遊戯王世界に転生したら、ラスボス達に懐かれました 作:今こそ一つに
あ、評価ありがとうございます。正直メッチャ嬉しいです。0評価でも有り難さはあるけどやっぱ高評価の方がモチベになります。
『《オッドアイズ・ドラゴン》の攻撃! スパイラル・フレイム!』
炎が放たれる。いずれ悪魔となる男の
本来ボクを守ってくれるはずのモンスターも、あの竜を前には意味がない。ブレスは簡単に壁を貫き、ボクへと迫ってくる。
そして、ボクの視界も身体も炎に包まれ──
「──ッ!?」
反射的に身体が起き上がり、目が覚める。
悪夢だった。もしあのデュエルがリアルソリッドビジョンによって行われていたのなら、ボクの身体には火傷や打撲といった傷があっただろう。前世を思い出す前ならば攻撃が当たる前に後ろに跳んだりして衝撃を受け流す、なんてこともできたが、今のボクは一般人としての常識を知識として持ってしまっている。前はなんとも思わなかったモンスター達の攻撃が、怖くてたまらない。身体を動かそうにも、すくんでしまう。役に立たない記憶に、嫌悪感が湧いた。
「・・・・・・?」
やや落ち着いてきた思考で、違和感に気づく。いつもならこの辺りでe・ラーがご満悦な笑みを浮かべながら何か言ってくるのだが、今日はそれがない。もしかすると宿主であるボクがデュエルで敗北したことで力が弱まってくれたのか、と彼女を振り返ると、
『ぅ、ぷ』
何故か吐きそうになっていた。
「え、何してるんだe・ラー」
口元と腹部を抑えてかがんでいるe・ラーに、思わず困惑してしまう。食事を必要としない存在が、何を吐くというのだろうか。
『お、お前のせいなのだぞ・・・・・・ぉぷ』
珍しく苦悶の表情を浮かべながら、よろよろとe・ラーが立ち上がる。世界の破壊者という肩書きが嘘のようだ。そんなこと口にして呪われたりしたくないので黙っておく。
『お前が毎日毎日寝ている間も絶望する所為で、今の我の許容量を超えようとしているのだ。勤勉なのは褒めるが、限度というモノをぉおええぇぇ』
なんとか話している最中は体裁を保っていたe・ラーだったが、途中でとうとう吐いた。吐瀉物は黒くてドロドロしたよくわからない物体。やや粘着質にも見える。・・・・・・アレがボクの絶望なんだろうか、普通に嫌だな。
『はぁ、はぁ・・・・・・と、とにかくだな。お前はもう少し希望を持て希望を。絶望一辺倒では我の身体が保たぬ。過剰供給だ』
「絶望の神様が希望とか言っていいのか」
というか、そんな同じものばかりだと栄養バランスが偏る、みたいなこと言われても、ボクにはどうにもできないのだが。
『問題ない。我は希望の影より生まれし絶望の神。宿主の希望が持っていようとも、その影に潜む絶望によって力は得られる。希望を失ったことによる絶望は、とても大きいのでな』
ドロドロとした液体状の物体を口元から零し、やや汚れた衣装でe・ラーが話す。正直絵面が意☆味☆不☆明過ぎて内容が頭に入ってこなかった。
「えっと・・・・・・背中をさすった方が良いか?」
『ぉえ、いや、問題ない・・・・・・待て、何だそのやや引いた目は。コレはお前の絶望が可視化されたものであって決して吐瀉物ではない。決してだ』
「いや・・・・・・そんな状態で力説されても」
口元からドロッとした
前世では遊戯王関連の同人誌を買ったこともあったが、それでも中々お目にかかれないであろう光景だ。相手が相手なので一切興奮しないが。
『くっ、折角の絶望が無駄に・・・・・・屈辱的だが舐めるしか・・・・・』
何言い出してるんだこの絶望の神は。
そんな薄いブックス!でしか見ないようなことをしでかそうとするe・ラーに、思わず蔑むような視線を向けてしまう。この姿を見れば誰でも彼女のことをe・ラーではなくe・ローと呼ぶこと間違いなしだ。
『・・・・・・み、見るなぁ! 我をそんな目で見るなぁ!』
こんなのに世界壊されるとか、死んでも嫌だな・・・・・・と思ったが、現状を鑑みると全く笑えない言葉だった。ズァークかe・ラーのどちらかが世界を壊せば、ボクも死ぬのだから。
朝から絶望を吐いた神様のせいでもらいゲロしそうになりながら朝食を詰め込み、外出の準備を始める。今日はズァークの初試合ということで、子供達と一緒に見に行くのだ。チケットはそれなりの値段だったが、小学生以下は無料とのことなのでそこまでかからなかった。KC様々だ。
そう、KCだ。この世界にも海馬コーポレーションが存在し、大会や試合の運営を行っているのだ。リアルソリッドビジョンや新型デュエルディスクの開発も、そこで行われているらしい。流石に海馬瀬人が社長をやっている訳ではないようだったが、心底驚いた。多分世界が四分割された時に滅びて、唯一技術を持っていた
懐かしい名前に思いを馳せながら、寝間着から着替える。ボーダー柄の長袖の上から半袖のシャツを重ね着して、下は簡素なズボンにスニーカー。下ろしている髪と相まって。少し地味に見える。いや、髪にメッシュ入っているし前世だったなら十分目立つんだろうけど、ここは遊戯王の世界。これでも地味過ぎるくらいなのだ。もっと腕にシルバー巻くとかさ!
『そういえば、お前はいつプロになるのだ? あのズァークとやらに先を超されているのだ、もう少し焦るべきではないのか?』
「? ボクはプロデュエリストになるつもりはないよ」
漫画版ZEXALで、八雲興司は極東チャンピオンにまで上り詰めた決闘者だ。シャークが道を譲った結果とはいえ、その実力は高い。が、ボクはそんなことないし、そもそもデュエルは怖い。戦いを怖がっている今のボクを
『なん・・・・・・だと・・・・・・』
e・ラーが驚愕で固まっているが、放置して支度を進める。
一応、引率という名目なので、それなりにお金を持っておく。孤児だからか、それともデュエリストだからか、ここの子供達はみんな精神年齢が高く、比較的落ち着いている。必要な物は自分で持ち歩くだろうから、ボクの荷物も最低限で済む。
『これではこの世界を壊す際に不都合が・・・・・・我がデュエルしようにも未だ一枚もカードを作り出せぬ状態・・・・・・ひょっとして我、宿り先を間違えたか?』
「勝手に取り憑いておいて酷い言い草だな」
腕を組んで呟いているe・ラーにそう返して、部屋を出る。子供達も楽しみにしていたし、遅れる訳にはいかないのだ。
『むぅ・・・・・・しかし、絶望の供給量だけを見れば此奴より優れた存在はそうそう見つからん、か・・・・・・』
ボクは絶望タンクか何かだろうか。まぁ、一度死んだことがある人間なんて遊戯王世界にもそうは居ない・・・・・・こともないが、珍しい部類ではあるだろう。
「あ、キョウジお兄ちゃん! ねぇ早く行こうよー!」
廊下を歩いていると、支度を終えたらしい宇里亜がやってきて、猫なで声で話しかけてきた。よほど楽しみらしく、落ち着かない様子だ。
「宇里亜、落ち着いて。ズァークの試合は逃げないから」
榊遊勝は試合から逃げたけど。
「ぶー、つまんなーい!」
ぶーたれる彼女を宥めながら玄関に行くと、既に待ちきれない子供達が集まっていた。中には床にカードを置いてデュエルしている子も居る。孤児院内には寄付などによって少なからず娯楽があるが、やっぱり一番人気はデュエルモンスターズなのだ。
「お待たせ、みんな。行こうか」
ボクは苦笑しつつ声をかけて、試合会場へ向かった。
ズァークの初プロデュエルは、彼の勝利で終わった。早々に《オッドアイズ・ドラゴン》を呼び出した彼は《星読みの魔術師》の効果や防御カードを駆使してフェイバリットを守り切り、攻撃力変動カードで対戦相手の切り札を正面から打ち破った。オッドアイズを補助の魔法・罠カードも《時読みの魔術師》の効果で破壊を防ぎ、隙の少ないプレイングとフィールドを楽しそうに駆け回る姿は、観客にも好印象に映ったんじゃないだろうか。少なくとも子供達は楽んでいたので、そこは安心だ。
観客席から出口へ向かう途中で、白衣の研究者然とした男性と、赤茶色とピンク色のツインテールの少女にすれ違った気がしたけど──多分気のせいだろう。白衣の方を見てe・ラーが『ほう・・・・・・』と興味深そうに目を細めたのも、見間違いに違いない。そうだと言ってくれ。
今夜は、ズァークの初勝利を祝ってささやかななパーティを企画している。孤児院のみんなで準備をする予定だが、正直、笑顔を保っていられるかどうか、不安だった。
だって、今回の勝利は、彼が覇王への道を踏み出したことを意味するのだから。
親友の幸福を素直に喜べない自分が、どこまでも嫌だった。
キョウジ
実は悪夢見た原因はe・ラーがお腹いっぱいだったせい。吸収されなかった分の絶望が夢となって表出していた。
e・ラー
最近イロモノ枠になりつつある絶望の神様。
絶望の食べ過ぎで零しちゃうe・ローのイラスト、待ってます。
ズァーク
祝え! 全ての召喚法を使いこなし、次元を超えデュエリスト達をひざまずかせる覇王のデュエリスト・ズァーク、正に生誕の瞬間である!(ウォズ並感)
すれ違った二人
一体どこの零王と
当作品における《星読みの魔術師》《時読みの魔術師》について
ペンデュラムカードになる前の効果はそれぞれ『ターンに一度、モンスター一体の破壊を防ぐ』『魔法・罠一枚の破壊を防ぐ』(意訳。詳しくはググってください)なんですが、そのままのテキストだと弱いどころか話にならない(例えば時読みの効果はチェーン《サイクロン》で無意味になる)ので、フリーチェーンの効果として扱います。まぁ、デュエルで出すかどうかは未定なんですが・・・・・・。
ぶっちゃけ架空デュエル考えるのってクソ面倒くさいので今後のデュエル全部ダイジェストとかにしたい()