ウルトラ列伝~音の章~   作:アテル

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無事に進級できましたウルトラやべーやつです
そんなことはどうでもよくて・・・

紗夜さん!誕生日おめでとう!!!

ちなみに今回はほとんど出番ないですごめんなさい

この小説の前書きであんまりバンドりについて触れてないんですが一応ちゃんとプレイはしています。26フルコンが限界ですが()

今後も新作と同時進行でちょっとずつですが進めていきますので是非ともお付き合いください。かなりの長編になるのでほんとにまったり進めていきます

今回からウルトラマン・怪獣解説をあとがきでやっていきます

ワジマ様、当麻たん様、アカツキ 不知火様、お気に入り登録ありがとうございます
増えていくUA数とお気に入り数がやる気に繋がるので感想と一緒に是非お願いします


14話『まだ見ぬ未来』

5月18日・・・

連日続く怪獣災害についての報道に人々は怯えていた。その恐怖を前に、だんだんと世間の機能がマヒしていた。

「え~。ペットショップ休業かよ~」

午前10時。次郎丸のドッグフードを買いに行きつけのペットショップに来た翔だったがなんと休業中。仕方がないので他のペットショップやコンビニに行くことにした。

「これも怪獣のせいなのかよ・・・。はあ・・・」

肩を落とし商店街を歩く。普段は活気づいている商店街だが今日はかなり人通りが少ない。どうやら皆家で家族との最後の時間を過ごそうとしているようだ。

「全く・・・いくら昨日怪獣が日本に来てる可能性が高いっつったって急に怯えすぎだろ・・・」

そう。昨日の夜、旅客機を墜落させた怪獣と同一個体と思われる怪獣が日本、それも千葉県沖の上空を飛行しているということが報道されたのだ。4月にあったガクマの件ではこうはならなかった。恐らくその件で怪獣の恐ろしさを再認識したのだろう。

『パリーン』

ガラスが割れたような音が鳴り響く。翔が音の正体を探すと遠くで5人ほどの不良グループが店の窓ガラスを叩き割っていた。

「いつから世紀末になったんだここは!」

翔は迷わず走り出した。

「グハッ」

まず翔が1人を吹き飛ばす。

「てめー何しやがった!」

それにキレた別の1人が翔に殴りかかる。だがその鉄拳をひらりと躱し腹に2発の拳を叩き込む。

「こ、このやろっ」

あっという間に2人を無力化され、残るメンバーも殴り掛かる。

「ふっ、はっ」

だが翔は迫りくる拳を受け止め、あっという間に間合いを詰めみぞおちに強烈な肘を入れる。

「だあー!」

次にバットで叩き潰しに来た不良の攻撃を躱し腹に鋭いけりを入れる。そしてバットを足を使って拾い上げ、最後の不良目掛けて振る。

「へっ、へなちょこが」

だがそれは躱され、翔の背後を取った不良が殴り掛かる。

「へなちょこはそっちだ」

「へ?」

詰めが甘いのか、相手の技量を見誤ったのか。不良は翔の裏拳でのびきってしまった。

「大丈夫ですか?」

不良を片付け終わった翔は店内に入り中にいる人の安否を確認する。

「ええ、おかげさまで。ありがとうございます」

中にいた店主の男性が翔に礼を言う。

「いえいえ礼には及びませんよ。それより・・・このガラスは・・・」

「それは自分たちで何とかしますよ。それより、お礼の品を・・・」

「いいですよそれは。けががなかったということが何よりです」

「そうですか・・・。ですが、このお礼はいつか必ず」

「じゃ、じゃあ俺はこのくらいで・・・。それでは!」

そうして翔は慌てて店を出た。

「行ってしまった・・・。まだ名前も聞いてないのに・・・」

 

正午頃・・・

いつも通り、燐子とあこを迎えに行ってcircleに向かっていた。どんよりと曇った空を眺めながら、ゆっくりと歩く。翔は燐子と肩を並べながら、時折あこの方に目を向けていた。昨日の今日なのでやはり心配である。燐子も同じようにあこを心配していた。うつむき、歩幅を短くして歩くあこに合わせ、ただ道を進む。会話もなく、重い雰囲気が辺りを満たしていた。

その時、3人の頭上に影が通った。その一瞬の出来事に判断が追いつかず、何が起こったのか理解する頃にはもう、それは始まっていた。

『キャアアア』

産声に近い金切声が爆音と共に響き、遠くで建物が倒壊する音が聞こえた。

「「「「「~~~~~~!」」」」」」」

何人もの悲鳴が混じり合い、何を言っているのか全く分からない。

そう、怪獣が来たのだ。薄く広がった肩のような翼、そこから生えている少し平べったくて、黄色い目が鈍く光る顔、ゴツゴツと隆起して、少しグロテスクな見た目の腹部、そして横に広い頭部とはアンバランスな足を持った怪獣、ガゾートがこの東京の中心地に降り立ったのだ。

「・・・。燐子、あこ連れてできるだけ郊外に逃げて」

「え・・・。翔君はどうするの?」

「逃げ遅れた人の避難」

「危ないよ!・・・行っちゃった・・・」

1人都心に向かって進む翔。燐子の静止が彼の耳に届くことはなかった。

「しょー兄!」

突如、あこもその後を追って走り出した。

「待ってあこちゃん!」

そしてあこを追って燐子も人の波に逆らいながら、その波に消えていった。

 

「もしもし光輝!そっちは無事か?」

翔は都心に向かって走りながら光輝に電話を掛ける。

『こっちは今circleに向かってる!あそこの地下ステージになら安全なはずだ。そっちの方は?』

「とりあえずあこたちを郊外に避難するよう言っといた。今から避難誘導してくる」

『はあ?翔何言ってんだ!危ないだろ避難しろ!』

「無理な話だね。俺を誰だと思って?』

『んなこと聞けるわけ・・・切りやがった・・・」

「あいつ、危ない真似しやがって・・・」

通話を切られた光輝はツーツーとしかならない自分のスマホを見ながらため息をつく。

「(・・・まずいな、翔がやらかす前にティガになって怪獣を)」

自分の横で一緒に逃げている紗夜を確認する。生半可な言い訳では恐らく振り切れないし逆に紗夜を巻き込んでしまうだろう。

「circle・・・」

そうこうしているうちにcircleに辿り着く。

「まりなさん!」

光輝は真っ先に店内にいるだろうまりなに声を掛ける。

「あ、光輝君!早く早く、地下に避難して!」

怪獣が出た時に地下を避難所にすること。これは以前から店で決めたことでありもう実行してくれていた。

「いえ、俺は逃げてる人に呼びかけるので・・・。紗夜をお願いします」

「ちょっと光輝!何言ってるの!あなた肩の傷まだ癒えてないじゃない!無茶しないで一緒に!」

「ダメだ紗夜。ここに逃げれることを知らない人は大勢いるはずだ。今ここで俺たちが呼びかけなきゃ、救える命も救えなくなうわっ!」

また爆発音がし、今度は地震も発生する。

「紗夜、一刻を争う事態なんだ。頼む」

「じゃあ私も手伝うわ」

「紗夜ちゃん、それはダメだよ。そういう危険な事態に対応するのはスタッフの役目、だから紗夜ちゃんはステージに避難して」

紗夜の同行をまりなが静止する。

「ホントは光輝君にも頼みたくなかったんだ。でも・・・お願いできる?」

「任せてください。じゃっ」

そういうや否や光輝は店を飛び出る。

「ほら、紗夜ちゃんも」

「・・・はい・・」

後ろでそう聞こえた後、光輝は速度を上げる。胸元からスパークレンスを取り出し、いつでも変身できるように準備をしながら逃げ惑う人々に声を掛ける。

「あそこのライブハウスに避難できます!早く逃げてください!」

ありったけの声で周囲に伝える。1人がcircleの方に逃げるとそれを追って人の波が向きを変える。

「あっちの方で避難所があります!逃げてください!早く!」

その後も声を張り上げ人々を誘導していく。

「大丈夫ですか?」

補助が必要な人の手助けも忘れずにさばき続け、少しづつ人が少なくなっていく。

「みんな!早く逃げて!」

 

「しょー兄!」

ひたすら都心に向かって走っていた翔はあこに呼びかけられて足を止めた。

「あこ!それにりんりんまで!逃げてって言っただろ!?」

「じゃあなんでしょー兄は逃げないの?!一緒に逃げようよ!」

あこの正論に翔は少し言葉が詰まる。

「っ・・・。俺はやることがあって・・・」

「2人とも、危ない!」

燐子の呼びかけを聞いた翔は咄嗟にあこと燐子を抱き寄せて飛び退いてその場から離れた。3人が離れたすぐ後に3人がいた場所で爆発が起きた。ガゾートが放ったプラズマ光弾が着弾したのだ。さらにプラズマ光弾の勢いは止まることを知らず次々に爆発音が響き渡る。しばらくし爆発音がようやく収まったタイミングで3人は顔を上げ街の光景を見て絶句した。ビルがなぎ倒され、家は燃え、煙と血の匂いがごちゃ混ぜになった悪臭が漂っていた。

「そんな・・・」

燐子が悲観の言葉を漏らす。

「嘘・・・でしょ・・・」

その悲惨な光景を目にし、あこは涙目になりながら膝をついた。

「未来は・・・絶望しかないの・・・?」

街の悲惨な光景とそれを見て絶望の表情を浮かべる親友たちを見て翔は、()()()()()()()()()()()()()()()()を痛感した。

 

「ぐすっ・・・」

「?」

群衆の声にかき消され、光輝の耳に届くはずもない声。誰かの泣き声に違和感を感じる。住宅街に目を向けるとアパートの3階で男の子が床に小さく座り泣いているのが窓から見えた。それを見た光輝は人をさばくのをやめ、そのアパートに駆け出す。

「(くそ、ティガの巨体じゃうまくあの子を救い出せない。直接乗り込むしか・・・)」

アパートの中に入り階段を上る。

『キャアアア』

人の流れを見つけたのだろうか、ガゾートの鳴き声と足音が近づいてくるの感じる。

「おらあ!」

勢いを増して階段を上り切り、窓から確認した方の部屋のドアを無理矢理開ける。

「大丈夫か!」

「お兄ちゃん・・・誰?」

「俺のことは後だ!それより早く逃げるよ」

中で泣いていた男の子を抱え上げ、階段を降りようとした時。

『ドーン』

爆音と共にアパートが揺れ、傾く。

「下がやられたか・・・」

『ズドンズドン』

足音がより近くなる。

「飛び降りるぞ!」

「え?」

嫌な予感がし、窓に向かって走り出す。スパークレンスを構え、すぐに変身できるようにし、ガラスを割りながら外に飛び出る。

だが飛び出した数秒後、ついさっきまでいたアパートが爆発した。そして爆風が光輝たちを襲い、光輝は体制を崩す。

「「うわあああ」」

その衝撃で光輝はスパークレンスを手放してしまう。男の子の方は何とか離さず、空いた手でさっきよりも男の子を強く掴む。空中でうまく制御が効かず、くるくると回り続ける中、光輝は必死に打開策を考えた。

「(どうする・・・せめてこの子だけは守り抜かなきゃ・・・。ティガになって助けるのはもう不可能だ・・・。・・・もう考える余裕がない!頼んだぞ、俺の体!)」

光輝は空中で何とか身をひねり、自分の背中を地面に向けた。

衝撃に備え目を閉じ、歯を強く噛む。

「うぐっ」

地面につき、背中から痛みを感じながらも転がって男の子が下にないように気を付ける。

「(クッソ・・・。意識が・・・。ここから・・・逃げなきゃ・・・)」

だがその願いは叶わず、光輝は両手に抱える男の子と共に意識を手放した。

 

無力さを痛感し、悲観していた翔の耳にキーンという高い音とガゾートの放つプラズマ光弾とは系統の違う爆発音がした。

音の正体に目を向けると3機ほどの戦闘機がガゾートに向けてミサイルを放っていた。だが当のガゾートは小石を投げられた程度の痛みなのか少し気にしただけで気にせず破壊に勤しむ。

「・・・とにかくあこ、りんりん!早く逃げよう。circleなら地下に避難できるはずだ」

意を決して翔はあこと燐子に提案をする。だがその時、翔の嫌な予感が強い反応を示す。慌ててガゾートの方を見るとこちらの方を真っすぐ見据えて一歩、また一歩と近づいてくるガゾートがいた。その口には多量のよだれと飲み込めずに口にぶら下げている何着かの服があった。

「あこ!りんりん!こっちだ!」

翔は迷わずあこたちの手を取り、ガゾートから逃げた。たまたま残っていた狭い路地に逃げ込みその巨体からできる限り逃げようとする。だがガゾートはあっという間に3人に追いつき、建物を破壊しながら追いかけてきた。3人は倒壊し、頭上から降り注ぐ瓦礫を搔い潜りながらがむしゃらに走った。

『キャアアア』

だがガゾートは3人の前に降り立ち、3人を捕食しようとにじり寄る。

「・・・(こいつらは・・・()()()()()()を知っても・・・俺と友達でいてくれるかな)」

さっきまでこびりついていた彼のプライド、()()()()()()()()()というものは崩れ去った。

翔はガゾートに向かって走り出し、大声で叫んだ。

「変身!」

翔が叫ぶと地面がひび割れ、そこから炎の柱が噴き出した。翔はその炎に包まれ、やがて炎の柱が消えた時にそこに立っていたのは、黒い体にあちこちに白いラインが流れる巨人、ウルトラマンⅡ型だった。

ウルトラマンⅡ型はガゾートにアッパーを掛けダウンさせる。そしてあこと燐子を優しく手で包み、circleの前まで運びそっと下ろした。

「しょー・・・兄?」

震えた声で問いかけるあこにⅡ型は力強く頷き、ガゾートに向かっていった。

『キリッ!』

腰を落とし、両肘を曲げ腰につけ、手の甲を相手に見せる。まるで空手の構えのような体勢でガゾートと対峙する。

『キャアアア』

ガゾートも負けじと咆哮を上げ、プラズマ光弾をⅡ型に連射する。それらをⅡ型は腕で払いのけ、爆炎が上がる中ガゾートに向かって走り出す。距離を詰めたⅡ型は炎を纏ったパンチをガゾートの胸に当てる。さらに休む間もなく殴打を浴びせ、ガゾートは大きく跳び退き、ビルを破壊しながら倒れる。倒れたガゾートだが、すぐに立ち上がり自分の足元にプラズマ光弾を連射した。爆炎が上がり煙が充満する。

煙が晴れた頃にはガゾートの姿は影も形もなく、Ⅱ型は戸惑う。

「(くそっ、逃げたか・・・)」

だがそれは誤算だった。ガゾートが逃げたと思い込み、隙をさらすⅡ型の背中にプラズマ光弾が命中する。Ⅱ型が振り返ると、空を駆け回るガゾートがいた。

「(しまった、空か!まずい、俺に空を飛ぶ手段はない!)」

その時、ガゾートがプラズマ光弾を連射した。すかさずⅡ型はガードをするが連射された光弾全てを受けきることはできず数発被弾してしまう。

『キリイイ!』

思わず膝をついてしまうがすぐに立ち上がる。だが立ち上がった彼の眼前にいたのはガゾートだった。先程までは遥か上空にいたはずが、今では地上スレスレをこちら目掛けて飛んでいる。その圧倒的速度に驚く間もなく、ウルトラマンⅡ型はガゾートの突進をもろにくらう。速度が乗ったその一撃は重く、Ⅱ型は地面に倒れてしまう。

だが彼も弱い男ではない。力を込めて再び立ち上がる。それでもその反撃の芽も許さぬガゾートはまたしてもⅡ型に突進を掛け、Ⅱ型をダウンさせる。そして2発の大ダメージを受け身をよじり痛みをこらえるⅡ型に、上空からガゾートがダイブする。

『キリイイイイ!!』

瓦礫が舞い上がり地面が大きく揺れる。Ⅱ型はガゾートの巨体をその身に受け止めさせられ、悲痛な叫びを出す。

Ⅱ型はパンチは肘打ちで上に乗っかるガゾートに抵抗するが、ガゾートはそれを意に介さず鋭い牙をⅡ型の肉体に刺した。

『キリイイ!』

悲鳴を上げるⅡ型。絶体絶命のこの状況になす術なくやられるのか、そう思ったその時、Ⅱ型の脇からはみ出ていたガゾートの顔面が爆発した。

『キャアアア』

突然の爆発に驚き、悲鳴を上げて荒ぶるガゾートにⅡ型は渾身のパンチをし、体から離す。すかさず蹴りを入れ、さらにガゾートと距離を作る。その隙に立ち上がり、謎の爆発源を探す。後方を確認すると、バズーカを担いだ軍人がこちらを見て白い歯を出して笑っていた。Ⅱ型もサムズアップして彼に応えた。そしてガゾートに方を向くとまたもやガゾートのあちこちで爆発がしていた。そこには先程の3機の戦闘機が列を成してガゾートに攻撃していた。

『キリッ!』

彼らが作ってくれたチャンスを無駄にしないために、戦闘機に気を取られているガゾートに飛び蹴りを入れる。

胸に強烈な蹴りを貰ったガゾートは後退し、再び上空に飛び上がった。そしてまたもプラズマ光弾を連射するが今度は不意打ちでも初見でもない。Ⅱ型は手から獄炎弾を放ちプラズマ光弾を相殺する。そしてガゾートはまたも同じようにウルトラマンⅡ型に突進をするが跳び前転され避けられてしまう。

「(ティガの真似事になっちまうが・・・これで決める!)」

立ち上がったウルトラマンⅡ型は両腕を右胸の前で十字に構え、十字の交点から獄炎を放った。獄炎は伸びていき、やがて上空を飛行しているガゾートに命中しガゾートの肉体を爆発四散させた。そしてガゾートの爆発と共にそれを覆っていた雲も霧散し、オレンジに染まった空が顔を出した。

「(これが俺の必殺技だ!名前は・・・そうだな、『インフェルノシュート』)」

ガゾートを撃破し、一息ついたⅡ型は、戦闘を助けてくれた軍人たちにもう一度サムズアップをし、その姿を炎の柱で包んで消えていった。

 

「「しょー兄!(翔君)」」

戦いを終え、瓦礫の山と化した東京を眺めていた翔にあこと燐子が呼びかける。

「2人とも・・・」

まさか来るとは思っていなかった翔は2人を見て驚きの表情を見せる。

「どうして今まで言ってくれなかったのさ!しょー兄がウルトラマンだって!」

「しー、声が大きい!」

「あっごめん・・・」

翔に叱られ、口を手で覆って下がるあこに合わって燐子が問いかける。

「ねえ・・・翔君、どうして・・・私たちに言ってくれなかったの?」

燐子が諭すよう聞くと、翔はバツが悪そうに燐子の顔を見た。

「・・・笑わない?」

「笑わない」

翔は意を決して独白を始めた。

「『ヒーローになりたいから』。これが俺が2人・・・いや、誰にも俺が変身していることを明かしていない理由だ。俺の中で『正体不明のヒーロー』でありたいっていう気持ちが芽生えちゃてな。そんなくだらないプライドを持っていたからだな、このザマだよ」

瓦礫で埋もれ、荒廃した東京を見ながら翔は続けた。

「何がヒーローになりたいだよ。俺がもっと早く戦っていれば、こんなにはならなかったはずなのに」

「「・・・」」

自嘲的に話す翔に、2人はかける言葉が見つからなかった。

「ま、そんなヒーローになれなかった男が俺だ。呆れちまうよな」

『パン!』

乾いた音が響く。一瞬、翔は何が起こったのか分からなかった。だが後から遅れてやってくる頬に何かが触れたという感覚が、燐子にはたかれたという事実を認識させられる。

「りんりん・・・」

「いつまでも後悔してちゃダメだよ!」

燐子の魂の叫びが翔の心に響く。

「ずっと後悔して・・・くよくよして・・・立ち直れない人がヒーローになれるわけないよ!いつまでも!・・・自分の失敗を反省して・・・救えなかった人の・・・気持ちを背負って戦い続ける。例え今はそうじゃなくても・・・それを続けていけばいつかは・・・ヒーローになれる!翔君だって・・・いつかはきっとなれるのに・・・どうして投げ出しちゃうの!?」

「・・・」

改めて街の風景を見る。

「救えなかった人の・・・気持ち・・・」

「そうだよ・・・翔君だって・・・そうすれば・・・」

「あこも!あこも応援する!しょー兄なら絶対できるって!」

「2人とも・・・ありがとう!」

翔は沈みゆく夕日を見ながら決意を固めた。

 

1週間後・・・5月24日

都心は少しづつ復興が始まり、ガゾート襲来を飲み込み、また新たな1歩を人々は歩みだした。

そんな頃・・・

「それでは!第1回しょー兄の名前を決めようの会を始めます!」

「「いえーい」」

翔の家で翔、燐子、あこで会議をしていた。

「議題はしょー兄が変身した姿の名前をもっとかっこよくしようです」

「その通りだ。正直俺の中でウルトラマンって呼ばれるのは少し頂けないので別の呼称が欲しい」

「それでは会議、スタート」

こうしてわちゃわちゃした会議は始まった。

3人が話している間に、この1週間で起こったことを軽く説明しよう。

ガゾートが撃破され、崩壊した都心であったが、被害が都心に集中していたことが功を奏し復興の目途は早い段階でついた。そして現在絶賛復興中だ。きっと1か月もすれば活気も戻ってくるだろう。

次に光輝についてだ。ガゾートから男の子を守った彼は3階から落ちたということで重傷を負ったが、驚異的な回復力で復帰し、今は日常生活に戻っている。幸い、光輝の住んでいる所も被害はそんなになかったのでもう不自由なく生活できている。

そしてFWF予選についてだ。当然延期が決定され、開催日は6月末を予定し着々と準備が進められている。

最後にあこについてだ。3日前、Rosaliaの面々で集まった時に翔と燐子があこにそのことについてみんなに相談するように促した。すると帰ってきた反応はFWFが終わってもRosaliaは続ける、終わらないというものだった。進むべき道はいつか見つける。例え暗闇の中でも、進むべき道を探し歩く。そう誓いを立て、練習に精を出している。

 

「そうだ!翔君・・・『キリエル人』って知ってる?」

「あこは知らないなあ・・・」

「それじゃあ・・・話すね。『キリエル人』って言うのは大昔から・・・人類と接触している謎の生命体なんだ・・・。人類はこの『キリエル人』に導かれている・・・っていう都市伝説ができるほど高度な知能をしていて・・・」

こうして燐子は淡々と『キリエル人』について解説していった。その間、翔はなぜか終始無言だったがあこがノリよく反応するので燐子はそれに気づかず話していた。

「それで・・・ほらこの絵、翔君が・・・変身する姿に・・・ちょっと似てるでしょ?この絵は実際に『キリエル人』に会ったっていう人が描いたんだ」

燐子があこに見せた画像には、確かにウルトラマンⅡ型と形状が似ている青くぼやけた人型の絵が描かれていた。

「だから・・・この『キリエル人』から・・・ちょっと名前を貰って『キリエロイド』・・・なんて名前はどうかな?」

「『キリエロイド』・・・『キリエロイド』か・・・」

さっきまでだんまりだった翔が急に反応する。燐子に貰った名を反復し、感触を確かめる。

「さっすがりんりん!我が漆黒の感性に触れる名を考えるとは・・・」

「うん、いい名前だ。『キリエロイド』。これから、もし俺が変身してるときに俺のことを呼ぶならこれで呼んでくれ」

「そっか・・・気に入ったようで何よりだよ・・・」

「(ああ、こんな平和が・・・続けばいいのに・・・)」

3人で仲睦まじく1つの話題で盛り上がる。どこにでもあって、今までもやってきたことの幸せを改めて翔は実感した。




炎魔戦士 キリエロイド
身長 52m 体重 4万2千トン 出身地 不明

政府が命名した正式名称は ウルトラマンⅡ型
東京に住む青年、影山 翔が変身する戦士
素早い格闘術が得意。長年特撮で培った戦闘センスが時折光る
手先から『獄炎弾』という火炎弾を放つことができ格闘術と組み合わせることで幅広い状況に対応できる
必殺技は『インフェルノシュート』 腕を十字に組み、その交点から獄炎を放ち相手を焼き払う。その温度は摂氏10000度を誇る

次回予告

夏、光輝はcircleのスタッフとして新たな企画を実行する

着々と準備が進む中、影が忍び寄る

次回、『beyond 』
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