無い辺り、こっちでも家庭で何かあったのだろうか。ちなみに《神炎皇ウリア》は持っていないらしく、(トラップ)モンスター軸のデッキを使っている。

 

 この孤児院だとボクやズァークは比較的年長者なので、彼女には結構懐かれている。少し前はボクが怪我をしていたため先程のように起こしに来ることはなかったのだが、回復してからはああしてベッドの上に飛び乗ってきたりするようになった。二次元キャラかよ・・・・・・と思ったけど、そういえば二次元キャラだった。

 

「どうした、キョウジ? 気が乗らないなら止めておくか?」

 

 宇里亜の存在に頭を痛めていると、五メートルほど離れた場所からズァークが心配してくる。デュエルディスクを展開し、デッキもセットされ、準備万端な状態だ。

 中庭には孤児院の子供達も少し離れた場所に居て、わくわくした瞳でこちらを見ている。こんな状態でやっぱり止めますなんて言えるほど、ボクは図太くない。

 それに、親友の頼みでもある。ずっと心配させてしまっているし、断りたくはなかった。

 

「大丈夫だよ。始めよう」

 

 左腕を構えて、デッキからカードを五枚引き抜く。先攻後攻はシステムが決めるため、手札を見ても問題はない。

 

「なら行くぞ!」

 

「「デュエル!」」

 

 

ズァーク LP4000

 

キョウジ LP4000

 

 

 先攻はズァークだ。

 この世界のデュエルはマスタールール3で行われる。ペンデュラムモンスター、リンクモンスターは存在していない。というか、この段階でズァークがペンデュラムを生み出したら覇王街道まっしぐらだ、冗談じゃない。

 

「行くぜ、オレのターン!

 まずはお前だ、《サファイアドラゴン》を召喚!」

 

 ズァークのフィールドに現れたのは、全身が宝石に覆われた、美しいドラゴン。そのまま宝石竜がズァークに擦り寄り、彼もまたサファイアドラゴンの頭を撫でようとするが、その身体は触れ合わずに通過した。

 

「あっ、今はリアルソリッドビジョンじゃないんだったな。忘れてた」

 

 残念そうにするズァークと宝石竜。少し申し訳ない気持ちになるが、実体化したモンスターの攻撃を受けるのは怖いので勘弁して欲しい。

 

「カードを一枚伏せて、オレはターンエンドだ」

 

 裏側のカードが投影されて、ズァークがターンを終える。

 

 普段だったらズァークは召喚したドラゴンの背中に乗って走り出すのだが、今回はそれも無しだ。この世界にまだアクションデュエルは無いが、そんなことお構いなしにズァークはモンスターと共に宙を舞い、フィールドを駆け回る。その、全身でデュエルを楽しむ姿は見ていて気持ちのいいものだ。実際に対面したくは無いけど。

 

「ボクのターンだ、ドロー」

 

 カードを引き、手札を確認。案の定、微妙だ。

 

『フン。あんなモンスター、我のアンチホープの足下にも及ばぬ。さっさと蹴散らしてやれ』

 

 ボクの背後で何故かe・ラーがふんぞり返っている。何様のつもりなんだろうか。いや、神様だったか。

 しかし、何でボクがアンチホープをデッキに入れてると思っているのだろうか。

 

「このデッキにアンチホープは入っていないよ?」

 

 レベル1モンスターを四体並べるだけでも苦労するのに、更にアンチホープ以外で攻撃できないだなんてデメリットを背負うとか、普通にキツ過ぎる。それに、あんなカード使ってe・ラーに意識を乗っ取られたりしたら最悪だし。

 

『なん・・・・・・だと・・・・・・!?』

 

 衝撃を受けて目を見開いている絶望の神様は、もう放っておこう。

 しかし、手札が悲惨だ。元々持っているカードの偏りがすさまじかったせいでロクなデッキも組めなかったのもあるが、それにしたって酷い。これでどうやって戦えばいいんだ。

 

「・・・・・・モンスターをセット。そしてフィールド魔法、《スパイダー・ウェブ》を発動」

 

 ソリッドビジョンによって、中庭が岩肌に書き換えられ、そこには巨大な蜘蛛の巣があった。

 

「来たな、キョウジお得意のフィールド!」

 

 お得意、というか、ボクの持ってるカード、『蜘蛛』『スパイダー』って名前カードばっかりだから、それでデッキを組むしかなかったのだ。どうなってるんだこの世界のカードの流通。せめてもっと汎用カードが欲しい。

 

 この不気味なフィールドに子供達は怯えていないかな、と視線を向けてみるが、全員デュエルを楽しんでいる様子だ。精神強いな、皆・・・・・・。

 

『ほう。八雲は《ランクアップ・スパイダーウェブ》を使っておったが、似たような効果か? ククク、面白い』

 

「いや、全然違うから。あとボク、エクストラデッキのカード一枚も持ってないし」

 

 e・ラーが興味深そうに顎に手を当てるが、全く違う効果だ。しかもそのカードOCG化してないし。

 ボクの否定に絶望の神様はかなり驚いたようで、一瞬動きを止めた後こちらへと振り向いた。

 

『!? え、デッドリー・シンは!? 強欲のサラメーヤや氷結のレディ・ジャスティスはどうしたのだ!?』

 

「全部貴方が渡したナンバースのカードなんですけど」

 

 何で持ってると思ってたんだ。この世界にアストラルは来ていないから、当然ナンバースも存在しない。それに、エクストラデッキのカードは軒並みレアカードなのだ。ズァークもまだ持っていないくらいだ。

 

『そうか・・・・・・そう言えばそうだったな・・・・・・』

 

 思い出したように納得するe・ラー。前から思っていたが、力と一緒に知能も失ったんじゃないだろうか。

 

「カードを一枚伏せて、ターンエンドだ」

 

 いつまでも小声で話してる訳にもいかないので、さっさとターンを進める。伏せたカードは現状だと発動すら出来ないブラフなので、次のズァークのターンを凌ぐ(すべ)はない。《スパイダー・ウェブ》が牽制になってくれると良いんだけど。

 

「オレのターン!」

 

 こちらの思惑なんて知らないズァークは、デュエルが楽しくて仕方が無いとでも言うかのような笑顔でカードを引く。指フェチを製造しそうなくらい綺麗なドローだ。

 

「伏せカードに裏側のモンスターか・・・・・・けど、臆さずに行くぜ!

 魔法カード、《(いにしえ)のルール》を発動! 効果で手札から《エレキテルドラゴン》を特殊召喚する! 更に《ハウンド・ドラゴン》を召喚!」

 

 ズァークのフィールドに古びた羊皮紙が現れると、そこに描かれていた青い細身の竜が飛び出し、その横に鋭い牙を持つ黒竜が並ぶ。

 これでズァークのフィールドにはドラゴンが三体。来るぞ遊馬! とでも言うべきだろうか。レベルが合っていないし、ここから出てくるとすれば《氷獄龍トリシューラ》くらいだろうか。ズァークもエクストラデッキに入るようなカードは持っていない筈・・・・・・だけど、ここは遊戯王の世界だ。知らない間に増えているかもしれないし、カード創造とかもするかもしれない。

 

 そうか、もし僕がズァークを止めるためにデュエルを挑んだりして万が一勝てそうだったとしても、引きたいカードを引かれたり(デステニードロー)カードを造られたり(シャイニングドロー)する可能性が高いのか。・・・・・・どうやって勝つんだ? そんな相手。

 

『む、早くもデュエルに絶望したのか? 我の加護で次のドローをアンチホープに固定してやろうか?』

 

「止めてください」

 

 なんで文字通りクソカードを引かせようとするんだ神様。仮に引いてもこのデッキにレベル1モンスターなんて一枚もないから完全に腐るだけだ。

 

 こちらが小声で会話していると、ズァークが楽しそうに笑いながらフェイズ移行を宣言した。

 

「行くぜ、バトルだ! まずは《エレキテルドラゴン》でセットモンスターを攻撃!」

 

 青い身体のドラゴンが身体から(いかずち)を迸らせ、こちらの裏側のカードを焼き焦がす。

 

「・・・・・・伏せモンスターは《蜘蛛男》、破壊される」

 

 伏せられていたカードが裏返り、六つの蜘蛛の足と二つのやや人間的な骨格の足を持った、あまり好ましくない見た目のモンスターが黒焦げになった状態で現れる。もし自分がそれを受けたらと思うと、ゾッとした。

 

「・・・・・・《スパイダー・ウェブ》の効果で、攻撃したモンスターはダメージステップの後守備表示になり、次の君のターンのエンドフェイズまで、表示形式を変更できないよ」

 

 散り際に《蜘蛛男》の腹から飛び出した蜘蛛糸がエレキテルドラゴンに絡みつく。《スパイダー・ウェブ》の効果を映像化したんだろうけど、ネバネバした糸を嫌そうに引き剥がそうとする姿には申し訳なさを感じる。

 

「それは勿論、承知の上だぜ!

 次は《ハウンドドラゴン》、ダイレクトアタックだ!」

 

 ルル、と喉を鳴らして頷いた黒竜は、その小さな翼を羽ばたかせ、その鋭い牙で地面を削りながらボクに向かって突撃して──って、反逆のライトニング・ディスオベイ!?

 

「ッ!?」

 

キョウジ LP4000→2300

 

 咄嗟に腕を交差させて構えたが、衝撃がやってくることはなかった。普通のソリッドビジョンにしてもらって良かった、アレを受けて生きていられる自信がない。

 しかし、今の攻撃方法には驚いた。確かに特徴は似ているけど、まさかそんな攻撃をしてくるとは・・・・・・もしかして、あのカードが《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》に書き換わったりするんだろうか。いや、流石に無いか。

 

「《サファイアドラゴン》、お前も頼む!」

 

 ギャオ、と鳴いた蒼石の竜が、身体を回転させながら尻尾で地面を叩き、砕けた石片がボクに飛来する。再び腕をクロスさせて顔を庇うが、痛みはない。当然だ、ただの映像なのだから。

 ただ、現実と区別がつかないくらいに精巧で、ボクの恐怖心を煽ってくるだけだ。

 

キョウジ LP2300→400

 

 攻撃を終えた二体のドラゴンは、どこからか飛んできた蜘蛛の糸によって動きを制限された。これで蜘蛛糸まみれのドラゴンが三体、ミザエルなら「んほぉこれが」とでも言うんだろうか。ボクは、不自由そうにしているドラゴン達に少しホッとしていた。もしダイレクトアタックしたのが《エレキテルドラゴン》だったなら、ボクはとっくに負けている。

 

「暫くデュエルしてなかったからって、腕が鈍ったんじゃないか、キョウジ? オレはこれでターンエンドだ」

 

「いいぞー、ズァーク兄ちゃん!」

 

「負けないでー、キョウジお兄ちゃん!」

 

「どっちも頑張ってくださーい!」

 

 観戦している子供達の声援は、偏ることなくボクらの名前を呼んでくれている。優しい子達だ。宇里亜がボクを応援してくれたのは、多分朝のやり取りがあったからかな、と意図的に思考を逸らして、手の震えを誤魔化す。

 

「・・・・・・ボクのターン、ドロー」

 

 ドローするには、かなりの勇気が必要だった。カードを引くということは、デュエルを続けるという意思表示だ。そのままデッキの上に手を置きたい(サレンダーしたい)気持ちを抑えるのは、簡単ではなかった。

 

『どうするのだ、キョウジ。このままだと負けてしまうぞ』

 

「何で君はアストラルみたいなポジションになってるんだ・・・・・・」

 

 力なくそう返して、手札を見やる。ズァークのフィールドにいるのは通常モンスターのみ、しかも全員守備表示だ。突破方法がないわけでもない。他ならぬズァークのためのデュエルなのだ、親友として、最後までキチンと戦いたかった。

 

「《スパイダー・スパイダー》を召喚するよ」

 

 ボクがモンスターゾーンにカードを置くと、《スパイダー・ウェブ》の蜘蛛の巣から、音もなく黒ずくめで赤外線スコープを装備した蜘蛛が飛び出してくる。・・・・・・デュエルを見ている子供達から「カッコいー!」という声が聞こえたけど、彼の感性は大丈夫だろうか。いや、蜘蛛カードの中では比較的マシだけども。

 

「バトルフェイズ、《スパイダー・スパイダー》で《エレキテルドラゴン》を攻撃」

 

 文字通りスパイのような動きで黒い蜘蛛が姿を消すと、数秒後に背後から《エレキテルドラゴン》へと襲いかかった。そのまま捕食するのではないかとヒヤヒヤしたけど、鋭い足でスパスパと切り裂いてくれた。ちょっとエグいが、蜘蛛の捕食シーンよりはグロくない、はず。

 

「くっ、済まない《エレキテルドラゴン》・・・・・・」

 

「《スパイダー・スパイダー》が守備モンスターを戦闘破壊した時、墓地の昆虫族を特殊召喚することができる。戻ってこい、《蜘蛛男》」

 

 恐る恐るといった様子で蜘蛛の巣から頭を覗かせた《蜘蛛男》だが、自分を倒した《エレキテルドラゴン》が居ないことを悟るや否や勢いよくフィールドに飛び出してきた。

 

「今はバトルフェイズ中、よって《蜘蛛男》も攻撃に参加することが可能だ。《ハウンド・ドラゴン》へ攻撃」

 

 レベル3としては高い攻撃力を持つ《ハウンド・ドラゴン》だけど、守備力は100。攻撃力700しかない《蜘蛛男》でも破壊できる。

 

 既に蜘蛛糸でネバネバしている《ハウンド・ドラゴン》に更に糸を吹きかけて動けなくした《蜘蛛男》は、簀巻き状態の黒竜を六つの蜘蛛足で掴んでフィールドの外へと放り投げた。

 

「ありがとう、《ハウンド・ドラゴン》」

 

「・・・・・・ダメージステップ終了時、《蜘蛛男》は《スパイダー・ウェブ》の効果で守備表示になる」

 

 《スパイダー・スパイダー》、《蜘蛛男》の二体が蜘蛛糸で盾を作ってそれを遮蔽物にして身を隠す。

 

「モンスターを並べて、更に守備も固めたか! やるな、キョウジ!」

 

「お褒めにあずかり光栄だね」

 

 これでボクのフィールドのモンスターは全員守備表示、更に攻撃されても、《スパイダー・ウェブ》の効果で守備表示にできるし、ボクの偏った手持ちカードからすれば、それなりに強固な盤面だろう。・・・・・・一瞬、脳裏に「説明は負けフラグ」なんて言葉が浮かんだけど、気にしないでおく。次のターンも《サファイアドラゴン》は守備表示のままだし、大丈夫だろう。

 

「これでターンエンドだ」

 

 伏せているカードは墓地に昆虫族が三体居ないと発動できない《スパイダー・エッグ》。つまり、この頼りない蜘蛛達を突破されればボクの負けだ。

 

「オレのターン、ドロー!」

 

 彼がカードを引いた瞬間、ボクは「カン☆コン!」という音を幻聴した。

 

「そうか、お前が来てくれたか!」

 

 ドローしたカードを見るよりも早く、ズァークが笑みを浮かべる。どうやら切り札を引いたらしい。けど、リリースのための素材が足りないはず。が、ボクの脳に閃きが過った。反射的に、ズァークの伏せカードを見る。

 

「流石キョウジ、気づいたな! リバースカード、《蘇りし魂》を発動! 墓地の通常モンスターを守備表示で特殊召喚する。もう一度力を貸してくれ、《ハウンド・ドラゴン》!」

 

 翼で身体を守るような状態で《ハウンド・ドラゴン》が蘇る。けれどその身体は半透明に透き通っており、ガラスのような脆い印象を受ける。

 

「《ハウンド・ドラゴン》と《サファイアドラゴン》をリリース!

 行くぜ、相棒! 《オッドアイズ・ドラゴン》をアドバンス召喚!」

 

 二体の竜が粒子となり、新たな竜へとその力を託す。大地を踏みしめて現れたのは、二色(ふたいろ)(まなこ)に赤い鱗が特徴的な、装飾の少ないドラゴン。

 グオォッ、と吠えた《オッドアイズ・ドラゴン》は、(ズァーク)へ信頼を示すかのように背中を向け、こちらを真っ直ぐに見射(みい)る。

 

「出た! ズァーク兄ちゃんのエースモンスターだ!」

 

「カッコいー!」

 

 ズァークの相棒の登場に、子供達が歓声をあげる。《オッドアイズ・ペンデュラム・ドラゴン》を知っているボクからすれば少々地味な見た目だけど、それでも格好良いとは思う。

 

『ふむ。切り札にしては随分と貧相なドラゴンだな』

 

 豊満な胸を押しつぶしながら腕を組んだe・ラーは慢心しきっているようだった。けれど、あのモンスターは今のボクを倒すには十分な能力を持っている。

 

「バトルフェイズだ! 《オッドアイズ・ドラゴン》で《スパイダー・スパイダー》を攻撃!」

 

 ズァークの命を受けて、オッドアイの竜が咆哮する。そして口元に炎をため込むと、黒い身体の蜘蛛に向けて解き放った。その炎は糸で作られた壁を簡単に焼き尽くし、《スパイダー・スパイダー》どころかボクにまで迫ってくる。

 

「《オッドアイズ・ドラゴン》の効果! 相手モンスターを戦闘で破壊した時、その攻撃力の半分のダメージを、相手に与える!

 スパイラル・フレイム!」

 

 赤と黒の混じった(ブレス)が、ボクの身体を包み込んだ。

 

LP400→0




キョウジ
現在蜘蛛関連のカードしか持っていない。割と本気で孤児院の子供達とカードを交換しようか悩んだが、自分のデッキ一つ分しかカードを持っていないような子が多かったので断念した。
因みに、使っている『スパイダー』達は八雲が使ったのとは何ら関係の無い、ルドガーのカードだったりする。
実際はリアルダメージを受けても死にはしない程度には丈夫な身体だが、恐怖心のせいでそれに気づけていない。

ズァーク
ダベリオン達を手に入れたのはプロになってから、と確か明言されていた(どこだったかは忘れた)ので、まだエクストラのカードを持っていない。
デッキは2014年のスターターデッキをベースに通常ドラゴンデッキとして組んだ。星読みとと時読みをどうするかは後で考える(眼逸らし)。

宇里亜
正確にはラスボスではないが、ラスボスカードの擬人化みたいなデザインなので勢いで突っ込んだ。既に懐かれているが、タッグフォースほど近い距離感ではない。
デッキはトラップカードオンリーの『緑一色』ならぬ『罠一色』。初代DMのリシドみたいなデッキになっている。

e・ラー
現状ほぼ主人公のアストラル。あちらは記憶だったが、こちらは力とIQの大部分を失っているなど、奇しくも宿敵と同じような状態。悔しいでしょうねぇ。
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