遊戯王世界に転生したら、ラスボス達に懐かれました 作:今こそ一つに
前話で感想沢山頂けたので、今度は評価をクレクレしようと思います(乞食)。低評価でも貰えるだけ有り難いですが、高評価だとモチベが上がります。というわけで、感想共々くださると嬉しいです(直球)。
ズァークがプロとして活躍し始めて、一ヶ月ほどが経った。彼の活躍はめざましく、規模の小さな大会に何度か出場し、一度は優勝したほどだ。その過程で何枚か新しいカードも入手したらしく、更に強くなっている。
「攻撃だ、《オッドアイズ・ドラゴン》!」
ズァークを乗せた赤鱗の身体を持つ竜が咆哮し、赤黒いブレスを放つ。その奔流はモンスターのみならず、その主にまで届いた。序盤にダメージを受けていたズァークだが、これでライフは逆転した。
しかし、ボクはズァークの試合に集中できないでいた。理由はこの大会の景品となっているカードだ。何でも、『最強クラスのエクシーズモンスター』らしく、それを求めてエクシーズ使い達が多くこの大会に参加しているのだ。十中八九、《ダーク・リベリオン・エクシーズ・ドラゴン》だろう。もし彼が優勝すれば、彼はまた覇王への道を前進することになる。
『フン、我の《絶望神アンチホープ》が本来の力を発揮すれば、あんなモンスター共敵でないな』
e・ラーが何か言っているが、現状では歯が立たないのに何故得意げなんだろうか。
「ねぇねぇ、ズァークお兄ちゃんが勝ったよ、キョウジお兄ちゃん!」
「うん、そうだね。流石ズァークだ」
試合を見ていた宇里亜が、キャッキャとボクの膝の上ではしゃぐ。彼女の前に座っていた観客が偶然背が高かったので、こうすることになったのだ。決してボクがロリコンな訳じゃない。・・・・・・以前は気にせずこういうことができたんだけど、前世の記憶が戻って精神年齢が上がったからか、世間体が気になってしまう。
『・・・・・・ふむ、八雲も幼児と触れあうことが多かったな。やはり幼い方が好みなのか?』
「違うから。止めろよロリ化とか」
『出来なくはない。力も回復してきたのでな』
「お前はどこを目指しているんだ・・・・・・」
最近は
「? どーしたの、キョウジお兄ちゃん?」
「あ、いや。何でも無いよ」
e・ラーとの会話が聞こえていたらしく、宇里亜が首を傾げる。この子についてはまだ《神炎皇ウリア》を持っていないし、
・・・・・・もし彼女もラスボスになる可能性があるなら、背後でふよふよしているe・ラーと共にボクはラスボスサンドイッチされているということになる。これが絶望か・・・・・・。
『む。観戦中に絶望するとは。つくづく器用な奴だな・・・・・・』
チロリと口元を舐めるe・ラー。やや恍惚とした表情もあって非常に色っぽいのだが、恐怖心と嘔吐感のせいで一切興奮しない。
と、ズァークの次の試合が始まった。そして、視界の端で赤茶色とピンクのツインテールの少女が歓声をあげる。そして、隣に座っている肌の黒い男性が一つため息をついた。
どこからどう見ても
赤羽零王は、遊戯王ARC‐Ⅴのラスボス格であり、重度のロリコンとか呼ばれている存在だ。四つの次元で四人に転生した
そして、その娘たるレイは、ズァークが暴走した際に、四枚のカードを使って彼を四分割した人物だ。要は、将来的にズァークを倒す、ということになるのだが・・・・・・
「なぁレイ。応援するのはいいが、もう少し静かにしなさい。年頃の娘が、はしたないだろう」
「父様うるさい。デュエルに集中できないわ」
「・・・・・・・・・・・・」
は、反抗期でいらっしゃる・・・・・・?
どうやら彼女はズァークのファンらしく、夢中で彼を応援している。どういう・・・ことだ・・・
ボクの記憶が抜け落ちているのか、はたまた描写がなかったのか、この『一つの世界』についての知識はほとんどない。だから、彼女がズァークのファンであるというこの状況が正しいのかどうかわからないが、何だかとても違和感を覚える。
『ふむ。あの男・・・・・・どことなく我と似た雰囲気を感じるな』
「止めろよ失礼だろ」
『なん・・・・・・だと・・・・・・』
ラスボスとは言え、絶望(を吐く)神と一緒にするのは失礼だろう。いや、アカデミアを乗っ取って私兵化したり洗脳したりするような相手だが、まだ今は普通の科学者、のはずだ。
目を見開いて愕然としているe・ラーを放置し、ズァークの試合に目を向ける。相手の《カチコチドラゴン》を《一気加勢》で強化した《オッドアイズ・ドラゴン》で破壊し、効果で更にダメージを与えたところだった。そのまま《時読みの魔術師》で追撃し、ズァークは勝負を決める。
「わーい! またズァークお兄ちゃんが勝った! きゃは☆」
宇里亜を含め、子供達が歓声を上げる。それをかき消すくらいの大きさで、他の観客も彼に喝采を送っている。拍手しかしていないのは、ボクだけのようだった。
友人の勝利だ、嬉しくないはずがない。けれど、どう足掻いてもボクはこの世界にとっては異物で、どこまでも浮いていた。
「はぁー、楽しかった! どう? 少しは気分転換になった? 父様」
ずっと観戦していて痛む身体を伸ばしながら、レイは隣を歩く短髪の男性──彼女の父、零王へと首を傾げながら尋ねる。彼は顰めっ面のまま、少し考え事をしているようだった。
「もう、父様! 話聞いてるの!?」
「あ、ああ。聞いているさ」
「じゃあ私、何の話してたかしら?」
「それは・・・・・・」
どもる父に、レイは一つため息をついた。最近、零王はいつもこうだった。研究に没頭しているのか、ずっと難しい顔をしている。こうして息抜きにとデュエルの観戦に誘っても、終始上の空のようだった。
「父様が凄い科学者なのは知ってるけど、働き過ぎたら身体壊すわよ?」
「わかっている。だが、未だリアルソリッドビジョンは発展途上だ。今でも人命救助や建設工事などに使われているが、まだまだ可能性を秘めている。それを解明しなければ・・・・・・」
また思考の海に潜ろうとする零王に、レイは再びため息をついた。応援して体力も消費したため、お詫びとして何か買って貰おうと周囲を見回すと、子供達を連れて歩く二人の青年が目に入った。
「!? ざ、ズァークさん!?」
「へっ? 確かにオレはズァークだけど・・・・・・君は?」
急に名前を呼ばれて驚いたらしい灰髪の青年──無事に大会を優勝し、後日賞品を送ると言われて帰路についていたズァーク。隣の青みがかった白髪の青年がズァーク以上に動揺しているが、
「ぇ、えっと、私、ズァークさんのファンで! 今日のデュエルも見てました!」
興奮しているためか、必死に言葉を紡ぐレイに、ズァークは苦笑しながら受け答える。
「ああ、ありがとう。それと、もう少し落ち着いた方が良い。そんなに大声だと、注目を集めてしまうし・・・・・・」
ズァークが軽く周りに目をやる。レイも同じようにしていると、かなりの視線を集めてしまっていた。
「す、すみません! なら、えっと・・・・・・」
「あー、ズァーク。あの喫茶店で話してきたらどう? 子供達はボクが連れて帰るから」
成り行きを見守っていた白髪に緑のメッシュの青年──キョウジが、初めて口を開き助言する。想定外の状況に面食らっていたが、ようやく復活したようだ。
「オレは構わないけど・・・・・・君は?」
「!! 今すぐ父に確認してきます!!」
よほど嬉しかったのか、一瞬で顔を輝かせて零王の元へと駆けるレイ。そして有無を言わせず許可とお小遣いを得ると、すぐに戻ってきた。
「大丈夫です!」
「あ、ああ、わかった。えっと・・・・・・それじゃあ、行こうか」
「はい!」
元気よく頷くレイ、そして彼女の勢いに押され気味のズァーク──と、彼に袖を引っ張られるキョウジ。
「ちょ、何でボクまで!?」
「女子と話すのとか初めてなんだよ! お前も来てくれ!」
「いや、イシュとか子供達とかと喋ってるでしょ!?」
「イシュも子供達も家族みたいなもんだろ! それに、孤児院にオレ達と同年代の女子って居ないし・・・・・・」
小声でそう会話する二人だったが、思わずキョウジは「思春期か!」と叫びそうになった。年齢的には二人とも思春期である。
「・・・・・・仕方ない。みんな、ちょっとボクら用事ができちゃったから、君たちだけで帰れる?」
「はーい!」
ズァークの試合を見て未だにテンションが高いためか、元気の良い返事が返ってきた。キョウジは連絡手段兼護身用として宇里亜に自分のデュエルディスクを渡してから、ズァークと共に先に喫茶店に入っていったレイの元へと向かうのだった。
そして、ポツンと残される赤羽零王。
「・・・・・・適当に時間を潰すか」
大事な一人娘が心配ではあるものの、側に居ても自分は考え事をしてしまうため、彼女は楽しめないだろう。それに、先程の青年達も悪い輩では無いように見えた。もし万が一何かあっても、レイのデュエルディスクには過保護なほどの防犯機能が搭載されているため、そこまで心配する必要はない。
生粋の研究者である彼は、少し娘を疎かにしてしまいがちだった。
場所は移り、喫茶店内。席に着いた三人は、打って変わって沈黙に包まれていた。
先程は憧れている相手と会えてテンションの上がっていたレイは冷静さを取り戻し、自分の行動を顧みて羞恥心や気まずさを覚えて赤面したまま黙ってしまい、
ズァークもまた同年代の女性に慣れていないことから来る緊張と、ファンとこうして直に会ってしまっては何かしらのスキャンダルになるのではないかという今更やってきた不安から冷や汗を流して口を開けず、
完全に想定外の出来事に対応できず、しかも自分も相席することになってしまってどうすればいいのかわからないキョウジは作り笑いをしながらも内心では頭を抱えていた。
そしてe・ラーはキョウジの困惑や不安や動揺から来る絶望を取り込んでかなりお腹いっぱいになっていた。
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
どう会話を始めようか。キョウジの前世さながらの空気感に、緊張が走る。
「えっと」「あの」
ズァークとレイが同時に口を開き、そして同時に口を閉ざす。そして同時に譲り合う。
ラブコメかよ、とキョウジは内心でツッコミを入れた。
「あの、すみません。急に話しかけてしまって。帰るところ、だったんですよね?」
「いや、大丈夫だ。この後、予定、なかったし・・・・・・」
それ以上会話が続かず、再び訪れる沈黙。
ラブコメかよ、とキョウジは内心でツッコミを入れた。
「えっと、オレの方こそ、ごめん。その、急に喫茶店、とか、ビックリ、した、よね?」
実際にはキョウジの提案なのだが、緊張しきっている二人は気づかない──どころか、キョウジの存在を忘れている可能性が高い。
「いえ! その、嬉しかった、です。こんな風にお話できると、思ってなかったので」
気恥ずかしくなったのか、お互いにはにかむズァークとレイ。
ラブコメかよ、とキョウジは内心でツッコミを入れた。
「その、応援してくれるのは嬉しいけど、敬語は止めてくれないか? 多分
「あ、そうですよね、じゃなくて・・・・・・そうよね。ごめんなさい、デビュー戦で初めて見た時から、ずっとファンだったものだから・・・・・・」
照れくさくなったのか、お互いに小さく笑い合うズァークとレイ。
ラブコメかよ、とキョウジは内心でツッコミを入れた。
甘ったるく初々しい空気感の二人を放置し、キョウジは遠慮がちにやって来た店員にコーヒーを注文する。今は無性にブラックが飲みたい気分だった。
彼のテンションがだだ下がりしているためか、過剰供給された絶望を吐きそうになっているe・ラーから視線を外しつつ、チラリと二人を見やる。
「デビュー試合から見てくれてたのか」
「ええ。ズァークさん、すっごく楽しそうにデュエルするから、見ていてこっちまでワクワクしてくるの」
「そう言って貰えると嬉しいよ」
完全に二人の世界である。キョウジの知っている
ちなみに、アニメ本編にそんな描写は無い。故に、今キョウジの目の前に繰り広げられている景気は彼にとって違和感の塊だった。
もうなるようになれとコーヒーを飲んで甘い空気と相殺させるキョウジ。若干胃がもたれているような気がしたが、原因は十中八九ストレスなので気にしないことにした。
「まあ、ズァークさん、孤児だったの!? ご、ごめんなさい、そんなことは知らずに・・・・・・」
「いや、いいんだ。オレ達にとってはそれが普通だから。変に気を遣われる方が困る」
結局、二人の会話は夕食前まで続き、その間コーヒーを飲み続けていたキョウジの感情はほぼ無くなっていた。レイを迎えに来た零王も似たような状態であり、二人は互いを見て苦笑したという。
キョウジ
カップルの間に挟まる転生者。
ズァーク
色を覚えるお年頃。
レイ
まだプロデュエリストにはなっていない。ちょっと反抗期。
原作でプロと明言されているので、多分ズァークに憧れてプロに入ったんだろうなと妄想考察。遊矢シリーズと柚子シリーズが仲良いのにここ二人が他人or険悪なのは違和感がすごいため。
零王
まだハゲてないハゲ。でもデコは光っている。
『一つの世界』での奥さんについては一切言及されていないが、恐らく幼い頃に亡くなっていると妄想考え、だからARC‐Ⅴ本編では唯一の肉親だった娘を取り戻そうとしたんじゃないかな・・・・・・とこじつけ考察。まぁ多分自分がリアルソリッドビジョン作ったせいで
ズァーク「今こそ一つに・・・・・・(意味深)」
レイ「四分割にするわよ」
こういう展開にしようかと思ったんですけど、流石に自重しました。